252 / 284
閑話6 森の山小屋(ディーン)
2
しおりを挟む
私は自分の顔が真っ赤になってる事に気付いていた。
「な、何を言ってるんだ・・・!」
馬鹿みたいに声が上ずっている。
(落ち着け・・・アリアナは私をからかっているだけだ)
「彼女が・・・リナがそんな事思うはずがない。君が今、外に出ていると言う事は、彼女はもう眠っていると言う事だろう!?」
「ご名答ですわ。さすがディーン様ですわね」
アリアナはにっこり笑って小さく手を叩いた。
私はアリアナを睨んだ。
「どうも君は、とんでもない悪女のようだ」
「あら、ご存じないのですか?。わたくしは悪役令嬢ですのよ。あの子の世界ではそう呼ばれてたのですって。ふふ・・・わたくしは貴方に断罪されて婚約破棄されていたそうですよ」
アリアナは笑いながらそう言った。
何の事だか良く分からなかったが、何故か彼女の言う事が正しいような気がした。もしリナと出会わなかったら私は・・・。
(私はどんな人生を送っていたのだろう・・・?)
無理だと思った。リナと出会わなかった人生など考えたくも無い。
「わたくしも、あの子と出会えて本当に良かったですわ」
私の考えを読んだかのようなアリアナの言葉に、私はハッと顔を上げた。
「少なくとも、こうして貴方に意趣返しが出来ますもの。ふふ・・・それにきっと、何年か後に・・・」
アリアナは何か言いかけたのに、突然くるりと後ろを向いた。
「・・・眠くなりましたわ」
「え?」
「お休みなさい、ディーン様。良い夢を・・・」
パタンと寝室の扉が閉まった。
呆気に取られて私はしばらくその場に立ったまま扉を見つめていたが、苦い気持ちで頭を押さえて乱暴にソファに寝っ転がった。
(まったく・・・)
アリアナの事は、昔の様に厭う気持ちはもう無かった。だけどこんな風にたまに出会った時に、どう接して良いのか分からなくなる。
(振り回される)
それは罪悪感のせいなのか、それともアリアナが好きな女性と同じ身体に居るからなのか・・・。
(何年か後・・・か)
さっきアリアナは確かにそう言った。そして何かを言いかけた。
何年か後、それとも何十年か後かは分からないけれど、アリアナの精神はリナの精神と溶け合ってしまう。前にアリアナはそれを楽しみの様に語っていた。リナの精神が強い以上、表に出るのはリナだろうに。
(だけどその時にアリアナの精神は、リナにどんな影響を与えるのだろう・・・?)
そう思った瞬間、私は思いっきり両手で自分の頬を挟む様に叩いた。何故ならとんでも無く下劣な事を考えたからだ。
(本当に・・・クズ男だな)
アリアナが私を想う気持ちが、リナに入り混じれば良いなどという卑怯な思い。
―――くだらない男性にあの子はあげられなくてよ
前にアリアナに言われた事を思い出す。
「そうだな・・・このままじゃ、アリアナにだって愛想を尽かされて当然だ」
だけどもう引くつもりは無かった。クズだろうと卑怯だろうと全部飲み込んで糧にしてやろう。
私はゆっくりと体を起こした。
「リナは聡明で頭の回転も速い。だけど純粋で流されやすい所がある。そして・・・顔の良い男性に弱い」
自分の顔がそこそこ整っていて良かったと思う。彼女を手に入れる為ならどんな事でも利用する。
以前の自分は誠実だが堅物だと言われていたが、どうやら随分と変わったようだ。
もちろん、リナの隣にいるのに相応しい男になる為にならどんな努力だってするつもりだ。
(それだけは、得意だからな)
真面目で努力家と言う世間の評判。そこに策略家も付け加えてやろう。
色々と考え続けて、気付くと空が少し白々と明るくなってきている。
アリアナのせいで疲れていたのに全く眠る事が出来なかった。今も神経が立って目が冴えてしまっている。
私はリナが寝ている寝室の扉を見る。
(今はまだ、こちらから扉を開ける事は出来ない。でもいつか・・・)
私はソファに座ったまま、彼女が扉を開けるのを静かに待った。
「な、何を言ってるんだ・・・!」
馬鹿みたいに声が上ずっている。
(落ち着け・・・アリアナは私をからかっているだけだ)
「彼女が・・・リナがそんな事思うはずがない。君が今、外に出ていると言う事は、彼女はもう眠っていると言う事だろう!?」
「ご名答ですわ。さすがディーン様ですわね」
アリアナはにっこり笑って小さく手を叩いた。
私はアリアナを睨んだ。
「どうも君は、とんでもない悪女のようだ」
「あら、ご存じないのですか?。わたくしは悪役令嬢ですのよ。あの子の世界ではそう呼ばれてたのですって。ふふ・・・わたくしは貴方に断罪されて婚約破棄されていたそうですよ」
アリアナは笑いながらそう言った。
何の事だか良く分からなかったが、何故か彼女の言う事が正しいような気がした。もしリナと出会わなかったら私は・・・。
(私はどんな人生を送っていたのだろう・・・?)
無理だと思った。リナと出会わなかった人生など考えたくも無い。
「わたくしも、あの子と出会えて本当に良かったですわ」
私の考えを読んだかのようなアリアナの言葉に、私はハッと顔を上げた。
「少なくとも、こうして貴方に意趣返しが出来ますもの。ふふ・・・それにきっと、何年か後に・・・」
アリアナは何か言いかけたのに、突然くるりと後ろを向いた。
「・・・眠くなりましたわ」
「え?」
「お休みなさい、ディーン様。良い夢を・・・」
パタンと寝室の扉が閉まった。
呆気に取られて私はしばらくその場に立ったまま扉を見つめていたが、苦い気持ちで頭を押さえて乱暴にソファに寝っ転がった。
(まったく・・・)
アリアナの事は、昔の様に厭う気持ちはもう無かった。だけどこんな風にたまに出会った時に、どう接して良いのか分からなくなる。
(振り回される)
それは罪悪感のせいなのか、それともアリアナが好きな女性と同じ身体に居るからなのか・・・。
(何年か後・・・か)
さっきアリアナは確かにそう言った。そして何かを言いかけた。
何年か後、それとも何十年か後かは分からないけれど、アリアナの精神はリナの精神と溶け合ってしまう。前にアリアナはそれを楽しみの様に語っていた。リナの精神が強い以上、表に出るのはリナだろうに。
(だけどその時にアリアナの精神は、リナにどんな影響を与えるのだろう・・・?)
そう思った瞬間、私は思いっきり両手で自分の頬を挟む様に叩いた。何故ならとんでも無く下劣な事を考えたからだ。
(本当に・・・クズ男だな)
アリアナが私を想う気持ちが、リナに入り混じれば良いなどという卑怯な思い。
―――くだらない男性にあの子はあげられなくてよ
前にアリアナに言われた事を思い出す。
「そうだな・・・このままじゃ、アリアナにだって愛想を尽かされて当然だ」
だけどもう引くつもりは無かった。クズだろうと卑怯だろうと全部飲み込んで糧にしてやろう。
私はゆっくりと体を起こした。
「リナは聡明で頭の回転も速い。だけど純粋で流されやすい所がある。そして・・・顔の良い男性に弱い」
自分の顔がそこそこ整っていて良かったと思う。彼女を手に入れる為ならどんな事でも利用する。
以前の自分は誠実だが堅物だと言われていたが、どうやら随分と変わったようだ。
もちろん、リナの隣にいるのに相応しい男になる為にならどんな努力だってするつもりだ。
(それだけは、得意だからな)
真面目で努力家と言う世間の評判。そこに策略家も付け加えてやろう。
色々と考え続けて、気付くと空が少し白々と明るくなってきている。
アリアナのせいで疲れていたのに全く眠る事が出来なかった。今も神経が立って目が冴えてしまっている。
私はリナが寝ている寝室の扉を見る。
(今はまだ、こちらから扉を開ける事は出来ない。でもいつか・・・)
私はソファに座ったまま、彼女が扉を開けるのを静かに待った。
14
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる