さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第一章 思い立つおっさん

第8話 ダークエルフ娘、助手を懇願する

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 縄を解き、冒険者たちから解放されたダークエルフの娘はすっかり大人しくなっていた。

 それが眠り草による副作用のせいなのかは分からなかったが、俺よりも冒険者たちの方が困惑していた。

 どれだけ暴れたのかって話になるが。

「すみませんでした!」
「ごめんなさい……。変な目に遭わせて」
「……もう何ともありませんので」

 ダークエルフ娘に対し二人の男女が真剣に頭を下げている一方、もう一つの道具を所持している男に話を聞いているのだが、やはりおかしな使い方をしていた。

「え? ポイズンロッドを沼から顔を出した魔物にぶん投げた? 何でそんな使い方……」
「こ、この辺りはまだマシかもだけど、この先は沼ばかりになる。だから、毒で弱らせておけばおれ達が危険にさらされることはないんじゃないかって……」

 ここにいる四人の冒険者パーティーのうち、空に浮かんでいる奴は別だが、二人はそれぞれ変わり種な物を借りていた。

 眠り草はダークエルフの娘に生食させたことで消失、そして残りの武器であるポイズンロッドなる杖はこの辺りの沼に投げ入れたという。

「あのなぁ……、魔物だからって襲いもしない相手に投げていいと思ってるのか?」
「た、確かに」
「それに、大森林の沼地は単なる沼じゃないんだぞ! 沼の奥……地下には魔法王国があるんだが、知らなかったのか?」
「えぇっ!? 本当に?」

 高原のE級しかり、大森林エリアの冒険者パーティーしかり……やはり辺境エリアに高いクラスの冒険者はいないってことか。

 俺の店から道具をレンタルした冒険者がすぐに見つかるのはいいが、国境を越えて賑やかな場所に行かないと冒険者の実力も上がってこないのかもしれないな。

 それにしても問題発生だ。よりにもよって魔法の武器を沼に投げ入れるとか、どう考えても俺が頭を下げにいかなければならないじゃないか。

 魔法王国だから魔法防御力は高いと思われるが、それもあくまで昔の話。果たして今の王国がどうなっているのか。

「あ、あの、ダークエルフさんと和解しました。それでその、私たちはどうすればいいですか?」

 冒険者の道具扱いに頭を悩ませる中、どうやらシャンテなる娘と冒険者の間で誤解が解けたらしく、残りの二人も俺の前に戻ってきた。

 ダークエルフの娘はチラチラと俺を見てはくるが、何かを話す感じじゃなさそうだ。

「バーネルのアクセルさん。ここに来てくれて本当に助かりました。道具の使い方をきちんと聞いたつもりだったんですが、眠り草は不可抗力で……」

 ダークエルフの娘と共に冒険者の彼らは正直に頭を下げてくる。

「それについては、空に浮いてる奴に後できちんと言い聞かせてやってくれ」
「はい、必ず」
「彼はいつ解放されるんですか?」

 横柄な態度の男は今でも空に浮いているが、羽根の効果時間はそれほど長くなく一定時間さえ過ぎれば地上に下ろされるので大したことではないだろう。

「浮いてる間に暴れなくなった時くらいには下りてくる」

 だがポイズンロッドの方は色々とヤバい。

「魔法王国に悪影響を及ぼす……ですか? そ、そうだったんですか。まさか沼地の奥に王国があるだなんて、噂で聞いても信じていなかったんです」

 残りの二人にも話してみたが、やはり沼地に対する知識が足りていなかった。こうなると彼らと一緒に行って謝らせるか、あるいは。

「アクセルさま。沼地の王国へ行かれるのですか?」
「ああ。そうなるな」

 冒険者の彼らと俺の話を聞いていたのか、さっきまで大人しかった彼女が前に出てきて自信ありげに話を始める。

「でしたら、わたくしをお供にお連れくださいませ!」

 そういや、ダークエルフは大森林エリアのほとんどを把握しているんだったな。いつもはダークヘイムから出てこないことが多かったのに、外で鍛錬してたし。

「詳しいのか?」
「はい! 父とわたくしとで、沼地の王国へ足を運んだ時がありました。そこへの道も迷わず行けるかと」
「シャンテ……だったか。今回は謝罪を兼ねての訪問になるんだが、大丈夫か?」
「あぁぁぁぁぁ!! わたくしの名前を呼び捨てしてくださるなんて! 不肖ながら、わたくしはアクセルさまの目となり腕となってお役に立ってみせましょう!」

 ……随分と大げさな娘だ。目は分かるが腕ってなんだ?

 俺と出会って話をしたのは今回が初めてのはずなんだが、俺に助けられた恩義がとてつもなく強すぎる。

「助手《パートナー》でいいって意味か?」
「そ、その通りですっっ!! 魔法王国だけでなく、その先もお供させていただけたらとても喜びます! 未熟者ではありますが、どうかご許可を!」

 抵抗してくる冒険者がいても怖くもなんともないが、複数で来られた時は面倒事が起きるはず。今だって例外じゃない。

 そうなると国を越えていく時でも交渉出来る奴がそばにいれば、俺のサーチが捗る可能性がありそうだな。

 食事の問題が出てきそうだが、それも話し合えば何とかなる。

「……分かった。シャンテ。お前を俺の助手とする。今からしばらくは一緒に動いてもらうぞ。それでいいか?」
「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 シャンテはその場で何度もジャンプして喜びを露わにする。

 あれ、お嬢様言葉はどこにいった?

 それに眠り草の副作用で弱っているはずなんだが。

「……こほん。それでは冒険者たちの処遇についてはいかがいたしますか?」

 気のせいか。

「すでに反省はしているからな。空に浮いてる男もいることだし、この場に留まってもらう。沼地の魔物がもし出てきたら自分たちの力で対処してもらえばいい」
「承知いたしました! そのように伝えます」
「……ああ、任せた」

 俺を追いかけてきたダークエルフの娘の理由は未だ不明だが、眠り草の副作用がそうさせたのかはともかく、従順な態度を見せてきたからには助手を断る理由にはならない。

 まずは沼地の王国を目指して進むだけだ。

 王国内で反応を感じる道具もいくつかあるし、冒険者以外の者にも俺が教えてやらなければいけない場面が必ずあるはず。

 そう考えると、ここで俺よりも強そうなダークエルフの娘を得られたのはかなりデカい。少しずつ道具の知識も教えていけば、いずれレンタル道具屋の店員くらいには育つかもしれないな。

「うあああああああ!!! く、くそっ! 下ろせっ! 下ろしやがれ!!」

 ……元気があるってことは羽根の効果時間はまだ続きそうだな。
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