41 / 44
第三章 見えない幼馴染と見られる幼馴染
第41話 多分、合ってる
しおりを挟む
こんなあざと可愛いお願いをされて駄目なわけがない――けど、それってつまり。
「支店の事務室に寝泊まりするのとはまるで訳が違うんですよ? 鈴菜が俺にお願いしてるだけで、俺の中では変な意識が芽生えるんだけどそれはご存じでしょうか?」
変な訊き方をしてしまったが、鈴菜はどう答えるつもりだろうか。
「ん~……うん。貴俊くんのお部屋にお邪魔してるってことなので、多分貴俊くんの想像で合ってるかと思いますよ?」
「俺の真似するなよ……」
「してないし」
……何だ、前の鈴菜だな。イケメン女子化は見た目だけで、中身は結局あまり変わってないってのがいま分かった。
それにしても母さんに連絡して凪をあっさり退散させるとか、以前の鈴菜にはなかった行動力だ。連絡先だって今の今まで知らなかったはず。
いや、待てよ?
「ちなみにだけど、母さんの連絡先はどこから?」
「アルバイトだよ」
あぁ、そういやこいつの名前ってアサだったな。
「……アサとしてバイトをしてた時か!」
「だって連絡先はお互い聞かれるでしょ? その時に気軽に電話してきてねって言われてたから、バイト以外でも相談とか聞いてもらってたんだ~」
なるほど、その時から母さんとやり取りしてたのか。もちろん、今回の電話の結果は凪に備える為じゃないとは思うが。
もし凪を自分の力だけ(半分は母さん)でいずれどうにかしようとしていたとすれば、かなり時間をかけて実行していたということになる。
それはそうと。
「……で、泊まるんだよな?」
「うん。一緒に寝よ?」
「え……っと、それはつまり~最後まで平気的な?」
とはいえ、俺の反撃で少しだけ近いことをしちゃってるわけだが。
「――? よく分かんないけど、朝まで一緒だよ」
鈴菜は俺の言葉に首を傾げながらも嬉しそうにしている。
この様子だとまるで分かってないな。
雨でずぶ濡れの時に鈴菜の家で流しっこをしていたが、いま考えれば俺も凪もあの行為自体に特別な意識や感情は無かった。
でも今は、少なくとも俺の意識は完全に鈴菜に触れたいだとか、それ以上の動きを望んでいる。
だけど鈴菜の首傾げを見ると、多分俺だけがこういう意識になってしまっているだけで、鈴菜は単純に安心安全な幼馴染の部屋で寝るだけということしか思いついていない。
そうなるとどうなるんだ?
鈴菜の意図しない動きを俺がしてしまうと、その時点で泣いてしまうのでは?
「そ、そうなんだ。じゃあ、えっと……とりあえずリビングに下りて夕飯を食べるか」
「何か作ろっか?」
「食材があったかな……」
俺は普段は支店の部屋で適当に食べているが、週末に家に帰った時は一応親の手料理を食べている。
だが、多忙な人でもあるので冷蔵庫には保存のきくものしか入っていないことが多い。あとは定番のカップ麺かレトルト食品とかになってしまうわけだが。
「カップ麺でもいいよ」
「ん~そっか。じゃあ、そうするか」
凪がいなくなり、俺の部屋には鈴菜と俺だけになった――とはいえ、寝るにはまだ早く、かといって部屋から出ずに何かするという考えにはならない。
幼馴染としていつも一緒にいたのは確かだが、部屋で二人きりになったからといって今さら意識して何かを始める――そうなりそうにないわけで。
そんなよこしまな考えを俺の中だけで悶々とさせつつ、鈴菜と適当カップ麵を食べ終えた。
テレビを見るでもなく、このまま何事もなく部屋に戻って終わる。
……そう思っていると、
「貴俊くんのお家ってすぐ沸くんだっけ?」
「まぁ、割と」
「じゃあ、もう少し落ち着いたら入っていいよ?」
「……風呂に?」
「うん」
まさか俺の家で流し合いか?
「いや、でもお前、着替えは?」
「違くて、貴俊くんだよ」
「ん? 俺だけ風呂に入れって言ってる?」
「そう」
まぁ、そうだよな。そんなもんだ。
しかし一応提案はしてみる。
「着替えはともかく、お前も一緒に入っていいと思うが……」
「んとね、わたしはタオルで拭くだけでいいんだ~。貴俊くんは自分のお家だけど、わたしは流石に無理だよ」
「あぁ……それもそうか。悪い、そうする」
鈴菜の家の時は鈴菜のママさんが公認していたが、母さんは多分それを知らないはず。そうなるといくら幼馴染であっても、人の家で二人同時に風呂に入るのはよろしくない。
今は店に戻っているが、また家に戻ってこないとも限らないからな。
「じゃあタオルを貸すから、悪いけどそれで」
「先に体を拭いて、それで……先に貴俊くんのお部屋で待ってるね」
「――! あ、うん。分かった」
何も分かってないと思っていたのに、どうやら鈴菜も俺と同じことを思っていたってことでいいのかもしれない。
「貴俊くん。合ってるよね?」
――つまり、そういう意味のはず。
「そ、そうだと思う」
「……うん」
あぁ、そうか。鈴菜ととうとうそうなるのか。それなら念入りに洗っておかないと駄目だな。
「支店の事務室に寝泊まりするのとはまるで訳が違うんですよ? 鈴菜が俺にお願いしてるだけで、俺の中では変な意識が芽生えるんだけどそれはご存じでしょうか?」
変な訊き方をしてしまったが、鈴菜はどう答えるつもりだろうか。
「ん~……うん。貴俊くんのお部屋にお邪魔してるってことなので、多分貴俊くんの想像で合ってるかと思いますよ?」
「俺の真似するなよ……」
「してないし」
……何だ、前の鈴菜だな。イケメン女子化は見た目だけで、中身は結局あまり変わってないってのがいま分かった。
それにしても母さんに連絡して凪をあっさり退散させるとか、以前の鈴菜にはなかった行動力だ。連絡先だって今の今まで知らなかったはず。
いや、待てよ?
「ちなみにだけど、母さんの連絡先はどこから?」
「アルバイトだよ」
あぁ、そういやこいつの名前ってアサだったな。
「……アサとしてバイトをしてた時か!」
「だって連絡先はお互い聞かれるでしょ? その時に気軽に電話してきてねって言われてたから、バイト以外でも相談とか聞いてもらってたんだ~」
なるほど、その時から母さんとやり取りしてたのか。もちろん、今回の電話の結果は凪に備える為じゃないとは思うが。
もし凪を自分の力だけ(半分は母さん)でいずれどうにかしようとしていたとすれば、かなり時間をかけて実行していたということになる。
それはそうと。
「……で、泊まるんだよな?」
「うん。一緒に寝よ?」
「え……っと、それはつまり~最後まで平気的な?」
とはいえ、俺の反撃で少しだけ近いことをしちゃってるわけだが。
「――? よく分かんないけど、朝まで一緒だよ」
鈴菜は俺の言葉に首を傾げながらも嬉しそうにしている。
この様子だとまるで分かってないな。
雨でずぶ濡れの時に鈴菜の家で流しっこをしていたが、いま考えれば俺も凪もあの行為自体に特別な意識や感情は無かった。
でも今は、少なくとも俺の意識は完全に鈴菜に触れたいだとか、それ以上の動きを望んでいる。
だけど鈴菜の首傾げを見ると、多分俺だけがこういう意識になってしまっているだけで、鈴菜は単純に安心安全な幼馴染の部屋で寝るだけということしか思いついていない。
そうなるとどうなるんだ?
鈴菜の意図しない動きを俺がしてしまうと、その時点で泣いてしまうのでは?
「そ、そうなんだ。じゃあ、えっと……とりあえずリビングに下りて夕飯を食べるか」
「何か作ろっか?」
「食材があったかな……」
俺は普段は支店の部屋で適当に食べているが、週末に家に帰った時は一応親の手料理を食べている。
だが、多忙な人でもあるので冷蔵庫には保存のきくものしか入っていないことが多い。あとは定番のカップ麺かレトルト食品とかになってしまうわけだが。
「カップ麺でもいいよ」
「ん~そっか。じゃあ、そうするか」
凪がいなくなり、俺の部屋には鈴菜と俺だけになった――とはいえ、寝るにはまだ早く、かといって部屋から出ずに何かするという考えにはならない。
幼馴染としていつも一緒にいたのは確かだが、部屋で二人きりになったからといって今さら意識して何かを始める――そうなりそうにないわけで。
そんなよこしまな考えを俺の中だけで悶々とさせつつ、鈴菜と適当カップ麵を食べ終えた。
テレビを見るでもなく、このまま何事もなく部屋に戻って終わる。
……そう思っていると、
「貴俊くんのお家ってすぐ沸くんだっけ?」
「まぁ、割と」
「じゃあ、もう少し落ち着いたら入っていいよ?」
「……風呂に?」
「うん」
まさか俺の家で流し合いか?
「いや、でもお前、着替えは?」
「違くて、貴俊くんだよ」
「ん? 俺だけ風呂に入れって言ってる?」
「そう」
まぁ、そうだよな。そんなもんだ。
しかし一応提案はしてみる。
「着替えはともかく、お前も一緒に入っていいと思うが……」
「んとね、わたしはタオルで拭くだけでいいんだ~。貴俊くんは自分のお家だけど、わたしは流石に無理だよ」
「あぁ……それもそうか。悪い、そうする」
鈴菜の家の時は鈴菜のママさんが公認していたが、母さんは多分それを知らないはず。そうなるといくら幼馴染であっても、人の家で二人同時に風呂に入るのはよろしくない。
今は店に戻っているが、また家に戻ってこないとも限らないからな。
「じゃあタオルを貸すから、悪いけどそれで」
「先に体を拭いて、それで……先に貴俊くんのお部屋で待ってるね」
「――! あ、うん。分かった」
何も分かってないと思っていたのに、どうやら鈴菜も俺と同じことを思っていたってことでいいのかもしれない。
「貴俊くん。合ってるよね?」
――つまり、そういう意味のはず。
「そ、そうだと思う」
「……うん」
あぁ、そうか。鈴菜ととうとうそうなるのか。それなら念入りに洗っておかないと駄目だな。
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる