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第7章 悪役令嬢は目覚めたくない
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「ディーン様。わたくし、貴方が嫌いですわ」
言葉の意味とは裏腹に、彼女の口調には熱が籠っていた。
「うん・・・」
ディーンは何を言われるのか分かっていたかのように、表情を変えなかった。
「貴方は酷い方ですわ。貴方はもう・・・ずっと、わたくしとあの子の事を知ってらした。それなのに婚約したままあの子をご自分に縛り付けた。貴方をお慕いしていたわたくしの気持ちを知っていましたよね?。わたくしがどんな感情を抱いたか、貴方にお分かりになりまして!?」
アリアナが立ち上がり、椅子が倒れる。目覚めて以来、彼女がここまで感情を爆発させたのは初めてだった。
「知っていましてよ。ディーン様が最近マーリンと一緒に居るのは、マーリンからあの子を守る為でしょう!?。貴方が動くのは全てあの子の事!。そこには、わたくしは一欠片も存在していないのよ。昔からそう、貴方はわたくしを見ようともしてくれませんでしたわ!」
アリアナの目が涙で歪む。スクリーンに映るぼやけた世界が彼女の悲しみを表していた。
「別荘の滝で・・・貴方と初めて向き合えたと思えましたの。わたくしの正直な気持ちを伝えて、初めて貴方の心に触れた気がしましたわ。・・・だけど、今の貴方は卑怯でしてよ。わたくしを愛するふりであの子を手元に置こうとするのはやめて!。そんなの嫌っ!許せないっ。貴方なんて大嫌いよ!」
感情を振り絞る様に叫んで、アリアナが床に崩れ落ちた。
「アリアナ!」
クラークがアリアナの肩を抱く。
「お兄様・・・わたくしあの子が好きなのです。大好きなのに憎い・・・。あの子の苦しみや葛藤も知っているのに、なのに羨ましいのですわ。だって、私が人生でたった一つ欲しいと願ったことを、あの子は当たり前のように手に入れてしまう・・・」
「アリアナ・・・」
アリアナはクラークの胸に顔をうめ、涙をこぼした。しんと静まった部屋にアリアナの泣き声だけが響く。
静寂を破ったのは他ならぬディーンであった。
「すまない・・・君が怒るのは当然だと思う。だけど、これだけは言わせて欲しい。私は彼女と君が別人だと疑っていたけど、確信を持っていたわけじゃ無いんだ。だから・・・彼女と話す時は、いつも彼女の中に君を探していた。君とちゃん向き合いたいと思ったから・・・」
アリアナが少し顔を上げた。ディーンは顔を逸らして俯いている。銀色の髪が彼の表情を隠していた。
「だけど、結局君を傷つけた。ごめん・・・」
「・・・」
「婚約は・・・君の言う通りかもしれない。私は、繋がりを無くしたくなかったから・・・」
ディーンは顔を上げてアリアナを見つめた。彼のそんな切なそうな目を、今まで見た事が無かった。
「でもそれは、あの時滝で・・・私はやっと君とちゃんと話せたと思ったから。初めて君の想いを聞く事が出来たって・・・だから、私はまた君とやり直せたらと・・・」
ディーンは痛みに耐える様にグッと右手の拳を握った
「ごめん・・・確かに私は彼女に惹かれていると思う。だから、彼女と君が別の人だと考えたくなかった・・・。それに、君の気持ちを利用して彼女を縛るつもりも無かった。私はただ、『アリアナ』ともう一度、最初から始めたいって思ったんだ。・・・でも、結果は私の独りよがりな感情で、君の気持ちを踏みにじるような形になってしまった・・・。本当にごめん・・・。」
重苦しい空気が流れた。誰も言葉を発する事が出来なかった。
クラークはずっとアリアナを守る様に彼女の肩を抱いていた。
そして・・・
「ずるい方・・・」
アリアナがポツリとそう言った。
クラークに支えて貰いながら彼女は立ち上がり、ゆっくりと椅子に座った。
「そんな言い方はずるいですわ・・・。貴方を憎み切れなくなりますもの」
アリアナはディーンを見つめる。二人の視線が交差した。
そしてアリアナは「ほう」と呆れたように溜息をついた。
「残念ですわ。貴方が思った通りのクズ男でしたら良かったのに。そうでしたら、わたくし、あの子を全力で貴方から守りましたのに」
ハニーブロンドの髪を片手で優雅にかき上げた。
「クズ男?私が?・・・そうかもしれないね」
ディーンが自嘲気味に笑みを浮かべた。
「くだらない男性にあの子はあげられなくてよ・・・貴方に限った事では無いですけれど」
アリアナはくすくす笑うと、
「さぁ、すっかりお待たせしてしまいましたわ。皆様申し訳ありません」
晴れやかな声でそう言うと、皆に向かって頭を下げ、
「精神魔術の解術をお願い致しますわ」
リリーとマリオット先生を交互に見ながらそう言った。
言葉の意味とは裏腹に、彼女の口調には熱が籠っていた。
「うん・・・」
ディーンは何を言われるのか分かっていたかのように、表情を変えなかった。
「貴方は酷い方ですわ。貴方はもう・・・ずっと、わたくしとあの子の事を知ってらした。それなのに婚約したままあの子をご自分に縛り付けた。貴方をお慕いしていたわたくしの気持ちを知っていましたよね?。わたくしがどんな感情を抱いたか、貴方にお分かりになりまして!?」
アリアナが立ち上がり、椅子が倒れる。目覚めて以来、彼女がここまで感情を爆発させたのは初めてだった。
「知っていましてよ。ディーン様が最近マーリンと一緒に居るのは、マーリンからあの子を守る為でしょう!?。貴方が動くのは全てあの子の事!。そこには、わたくしは一欠片も存在していないのよ。昔からそう、貴方はわたくしを見ようともしてくれませんでしたわ!」
アリアナの目が涙で歪む。スクリーンに映るぼやけた世界が彼女の悲しみを表していた。
「別荘の滝で・・・貴方と初めて向き合えたと思えましたの。わたくしの正直な気持ちを伝えて、初めて貴方の心に触れた気がしましたわ。・・・だけど、今の貴方は卑怯でしてよ。わたくしを愛するふりであの子を手元に置こうとするのはやめて!。そんなの嫌っ!許せないっ。貴方なんて大嫌いよ!」
感情を振り絞る様に叫んで、アリアナが床に崩れ落ちた。
「アリアナ!」
クラークがアリアナの肩を抱く。
「お兄様・・・わたくしあの子が好きなのです。大好きなのに憎い・・・。あの子の苦しみや葛藤も知っているのに、なのに羨ましいのですわ。だって、私が人生でたった一つ欲しいと願ったことを、あの子は当たり前のように手に入れてしまう・・・」
「アリアナ・・・」
アリアナはクラークの胸に顔をうめ、涙をこぼした。しんと静まった部屋にアリアナの泣き声だけが響く。
静寂を破ったのは他ならぬディーンであった。
「すまない・・・君が怒るのは当然だと思う。だけど、これだけは言わせて欲しい。私は彼女と君が別人だと疑っていたけど、確信を持っていたわけじゃ無いんだ。だから・・・彼女と話す時は、いつも彼女の中に君を探していた。君とちゃん向き合いたいと思ったから・・・」
アリアナが少し顔を上げた。ディーンは顔を逸らして俯いている。銀色の髪が彼の表情を隠していた。
「だけど、結局君を傷つけた。ごめん・・・」
「・・・」
「婚約は・・・君の言う通りかもしれない。私は、繋がりを無くしたくなかったから・・・」
ディーンは顔を上げてアリアナを見つめた。彼のそんな切なそうな目を、今まで見た事が無かった。
「でもそれは、あの時滝で・・・私はやっと君とちゃんと話せたと思ったから。初めて君の想いを聞く事が出来たって・・・だから、私はまた君とやり直せたらと・・・」
ディーンは痛みに耐える様にグッと右手の拳を握った
「ごめん・・・確かに私は彼女に惹かれていると思う。だから、彼女と君が別の人だと考えたくなかった・・・。それに、君の気持ちを利用して彼女を縛るつもりも無かった。私はただ、『アリアナ』ともう一度、最初から始めたいって思ったんだ。・・・でも、結果は私の独りよがりな感情で、君の気持ちを踏みにじるような形になってしまった・・・。本当にごめん・・・。」
重苦しい空気が流れた。誰も言葉を発する事が出来なかった。
クラークはずっとアリアナを守る様に彼女の肩を抱いていた。
そして・・・
「ずるい方・・・」
アリアナがポツリとそう言った。
クラークに支えて貰いながら彼女は立ち上がり、ゆっくりと椅子に座った。
「そんな言い方はずるいですわ・・・。貴方を憎み切れなくなりますもの」
アリアナはディーンを見つめる。二人の視線が交差した。
そしてアリアナは「ほう」と呆れたように溜息をついた。
「残念ですわ。貴方が思った通りのクズ男でしたら良かったのに。そうでしたら、わたくし、あの子を全力で貴方から守りましたのに」
ハニーブロンドの髪を片手で優雅にかき上げた。
「クズ男?私が?・・・そうかもしれないね」
ディーンが自嘲気味に笑みを浮かべた。
「くだらない男性にあの子はあげられなくてよ・・・貴方に限った事では無いですけれど」
アリアナはくすくす笑うと、
「さぁ、すっかりお待たせしてしまいましたわ。皆様申し訳ありません」
晴れやかな声でそう言うと、皆に向かって頭を下げ、
「精神魔術の解術をお願い致しますわ」
リリーとマリオット先生を交互に見ながらそう言った。
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