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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
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ジョーは行動力もあるし意外と洞察力もある。普段の言動からそうは見えないけど、実は頭も良い。いつもの彼女なら自分も含めて物事を俯瞰して見る事が出来るのに。
(なのにケイシーが絡むと態度が頑なになる)
だからゲームでは、ヒロインの敵になった。間違ってると分かっていてもそうならずにいられなかったのだ。
ジョーは一瞬アリアナの事を睨んだが、フッと諦めた様に息を吐いて、
「別に、隠そうとしたわけじゃ無いわよ。あえて言わなかっただけで・・・。今日の事はケイシー先輩に報告に行こうと思ってました。これで良い?」
トラヴィスが微かに眉をひそめた。
「ケイシーにこの事を話すつもりだったのか?」
「駄目?。ケイシー先輩はミリアの兄ですよ、トラヴィス殿下も懇意にしているじゃないですか。・・・ケイシー先輩は最近の学園の騒動やトラヴィス殿下の事を心配してます。なのに、殿下が何も話してくれないから、ケイシー先輩は少し落ち込んでいるんですよ」
見透かされたのに焦る様子も無く、しれっとそう言った。
「ここでの事は他言無用に願いたいがね」
「ケイシー先輩は殿下の友人でしょ!?」
(ひょえー!これが恋の力かねぇ・・・。)
いつも飄々としているジョーが、トラヴィスに食って掛かるなんて。
「ちょっとジョー!本当にあなたらしくないわよ」
ミリアが慌てて割って入る。
「何よ?まさか、私も精神魔術にかけられているとでも思ってるの?お生憎様。私は完全に正気よ!ケイシー先輩は誰よりもこの国の事を考えているし、殿下にも忠誠を誓っているわ!。先輩をカヤの外にしないで!。それに私と先輩は光の魔力の・・・」
ジョーはそこまで言って、ハッと口を押えた。
「光の魔力?」
トラヴィスが怪訝そうな顔をする。
「光の魔力がどうしたと言うんだ?」
ジョーは口をつぐんだ。明らかに失敗したと言う顔をしている。
「ジョージア嬢、何を隠している?」
トラヴィスの目が鋭さを増した。ジョージアは少しの間口をつぐんでいたけど、隠し切れないと思ったようだ。軽く肩をすくめて、
「・・・光の魔力の持ち主を知っているわ。聖女候補の3人以外で」
「何!?」
(うそっ!?)
驚いた!
聖女候補以外という事は・・・リリー、マーリン、エメライン王女以外でって事よね?。
(え・・・っと、そんな人物、ゲーム内に居たっけ?)
私の場合やり込み方が偏っていたし3部までは辿り着けなかったから、出会えてなかったのかも?。そう思ったが、トラヴィスの顔を見て彼が本気で驚いている事に気付いた。
(ねーさんも知らないんだ!?)
正直かなり意外だった。トラヴィスねーさんは前世でほぼ完全コンプリートしていたのだから。
(これってゲームでは出てこなかった人物ってこと?。でも、光の魔力なんて重要なファクターを持つ人物が、出てこないなんて事ある?)
それとも、ねーさんがクリアできなかった3部の真のエンドに関係しているのだろうか?
ジョーが首を振りながら話を続ける。
「知ってはいるけど、本人の了承を得ていないから誰かは言えない。それに、これは私じゃ無くてケイシー先輩が見つけた事だから」
「光の魔力の持ち主がいるなら、リリーと協力してアリアナを救える。それなのに言えないと?」
トラヴィスの声が威圧感を増した。だけど、
「本人は公表したがっていないのよ。だから協力してくれるかどうか確認してくるわ。でもそれはケイシー先輩にも事情を話す事が条件よ」
でなければやらないと、ジョーの顔に挑戦的な笑みが浮かぶ。トラヴィスは眉を寄せたが、
「良いだろう。だが、くれぐれも他に情報を漏らさない様に注意してくれ」
ジョーの顔がパッと明るくなる。
「分かったわ!じゃあ今から行って来る。アリアナ様の事もきっと助けてみせるから」
そう言うなり、バタバタと部屋を出て行ってしまった。やはり行動力は凄くあるのだ。
ミリアは額を押さえて溜息をつきながら、
「申し訳ありません、殿下。ジョーはケイシー先輩の事になると、少し常軌を逸してるところがあって・・・」
「構わない。ケイシーは信用できる男だからね。だけど、もう一人の光の魔力の持ち主が誰なのかは気になる所だが・・・」
(だよなぁ)
エメラインは襲撃のせいで聖女候補を脱落。マーリンは魔力量が少ない。それを考えたら、魔力の強さ次第ではリリーと並んで聖女候補って事になる。
(誰であっても、ゲームにも出ていた人だと思うんだけど・・・)
パーシヴァルが手を上げて皆の注意をひいた。
「ジョーの事も一応解決・・・かな?。じゃ、僕の話を続けて良い?」
(うん?。まだあるの?)
「もう一人、話しを聞きたい人が居るんだ。・・・ちゃんと答えてくれると良いんだけど」
パーシヴァルの顔から笑みが消えた。そして、
「どうしてアリアナ嬢が眠らされた事を、自分の責任だと思ったのかな?・・・リリー嬢」
アリアナの視点がリリーに向く。
リリーの顔は青白く、その顔からは表情が消えていた。
(なのにケイシーが絡むと態度が頑なになる)
だからゲームでは、ヒロインの敵になった。間違ってると分かっていてもそうならずにいられなかったのだ。
ジョーは一瞬アリアナの事を睨んだが、フッと諦めた様に息を吐いて、
「別に、隠そうとしたわけじゃ無いわよ。あえて言わなかっただけで・・・。今日の事はケイシー先輩に報告に行こうと思ってました。これで良い?」
トラヴィスが微かに眉をひそめた。
「ケイシーにこの事を話すつもりだったのか?」
「駄目?。ケイシー先輩はミリアの兄ですよ、トラヴィス殿下も懇意にしているじゃないですか。・・・ケイシー先輩は最近の学園の騒動やトラヴィス殿下の事を心配してます。なのに、殿下が何も話してくれないから、ケイシー先輩は少し落ち込んでいるんですよ」
見透かされたのに焦る様子も無く、しれっとそう言った。
「ここでの事は他言無用に願いたいがね」
「ケイシー先輩は殿下の友人でしょ!?」
(ひょえー!これが恋の力かねぇ・・・。)
いつも飄々としているジョーが、トラヴィスに食って掛かるなんて。
「ちょっとジョー!本当にあなたらしくないわよ」
ミリアが慌てて割って入る。
「何よ?まさか、私も精神魔術にかけられているとでも思ってるの?お生憎様。私は完全に正気よ!ケイシー先輩は誰よりもこの国の事を考えているし、殿下にも忠誠を誓っているわ!。先輩をカヤの外にしないで!。それに私と先輩は光の魔力の・・・」
ジョーはそこまで言って、ハッと口を押えた。
「光の魔力?」
トラヴィスが怪訝そうな顔をする。
「光の魔力がどうしたと言うんだ?」
ジョーは口をつぐんだ。明らかに失敗したと言う顔をしている。
「ジョージア嬢、何を隠している?」
トラヴィスの目が鋭さを増した。ジョージアは少しの間口をつぐんでいたけど、隠し切れないと思ったようだ。軽く肩をすくめて、
「・・・光の魔力の持ち主を知っているわ。聖女候補の3人以外で」
「何!?」
(うそっ!?)
驚いた!
聖女候補以外という事は・・・リリー、マーリン、エメライン王女以外でって事よね?。
(え・・・っと、そんな人物、ゲーム内に居たっけ?)
私の場合やり込み方が偏っていたし3部までは辿り着けなかったから、出会えてなかったのかも?。そう思ったが、トラヴィスの顔を見て彼が本気で驚いている事に気付いた。
(ねーさんも知らないんだ!?)
正直かなり意外だった。トラヴィスねーさんは前世でほぼ完全コンプリートしていたのだから。
(これってゲームでは出てこなかった人物ってこと?。でも、光の魔力なんて重要なファクターを持つ人物が、出てこないなんて事ある?)
それとも、ねーさんがクリアできなかった3部の真のエンドに関係しているのだろうか?
ジョーが首を振りながら話を続ける。
「知ってはいるけど、本人の了承を得ていないから誰かは言えない。それに、これは私じゃ無くてケイシー先輩が見つけた事だから」
「光の魔力の持ち主がいるなら、リリーと協力してアリアナを救える。それなのに言えないと?」
トラヴィスの声が威圧感を増した。だけど、
「本人は公表したがっていないのよ。だから協力してくれるかどうか確認してくるわ。でもそれはケイシー先輩にも事情を話す事が条件よ」
でなければやらないと、ジョーの顔に挑戦的な笑みが浮かぶ。トラヴィスは眉を寄せたが、
「良いだろう。だが、くれぐれも他に情報を漏らさない様に注意してくれ」
ジョーの顔がパッと明るくなる。
「分かったわ!じゃあ今から行って来る。アリアナ様の事もきっと助けてみせるから」
そう言うなり、バタバタと部屋を出て行ってしまった。やはり行動力は凄くあるのだ。
ミリアは額を押さえて溜息をつきながら、
「申し訳ありません、殿下。ジョーはケイシー先輩の事になると、少し常軌を逸してるところがあって・・・」
「構わない。ケイシーは信用できる男だからね。だけど、もう一人の光の魔力の持ち主が誰なのかは気になる所だが・・・」
(だよなぁ)
エメラインは襲撃のせいで聖女候補を脱落。マーリンは魔力量が少ない。それを考えたら、魔力の強さ次第ではリリーと並んで聖女候補って事になる。
(誰であっても、ゲームにも出ていた人だと思うんだけど・・・)
パーシヴァルが手を上げて皆の注意をひいた。
「ジョーの事も一応解決・・・かな?。じゃ、僕の話を続けて良い?」
(うん?。まだあるの?)
「もう一人、話しを聞きたい人が居るんだ。・・・ちゃんと答えてくれると良いんだけど」
パーシヴァルの顔から笑みが消えた。そして、
「どうしてアリアナ嬢が眠らされた事を、自分の責任だと思ったのかな?・・・リリー嬢」
アリアナの視点がリリーに向く。
リリーの顔は青白く、その顔からは表情が消えていた。
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