守ってあげたい女子の学園二位に君臨する脱力系幼馴染が俺の義妹を見た結果、対抗手段を間違ってイケメン女子になった

遥風 かずら

文字の大きさ
12 / 37
第二章 新たなライバルで変化!?

第12話 守ってあげたい一位さん、鈴菜に助言する

しおりを挟む
 一位ってのは、もしかしなくても一位の話か?

「鈴菜の彼氏君、おっす~! あたしが井澄学園守ってあげたいランキング一位の響だぜ! 今日あったことは忘れていいから」

 ……やはりそうか。

 さっきまでと全然性格が変わらないというか、素がこれなんだ。

「俺、彼氏じゃないですよ」
「はぁ? 彼氏じゃないなら何? 下僕?」

 これでランキング一位なのか?

 鈴菜もこの人が俺の手を握っているのに何でか嬉しそうにしてるし、他の男子相手だと別人なんだなきっと。

「響ちゃん先輩~貴俊くんはわたしの幼馴染なんですよ~」
「幼馴染? あぁ、やつか。納得」

 どっちかというと、守ってやるぜ女子のような気がする。

「あの、そろそろ手を……」
「ん~? あぁ、悪ぃ悪ぃ! この手は鈴菜のモンだった。ほれ、返す!」
「えっ? あっ……」
「……よ、よぉ」

 普段手は握らないから妙に緊張するな。

「な~んか、納得いかない顔してんな~貴俊は」
「いや、そんなことは……」

 というか、呼び捨て!?

 思わず鈴菜の顔を見るも、一位を先輩呼びしてるだけあって凄く嬉しそうにしている。二位だから悔しいとかそういうのはなさそう。

「こんな強気な女が何で守ってあげたい女子ランキング一位かって、それはあたしがドジっ子だからだ!」

 言いながら響先輩は力強く仁王立ちしてみせた。

「そ、そうですか。……素で転びやすいってことですか?」
「それが何だ?」
「ちょっと心配になりますね。俺がとやかく言えるわけじゃないですけど」

 バランスが悪くて転びやすい人は多いからな。運動不足とか色々原因はありそうだが。

 しかし、鈴菜が俺の肩に手を置きながら首を横に振って。

「貴俊くん。響ちゃん先輩はドジっ子なんだよ。それ以外ないんだよ~?」
「……わ、分かった」

 多分、触れてはいけないことなんだな。

「鈴菜の幼馴染を拝めたし、あたしは帰る!」
「え~? もう帰っちゃんですか~?」
「邪魔しちゃ悪いし。ん~じゃあ、鈴菜。ちょっとこっちに」

 意味深な目で俺を見ても特に何も起きないんだが。

「は~い! 貴俊くん、そこで待ってて~」
「あ、ああ」
 
 しかし、ランキング一位の女子が姐御気質のドジっ子だったとは予想してなかったな。俺たちの前では素を出したっぽいけど、他ではそうじゃないかも。

 鈴菜と響ちゃん先輩が二人で話をしているので、俺はライムにきているメッセージをチェックすることにした。

「鈴菜っちにアドバイス! よぉく聞いてね」
「はい~」
「あの男子……幼馴染の貴俊は押しに弱いぞ! 鈴菜って自分から引くタイプじゃん? それだとあいつは駄目だと思う」

 そう言うと、響はスマホを触る貴俊を一瞬だけ見る。

「ふむふむ……」
「そうそう、メモは大事だぜ!」
「少しくらい強い感じでいくのがいいんですか~?」
「ん~そうじゃなくて、なんて言えばいいのかな。あたしを参考にしろとか言わないけど、女子が強い感じのマンガとかアニメを見て参考にするとかすればいいんじゃないか?」

 ……ふぅ。

 新人バイトの凪ちゃん交えて家族会議、しかも週末に自宅に帰る唯一の時間とか。多分ろくな話じゃない。俺を支店から追い出してあの子を代わりに――とか想像したくないぞ。

 ――って、鈴菜が一所懸命メモ取ってる!? 何を教えてんだ、あの人。しかも鈴菜が力強く頷いてるんだが。

 しかし普通なら学園一位の人に悔しがるはずの二位がリスペクト状態なら、俺から下手に文句なんか言えないしな。

 遠目ながら見守ってあげよう。

「ほら、あいつがそろそろ鈴菜を寂しがってんぞ。すぐに変われないだろうけど、参考にして少しずつ変わってみるのもいいかもよ?」
「でも、貴俊くんはわたしがいなくても平気っぽいです~」
「んん~、それならメモったことを忘れずに、あいつが気づかないように変わっていくしかないと思う。変わってしまったらランキング落ちるかもだけど応援してるよ! 鈴菜」
「ランキングなんてどうでもよくて~……でも、ありがとうございますです~!」

 お? やっと話が終わったか。

 自称ドジっ子の響ちゃん先輩は足下を気にしながら帰っていく。鈴菜は駆け足で俺のところに戻ってくるようで、何やら難しそうな顔をしている。

「おつかれ、鈴菜」
「うん~貴俊くん、おんぶして欲し……あ」
「へ?」
「ううん。大丈夫~今のなしで」

 俺におんぶを求めてきたと思ったら、何か無理難題なことでも言われたのか鈴菜は隣でずっと唸りながら歩いていて、ちらちらと俺を気にしてる感じだ。

「ん? そのメモ……」
「ダメダメダメ~!! これは響ちゃん先輩との大事なお話のメモで~……だから~」

 鈴菜は珍しいくらい拒んで、手にしていたメモをバッグの中にすぐに隠した。

「いや、俺も別にそこまで無理やり見るつもりはなかったけど……」
「怒ってない~?」

 ランキング一位の人の助言をメモったものなんだろうし、俺が怒るのは流石に違うからな。

「こんなことで怒らない」
「貴俊くんは優しいなぁ~……でも、わたし、頑張るからね~! 期待しててね~」
「ん? うん……」

 鈴菜はランキング一位の響先輩を頼りにしてる感じだった。その先輩から貰った助言メモを嬉しそうに持っていたので、おそらく守ってあげたい女子ランキングの助言のはず。

 図書室の告白場面からどうなるかと思ったものの、一位の先輩に会えたことで鈴菜は俺と別れるまでずっと機嫌が良かった。

 鈴菜はいいとして、問題は週末に帰る本店(自宅)での家族会議だ。俺に一体何が起きるのか、不安になりながら支店に帰った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...