モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない

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「元々エメラインはそう言う性格でね。人の不幸を上から見て楽しむ傾向がある。だからどうしても好きになれなかったのだが・・・。」

(なるほど、私に意地悪してきたのは、精神魔術に操られていただけでは無かったんだ)

彼女の性格はアリアナと違って元から設定通りって事か。

エメラインの精神魔術はイーサンが解いた。あの時の事を思い出してみる。

彼女の中に巣くっていた黒い蛇の様な影。あの顔を背けたくなるような禍々しさ・・・。

(そう言えば、雰囲気が似ているかも)

今、私の意識の部屋にいる黒い影。あれはやはり同じ術者の仕業なのだろう。

不本意ではあるがイーサンが居れば、ぱぱっと精神魔術を解けるんだろうけど、あいつは来てほしくない時に現れるくせに、必要な時は姿を見せない奴だ。

(肝腎な時に、マジで役に立たないな・・・)


トラヴィスはソファで長い脚を組むと、

「こうなったらジョーの言う、もう一人の光の魔力の持ち主とやらに期待するしか無いようだが・・・」

そう言ってアリアナに目を向けた。

「昨日クリフが供給した魔力は切れていないか?。必要なら私が魔力を供給するが・・・」

「ありがとうございます、殿下。・・・クリフ様の魔力はわたくしと、とても相性が良いみたいですわ。それに良く休んだせいか、まだ疲れを感じませんの」

アリアナの声にクラークがホッとした表情を見せる。トラヴィスは、

「そうか。なら良いが、無理をしないように。ディーンもミリアもいるから、いつでも魔力供給が必要なら言ってくれ」

すると、アリアナの固い声が響いた。

「ディーン様の魔力は必要無いですわ」

(へ?)

トラヴィスとクラークも驚いた顔をしている。

「あの方の魔力はわたくしとは相性が悪いですから」

「えっ、でもアリアナどうして・・・」

どうしてそんな事が分かるのか?

多分クラークはそう問いたかったのだと思う。でもアリアナが、

「お兄様。わたくしの言う事を信じて下さいませんの?」

とすねた様な声でそう言うと、クラークはぶんぶんと顔を横に振って、

「僕がアリアナの事を信じないわけが無いだろう!」

と言って納得してしまった。

なんてちょろい兄なんだ。

(ま、アリアナの身体だからね。本人にしか分からんことがあるのだろうけど・・・)

私はソファに深くもたれて大きく息を吐いた。そして、髪を両手でわしわしかき回す。

(アリアナ・・・やっぱりまだディーンが・・・)

なんだか胸がグッと詰まった気がした。



トントン


玄関の扉のノックする音が聞こえた。
,
「私が出よう」

トラヴィスが向かう。

(ああ、そりゃ警戒するよね)

一国の皇太子だと言うのにマメな人だ。

しばらくして、リビングにディーンとクリフ、そしてパーシヴァルが入ってきた。

パーシヴァルはいつもの調子で、にっこり笑い、

「やあ、アリアナ嬢。気分はどう?」

「問題はありませんわ、殿下」

トラヴィスに返したのと全く同じ返事だった。

クリフは、アリアナに顔を向けると、

「具合が良さそうで良かった」

落ち着いた声でそう言った。どうやらアリアナに対するわだかまりは、もう無くなったようだ。

「ありがとうござます、クリフ様。貴方に魔力を供給して頂いたおかげですわ」

アリアナの声も柔らかい。私はなんだかホッとした気分で、

(良かった。二人とも仲良くなったね)

と胸を撫で下ろした。すると、

「アリアナ、あの・・・」

アリアナの視界の外からディーンの声が聞こえた。しかし、

「あら、わたくしとした事が、皆様にお茶を差し上げるのを忘れてましたわ。ステラ!」

ディーンの声に被せる様にそう言うと、アリアナはステラの方へ向かった。

(お、およよ?)

今のはさすがに、あからさまでは?

(やっぱりディーンの事、避けてる・・・)

私からはアリアナは見えないし、アリアナがディーンを見ようとしないので、彼の様子も分からない。

(アリアナってば、どうしたんだろう?)

去年の夏、イルクァーレの滝で二人は和解したはず・・・。

アリアナはディーンに謝って、でもってディーンもそれを受け入れた。あれ以来、私もディーンとちゃんと友達になれたんだ。だけど、

(ふん・・・まぁ、最近は話もしてなかったけどさ・・・)

ちょっとやさぐれた気分で私はソファの上であぐらをかいた。

思い返せば、最近のディーンはマーリンにべったりだ。マーリンが精神魔術にかけられて、クラスからも浮いちゃってるから心配なのは分かる。それにゲーム設定で恋人になってたから、きっとこの世界でもそうなのだろう。

(友情なんて脆いもんだよ・・・)

ディーンと勉強で競うのも、課題について議論するのも楽しかったのに。

私は胡坐のまま天井を向いて、そして気付いた。

(ああ、そっか・・・)

だからアリアナも怒っているのもかもしれない。マーリンが居るのに、ずるずると自分と婚約しているディーンに腹を立てているのかも?

(そうだよ!。マーリンが居るんなら、もう虫除けはいらないじゃん!)

この機会に、アリアナにはっきり断って貰うのも良いかもしれない。

なんだかすっかり、ディーンを無視するアリアナを応援する気持ちになってしまった。私はソファからガバッと立ち上がり、心の声に力を込めた。

(行け!アリアナ。ビシッと言ってやんな!)

すると、アリアナがビクッと身体を震わせた。
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