モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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第8章 悪役令嬢は知られたくない

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私は引きつる顔を、愛想笑いで必死に誤魔化していた。

(やっぱり昔、アリアナとグスタフの婚約話が出てたんだ)

確かにそうでなければゲームで卒業と同時に、グスタフと結婚とはならなかっただろう。

アリアナの両親の気持ちからすると、身体の弱い娘に早く縁談をと思ったのかもしれない。

(ゲームではディーンとの婚約は、とっくに破棄されてたからなぁ・・・)

ディーンはと言うと、どう言う訳かグスタフの言葉に終始にこやかにしていた。

だけど口を開くと、

「リガーレ公爵。『今は』ではありませんよ。アリアナはこれからもずっと私の婚約者です。それに卒業したら直ぐに結婚するつもりですので」

さらりとそう言った。

(ぶっ!・・・えっ!?)

声を上げそうになるのを押さえてから、私は慌ててディーンの顔を見返した。

彼は顔に笑みを張り付けたまま、グスタフから目を逸らさない。

グスタフはスッと目を細めた。

「ほ~お・・・。私の聞いたところによると、ディーン君は随分他の女性と浮名を流しているようだが?」

グスタフの目の奥がキラリと光る。それでもディーンは動揺する事無く、

「根も葉もないただの噂ですよ。口さがない人が大勢いますからね」

そう言って困ったように両腕を広げた。

「アリアナは魅力的な女性なので、近づこうとする男が多くて困ってますよ。卒業時は私達も18歳ですからね。結婚してもおかしく無い年でしょう?」

グスタフはむっつりした顔でディーンの話を聞いていたが、

「アリアナさんも、そのつもりですかな?」

私に話を振ってきた。私は椅子を飛び上がる勢いで背筋を伸ばす。

「はは、はい!。私もそれが一番良いと思ってるのです。はい!」

グスタフの口ひげが一瞬、拗ねた様に下がった。でも彼は直ぐに苦笑いを浮かべると、

「まぁ、アリアナさんがそれで幸せなら良しとしましょう」

溜息をつきつつそう言った。

(あれ?)

私はグスタフの意外な一面を見た気がした。

(この人、ロリコン以外は良い人なのかもしれない・・・アリアナの父が認めてるくらいだし?)

毛嫌いして申し訳無かったかな?、と少し思った。

「でもアリアナさん。ディーン君に酷い事をされたら言ってくださいねぇ・・・私はいつでも貴女を待ってますから」

そう言ってウィンクされた途端(すまぬが、やっぱ無理)と思ってしまった。どうしても相性の合わない相手はいるものなのだ。

「私がアリアナに酷い事など、永遠にする事は無いですよ。だからリガーレ公爵には安心して頂きたい」

と、ディーンは顔は笑っていても目元に怒りを滲ませながらそう言った。

気のせいか、二人の間に火花が見える様だった。

(・・・な・・・どうして・・・)

どうしてグスタフは何時まで経ってもアリアナを諦めないんだ?。

(ゲーム設定恐るべし・・・)



そんな事がありながらも私達はグスタフの馬車に送って貰い、学園に戻る事が出来た。

もちろんトラヴィス達はまだ帰ってきていない。うちの別荘の方が、学園からははるかに遠いのだ。

(あの後、無事に洞窟から脱出できたのかなぁ・・・)

私とディーンは自分達が無事である事を知らせる早馬をトラヴィス達に送り、寮の部屋に戻った。お風呂を使って一息ついた時、部屋のチャイムが鳴った。

(ディーンかな?)

後から来ると言っていたのだ。

闇の神殿の事。消えてしまったリリーの事。逃がしてしまった黒フードの人物について等、相談する事は山済みだ。

だけど現れたのはディーンでは無く、学園に残っていたグローシアだった。

「ど、どうしたの?。馬術大会に行ってたんですよね!?」

グローシアは息を切らせながら慌てた様子で部屋に入ってきた。

「た、た、大変・・・です」

「え?」

「ジョーとケイシー先輩が・・・、モーガン先生を病院から連れ出して、姿を消して・・・」

「は!?な、何で!?」

「二人は今日の馬術大会に姿を見せなくて・・・そうしたら、病院からその知らせが学園に届いたそうです。アリアナが戻られたと聞いたから、わたくしは急いで報告に・・・」

私は急いで部屋を飛び出した。

「ア、アリアナ!?」

「早くディーンに知らせなきゃ!」

(ジョーとケイシーは精神魔術にかかっていた・・・。もしかしたら、私達が居ない時にモーガン先生を連れ出す様になっていたのかも!?)

二人を置いて行ったのは失敗だったかもしれないと、苦い気持ちでそう思う。

学園には今トラヴィス達が居ない。皆が戻ってくるまで私達が出来る事をしなくては。

(ディーンとグローシアと3人で、二人を助けられる?)

不安で一杯になりながらも、私は懸命に走った。
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