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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
10(リリー)
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アリアナ様が目を覚ました。ああ、精神魔術が解けたんだ。そう思って私は心の底から安堵していた。
だけど、
(アリアナ様・・・よね?)
目覚めたアリアナ様は・・・私の知っているアリアナ様と何処か違ってる様な気がした。そんな事、あるはず無いのに。
(気のせい・・・?私が、あんな事を思ったから)
そうだ、私はアリアナ様に謝らなくては。
こんな事になったのは、自分のせいなのかも・・・
(あんな酷い事を考えたから)
自分がこんなにも浅ましい人間だったとは思わなかった。
「誰だお前は・・・」
考えに沈んでいたら、クリフ様の声が響いた。
私は驚いてしまった。この人はこんなにも刺々しい物言いが出来る人だったのだろうか?
私の知っているクリフ様はいつもアリアナ様のそばで笑っていたから・・・
「お前はアリアナ嬢じゃないだろう。彼女は何処へ行った?」
「わたくしはアリアナよ」
「ありえない!」
二人のやりとりを聞いて、私の中の違和感が増す。
(クリフ様の言う通りだ。本当に違う、今までのアリアナ様じゃない!)
アリアナ様のあんな表情は見た事無い。喋り方だって全然違う。それにいつも彼女から感じられる強い力が感じられない。
まるで見た目はそのままで、違う人間が喋っている様だ。
私はすっかり混乱してしまった。だけど混乱しつつも、微かに気付いた事があった。
(全然違うわけじゃないわ・・・)
それはいつものアリアナ様から感じる温かさが、彼女からも感じられたからだ。
(そう、とても似ている)
「だいたい、淑女の寝室に入るなんて紳士のする事では無くてよ。他の方達もさっさと隣のリビングに行ってくれなくて?。わたくし着替えたいの」
アリアナ様が言った言葉を聞いて、
(ほら、やっぱり)
そう思った。
言い方は少しきついけれど、私達に対して「リビングで休みなさい」と言っている様に思えた。
姿は全く同じで、だけど違う人格で、なのに優しさが似ている・・・?
(何が起きているのかしら・・・?)
こんなややこしい事、どう解釈すれば良いの?。自分でも理解出来なかった。
「ええと、皆・・と、とりあえずリビングに行こう。アリアナ嬢は着替えたいらしいから・・・」
ぐるぐると考えていたら、有難い事にトラヴィス殿下がそう促してくれた。
部屋を出る時にアリアナ様が、
「お兄様、ステラにわたくしの着替えを手伝うように言って下さる?。・・・ああ、でもわたくし喉が渇きましたわ。先にステラにお茶を入れるように伝えて下さいな。ついでに皆様の分のお茶も頼んでも良くてよ」
(ええっと・・・これは皆にお茶を入れる様に頼んでくれたのよね?)
分かりにくいけど、この方はの優しさは、やっぱり私の知っているアリアナ様とよく似ている。
私達は揃ってぞろぞろと隣のリビングへと移動した。
「・・・では、クラーク。今のうちに聞きたい事が沢山あるのだが?」
座ったと同時にトラヴィス様が腕を組みそう言った。
「今のアリアナは、私達の知っているアリアナでは無いようだ。だが、君やディーンとパーシヴァルは彼女が元々のアリアナだと言う。そうだな?」
「・・・はい、そうです」
クラーク様はリビングに来てからは、少し落ちついたよう。
「アリアナは・・・馬車に横転事故で以前の記憶を失いました。・・・だけど今のアリアナは・・・前の記憶を思い出したようで・・・」
「記憶を思い出した!?」
クリフ様が立ち上がって声を荒げた。
「それだけで、あんな別人のようになるものか!」
(私もそう思う。単なる記憶の有無では説明できない程、今のアリアナ様は違う人に思える)
優しさや・・・どこか似ている所がある。だけど別人。
私にはその解釈が頭に浮かんだ。
クラーク様はクリフ様の言葉に答えることなく、押し黙っている。
トラヴィス殿下が溜息をついて、
「クリフ、とりあえず落ち着け。クラーク、何か事情もあるのだろうから、言える範囲で答えてくれ。まず、アリアナはどうして魔力を流しても中毒を起こさない?それはいつからそうなった?」
クラーク様の額には汗が浮かんでいたが、観念した様に一度目を瞑ると、
「アリアナが産まれた時からです。彼女は生まれつき、そういう体質なのです・・・少し長い話になります」
そう言って、クラーク様は話を続けた。
「アリアナは生まれた時に医者から長くは生きられないと言われたそうです。未熟児で泣く体力すら無かったと聞きました」
たんたんと話すクラーク様の顔が辛そうに陰る。
「両親はそんなアリアナを助けようと、色んな治療を試みたそうです。それこそ回復魔術を施したり、高名な医者に診て貰ったり。だけどあまり効果は無かったそうです」
そこで、クラーク様は私の方をふと見て笑みを浮かべた。
「あの頃、リリーのように光の魔力を持つ人がいれば、アリアナの助けになってくれたろうにね」
「クラーク様・・・」
「だけど、その頃には光の魔力の持ち主は現れていなかった。困り果てた両親はアリアナの精神を視て貰う事にしたのです。ヘルダー伯爵や殿下の様な『目』の持ち主に。それが、グスタフ・リガーレ公爵です」
「え!?」
「ええっ?」
トラヴィス殿下とディーン様が同時に驚きの声をあげた。二人とも何故か凄く複雑そうな顔で口元を押さえている。
(どうしたのかしら・・・?そう言えば、アリアナ様はリガーレ公爵を苦手としていたような・・・)
夏の別荘での事を少し思い出した。
「リガーレ公爵はヘルダー伯爵と同じ事を言ったそうです。アリアナの身体には魔力を巡らすすべが無いと。『脈』と言う言葉は使わなかったそうですがね。だから、アリアナには魔力が無い。そして何よりも彼女の精神がまるで欠片の様に小さいのだと・・・。その影響が身体にまで及んでいるというのが公爵の見解でした。」
「そんな・・・」
「可哀そうに・・・」
ミリアが眉を寄せ、レティシアが両手を口元に寄せた。
(欠片の様な精神・・・)
それは私の知っているアリアナ様には全く似つかわしくない事だと思った。
だけど、
(アリアナ様・・・よね?)
目覚めたアリアナ様は・・・私の知っているアリアナ様と何処か違ってる様な気がした。そんな事、あるはず無いのに。
(気のせい・・・?私が、あんな事を思ったから)
そうだ、私はアリアナ様に謝らなくては。
こんな事になったのは、自分のせいなのかも・・・
(あんな酷い事を考えたから)
自分がこんなにも浅ましい人間だったとは思わなかった。
「誰だお前は・・・」
考えに沈んでいたら、クリフ様の声が響いた。
私は驚いてしまった。この人はこんなにも刺々しい物言いが出来る人だったのだろうか?
私の知っているクリフ様はいつもアリアナ様のそばで笑っていたから・・・
「お前はアリアナ嬢じゃないだろう。彼女は何処へ行った?」
「わたくしはアリアナよ」
「ありえない!」
二人のやりとりを聞いて、私の中の違和感が増す。
(クリフ様の言う通りだ。本当に違う、今までのアリアナ様じゃない!)
アリアナ様のあんな表情は見た事無い。喋り方だって全然違う。それにいつも彼女から感じられる強い力が感じられない。
まるで見た目はそのままで、違う人間が喋っている様だ。
私はすっかり混乱してしまった。だけど混乱しつつも、微かに気付いた事があった。
(全然違うわけじゃないわ・・・)
それはいつものアリアナ様から感じる温かさが、彼女からも感じられたからだ。
(そう、とても似ている)
「だいたい、淑女の寝室に入るなんて紳士のする事では無くてよ。他の方達もさっさと隣のリビングに行ってくれなくて?。わたくし着替えたいの」
アリアナ様が言った言葉を聞いて、
(ほら、やっぱり)
そう思った。
言い方は少しきついけれど、私達に対して「リビングで休みなさい」と言っている様に思えた。
姿は全く同じで、だけど違う人格で、なのに優しさが似ている・・・?
(何が起きているのかしら・・・?)
こんなややこしい事、どう解釈すれば良いの?。自分でも理解出来なかった。
「ええと、皆・・と、とりあえずリビングに行こう。アリアナ嬢は着替えたいらしいから・・・」
ぐるぐると考えていたら、有難い事にトラヴィス殿下がそう促してくれた。
部屋を出る時にアリアナ様が、
「お兄様、ステラにわたくしの着替えを手伝うように言って下さる?。・・・ああ、でもわたくし喉が渇きましたわ。先にステラにお茶を入れるように伝えて下さいな。ついでに皆様の分のお茶も頼んでも良くてよ」
(ええっと・・・これは皆にお茶を入れる様に頼んでくれたのよね?)
分かりにくいけど、この方はの優しさは、やっぱり私の知っているアリアナ様とよく似ている。
私達は揃ってぞろぞろと隣のリビングへと移動した。
「・・・では、クラーク。今のうちに聞きたい事が沢山あるのだが?」
座ったと同時にトラヴィス様が腕を組みそう言った。
「今のアリアナは、私達の知っているアリアナでは無いようだ。だが、君やディーンとパーシヴァルは彼女が元々のアリアナだと言う。そうだな?」
「・・・はい、そうです」
クラーク様はリビングに来てからは、少し落ちついたよう。
「アリアナは・・・馬車に横転事故で以前の記憶を失いました。・・・だけど今のアリアナは・・・前の記憶を思い出したようで・・・」
「記憶を思い出した!?」
クリフ様が立ち上がって声を荒げた。
「それだけで、あんな別人のようになるものか!」
(私もそう思う。単なる記憶の有無では説明できない程、今のアリアナ様は違う人に思える)
優しさや・・・どこか似ている所がある。だけど別人。
私にはその解釈が頭に浮かんだ。
クラーク様はクリフ様の言葉に答えることなく、押し黙っている。
トラヴィス殿下が溜息をついて、
「クリフ、とりあえず落ち着け。クラーク、何か事情もあるのだろうから、言える範囲で答えてくれ。まず、アリアナはどうして魔力を流しても中毒を起こさない?それはいつからそうなった?」
クラーク様の額には汗が浮かんでいたが、観念した様に一度目を瞑ると、
「アリアナが産まれた時からです。彼女は生まれつき、そういう体質なのです・・・少し長い話になります」
そう言って、クラーク様は話を続けた。
「アリアナは生まれた時に医者から長くは生きられないと言われたそうです。未熟児で泣く体力すら無かったと聞きました」
たんたんと話すクラーク様の顔が辛そうに陰る。
「両親はそんなアリアナを助けようと、色んな治療を試みたそうです。それこそ回復魔術を施したり、高名な医者に診て貰ったり。だけどあまり効果は無かったそうです」
そこで、クラーク様は私の方をふと見て笑みを浮かべた。
「あの頃、リリーのように光の魔力を持つ人がいれば、アリアナの助けになってくれたろうにね」
「クラーク様・・・」
「だけど、その頃には光の魔力の持ち主は現れていなかった。困り果てた両親はアリアナの精神を視て貰う事にしたのです。ヘルダー伯爵や殿下の様な『目』の持ち主に。それが、グスタフ・リガーレ公爵です」
「え!?」
「ええっ?」
トラヴィス殿下とディーン様が同時に驚きの声をあげた。二人とも何故か凄く複雑そうな顔で口元を押さえている。
(どうしたのかしら・・・?そう言えば、アリアナ様はリガーレ公爵を苦手としていたような・・・)
夏の別荘での事を少し思い出した。
「リガーレ公爵はヘルダー伯爵と同じ事を言ったそうです。アリアナの身体には魔力を巡らすすべが無いと。『脈』と言う言葉は使わなかったそうですがね。だから、アリアナには魔力が無い。そして何よりも彼女の精神がまるで欠片の様に小さいのだと・・・。その影響が身体にまで及んでいるというのが公爵の見解でした。」
「そんな・・・」
「可哀そうに・・・」
ミリアが眉を寄せ、レティシアが両手を口元に寄せた。
(欠片の様な精神・・・)
それは私の知っているアリアナ様には全く似つかわしくない事だと思った。
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