さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第一章 思い立つおっさん

第9話 沼地の王国パルーデに向かう途中で

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「はぁっ!」
「お、おおお……!」

 凄いな、本物の強さじゃないか。

 助手となったダークエルフのシャンテと一緒に、俺は沼地の王国を目指して湿地帯をひたすら歩いている。

 ここまで来ると今まで皆無だった魔物が行く手を阻むようになり、戦わざるを得ない状況に陥るわけだが、俺が戦うまでもなく(戦えないが)シャンテが率先して魔物に向かっていくので俺はボケっと立って見ているだけだったりする。

「このぉっ!!」

 この辺りには着生生物に紛れ、全身に絡みついてくる食獣生物が多くいるようだが、シャンテはそれらを全て切り裂きながら進んでくれているので俺としては非常に有難い存在だ。

 湿地帯といっても大森林エリアに位置するせいか、魔物の出現とともに木々の緑が一段と影を濃くしていて油断は出来ない状況が続いている。

 そんな中、シャンテは時折何かを期待する眼差しを俺に注いでくるが、俺にも戦えという眼差しなのだろうか?

「アクセルさま、いつでもよろしいですよ!」
「……ん?」
「謙遜なさらずとも、父の前でお見せした見事な槍さばきであればそこらの魔物ごとき一瞬で切り裂けるではありませんか!」

 インチキなアレか。

 俺は実は弱くて戦ったことがないんだ――なんて言えないな。元荷物持ちだから荷物を持つ力とかはあるが、それもすでに衰えていて話にならない。

 一時的に力を高める道具があるとはいえ、あくまで商売道具。極力俺が使うような事態は避けなければ。

 しかし。

「シャンテは俺が強そうに見えるのか?」

 王都から出たことのないただのレンタル道具屋のおっさんなのに。

 だが、長身のシャンテは少し前かがみになりながら目を輝かせて――

「――当然です! わたくしの父はダークエルフでは名うての槍使いでございました。その父と槍の仕合はとても目を見張るものがありました! アクセルさまは、さぞ名のある槍術士に違いないと確信し、それでわたくしは後を追ったわけなのです」

 思い込みが激しいのもそうだが、見せてはいけない娘に嘘を見せてしまったか。
 
「そうか。しかし俺は人前では戦わないことにしているんだ。その意味が分かるか?」
「な、なぜでしょう?」
「あまりにも強大すぎて(俺の体を)破壊しかねないんだ。今の俺が武器を振り回したりしたら、途端に(背骨やら腰)周りを巻き込んでとんでもないことが起きてしまう。だから、分かるだろう? 言ってる意味が……」

 実際のところ、S級冒険者が扱うような武器もあるからな。そんなのを今の俺が手にしたら、骨の一本や二本以上は折れても何らおかしくない。

 ちょっと無理のある言い訳だったのか、シャンテは口元に手を置いて真剣に考えこんでいる。

 ――って、うおっ!?

 スライムまでいるのか! 体の一部を触手状態にして襲い掛かるとか、反則だろ。

「シャンテ、スライムが!!」
「はっ! 今すぐに潰します」

 俺の言葉にシャンテは槍の先端を勢いよくスライムに突き刺し、スライムの動きを完全に封じる。

 ……良かった。きちんと対処してくれるみたいだ。

「では、アクセルさま。これからの道中では全てわたくしが魔物を倒してもよろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。シャンテにしか出来ないからな!」
「そ、そこまでわたくしを信じてくださるのですね! このシャンテ、目いっぱいご奉仕させていただきます!!」

 大丈夫だよな?

 別の意味で言ってる意味じゃないよな?

「スライムの核です。アクセルさまどうぞ」
「お、悪いな」

 律儀に魔物の核を回収するとか、仕事出来すぎだろ。

 俺の弱さを何とか誤魔化し、シャンテと共にパルーデへ向かって歩いていると、ようやく湿地帯を抜け出すことが出来た。

 沼地の王国は湿地帯を抜けた先にあり、そこまで到達出来ない冒険者が多い。

 そう考えると、俺が預けられた冒険者パーティーはかなり強いクラスの冒険者だったのではないだろうか。

「アクセルさま。もう少しで沼地の王国へ到着しますわ」
「お、そうか」

 流石に王国周辺に近づくと魔法生物はおろか、半端な攻撃力を持つ魔物の姿は見かけなくなる。

 もちろん中途半端なクラスの冒険者も迂闊に近づけなくなるのだが、王国の隠し沼に近づいた俺たちの前を誰かが横切ったらしく、シャンテだけすぐに気づいた。

「貴様、何者だ!」

 そう言ってシャンテはすぐに槍を構えているが、相手を刺激するような言い方は出来れば控えて欲しいところだ。

「お前たち、沼地の王国へ行く冒険者……か?」

 見たところソロの女冒険者のようだが、見掛け倒しではなくかなりの実力の持ち主のような気がする。俺にはその気配を感じるスキルもありはしないが。

「だとすれば何とする!」

 頼むから相手を刺激しないでくれ。

「俺はレンタル道具屋だ」
「アクセルさま。そこまで謙遜なさらずとも……」

 事実だからな。

「レンタル道具屋? 確か王都バーネルで何かを借りた気がするが……」

 おかしいな。道具の反応をこの冒険者から一切感じないぞ。

 それとも今は手にしてないのか?

 道具を借りといて携帯せずに適当なところを歩き回っているとしたら、こいつも道具の使い方を知らずに放置しているとみるが。

「借りた道具を手にしていないのか?」
「……すまない。今は私の手元にないんだ。レンタル道具屋には申し訳ないが、今すぐ返すことは出来ない」
「では、どこにある?」
「それも今は言えない。とにかく、お前たちも沼地の王国に行くのであれば、パルーデ噴水には近づくな」

 もしや毒の影響で何か異変が起きている?

「あんた、強そうだが問題は解決出来なかったのか?」
「私一人では厳しいと判断した。仲間と別行動を取っていたのが仇となったが、時間が必要と判断した以上今は去る。もし行くならお前たちも気を付けた方がいい」
「あっ、待てっ!!」

 シャンテの呼び止めにもかかわらず、ソロの女冒険者はこの場からいなくなってしまった。仲間と言っていたが、A級もしくはS級冒険者パーティーだろうか?

 引き留めたところで向こうは言うつもりがなさそうだったし、今は仕方ない。

「何者だったのでしょうか?」
「冒険者には違いないだろうな」

 シャンテには言えないが、恐らく実力はシャンテよりも格上――。

「冒険者は好きではありません。父が言っていましたが、ダークヘイムをむやみやたらに訪れる冒険者が迷惑をかけていたと聞かされました。人に迷惑をかけるなど、わたくしは許せません!」

 そう考えると、俺の道具を借りた冒険者が誰かに迷惑をかけているのを追いかける旅はシャンテにぴったり合致する。

 ポイズンロッドの影響で何かが王国に起きていることを考えれば、今はあの冒険者よりも王国の状況を確かめなければならない。

「俺も同じだ。だから、シャンテ」
「は、はい」
「気合入れてパルーデに進むぞ」
「かしこまりました! アクセルさま」

 魔道具で解決出来ればいいんだが、それよりも問題はパルーデの王女だな。
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