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第6章 悪役令嬢は利用されたくない
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「これ以上何を?。やはりアリアナを研究材料にするつもりか!」
「ち、違います!。あ、あのですね、私はアリアナ嬢を心配しているのです。」
(え?)
「どういう事か説明をしてくれたまえ。」
トラヴィスが口を挟んだ。クラークでは冷静に対処できないと思ったのだろう。
ヘルダー伯爵もそう思ったのか、私達では無くトラヴィスの方を向いて話を続けた。
「今までの研究から見るとありえないのですよ。魔力の『脈』が存在しない上に魔力がゼロのアリアナ嬢が、ここまで元気でいる事が。普通ならば、身体のあちこちに不具合が出ている筈なのです。」
「そ、そうなんですか・・・?」
身体に不具合とか言われると急に不安になって来る。私ってば知らない内に変な病気になってるんだろうか・・・。
なんとなく自分の体を見回してしまう。
「けれど、そこまでの不調はアリアナ嬢からは感じられない。ご自身ではどうですか?。息苦しいとか、どこか身体が痛いとかの症状はございませんか?」
ヘルダー伯爵の言葉にクラークの瞳が揺れた。
(お兄様・・・?)
やっぱり彼はヘルダー伯爵と会ってから、ずっと様子がおかしい。
(やっぱり何か知ってるんだ。)
でも私はあえてクラークには何も聞かず、ヘルダーにまっすぐ目を向けた。
「何処かが痛かったり、苦しいという事はございません。ただ・・・見ての通り同年代の方に比べて身体は小さいですし、体力も無いです。ちょっとした事で良く風邪をひいたりします。」
「う~む。」
ヘルダー卿は顎に指で挟んで、眉間にしわを寄せた。
「魔力が極端に少なかったり、『脈』が細い方の症状に近いです・・・が、アリアナ嬢に関してはそれには当てはまらないと思います。」
「何故だ?アリアナ嬢に魔力が無いなら、当然の様に思えるが?。」
トラヴィスが怪訝そうに聞いた。
「トラヴィス殿下。魔力が少なくても『脈』がしっかりしていれば、身体に不調は起きません。魔術を使う事は出来ないでしょうがね。今まで魔力無しと言われてきた方々は、ほとんどがこのパターンです。ですがアリアナ嬢の場合は『脈』が全く機能していない。なのに、ある程度は普通に生活出来ています。これはおかしい。」
(そ、そんなに『アリアナ』の身体っておかしいの!?)
どんどん不安が増してくる。
「とはいえ、これで魔力圧の影響を受けない理由が分かりました。相手の魔力は『脈』を通じて身体に入ってきますからね。『脈』が切れてる以上、圧を感じる事は無いでしょうから」
伯爵は納得した様に頷いた。
「な、なるほど・・・。」
「それに、一番不思議な事があります。彼女の場合、魔力と精神の大きさの説明がつかないのです。」
「魔力と精神・・・ですか?」
そこでハッと思い出した。
(そ、そういえば、さっきも精神がどうのこうの言ってたけど・・・。よく考えたら、『アリアナ』の体の中にアリアナと私の二人のいる事がばれたらマズく無いか?)
私の内心の焦りには気づいているのかいないのか、ヘルダー伯爵はまるで授業の様に説明を続けた。
「そもそも魔力学会の定説としては魔力の量が精神の大きさと比例するとされているのです。ですので私の『目』から視ても、魔力量の多い殿下やクラーク殿の精神はとても大きく映ります。」
いつの間に伯爵はトラヴィスやクラークの精神まで視たのだろう。結構抜け目のない人のようだ。
「『脈』が壊れている以上、アリアナ嬢は魔力がゼロのはずです。ところがですねぇ、視たところアリアナ嬢の精神はとても大きいのですよ!。正直、私が今まで見た方達の中でも破格です。これで魔力が無いとは信じられません。しかも驚くべきことに、アリアナ嬢には精神が二つ存在するようなのです!。珍しいなんてものじゃない。前代未聞です!。」
ヘルダー伯爵は再び興奮したように息を荒くした。
(と、とっくにバレてた・・・)
私は心の中でがっくりと膝を付いた。
「ち、違います!。あ、あのですね、私はアリアナ嬢を心配しているのです。」
(え?)
「どういう事か説明をしてくれたまえ。」
トラヴィスが口を挟んだ。クラークでは冷静に対処できないと思ったのだろう。
ヘルダー伯爵もそう思ったのか、私達では無くトラヴィスの方を向いて話を続けた。
「今までの研究から見るとありえないのですよ。魔力の『脈』が存在しない上に魔力がゼロのアリアナ嬢が、ここまで元気でいる事が。普通ならば、身体のあちこちに不具合が出ている筈なのです。」
「そ、そうなんですか・・・?」
身体に不具合とか言われると急に不安になって来る。私ってば知らない内に変な病気になってるんだろうか・・・。
なんとなく自分の体を見回してしまう。
「けれど、そこまでの不調はアリアナ嬢からは感じられない。ご自身ではどうですか?。息苦しいとか、どこか身体が痛いとかの症状はございませんか?」
ヘルダー伯爵の言葉にクラークの瞳が揺れた。
(お兄様・・・?)
やっぱり彼はヘルダー伯爵と会ってから、ずっと様子がおかしい。
(やっぱり何か知ってるんだ。)
でも私はあえてクラークには何も聞かず、ヘルダーにまっすぐ目を向けた。
「何処かが痛かったり、苦しいという事はございません。ただ・・・見ての通り同年代の方に比べて身体は小さいですし、体力も無いです。ちょっとした事で良く風邪をひいたりします。」
「う~む。」
ヘルダー卿は顎に指で挟んで、眉間にしわを寄せた。
「魔力が極端に少なかったり、『脈』が細い方の症状に近いです・・・が、アリアナ嬢に関してはそれには当てはまらないと思います。」
「何故だ?アリアナ嬢に魔力が無いなら、当然の様に思えるが?。」
トラヴィスが怪訝そうに聞いた。
「トラヴィス殿下。魔力が少なくても『脈』がしっかりしていれば、身体に不調は起きません。魔術を使う事は出来ないでしょうがね。今まで魔力無しと言われてきた方々は、ほとんどがこのパターンです。ですがアリアナ嬢の場合は『脈』が全く機能していない。なのに、ある程度は普通に生活出来ています。これはおかしい。」
(そ、そんなに『アリアナ』の身体っておかしいの!?)
どんどん不安が増してくる。
「とはいえ、これで魔力圧の影響を受けない理由が分かりました。相手の魔力は『脈』を通じて身体に入ってきますからね。『脈』が切れてる以上、圧を感じる事は無いでしょうから」
伯爵は納得した様に頷いた。
「な、なるほど・・・。」
「それに、一番不思議な事があります。彼女の場合、魔力と精神の大きさの説明がつかないのです。」
「魔力と精神・・・ですか?」
そこでハッと思い出した。
(そ、そういえば、さっきも精神がどうのこうの言ってたけど・・・。よく考えたら、『アリアナ』の体の中にアリアナと私の二人のいる事がばれたらマズく無いか?)
私の内心の焦りには気づいているのかいないのか、ヘルダー伯爵はまるで授業の様に説明を続けた。
「そもそも魔力学会の定説としては魔力の量が精神の大きさと比例するとされているのです。ですので私の『目』から視ても、魔力量の多い殿下やクラーク殿の精神はとても大きく映ります。」
いつの間に伯爵はトラヴィスやクラークの精神まで視たのだろう。結構抜け目のない人のようだ。
「『脈』が壊れている以上、アリアナ嬢は魔力がゼロのはずです。ところがですねぇ、視たところアリアナ嬢の精神はとても大きいのですよ!。正直、私が今まで見た方達の中でも破格です。これで魔力が無いとは信じられません。しかも驚くべきことに、アリアナ嬢には精神が二つ存在するようなのです!。珍しいなんてものじゃない。前代未聞です!。」
ヘルダー伯爵は再び興奮したように息を荒くした。
(と、とっくにバレてた・・・)
私は心の中でがっくりと膝を付いた。
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