モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘

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最終章 悪役令嬢は・・・

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船長とモーガン先生の話を聞いて、私達は正直な所、慌てふためいた。

(ど、どうしよう・・・。早くこの事をトラヴィス達に伝えないと。セルナクが戦争仕掛けてきたら大変な事になるじゃん!)

そう言えば、セルナクに行ったマリオット先生はどうしてるんだろう?。エメラインの説得役をしてくれているはずだけど、この調子では上手くいっているとは思えない。

多分ディーンも同じ気持ちなのだろう、険しい顔で唇を噛んでいる。

私達はとりあえずゆっくりとモーガン先生達から離れた。近くにいては相談も出来ないからだ。

船尾の人気の少ない所に移動し、私は息を吐いた。

(魔術で姿が隠れているのは分かってるけど、それでもめっちゃ緊張する・・・)

モーガン先生は初めて会った時と変わらず、美人でどこか凄みがあった。

「困ったな・・・。ジョーとケイシー殿はモーガン先生にべったり張り付いている。しかも強力な精神魔術にかかってるようだ。このままじゃ連れて帰るのも・・・」

ディーンの顔に焦りの色が見える。

「モーガン先生はどうするんです?。このまま逃がすのですか?」

グローシアはいっそ自分達で捕まえたいと思っているようだ。私は彼女をなだめる様に肩を叩いた。

「モーガン先生を捕えるのは私達だけでは難しいですよ。ジョーとケイシー様はモーガン先生を守るでしょうし、二人に攻撃するわけにはいかないでしょ?。それに多分モーガン先生の魔力は想像していたよりも、かなり強いと思った方が良いです。ディーンはともかく、私とグローシアは精神魔術をかけられちゃう可能性もあると思う」

私がそう言うとグローシアは悔しそうに眉を寄せた。

「だけどこのままでは二人を助けられないです・・・」

(だよね~。う~ん・・・ほんと困った)

せめてクリフが居れば、強力な捕縛魔術で二人の動きを止められたのに。そうすれば、後はディーンのシールドでモーガン先生の攻撃を防げば・・・

(・・・いや、待ってよ?)

できるかな?。多分出来そうな気がする。いや、やるしかない!

「ディーン、グローシア。ちょっと危険だけど、試したい策があります・・・」

私は二人の耳元で閃いた事をこっそり話した。


私達は再び姿と気配を隠して、モーガン先生達に近寄った。

船長はもう居なかったけれど、モーガン先生の傍にはジョー達だけでなく、黒いフードの男達が3人付き従っていた。間違いなく闇の組織の者だろう。

(背格好からして、『リーツ』では無さそうだけど面倒だなぁ)

闇の組織の者は闇の魔術か精神魔術を使える可能性がある。

だけど、ここまで来たらやるしかないって気分だった。

私達はぎりぎりまでジョーとケイシーに近寄り、私は右手をディーンと左手をグローシアと繋いだ。

そして二人に同時に、思いっきり力を注いだ。

「今です!。二人とも、頑張って下さい!」

それと同時にディーンはシールドを発動し、グローシアは捕縛の魔術をジョーとケイシーに行使した。

「うっ!」
「ぎゃ!」
「ぐえっ!」
「ぐはっ!」
「くっ!」
「ああっ!」

様々な悲鳴が周りに響いた。

「やった!。成功!?」

悲鳴の内訳を説明すると、最初の4つは私の力で膨張したディーンのシールドに、弾き飛ばされたモーガン先生と闇の組織の男達の悲鳴。

最後の二つは、これも強力化したグローシアの魔術で縛られたジョーとケイシーの悲鳴だった。

ディーンはシールドで守る人を選べる。ジョーとケイシーは私達と同様ディーンのシールド内にいるのだ。

(それだけじゃ、ジョーとケイシーに攻撃されたらアウトだった。グローシアが捕縛魔術を使えて良かったよ)

グローシアの魔力じゃ、普通なら攻略者のケイシーに勝てなかっただろう。だけどあいにくこっちには、無尽蔵の魔力供給者の私がいるのだ。

(ふっふっふ。作戦通り!)

どうやら闇の組織の男達のうち二人は海に落ちたようだ。もう一人とモーガン先生は、看板の上に倒れている。

「今のうちに逃げましょう!」

ディーンはシールドを解くと、動けずに転がったまま叫んでいるジョーとケイシーの首元を触った。

すると、バチっと言う音と共に二人がぐったり動かなくなる。

「だ、大丈夫なのですか?」

「軽い雷撃。気を失っただけだ」

そう言ってディーンは顔をしかめながらケイシーを担ぎ上げた。グローシアも重そうにジョーを背負う。

(ふ、二人とも凄い!)

自分の細腕を見て、一瞬だけがっかりした。

「行くぞ!」

ディーンの声に、私達は急いで船を降りる為に看板を移動し始めた。

しかしほんの数歩進んだところで、

ドンッ!

「うわぁ!」

衝撃音と共に私達は吹っ飛ばされ、看板の上を転がった。
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