248 / 284
第8章 悪役令嬢は知られたくない
38
しおりを挟む
私は引きつる顔を、愛想笑いで必死に誤魔化していた。
(やっぱり昔、アリアナとグスタフの婚約話が出てたんだ)
確かにそうでなければゲームで卒業と同時に、グスタフと結婚とはならなかっただろう。
アリアナの両親の気持ちからすると、身体の弱い娘に早く縁談をと思ったのかもしれない。
(ゲームではディーンとの婚約は、とっくに破棄されてたからなぁ・・・)
ディーンはと言うと、どう言う訳かグスタフの言葉に終始にこやかにしていた。
だけど口を開くと、
「リガーレ公爵。『今は』ではありませんよ。アリアナはこれからもずっと私の婚約者です。それに卒業したら直ぐに結婚するつもりですので」
さらりとそう言った。
(ぶっ!・・・えっ!?)
声を上げそうになるのを押さえてから、私は慌ててディーンの顔を見返した。
彼は顔に笑みを張り付けたまま、グスタフから目を逸らさない。
グスタフはスッと目を細めた。
「ほ~お・・・。私の聞いたところによると、ディーン君は随分他の女性と浮名を流しているようだが?」
グスタフの目の奥がキラリと光る。それでもディーンは動揺する事無く、
「根も葉もないただの噂ですよ。口さがない人が大勢いますからね」
そう言って困ったように両腕を広げた。
「アリアナは魅力的な女性なので、近づこうとする男が多くて困ってますよ。卒業時は私達も18歳ですからね。結婚してもおかしく無い年でしょう?」
グスタフはむっつりした顔でディーンの話を聞いていたが、
「アリアナさんも、そのつもりですかな?」
私に話を振ってきた。私は椅子を飛び上がる勢いで背筋を伸ばす。
「はは、はい!。私もそれが一番良いと思ってるのです。はい!」
グスタフの口ひげが一瞬、拗ねた様に下がった。でも彼は直ぐに苦笑いを浮かべると、
「まぁ、アリアナさんがそれで幸せなら良しとしましょう」
溜息をつきつつそう言った。
(あれ?)
私はグスタフの意外な一面を見た気がした。
(この人、ロリコン以外は良い人なのかもしれない・・・アリアナの父が認めてるくらいだし?)
毛嫌いして申し訳無かったかな?、と少し思った。
「でもアリアナさん。ディーン君に酷い事をされたら言ってくださいねぇ・・・私はいつでも貴女を待ってますから」
そう言ってウィンクされた途端(すまぬが、やっぱ無理)と思ってしまった。どうしても相性の合わない相手はいるものなのだ。
「私がアリアナに酷い事など、永遠にする事は無いですよ。だからリガーレ公爵には安心して頂きたい」
と、ディーンは顔は笑っていても目元に怒りを滲ませながらそう言った。
気のせいか、二人の間に火花が見える様だった。
(・・・な・・・どうして・・・)
どうしてグスタフは何時まで経ってもアリアナを諦めないんだ?。
(ゲーム設定恐るべし・・・)
そんな事がありながらも私達はグスタフの馬車に送って貰い、学園に戻る事が出来た。
もちろんトラヴィス達はまだ帰ってきていない。うちの別荘の方が、学園からははるかに遠いのだ。
(あの後、無事に洞窟から脱出できたのかなぁ・・・)
私とディーンは自分達が無事である事を知らせる早馬をトラヴィス達に送り、寮の部屋に戻った。お風呂を使って一息ついた時、部屋のチャイムが鳴った。
(ディーンかな?)
後から来ると言っていたのだ。
闇の神殿の事。消えてしまったリリーの事。逃がしてしまった黒フードの人物について等、相談する事は山済みだ。
だけど現れたのはディーンでは無く、学園に残っていたグローシアだった。
「ど、どうしたの?。馬術大会に行ってたんですよね!?」
グローシアは息を切らせながら慌てた様子で部屋に入ってきた。
「た、た、大変・・・です」
「え?」
「ジョーとケイシー先輩が・・・、モーガン先生を病院から連れ出して、姿を消して・・・」
「は!?な、何で!?」
「二人は今日の馬術大会に姿を見せなくて・・・そうしたら、病院からその知らせが学園に届いたそうです。アリアナが戻られたと聞いたから、わたくしは急いで報告に・・・」
私は急いで部屋を飛び出した。
「ア、アリアナ!?」
「早くディーンに知らせなきゃ!」
(ジョーとケイシーは精神魔術にかかっていた・・・。もしかしたら、私達が居ない時にモーガン先生を連れ出す様になっていたのかも!?)
二人を置いて行ったのは失敗だったかもしれないと、苦い気持ちでそう思う。
学園には今トラヴィス達が居ない。皆が戻ってくるまで私達が出来る事をしなくては。
(ディーンとグローシアと3人で、二人を助けられる?)
不安で一杯になりながらも、私は懸命に走った。
(やっぱり昔、アリアナとグスタフの婚約話が出てたんだ)
確かにそうでなければゲームで卒業と同時に、グスタフと結婚とはならなかっただろう。
アリアナの両親の気持ちからすると、身体の弱い娘に早く縁談をと思ったのかもしれない。
(ゲームではディーンとの婚約は、とっくに破棄されてたからなぁ・・・)
ディーンはと言うと、どう言う訳かグスタフの言葉に終始にこやかにしていた。
だけど口を開くと、
「リガーレ公爵。『今は』ではありませんよ。アリアナはこれからもずっと私の婚約者です。それに卒業したら直ぐに結婚するつもりですので」
さらりとそう言った。
(ぶっ!・・・えっ!?)
声を上げそうになるのを押さえてから、私は慌ててディーンの顔を見返した。
彼は顔に笑みを張り付けたまま、グスタフから目を逸らさない。
グスタフはスッと目を細めた。
「ほ~お・・・。私の聞いたところによると、ディーン君は随分他の女性と浮名を流しているようだが?」
グスタフの目の奥がキラリと光る。それでもディーンは動揺する事無く、
「根も葉もないただの噂ですよ。口さがない人が大勢いますからね」
そう言って困ったように両腕を広げた。
「アリアナは魅力的な女性なので、近づこうとする男が多くて困ってますよ。卒業時は私達も18歳ですからね。結婚してもおかしく無い年でしょう?」
グスタフはむっつりした顔でディーンの話を聞いていたが、
「アリアナさんも、そのつもりですかな?」
私に話を振ってきた。私は椅子を飛び上がる勢いで背筋を伸ばす。
「はは、はい!。私もそれが一番良いと思ってるのです。はい!」
グスタフの口ひげが一瞬、拗ねた様に下がった。でも彼は直ぐに苦笑いを浮かべると、
「まぁ、アリアナさんがそれで幸せなら良しとしましょう」
溜息をつきつつそう言った。
(あれ?)
私はグスタフの意外な一面を見た気がした。
(この人、ロリコン以外は良い人なのかもしれない・・・アリアナの父が認めてるくらいだし?)
毛嫌いして申し訳無かったかな?、と少し思った。
「でもアリアナさん。ディーン君に酷い事をされたら言ってくださいねぇ・・・私はいつでも貴女を待ってますから」
そう言ってウィンクされた途端(すまぬが、やっぱ無理)と思ってしまった。どうしても相性の合わない相手はいるものなのだ。
「私がアリアナに酷い事など、永遠にする事は無いですよ。だからリガーレ公爵には安心して頂きたい」
と、ディーンは顔は笑っていても目元に怒りを滲ませながらそう言った。
気のせいか、二人の間に火花が見える様だった。
(・・・な・・・どうして・・・)
どうしてグスタフは何時まで経ってもアリアナを諦めないんだ?。
(ゲーム設定恐るべし・・・)
そんな事がありながらも私達はグスタフの馬車に送って貰い、学園に戻る事が出来た。
もちろんトラヴィス達はまだ帰ってきていない。うちの別荘の方が、学園からははるかに遠いのだ。
(あの後、無事に洞窟から脱出できたのかなぁ・・・)
私とディーンは自分達が無事である事を知らせる早馬をトラヴィス達に送り、寮の部屋に戻った。お風呂を使って一息ついた時、部屋のチャイムが鳴った。
(ディーンかな?)
後から来ると言っていたのだ。
闇の神殿の事。消えてしまったリリーの事。逃がしてしまった黒フードの人物について等、相談する事は山済みだ。
だけど現れたのはディーンでは無く、学園に残っていたグローシアだった。
「ど、どうしたの?。馬術大会に行ってたんですよね!?」
グローシアは息を切らせながら慌てた様子で部屋に入ってきた。
「た、た、大変・・・です」
「え?」
「ジョーとケイシー先輩が・・・、モーガン先生を病院から連れ出して、姿を消して・・・」
「は!?な、何で!?」
「二人は今日の馬術大会に姿を見せなくて・・・そうしたら、病院からその知らせが学園に届いたそうです。アリアナが戻られたと聞いたから、わたくしは急いで報告に・・・」
私は急いで部屋を飛び出した。
「ア、アリアナ!?」
「早くディーンに知らせなきゃ!」
(ジョーとケイシーは精神魔術にかかっていた・・・。もしかしたら、私達が居ない時にモーガン先生を連れ出す様になっていたのかも!?)
二人を置いて行ったのは失敗だったかもしれないと、苦い気持ちでそう思う。
学園には今トラヴィス達が居ない。皆が戻ってくるまで私達が出来る事をしなくては。
(ディーンとグローシアと3人で、二人を助けられる?)
不安で一杯になりながらも、私は懸命に走った。
14
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる