モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない

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(ゆゆゆ、幽霊!?)

んなわけは無い。だってここは私の意識世界だ。

でも、その私の世界になんでこの人が居る?

しかも、その人物はぼんやりとしていて向こう側が薄く空けて見えた。彼女は動くことなく、ただ私の方を見ている。

私は恐る恐る、

(だ、誰ですか!?)

と聞いた。

だけど女性は何も言わず目を閉じると、そのまま霧が散る様に消えてしまった。


呆然としたまま思わず唾を飲み込む。

(い、意識世界でも、幽霊って出るの?)

そうとしか思えない出来事だった。それにしても・・・

(綺麗な女の人だった・・・)

長いストレートの金髪にスカイブルーの瞳。誰かに似ていたような気もしたけど・・・


首筋を撫でるような気配に私は後ろを振り返った。

そこには私を捕えている鎖を握った黒い影が、相変わらず部屋の隅に立っている。

(見るだけで嫌な気分になるんだよな・・・)

それに鎖がまた太くなったようだ。

(ちぇ・・・)

私は黒い影に背を向けて、ソファに横になった。




どれくらい経ったのか、私は誰かの声で目を覚ました。

(あれ?)

知らない間に眠っていたらしい。

起き上がってスクリーンを見ると、クラークとトラヴィスが映っている。

「気分はどうだ?アリアナ嬢」

「問題はありませんわ、殿下」

どうやら3人はリビングに居る様だ。私は少し混乱した。

(え?今っていつ?)

ついさっきまで、アリアナは寝室で寝ていたと思ったのに・・・。

自分が眠ってしまってからの時間感覚が無い。3人の会話を聞くうちに、どうやらアリアナが目覚めてから丸一日経っているようで、という事は・・・


(うっそー!私、昨日のお昼からずっと眠ってたって事!?)


意識しかないから、疲れた訳でも無いだろうに・・・。

(危ないな・・・下手に眠るといつ起きれるのか分からないぞ)

じゃらっと鎖の音が鳴る。手足の枷も、それに繋がっている鎖も眠る前のまま・・・いや、少し重みを増している気がした。それに黒い影も少し大きくなったように思うのは気のせいか?

(うかつだった・・・。あの影は私を眠らせたいんだった)

自分から相手の思惑に乗ってどうすんのよ!と、頭を抱えていたら、

「では・・・やはりノエルは精神魔術にかけられていたんですね」

クラークの声が聞こえた。

「ああ、モーガンと接触した所を二人とも捕える事が出来た。しかし・・・」

(え!モーガン先生を捕まえられたの?)

それは凄い大前進じゃない?

(ノエルに見張りを付けてるって言ってたもんね。さすがトラヴィス、抜かりないじゃん)

だけど、トラヴィスの次の言葉を聞いて、私は愕然とした。

「・・・まさか、モーガン先生も精神魔術の支配下にあったとは」

(え!?)

モーガン先生が精神魔術に!?

(ど、ど、どういう事!?)

「女生徒達やノエルに精神魔術をかけたのはモーガン先生のようです。リリーの聖魔術で解術出来ましたしね。しかし、そのモーガン先生自体が強い精神魔術で操られていたとなると・・・」

クラークが言葉を詰まらせる。トラヴィスは溜息をついて、

「もう一人の術師の正体が掴めなくなると言う事だ」

重い口調でそう言った。

私は唖然としたまま考えを巡らせた。

(えーっとつまり、モーガン先生は私達に精神魔術をかけた術師と仲間だと思ってたけど、そうでは無かったって事?)

モーガン先生の行動は精神魔術で操られていたから彼女の意思では無かった。

(そんな!だって、モーガン先生は闇の組織と繋がってるんでしょ?。今回の事は闇の組織の仕業なんだよね?)

そう考えて、ふと疑問が浮かぶ。

(イーサンは、もう一人の精神魔術師については何も言ってなかった・・・)

彼は闇の組織に属してないとは言え、かなり内部に入り込んでいる。その彼が知らないなんて事あるだろうか?

(イーサンも知らない人物・・・)

背中にぞくっと寒気が走った。


「モーガン先生にかけられた精神魔術の解術は?」

外の世界でアリアナが聞いた。

「相手は魔力が強い上に、魔力増幅の宝珠を使っている。リリーの一人の力では解術出来なかった」

「マーリンとエメライン王女の力は借りれないのですか?」

アリアナの言葉にトラヴィスとクラークは顔を見合わせた。

「実は・・・アリアナ嬢でなければ手を貸して貰えるかと思い、マーリンに頼んではみたのだが、彼女の力では足りなかったのだ。リリーと合わせても解術出来なかった」

「ではエメライン王女は?」

トラヴィスが顔をしかめた。

「我々に協力する気は無いそうだ」

トラヴィスは溜息をつきながら、リビングのソファにドカッと座った。
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