モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第6章 悪役令嬢は利用されたくない

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(・・・ヤバい・・ヤバいでしょ?!。ちょっとトラヴィスねーさん、なんとか誤魔化して・・・)

そう思って急いでトラヴィスに目配せしたが、

「アリアナ嬢に精神が二つある事は、私も以前確認している。」

(おおおい!認めちゃってるよ!?)

なんと伯爵に話を合わせてるじゃ無いか!さらに、

「彼女に精神が二つある事で、合わせて大きな精神となっているという事なのか?」

伯爵に質問までした。

「いえいえ!。小さい方の精神は関係ございません。問題にならない程小さいので。もう一つの精神がとんでも無く大きいのです。・・・そうですね・・・恐らく歴史上における大神官、大魔術師、大聖女並みではないかと!。」

(な、何?その比較例。ファンタジー過ぎる)

正直面食らってしまって言葉が出ない。クラークも目を伏せて黙ったままだ。

トラヴィスとヘルダー伯爵は話を続ける。

「なのに、アリアナ嬢には魔力が無い。」

「そうです。これは、かなり特異な現象であると言えます。ですから、もう一度視させていただきたいのですよ。もしかしたら、私の新説を裏付ける様な発見が・・・。」

「念のために言っておくが、論文には書かせないよ。」

トラヴィスの目が光る。

「わっ、分かっております。」

ヘルダー卿は額の汗を袖で拭った。

「し、しかしですねぇ、アリアナ嬢には、なんらかの魔力以外の力が身体を巡っている事は確かだと思うのです。」

「何故?」

「でなければ、身体を維持する事が出来ないと思うのです。私達の体は物理的な物だけで成り立っている訳ではありません。まず有機物で出来た肉体に精神が宿っていないと人は人となりえません。そして、精神から発せられる力が『脈』を通る事で『魔力』となり、さらに身体を循環する事で、心や体の健康を保つ事が出来るのです。」

「えっと、すみません!。魔力って『脈』を通るから出来るのですか!?」

思わず疑問に思って聞いてしまった。

「そこなのですよ!。」

伯爵の細い目がキラリと光った。

「実は、これが私の新しい説なのです!。我々『目』を持つ者が魔力を感知する時、それは精神から感知している訳ではなく、『脈』の中を流れる魔力を視ていると思うのですよ!」

「ほう、それは面白いな。」

トラヴィスが感心した様に声をあげた。

「私は魔力の有無や、ある程度の強弱を測る事は出来るが、卿の様に『脈』を視る事は出来ない。ぼんやりした力の大きさを感じるだけなのだが・・・。しかもその魔力の大きさは精神の大きさとよく似ているから、精神の力が魔力であると思っていたが・・・。」

「ええ、そうなのです!いままで『目』を持つ者は殿下と同じ考えでした。ですから魔力=精神と言う説が生まれたのです。確かにこの説はある程度は正しい。しかしですねぇ、それだと説明できないことがたまにあるのですよ。精神が大きいのに魔術が使えなかったり、精神が小さいわりには魔力量が多かったり。通説に当てはまらない人がいるのです。私はこれには『脈』が関係していると私は思っているのです。」

「というと?」

「まず、精神の力は『脈』を通る事で魔力となります。『脈』が正常であれば、精神の力=魔力となるわけです。この場合、魔力量は精神の大きさに比例します。」

(ふむふむ)

「たまに私でも感知できない程、魔力が少ない方が居るのですが、生まれつき身体が弱かったり、精神的に不安定な方が多いです。その場合『精神』が極端に小さい事もあるのですが、実は『脈』に問題がある事の方が多いのです。つまり精神の大小よりも、その力が滞り無く循環している事が生きていく上で大事と言う事なのですよ!。分かりましたかね!」

ヘルダー伯爵の勢いが増してきた。そろそろトラヴィスに注意して欲しいくらいだけど、彼は考え込むようにしている。

でも今の説明を聞いて、伯爵の言いたい事が分かってきた。

(う~ん、なるほど・・・ということは・・・)

私は伯爵に目を向けて、

「要するに、私は精神の力が『脈』を通らないから魔力が無い。さらに、魔力が無いくせに精神だけが大きいのも不思議である。しかも魔力が身体を巡っていないと、メンタルがおかしかったり体に不調が出るはずなのに、普通に生活出来ている。だから、魔力以外の力が身体に影響している可能性がある。・・・こういう事で良いですか?」

「素晴らしい!アリアナ嬢は学者向きですね!。卒業したら我が魔法省に入って頂きたいぐらいだ。」

小鼻を膨らませて熱っぽく言われたが、どうにも喜べない。

(絶対、研究対象にするつもりでしょうが・・・)
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