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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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兄の背を見送っていると、
「ふう・・・」
私の横でクリフが、膝を付いた。
「だ、大丈夫ですか!?クリフ様。」
あのエメラインの攻撃を、私達を守って防ぎ続けたのだ。相当な負担だっただろう。
「ああ・・・、もうちょっとシールドを訓練しておかなきゃいけないな。ディーンだったら、もっとちゃんと出来たんだろうけど。」
「何を言ってるんですか!。凄かったですよ。命の恩人です。あの攻撃を防ぎきるなんて。」
本当にそうだ。エメラインの攻撃力は半端じゃない。しかもラスボス仕様の攻撃なのだ。
いつの間にか、中庭からは生徒達は避難し、先生方が集まった来ていた。そして端の方にモーガン先生が居るのを見つけた。バタバタ走り回っている他の先生達と違って、口の端に笑みを浮かべ、ただ立って見物しているようだ。
(気に入らない)
今回のエメラインの騒動は、この世界においてはシナリオ通りだと言える。断罪され、婚約破棄されたエメラインがトラヴィスと恋仲になったヒロインを攻撃するのだ。
けれど、私はヒロインでも無いし、トラヴィスの恋人でも無い。エメラインがここまでの暴挙に出るにはあまりにも・・・。
(モーガン先生の精神魔術。)
エメラインの今回の行動は、精神魔術に操られたノエルやマーリンに似てはしないだろうか?。自分の中に秘めた思いや考えを増幅させ、極端な行動を起こさせるサグレメッサ・モーガンの精神魔術。
魔力量の多いエメラインに、モーガン先生は精神魔術をかける事は出来ないはず。でも、もしそれが可能なら・・・?。
(もしモーガン先生がエメラインの精神に関与したのなら、今回の事も腑に落ちる。)
もう一度目を向けると、いつの間にかモーガン先生はこの場から居なくなっていた。校舎の方へ戻ったのだろうか。他の先生方は、最初のエメラインの攻撃で怪我をした生徒達を医務室に運んだり、被害の状況を確認している。それほどにエメラインの魔法は凄まじかった。
まだ心臓がドキドキしている。でも終わったのだ。
(そう、終わった。エメラインの事は解決したのだ。・・・解決したというのに、どうしてまだこんなにも心臓がドキドキしているんだろう・・・)
ディーンとクラークに両腕を掴まれ、立ち上がったエメラインはトラヴィスの方に目線を送り、
「トラヴィス様・・・。浅ましい女と笑って下さいまし。わたくしは、心優しい女ではございませんでしたが、貴方様の事は心からお慕いしておりましたわ。」
エメラインのそのセリフを聞いて、私の喉がヒュッと鳴った。知っている、このセリフ。そしてその続きも。
トラヴィスの顔色も変わった。
「貴方様の事はあきらめましょう・・・でも、あの女だけは許しませぬっ!」
「ぐっ!」
トラヴィスが弾かれる様に後ろに倒れた。捕縛魔術が無理やり解かれたのだ。そして、エメラインの横に居たクラークとディーンも、エメラインの魔力によって振りほどかれ、数メートルも後ろに吹っ飛ばされた。
「うわっ!」
エメラインの憎しみの籠った目が真っすぐ私の目を射抜く。そして彼女はニヤリと笑うと、私に向かって手を振り上げた。
(こ、これってやっぱり、ヒロインが死ぬ方のバッドエンドと同じ!)
トラヴィス・ルートの最悪エンドである。エメラインの手から放たれた火球は、ヒロインの胸を貫き、ヒロインはトラヴィスの腕に抱かれながら目を閉じる。チャ~ララ~と悲し気なエンディングミュージックが流れ、エンドマークが表示される。
(じょ、冗談じゃないよ!)
パニックの私の前に、クリフが両手を広げた。ヘロヘロなのに、まだ私を庇おうと言うのだ!。ここからは、考えるより先に身体が動いた。私は渾身の力でクリフを突き飛ばした。
「アリアナ!」
いつものクリフなら無理だったろうけど、ヘロヘロのクリフなら、私の力でもなんとかなったのだ。
エメラインの火球はもう私の目の前にあった。
「アリアナ!」
ディーンの声。
「アリアナ様っ!」
これはリリー。来てくれてたんだ。
(ああ、バッドエンド)
こういう時ってスローモーションになるってほんとだったのね。私は覚悟を決めて燃え盛る炎の球を見つめた。
「ふう・・・」
私の横でクリフが、膝を付いた。
「だ、大丈夫ですか!?クリフ様。」
あのエメラインの攻撃を、私達を守って防ぎ続けたのだ。相当な負担だっただろう。
「ああ・・・、もうちょっとシールドを訓練しておかなきゃいけないな。ディーンだったら、もっとちゃんと出来たんだろうけど。」
「何を言ってるんですか!。凄かったですよ。命の恩人です。あの攻撃を防ぎきるなんて。」
本当にそうだ。エメラインの攻撃力は半端じゃない。しかもラスボス仕様の攻撃なのだ。
いつの間にか、中庭からは生徒達は避難し、先生方が集まった来ていた。そして端の方にモーガン先生が居るのを見つけた。バタバタ走り回っている他の先生達と違って、口の端に笑みを浮かべ、ただ立って見物しているようだ。
(気に入らない)
今回のエメラインの騒動は、この世界においてはシナリオ通りだと言える。断罪され、婚約破棄されたエメラインがトラヴィスと恋仲になったヒロインを攻撃するのだ。
けれど、私はヒロインでも無いし、トラヴィスの恋人でも無い。エメラインがここまでの暴挙に出るにはあまりにも・・・。
(モーガン先生の精神魔術。)
エメラインの今回の行動は、精神魔術に操られたノエルやマーリンに似てはしないだろうか?。自分の中に秘めた思いや考えを増幅させ、極端な行動を起こさせるサグレメッサ・モーガンの精神魔術。
魔力量の多いエメラインに、モーガン先生は精神魔術をかける事は出来ないはず。でも、もしそれが可能なら・・・?。
(もしモーガン先生がエメラインの精神に関与したのなら、今回の事も腑に落ちる。)
もう一度目を向けると、いつの間にかモーガン先生はこの場から居なくなっていた。校舎の方へ戻ったのだろうか。他の先生方は、最初のエメラインの攻撃で怪我をした生徒達を医務室に運んだり、被害の状況を確認している。それほどにエメラインの魔法は凄まじかった。
まだ心臓がドキドキしている。でも終わったのだ。
(そう、終わった。エメラインの事は解決したのだ。・・・解決したというのに、どうしてまだこんなにも心臓がドキドキしているんだろう・・・)
ディーンとクラークに両腕を掴まれ、立ち上がったエメラインはトラヴィスの方に目線を送り、
「トラヴィス様・・・。浅ましい女と笑って下さいまし。わたくしは、心優しい女ではございませんでしたが、貴方様の事は心からお慕いしておりましたわ。」
エメラインのそのセリフを聞いて、私の喉がヒュッと鳴った。知っている、このセリフ。そしてその続きも。
トラヴィスの顔色も変わった。
「貴方様の事はあきらめましょう・・・でも、あの女だけは許しませぬっ!」
「ぐっ!」
トラヴィスが弾かれる様に後ろに倒れた。捕縛魔術が無理やり解かれたのだ。そして、エメラインの横に居たクラークとディーンも、エメラインの魔力によって振りほどかれ、数メートルも後ろに吹っ飛ばされた。
「うわっ!」
エメラインの憎しみの籠った目が真っすぐ私の目を射抜く。そして彼女はニヤリと笑うと、私に向かって手を振り上げた。
(こ、これってやっぱり、ヒロインが死ぬ方のバッドエンドと同じ!)
トラヴィス・ルートの最悪エンドである。エメラインの手から放たれた火球は、ヒロインの胸を貫き、ヒロインはトラヴィスの腕に抱かれながら目を閉じる。チャ~ララ~と悲し気なエンディングミュージックが流れ、エンドマークが表示される。
(じょ、冗談じゃないよ!)
パニックの私の前に、クリフが両手を広げた。ヘロヘロなのに、まだ私を庇おうと言うのだ!。ここからは、考えるより先に身体が動いた。私は渾身の力でクリフを突き飛ばした。
「アリアナ!」
いつものクリフなら無理だったろうけど、ヘロヘロのクリフなら、私の力でもなんとかなったのだ。
エメラインの火球はもう私の目の前にあった。
「アリアナ!」
ディーンの声。
「アリアナ様っ!」
これはリリー。来てくれてたんだ。
(ああ、バッドエンド)
こういう時ってスローモーションになるってほんとだったのね。私は覚悟を決めて燃え盛る炎の球を見つめた。
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