26 / 44
第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染
第26話 変わったのは誰?
しおりを挟む
「ぼえ~♪♪♪」
……などと、某ジャイ●ンのごとくマイクを握って歌っているだけで、音川をはじめとした他のみんなが静かに部屋から出て行く中、ただ一人だけが俺の歌を聴いて嬉しそうにしている。
「アハハ! いいね、最高!」
「馬鹿にしてる?」
「どうして? 少なくとも君の歌声はボクには響くものだよ。他の誰もが拒んでもボクだけ君のファンになり続けてみせるよ」
「…………どうも」
これがイケメンの余裕というやつなのか。他の奴らは正直に酷い奴ばかりなのに、俺をここまで認めるなんて嬉しい以外の感情が見当たらないぞ。
音痴ながらも最後まで歌い切った俺は、隣に座るアサにマイクを勧めるが――
「――ボクは歌わないんだ。悪いね」
といって、はっきりと拒否されてしまった。歌が上手そうなのにあっさりと断られるなんて、必要以上に構ってほしくない感じなのか。
「えっと、アサさんって俺とどこかで会ったことがあるかな?」
「お店で会ってる」
「だよねぇ……」
「……」
何だか知らないが妙な緊張感があるな。
「本店の短期バイトって聞いたけど、普段は何を?」
「学校」
「あぁ、同い年だったっけ。ちなみにどこの学校に?」
ううむ、何で俺は質問攻めをしているんだろうか。歌を褒められたからって俺に興味がありそうな感じじゃないというのに。
「……ボクに興味があるんだ? こんな男の子っぽいボクに」
「いや、どう見ても女の子でしょ。雰囲気は全然違うけど、俺の幼馴染の子に似てるっていうか……」
どうしてそう思ってしまっているのか自分でも分からないが、何となく似てる。
「へぇ~……その子のこと、好きなんだ?」
「どうだろうな。俺がそうだとしても、あいつは単なる幼馴染として仲がいいだけって感じだろうし、お互い意識しても仕方がないってなってるから……って、上手く言えないなごめん」
何で俺はイケメン女子に鈴菜のことをべらべらと話してるんだろうか。全然話せなくなってるから愚痴りたくなった感じか?
「黒山くん。君から見て、どっちが変わったと思う?」
「変わったっていうのは?」
「印象とか、そういうの」
そうかと思えば彼女も俺に質問してくるんだな。
いくら俺の歌が殺人級に下手だからって二人きりにされるとそれはそれで困るのに、あいつらどこまで避難してるんだよ。
「う~ん……俺は変わってないけど、あいつはよそよそしくなったかも。何となくだけど」
「……なるほど」
少し寂しそうな表情になったみたいだけど、彼女にも思い当たる人がいるのかもしれないな。
「ただいま~! 黒山~ドリンク一杯持ってきたぞ!」
何となく話すこともなくなって沈黙状態が続いたところで、木下が勢いよく部屋のドアを開けて入ってきた。
「遅すぎだろ。一体どこまで取りに行ってたんだよ!」
「悪い悪い! トイレ行きつつビリヤードやってた。音川たちもすぐに戻ってくると思うぞ」
お調子者め。
「あ~……そういえばアサだっけ。こいつ、黒山のウワサとかなんか知ってる?」
「何も」
「何を言うつもりだ、木下」
「まぁまぁ」
そうやって俺の肩を組んでくるが、
「いやぁ~、こいつさ、最近超絶美少女な妹が出来てすっかり舞い上がっちゃってんだけど、そのせいで幼馴染に相手されなくなって妹の学校にまで迎えに行ってるってウワサなんだよ! どうなんだ? 黒山」
全然関係ないアサに凪のことを包み隠さずに言いやがった。
「妹は夏くらいに井澄学園に編入してくるんだよ。だからそれまで道順含めて迎えに行って家までの道を覚えてもらってるだけだ。幼馴染の問題は別だ」
「だろうな。黒山だとそんなもんだ」
「……美少女な妹が可愛くて迎えに?」
木下もうざいが、アサも何でそんな根も葉もないウワサを気になるんだか。
「可愛いけどそれだけ。そんなもんでしょ、妹って」
今までいなかったとはいえあれだけ過剰に甘えてくればそれに慣れるし、だからといって恋愛的な意味では考えてない。
同い年だとか義妹だとかを抜きにしても魅了されるレベルの美少女だけど、義妹って時点で幼馴染に抱く感情とは別だな、うん。
「そう、そうなんだ……」
そう考えると、甘えてくる女子をあまり得意としてないってことになるのか?
あのランキング一位の先輩みたいに多少強気な女子の方が気楽ってことになるけど、鈴菜はどっちかというと凪寄りの甘え女子、いや脱力系だからどっちとも取れないってことになる。
「じゃあ黒山って、別にあの妹ちゃんが好きってわけじゃないのか?」
「好きだけど意味が違うだろ」
「なるほどな~……そうだってよ、アサくん」
何でアサに訊いてるんだ?
そんな木下の言葉にアサはどことなく安堵の表情を浮かべている。
「で、黒山はまだ気づいてねえの?」
「何がだよ?」
「……いや、別に」
「はっきり言えっての!」
木下に詰め寄ろうとすると、音川たちがようやく部屋に入ってくる。何なんだ一体。
「ごっめ~ん! 全然違う話で盛り上がっちゃって遅れた~! で、木下くん。黒山くんの件は解決した感じ?」
「あ~……ただの誤解と勘違いだったっぽい」
「そうなんだ。でもさ、黒山は違うけどもう変わっちゃった本人は後には引けないって強い意志があるし、黒山が気づくまで放置でいいよ」
俺だけが知らされていない話を、こいつらだけで終わらせようとしているように見えるのは気のせいだろうか。
ちらりとアサの方を見てみると、彼女も俺をジッと見ていて何とも言えない雰囲気が漂う。
「気づいてないんだ?」
「な、何が?」
声は鈴菜に似てるが、しかしこんな感じじゃない。髪色も長さも全然違うし。
「気づこうとしてないのかもしれないけど、それならそれでわたしは君の妹に負けないくらいの自分を出して、そのうえで君を気づかせることにするよ」
……などと、某ジャイ●ンのごとくマイクを握って歌っているだけで、音川をはじめとした他のみんなが静かに部屋から出て行く中、ただ一人だけが俺の歌を聴いて嬉しそうにしている。
「アハハ! いいね、最高!」
「馬鹿にしてる?」
「どうして? 少なくとも君の歌声はボクには響くものだよ。他の誰もが拒んでもボクだけ君のファンになり続けてみせるよ」
「…………どうも」
これがイケメンの余裕というやつなのか。他の奴らは正直に酷い奴ばかりなのに、俺をここまで認めるなんて嬉しい以外の感情が見当たらないぞ。
音痴ながらも最後まで歌い切った俺は、隣に座るアサにマイクを勧めるが――
「――ボクは歌わないんだ。悪いね」
といって、はっきりと拒否されてしまった。歌が上手そうなのにあっさりと断られるなんて、必要以上に構ってほしくない感じなのか。
「えっと、アサさんって俺とどこかで会ったことがあるかな?」
「お店で会ってる」
「だよねぇ……」
「……」
何だか知らないが妙な緊張感があるな。
「本店の短期バイトって聞いたけど、普段は何を?」
「学校」
「あぁ、同い年だったっけ。ちなみにどこの学校に?」
ううむ、何で俺は質問攻めをしているんだろうか。歌を褒められたからって俺に興味がありそうな感じじゃないというのに。
「……ボクに興味があるんだ? こんな男の子っぽいボクに」
「いや、どう見ても女の子でしょ。雰囲気は全然違うけど、俺の幼馴染の子に似てるっていうか……」
どうしてそう思ってしまっているのか自分でも分からないが、何となく似てる。
「へぇ~……その子のこと、好きなんだ?」
「どうだろうな。俺がそうだとしても、あいつは単なる幼馴染として仲がいいだけって感じだろうし、お互い意識しても仕方がないってなってるから……って、上手く言えないなごめん」
何で俺はイケメン女子に鈴菜のことをべらべらと話してるんだろうか。全然話せなくなってるから愚痴りたくなった感じか?
「黒山くん。君から見て、どっちが変わったと思う?」
「変わったっていうのは?」
「印象とか、そういうの」
そうかと思えば彼女も俺に質問してくるんだな。
いくら俺の歌が殺人級に下手だからって二人きりにされるとそれはそれで困るのに、あいつらどこまで避難してるんだよ。
「う~ん……俺は変わってないけど、あいつはよそよそしくなったかも。何となくだけど」
「……なるほど」
少し寂しそうな表情になったみたいだけど、彼女にも思い当たる人がいるのかもしれないな。
「ただいま~! 黒山~ドリンク一杯持ってきたぞ!」
何となく話すこともなくなって沈黙状態が続いたところで、木下が勢いよく部屋のドアを開けて入ってきた。
「遅すぎだろ。一体どこまで取りに行ってたんだよ!」
「悪い悪い! トイレ行きつつビリヤードやってた。音川たちもすぐに戻ってくると思うぞ」
お調子者め。
「あ~……そういえばアサだっけ。こいつ、黒山のウワサとかなんか知ってる?」
「何も」
「何を言うつもりだ、木下」
「まぁまぁ」
そうやって俺の肩を組んでくるが、
「いやぁ~、こいつさ、最近超絶美少女な妹が出来てすっかり舞い上がっちゃってんだけど、そのせいで幼馴染に相手されなくなって妹の学校にまで迎えに行ってるってウワサなんだよ! どうなんだ? 黒山」
全然関係ないアサに凪のことを包み隠さずに言いやがった。
「妹は夏くらいに井澄学園に編入してくるんだよ。だからそれまで道順含めて迎えに行って家までの道を覚えてもらってるだけだ。幼馴染の問題は別だ」
「だろうな。黒山だとそんなもんだ」
「……美少女な妹が可愛くて迎えに?」
木下もうざいが、アサも何でそんな根も葉もないウワサを気になるんだか。
「可愛いけどそれだけ。そんなもんでしょ、妹って」
今までいなかったとはいえあれだけ過剰に甘えてくればそれに慣れるし、だからといって恋愛的な意味では考えてない。
同い年だとか義妹だとかを抜きにしても魅了されるレベルの美少女だけど、義妹って時点で幼馴染に抱く感情とは別だな、うん。
「そう、そうなんだ……」
そう考えると、甘えてくる女子をあまり得意としてないってことになるのか?
あのランキング一位の先輩みたいに多少強気な女子の方が気楽ってことになるけど、鈴菜はどっちかというと凪寄りの甘え女子、いや脱力系だからどっちとも取れないってことになる。
「じゃあ黒山って、別にあの妹ちゃんが好きってわけじゃないのか?」
「好きだけど意味が違うだろ」
「なるほどな~……そうだってよ、アサくん」
何でアサに訊いてるんだ?
そんな木下の言葉にアサはどことなく安堵の表情を浮かべている。
「で、黒山はまだ気づいてねえの?」
「何がだよ?」
「……いや、別に」
「はっきり言えっての!」
木下に詰め寄ろうとすると、音川たちがようやく部屋に入ってくる。何なんだ一体。
「ごっめ~ん! 全然違う話で盛り上がっちゃって遅れた~! で、木下くん。黒山くんの件は解決した感じ?」
「あ~……ただの誤解と勘違いだったっぽい」
「そうなんだ。でもさ、黒山は違うけどもう変わっちゃった本人は後には引けないって強い意志があるし、黒山が気づくまで放置でいいよ」
俺だけが知らされていない話を、こいつらだけで終わらせようとしているように見えるのは気のせいだろうか。
ちらりとアサの方を見てみると、彼女も俺をジッと見ていて何とも言えない雰囲気が漂う。
「気づいてないんだ?」
「な、何が?」
声は鈴菜に似てるが、しかしこんな感じじゃない。髪色も長さも全然違うし。
「気づこうとしてないのかもしれないけど、それならそれでわたしは君の妹に負けないくらいの自分を出して、そのうえで君を気づかせることにするよ」
0
あなたにおすすめの小説
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい
みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。
それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。
願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。
スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。
ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。
※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる