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第8章 悪役令嬢は知られたくない
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強風は小屋の中の物をなぎ倒しながら渦を巻いていた。
ディーンのシールドが無かったら、私達も吹き飛ばされていただろう。
私はいざとなったらディーンに力を分けるつもりで彼の背中に手を添えた。
(負けない・・・。ディーンの事は絶対守る!)
そう思って身構えていたら、小屋の外から声が聞こえた。
「一体誰なのかな?。私の狩猟小屋を勝手に使っているのは?」
柔らかく深みのあるバリトンの声。
「え?」
私はこの声に聞き覚えがある・・・そして思い出した途端に全身が粟立った。
(嘘・・・・嘘でしょ!?・・・まさか!)
風をまといながら小屋の入り口に立った人物。長身でスタイルが良く、綺麗に整えられた口ひげと優雅な物腰。
グスタフ・リガーレ公爵
「う・・・ぎゃあ!!」
恐怖の余り変な叫び声をあげ、私はディーンの背中に隠れてしがみ付く。
その人物は私の天敵である天下のロリコン親父、その人であったのだ。
「リガーレ公爵!?」
ディーンも彼に気付いて驚いた声を上げた。
グスタフは私達を見て目を見開いた後、訝し気に片眉をくいっと上げた。
「おやおやこれは・・・。アリアナさんとギャロウェイ公爵家のご子息では無いですか」
小屋の中を吹き荒れていた風が止んで、ディーンも同時にシールドを解いた。
グスタフは不審げな目で私達を見ながら中に入って来ると、ソファの上にゆっくりと腰かけた。
「思いもよらぬ事で驚きましたねぇ・・・。どうして私の狩猟小屋にいるのです?。それにディーン君でしたか・・・こんな深い森の小屋にうら若き女性を連れてくるとは、いささか無粋に過ぎませんかね?」
ジロリと横目で睨むようにする。ディーンは少し顔を赤らめて、
「勝手に中に入ってしまい申し訳なく思います。少々込み入った事情があり、止むを得ず・・・」
「ほう、込み入った事情?・・・ですか」
少々皮肉を込めた口調でグスタフはそう言うと、今度は私の方へ視線を送ってきた。
(ひえっ!)
背筋にぞわっと悪寒が走った。グスタフはじっとりとした目で私を見たまま、
「アリアナさん。結婚前の女性が男性と山小屋で夜を明かすなんて・・・。いくら相手が婚約者とは言え奔放過ぎる行いではありませんか?」
ロリコンに道徳を諭すような事を言われ、私は居たたまれない気持ちになった。
「ほ、奔放?・・・いえ、あの、ですから・・・」
反論しようとしたけれど、ロリコン恐怖症の私はパニックで上手く話しがまとめられない。
「・・・ディーンの言った様に、本当に止むを得なかったというか・・・その・・・森で迷って・・・」
「迷った?。ほう、わざわざこの北の森に迷いに来たという事なのかな?」
グスタフの言葉に私達は驚いた。
「北の森!?」
「ここは北の森なんですか?。あの大きな湖の近くにある?」
「そうだが・・・知らずにここに来たのかい?」
グスタフがさらに怪訝そうに私達を見たが、ディーンと私は呆気に取られて顔を見合わせた。
(そんな遠くまで転移されていたんだ・・・)
北の森は、一年生の時に遠足で行った湖の近くにある森だ。深い森で毎年学生が何人か迷う事があると聞いた。
「この森は半分、私のリガーレ領に属しているんでね。毎年この小屋に来るんだが・・・」
グスタフはもう一度私達をじろっと睨むと、深いため息をついて
「まさか君達二人の逢引きに使われているとは思わなかった。ショックだねぇ・・・」
「あ、逢引き!?」
「ご、誤解です。リガーレ公爵!」
私とディーンが同時に叫んだ。
だけどグスタフは額に指を添えて首をゆっくり振るばかりだ。
その後たっぷり一時間。私達はグスタフの誤解を解くのに時間を要し、身振り手振りの必死の説明にグスタフの視線がようやく和らいだ。
「そう言う訳で、致し方なく公爵の小屋に泊まらせて貰ったのです。アリアナは寝室を使用させて頂きましたが、私はソファで.寝ました。ですから公爵の仰ったような、あ、逢引きなどと言うものではありません」
ディーンの説明に横で頷きながら、私は自分がぐっすり寝たベッドがグスタフの物であった事に少なからずショックを受けていた。
(勝手に使った癖に我儘だとは思うけど・・・)
グスタフをチラッと見ると、どう言う訳かニコニコと機嫌が良さそうだ。
「なるほどねぇ・・・私のベッドでアリアナさんが。ほうほう・・・」
そう言って私に流し目を送ってきた。
(うっ・・・む、無理・・・)
ダメージを受けて急いで目を逸らした。
「アリアナさんに使って貰う分には、全く構いませんよ。君達は知らないだろうけど、以前に私はアリアナさんとの婚約話が出た事もありましたからねぇ。この小屋も本当は二人で・・・いやいや、今はディーン君の婚約者と言う事になってるので、この話はこのくらいにしておきましょう」
(・・・駄目だ・・・。マジで生理的に無理だ)
私は汚れた服でベッドを使った事を謝ろうと思っていたのだが、口を開くと余計な事を言ってしまいそうだった。
(すまぬ・・・自分でも人として偏見はどうかとは思うけど・・・)
ロリコンだけは無理なのだ!。
ディーンのシールドが無かったら、私達も吹き飛ばされていただろう。
私はいざとなったらディーンに力を分けるつもりで彼の背中に手を添えた。
(負けない・・・。ディーンの事は絶対守る!)
そう思って身構えていたら、小屋の外から声が聞こえた。
「一体誰なのかな?。私の狩猟小屋を勝手に使っているのは?」
柔らかく深みのあるバリトンの声。
「え?」
私はこの声に聞き覚えがある・・・そして思い出した途端に全身が粟立った。
(嘘・・・・嘘でしょ!?・・・まさか!)
風をまといながら小屋の入り口に立った人物。長身でスタイルが良く、綺麗に整えられた口ひげと優雅な物腰。
グスタフ・リガーレ公爵
「う・・・ぎゃあ!!」
恐怖の余り変な叫び声をあげ、私はディーンの背中に隠れてしがみ付く。
その人物は私の天敵である天下のロリコン親父、その人であったのだ。
「リガーレ公爵!?」
ディーンも彼に気付いて驚いた声を上げた。
グスタフは私達を見て目を見開いた後、訝し気に片眉をくいっと上げた。
「おやおやこれは・・・。アリアナさんとギャロウェイ公爵家のご子息では無いですか」
小屋の中を吹き荒れていた風が止んで、ディーンも同時にシールドを解いた。
グスタフは不審げな目で私達を見ながら中に入って来ると、ソファの上にゆっくりと腰かけた。
「思いもよらぬ事で驚きましたねぇ・・・。どうして私の狩猟小屋にいるのです?。それにディーン君でしたか・・・こんな深い森の小屋にうら若き女性を連れてくるとは、いささか無粋に過ぎませんかね?」
ジロリと横目で睨むようにする。ディーンは少し顔を赤らめて、
「勝手に中に入ってしまい申し訳なく思います。少々込み入った事情があり、止むを得ず・・・」
「ほう、込み入った事情?・・・ですか」
少々皮肉を込めた口調でグスタフはそう言うと、今度は私の方へ視線を送ってきた。
(ひえっ!)
背筋にぞわっと悪寒が走った。グスタフはじっとりとした目で私を見たまま、
「アリアナさん。結婚前の女性が男性と山小屋で夜を明かすなんて・・・。いくら相手が婚約者とは言え奔放過ぎる行いではありませんか?」
ロリコンに道徳を諭すような事を言われ、私は居たたまれない気持ちになった。
「ほ、奔放?・・・いえ、あの、ですから・・・」
反論しようとしたけれど、ロリコン恐怖症の私はパニックで上手く話しがまとめられない。
「・・・ディーンの言った様に、本当に止むを得なかったというか・・・その・・・森で迷って・・・」
「迷った?。ほう、わざわざこの北の森に迷いに来たという事なのかな?」
グスタフの言葉に私達は驚いた。
「北の森!?」
「ここは北の森なんですか?。あの大きな湖の近くにある?」
「そうだが・・・知らずにここに来たのかい?」
グスタフがさらに怪訝そうに私達を見たが、ディーンと私は呆気に取られて顔を見合わせた。
(そんな遠くまで転移されていたんだ・・・)
北の森は、一年生の時に遠足で行った湖の近くにある森だ。深い森で毎年学生が何人か迷う事があると聞いた。
「この森は半分、私のリガーレ領に属しているんでね。毎年この小屋に来るんだが・・・」
グスタフはもう一度私達をじろっと睨むと、深いため息をついて
「まさか君達二人の逢引きに使われているとは思わなかった。ショックだねぇ・・・」
「あ、逢引き!?」
「ご、誤解です。リガーレ公爵!」
私とディーンが同時に叫んだ。
だけどグスタフは額に指を添えて首をゆっくり振るばかりだ。
その後たっぷり一時間。私達はグスタフの誤解を解くのに時間を要し、身振り手振りの必死の説明にグスタフの視線がようやく和らいだ。
「そう言う訳で、致し方なく公爵の小屋に泊まらせて貰ったのです。アリアナは寝室を使用させて頂きましたが、私はソファで.寝ました。ですから公爵の仰ったような、あ、逢引きなどと言うものではありません」
ディーンの説明に横で頷きながら、私は自分がぐっすり寝たベッドがグスタフの物であった事に少なからずショックを受けていた。
(勝手に使った癖に我儘だとは思うけど・・・)
グスタフをチラッと見ると、どう言う訳かニコニコと機嫌が良さそうだ。
「なるほどねぇ・・・私のベッドでアリアナさんが。ほうほう・・・」
そう言って私に流し目を送ってきた。
(うっ・・・む、無理・・・)
ダメージを受けて急いで目を逸らした。
「アリアナさんに使って貰う分には、全く構いませんよ。君達は知らないだろうけど、以前に私はアリアナさんとの婚約話が出た事もありましたからねぇ。この小屋も本当は二人で・・・いやいや、今はディーン君の婚約者と言う事になってるので、この話はこのくらいにしておきましょう」
(・・・駄目だ・・・。マジで生理的に無理だ)
私は汚れた服でベッドを使った事を謝ろうと思っていたのだが、口を開くと余計な事を言ってしまいそうだった。
(すまぬ・・・自分でも人として偏見はどうかとは思うけど・・・)
ロリコンだけは無理なのだ!。
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