守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった

遥風 かずら

文字の大きさ
9 / 37
第一章 幼馴染が脱力系女子

第9話 駄菓子好きメンバーに入りたい?

しおりを挟む
 朝のHRや授業の合間の休み時間に眠ることが減った鈴菜だったが、その反動は昼休みに移動して、食べるよりもだらけることが多くなった。

 いつもは音川と俺と鈴菜の三人だけで食べていた昼も、今では保護の観点から河神や木下を加えて学食で食べることが増えた。

 木下は他の奴とつるんでいるので時々しか加わってこないが、俺と鈴菜の幼馴染な関係を知っているのはこいつらしかいないというのも理由の一つ。

「ふわぁぁ~……ん~眠~い……だる~い」

 ……などと、鈴菜の脱力っぷりは河神が見ている前でも健在だ。

「席が離れてたから気にしてなかったけど、いつもこんな感じなのか?」
「まぁな」

 鈴菜以外後ろの席に固まっているメンバーだから、こうしてだらけた鈴菜を間近で見るのは初めてらしい。

「貴俊く~ん……今日も駄目なの~?」
「悪いな。最近業者の人の出入りが激しいし、そんな中で落ち着いて寝られないだろうし、無しの方向で」
「そんなぁぁ~……貴俊くんのお部屋が一番眠りやすいのに~」

 正確には俺の部屋じゃないけどな。

「なに、貴俊。駄菓子屋の事務室なくすの?」
「なくならないぞ。勝手に潰すなよ、早太」
「だよな。なくすよりも新しく増やす方がいい時期だし」
「またアレか? お告げ的なもんが降ってきてる感じか?」

 神社の息子だからってそんな見えるものなのかと疑いたくなるが、早太は口に出さずに笑っているだけではっきり言ってくれない。

 しかし新しく増やすという意味だけ取れば、確かにいい流れがきてる感じはある。新しいバイトメンバーのあの子とかがまさにそれだし。

「え? 事務室に入れなくなるんじゃ、鈴菜の居場所失うってこと? 何でそんな大事なことを早く言わなかったわけ?」

 出たよ、音川の鈴菜に対する過保護っぷり。

「こころちゃん」
「うん?」
「貴俊くんを厳しくするならわたしも厳しくするよ~?」
「えっ、そんな……そんな厳しく言ってるつもりは~……」

 おお、いいぞ鈴菜。もっと言ってやれ!

「で、貴俊。お前いま、その事務室で寝てんの?」
「俺は別に気にならないからな。普段から従業員の人たちと顔を合わせてるし、時々品出ししてるし」
「あぁ、なるほど」

 事務室で眠れなくなることを鈴菜にはっきり言えずにいたので、苦肉の策で伝えた理由が事務室の改装の話だ。

 店の都合で入れなくなるなら、流石に眠りにくるわけにはいかないしな。あの子もいるし。

「全く入れなくなるわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだろ。俺とか寝てるし」

 改装するのは多分新しい部屋が出来てからだろうから、関係者以外が入れなくなるのはおそらくないと思われ。

「良かった~。駄菓子好きメンバーまで締め出しされたら寂しくなるもんね」
「それな。貴俊の許しさえあれば、おれたちはいつでも入れるだろうからな」

 駄菓子屋の息子である俺を含めた駄菓子好きメンバーは、早太、木下、音川の四人。そのメンバーが駄菓子を店で買って、時々味の品評会なるよく分からない集まりをしている。

 事務室の端の方で地味に食べ合いをするとか、一体誰の発案で始まったのやら。

「ねえねえ~駄菓子屋好きメンバーってなぁに?」

 ……あ。

 鈴菜に隠すような活動でもなく、気が向いたら駄菓子を貪るだけの活動だから鈴菜はメンバーになっていなかった。

 そもそも、食べるよりも眠るために事務室に来る率が圧倒的に高かったからな。

「ああ、それは――」

 試しに音川をチラッと見ると、音川は俺の視線をすぐに外して鈴菜に説明を始める。いちいち外すなよ。

「事務室を利用出来なくなるなら今さら教えても~って話なんだけど、えっとね、黒山のお店の駄菓子を自由に買って、駄菓子好きの人間が集まって食べるだけだよ」
「え~何それ~? 楽しそう~」
「黙々と食べるだけだから、多分鈴菜はすぐに眠くなるんじゃないかな」

 それは言えてる。菓子を口にしながらああだこうだと言い合うのは最初だけで、今となってはただ単に食べるだけになってるからな。

 音川と河神だけは常連のままだが、木下は来なくなってるし何とも言えない集まりかもしれない。

「え~ずるい~」

 これは予想外だ。

 俺以外の男子がいる時点で興味がないと思っていたのに、まさかの食いつきっぷりだ。駄菓子の匂いを感じながら寝るのが好きなだけのはずなのに、みんな一緒に同じことをするのがそんなに好きだったのか。

「浅木も駄菓子好きメンバー入りしたいの?」

 河神が気を利かせて鈴菜に訊いているのに対し、鈴菜の答えは――。

「するする~!! 駄菓子大好き~!」

 そうだったのか。寝る姿しか見てなかったし、駄菓子の在庫に囲まれてるのが好きなだけかと思っていたけど、実は食べたかったんだな。

「鈴菜がそんなに駄菓子好きだとは思わなかったな。別にメンバー入りだとかそんな大げさなもんじゃないから入ればいいんじゃないか?」
「――あ!」
「うん?」
「えへへ。貴俊くんがぐっと近づいてきた気がする~」

 何を言ってるのか意味が分からないが、メンバー入りが出来て凄く嬉しそうだな。その笑顔に少しだけドキッとした。

「……なるほどね。黒山だけ気づいてないぽいけど、いい傾向かもね」
「ん? 何が?」
「あんたはいちいち気にしなくていいから。こっちの話だし」

 音川が俺に厳しいのは直らないわけか。

「貴俊。事務室に出入り出来る制限がないなら、駄菓子の魅力を浅木に教えてやれば? そしたら何か変わるかもだぞ」
「変わる? まぁ、その方が俺の小遣いが増えるし頑張ってみる」

 それくらいで喜ばれるなら事務室を使わせるのも緩くしてもいいかもな。

「鈴菜。駄菓子を食べに来るんなら、そのついでに寝に来てもいいぞ」
「え、いいの~? わぁ~い! 貴俊くん、大好き~!」
「……」

 菓子が好きなついでに俺も好きなんだろうけど、みんながいる前で言うのは本当に勘弁してほしい。

「気づけよ、おバカ」
「ん~、素直な女子なのに全然気づかない貴俊もヤバいな」

 などなど、音川と河神が俺を見ながら呆れていたが、鈴菜の調子が良くなった昼休みだったのでよしとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...