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第一章 幼馴染が脱力系女子
第9話 駄菓子好きメンバーに入りたい?
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朝のHRや授業の合間の休み時間に眠ることが減った鈴菜だったが、その反動は昼休みに移動して、食べるよりもだらけることが多くなった。
いつもは音川と俺と鈴菜の三人だけで食べていた昼も、今では保護の観点から河神や木下を加えて学食で食べることが増えた。
木下は他の奴とつるんでいるので時々しか加わってこないが、俺と鈴菜の幼馴染な関係を知っているのはこいつらしかいないというのも理由の一つ。
「ふわぁぁ~……ん~眠~い……だる~い」
……などと、鈴菜の脱力っぷりは河神が見ている前でも健在だ。
「席が離れてたから気にしてなかったけど、いつもこんな感じなのか?」
「まぁな」
鈴菜以外後ろの席に固まっているメンバーだから、こうしてだらけた鈴菜を間近で見るのは初めてらしい。
「貴俊く~ん……今日も駄目なの~?」
「悪いな。最近業者の人の出入りが激しいし、そんな中で落ち着いて寝られないだろうし、無しの方向で」
「そんなぁぁ~……貴俊くんのお部屋が一番眠りやすいのに~」
正確には俺の部屋じゃないけどな。
「なに、貴俊。駄菓子屋の事務室なくすの?」
「なくならないぞ。勝手に潰すなよ、早太」
「だよな。なくすよりも新しく増やす方がいい時期だし」
「またアレか? お告げ的なもんが降ってきてる感じか?」
神社の息子だからってそんな見えるものなのかと疑いたくなるが、早太は口に出さずに笑っているだけではっきり言ってくれない。
しかし新しく増やすという意味だけ取れば、確かにいい流れがきてる感じはある。新しいバイトメンバーのあの子とかがまさにそれだし。
「え? 事務室に入れなくなるんじゃ、鈴菜の居場所失うってこと? 何でそんな大事なことを早く言わなかったわけ?」
出たよ、音川の鈴菜に対する過保護っぷり。
「こころちゃん」
「うん?」
「貴俊くんを厳しくするならわたしも厳しくするよ~?」
「えっ、そんな……そんな厳しく言ってるつもりは~……」
おお、いいぞ鈴菜。もっと言ってやれ!
「で、貴俊。お前いま、その事務室で寝てんの?」
「俺は別に気にならないからな。普段から従業員の人たちと顔を合わせてるし、時々品出ししてるし」
「あぁ、なるほど」
事務室で眠れなくなることを鈴菜にはっきり言えずにいたので、苦肉の策で伝えた理由が事務室の改装の話だ。
店の都合で入れなくなるなら、流石に眠りにくるわけにはいかないしな。あの子もいるし。
「全く入れなくなるわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだろ。俺とか寝てるし」
改装するのは多分新しい部屋が出来てからだろうから、関係者以外が入れなくなるのはおそらくないと思われ。
「良かった~。駄菓子好きメンバーまで締め出しされたら寂しくなるもんね」
「それな。貴俊の許しさえあれば、おれたちはいつでも入れるだろうからな」
駄菓子屋の息子である俺を含めた駄菓子好きメンバーは、早太、木下、音川の四人。そのメンバーが駄菓子を店で買って、時々味の品評会なるよく分からない集まりをしている。
事務室の端の方で地味に食べ合いをするとか、一体誰の発案で始まったのやら。
「ねえねえ~駄菓子屋好きメンバーってなぁに?」
……あ。
鈴菜に隠すような活動でもなく、気が向いたら駄菓子を貪るだけの活動だから鈴菜はメンバーになっていなかった。
そもそも、食べるよりも眠るために事務室に来る率が圧倒的に高かったからな。
「ああ、それは――」
試しに音川をチラッと見ると、音川は俺の視線をすぐに外して鈴菜に説明を始める。いちいち外すなよ。
「事務室を利用出来なくなるなら今さら教えても~って話なんだけど、えっとね、黒山のお店の駄菓子を自由に買って、駄菓子好きの人間が集まって食べるだけだよ」
「え~何それ~? 楽しそう~」
「黙々と食べるだけだから、多分鈴菜はすぐに眠くなるんじゃないかな」
それは言えてる。菓子を口にしながらああだこうだと言い合うのは最初だけで、今となってはただ単に食べるだけになってるからな。
音川と河神だけは常連のままだが、木下は来なくなってるし何とも言えない集まりかもしれない。
「え~ずるい~」
これは予想外だ。
俺以外の男子がいる時点で興味がないと思っていたのに、まさかの食いつきっぷりだ。駄菓子の匂いを感じながら寝るのが好きなだけのはずなのに、みんな一緒に同じことをするのがそんなに好きだったのか。
「浅木も駄菓子好きメンバー入りしたいの?」
河神が気を利かせて鈴菜に訊いているのに対し、鈴菜の答えは――。
「するする~!! 駄菓子大好き~!」
そうだったのか。寝る姿しか見てなかったし、駄菓子の在庫に囲まれてるのが好きなだけかと思っていたけど、実は食べたかったんだな。
「鈴菜がそんなに駄菓子好きだとは思わなかったな。別にメンバー入りだとかそんな大げさなもんじゃないから入ればいいんじゃないか?」
「――あ!」
「うん?」
「えへへ。貴俊くんがぐっと近づいてきた気がする~」
何を言ってるのか意味が分からないが、メンバー入りが出来て凄く嬉しそうだな。その笑顔に少しだけドキッとした。
「……なるほどね。黒山だけ気づいてないぽいけど、いい傾向かもね」
「ん? 何が?」
「あんたはいちいち気にしなくていいから。こっちの話だし」
音川が俺に厳しいのは直らないわけか。
「貴俊。事務室に出入り出来る制限がないなら、駄菓子の魅力を浅木に教えてやれば? そしたら何か変わるかもだぞ」
「変わる? まぁ、その方が俺の小遣いが増えるし頑張ってみる」
それくらいで喜ばれるなら事務室を使わせるのも緩くしてもいいかもな。
「鈴菜。駄菓子を食べに来るんなら、そのついでに寝に来てもいいぞ」
「え、いいの~? わぁ~い! 貴俊くん、大好き~!」
「……」
菓子が好きなついでに俺も好きなんだろうけど、みんながいる前で言うのは本当に勘弁してほしい。
「気づけよ、おバカ」
「ん~、素直な女子なのに全然気づかない貴俊もヤバいな」
などなど、音川と河神が俺を見ながら呆れていたが、鈴菜の調子が良くなった昼休みだったのでよしとしよう。
いつもは音川と俺と鈴菜の三人だけで食べていた昼も、今では保護の観点から河神や木下を加えて学食で食べることが増えた。
木下は他の奴とつるんでいるので時々しか加わってこないが、俺と鈴菜の幼馴染な関係を知っているのはこいつらしかいないというのも理由の一つ。
「ふわぁぁ~……ん~眠~い……だる~い」
……などと、鈴菜の脱力っぷりは河神が見ている前でも健在だ。
「席が離れてたから気にしてなかったけど、いつもこんな感じなのか?」
「まぁな」
鈴菜以外後ろの席に固まっているメンバーだから、こうしてだらけた鈴菜を間近で見るのは初めてらしい。
「貴俊く~ん……今日も駄目なの~?」
「悪いな。最近業者の人の出入りが激しいし、そんな中で落ち着いて寝られないだろうし、無しの方向で」
「そんなぁぁ~……貴俊くんのお部屋が一番眠りやすいのに~」
正確には俺の部屋じゃないけどな。
「なに、貴俊。駄菓子屋の事務室なくすの?」
「なくならないぞ。勝手に潰すなよ、早太」
「だよな。なくすよりも新しく増やす方がいい時期だし」
「またアレか? お告げ的なもんが降ってきてる感じか?」
神社の息子だからってそんな見えるものなのかと疑いたくなるが、早太は口に出さずに笑っているだけではっきり言ってくれない。
しかし新しく増やすという意味だけ取れば、確かにいい流れがきてる感じはある。新しいバイトメンバーのあの子とかがまさにそれだし。
「え? 事務室に入れなくなるんじゃ、鈴菜の居場所失うってこと? 何でそんな大事なことを早く言わなかったわけ?」
出たよ、音川の鈴菜に対する過保護っぷり。
「こころちゃん」
「うん?」
「貴俊くんを厳しくするならわたしも厳しくするよ~?」
「えっ、そんな……そんな厳しく言ってるつもりは~……」
おお、いいぞ鈴菜。もっと言ってやれ!
「で、貴俊。お前いま、その事務室で寝てんの?」
「俺は別に気にならないからな。普段から従業員の人たちと顔を合わせてるし、時々品出ししてるし」
「あぁ、なるほど」
事務室で眠れなくなることを鈴菜にはっきり言えずにいたので、苦肉の策で伝えた理由が事務室の改装の話だ。
店の都合で入れなくなるなら、流石に眠りにくるわけにはいかないしな。あの子もいるし。
「全く入れなくなるわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだろ。俺とか寝てるし」
改装するのは多分新しい部屋が出来てからだろうから、関係者以外が入れなくなるのはおそらくないと思われ。
「良かった~。駄菓子好きメンバーまで締め出しされたら寂しくなるもんね」
「それな。貴俊の許しさえあれば、おれたちはいつでも入れるだろうからな」
駄菓子屋の息子である俺を含めた駄菓子好きメンバーは、早太、木下、音川の四人。そのメンバーが駄菓子を店で買って、時々味の品評会なるよく分からない集まりをしている。
事務室の端の方で地味に食べ合いをするとか、一体誰の発案で始まったのやら。
「ねえねえ~駄菓子屋好きメンバーってなぁに?」
……あ。
鈴菜に隠すような活動でもなく、気が向いたら駄菓子を貪るだけの活動だから鈴菜はメンバーになっていなかった。
そもそも、食べるよりも眠るために事務室に来る率が圧倒的に高かったからな。
「ああ、それは――」
試しに音川をチラッと見ると、音川は俺の視線をすぐに外して鈴菜に説明を始める。いちいち外すなよ。
「事務室を利用出来なくなるなら今さら教えても~って話なんだけど、えっとね、黒山のお店の駄菓子を自由に買って、駄菓子好きの人間が集まって食べるだけだよ」
「え~何それ~? 楽しそう~」
「黙々と食べるだけだから、多分鈴菜はすぐに眠くなるんじゃないかな」
それは言えてる。菓子を口にしながらああだこうだと言い合うのは最初だけで、今となってはただ単に食べるだけになってるからな。
音川と河神だけは常連のままだが、木下は来なくなってるし何とも言えない集まりかもしれない。
「え~ずるい~」
これは予想外だ。
俺以外の男子がいる時点で興味がないと思っていたのに、まさかの食いつきっぷりだ。駄菓子の匂いを感じながら寝るのが好きなだけのはずなのに、みんな一緒に同じことをするのがそんなに好きだったのか。
「浅木も駄菓子好きメンバー入りしたいの?」
河神が気を利かせて鈴菜に訊いているのに対し、鈴菜の答えは――。
「するする~!! 駄菓子大好き~!」
そうだったのか。寝る姿しか見てなかったし、駄菓子の在庫に囲まれてるのが好きなだけかと思っていたけど、実は食べたかったんだな。
「鈴菜がそんなに駄菓子好きだとは思わなかったな。別にメンバー入りだとかそんな大げさなもんじゃないから入ればいいんじゃないか?」
「――あ!」
「うん?」
「えへへ。貴俊くんがぐっと近づいてきた気がする~」
何を言ってるのか意味が分からないが、メンバー入りが出来て凄く嬉しそうだな。その笑顔に少しだけドキッとした。
「……なるほどね。黒山だけ気づいてないぽいけど、いい傾向かもね」
「ん? 何が?」
「あんたはいちいち気にしなくていいから。こっちの話だし」
音川が俺に厳しいのは直らないわけか。
「貴俊。事務室に出入り出来る制限がないなら、駄菓子の魅力を浅木に教えてやれば? そしたら何か変わるかもだぞ」
「変わる? まぁ、その方が俺の小遣いが増えるし頑張ってみる」
それくらいで喜ばれるなら事務室を使わせるのも緩くしてもいいかもな。
「鈴菜。駄菓子を食べに来るんなら、そのついでに寝に来てもいいぞ」
「え、いいの~? わぁ~い! 貴俊くん、大好き~!」
「……」
菓子が好きなついでに俺も好きなんだろうけど、みんながいる前で言うのは本当に勘弁してほしい。
「気づけよ、おバカ」
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