さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第一章 思い立つおっさん

第12話 おっさんを信じあうエルフたち

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「お城から連れ出せる道具? なんだ、クレアは王国に不満でもあるのか?」

 魔法王国としては確かに小さい国ではあるが、きちんと統制の取れた国だと思うのだが。

「バカね、そんな低劣な理由じゃないわよ! あなたも今まで王都から出ずに過ごしてきたんでしょ? それと同じで、わたしも沼地から外に出ていないの。あなたについて行けばこことは違う世界が見れそうだなぁって期待してるだけなの」

 理由は何であれ、王都から出ることが全くなかった俺からしたら何も言えなくなる。冒険者の良くない噂が理由で旅をしているとはいえ、当時と違う世界を見られているのは確かだからな。

 ミレイに再会出来たら改めてお礼を言わないとだ。

「期待か。そんな大したことはしてないんだが……。で、王女のお前よりも凄い魔法を見せれば連れ出せるのか?」
「それは無理ね! だってあなた、弱いじゃない」
「……よく分かってるじゃないか。じゃあ何をどうしろと?」

 王女を連れ出す行為はあるまじき行為だと思うのだが、冒険者の問題も山積みなのに新たに王女を連れ出し問題まで起きるのは勘弁だぞ。

「国民の前でわたしがあなたを認めてあげる! その時、国民が見ている前で移動していなくなってしまえば文句も何も出ないわ。どう、出来る?」

 相変わらず俺にとって理不尽なわがままを言っているに過ぎないな。王国民はそれほど多くないにしても、いきなり来た俺を認める意味が分からん。

 噴水に行かせたシャンテを戻さないとだろうし、何でも王女の言う通りにするのは流石にまずい。

 公衆の面前で堂々と移動するとなるとアレしかないだろうが。

「外に出られる道具を使えばクレアは俺を認めるんだな?」

 パルーデ王国に毒を流して謝りに来ただけなのに何でこんなことに。シャンテと揉めなければいいが。

「そうね。何ならあなたのいた王都にでも行って、あなたのお店を盛り上げてみせるわ! そうじゃなければ、そうね……あなたを信じてついて行くわ! あなたの凄さを冒険者バカどもに知らしめてあげるわ」

 冒険者に知らしめるのが目的じゃないが、魔法王国の王女を連れて歩けば名声は上がりそうだな。

 ……何より、道具を使わなくても魔物相手に何とかしそうな助っ人になるだろうし非常に助かる。

「冒険者の問題は移動しながら話すとして、国民を集める場所があるのか? それに王女がいなくなったら王国の防御は大丈夫か?」
「ふふん、パルーデには優秀な魔法士が沢山いるの。魔法壁も彼らのおかげで成り立っているのよ? 凄いでしょ!」
「なんだ、クレア一人でやってるわけじゃないのか」
「やらないわよ。そんな面倒なこと」

 まあ俺が余計な心配しなくても、沼地を陥れようとする冒険者は――いないか。

「それなら、噴水に行くぞ。俺の助手もそこにいるだろうからな」
「ダークエルフの娘ね? 今頃は毒を勝手に中和してるんじゃない?」
「……さぁな」

 出会って早々に対立して戦闘が始まらなきゃいいが。
 
「アクセルさま! お待ちしていました!」

 パルーデ噴水前に着くと、クレアが集める前にすでに人だかりが出来ていた。しかも、その中心人物はシャンテだった。

 シャンテは俺が近づく前にその場で膝をつき、俺の言葉を待っている。王国民がいる前でそんなしなくても。

「シャンテ。毒の有無はどうなった?」
「はい。アクセルさまのお申し付け通りここの水を汲み、口に含んで毒性を確かめたところ何も問題は起きなかった為、王国の皆様には問題なく召し上がって――」
「ま、待て! 水を汲んで飲んだのか!? 俺、そんなこと言ったか?」
「あ、水を口に含んだのはわたくしの判断でして、ですがとても美味しく飲むことが出来ましたよ。そしたら皆様から感謝の拍手を頂いてこの場に留まっていたのです」

 ダークエルフだからってここまで万能なことが出来るのか?

「ほらね、だから心配いらないって言ったでしょ? ダークエルフは毒を殺すことが出来るの! ひよっこなアクセルが心配するだけ無駄なのよ!」

 ……また余計なことを。

「お、王女さま……」
「クレア様!」
「パルーデに栄光あれ!!」

 王城にいる者を除いてほとんどの民が噴水前に集まっている中、クレア王女が現れた時点でほぼ全ての民が王女に対し膝をついていた。

「アクセルさまに無礼な! あなたは、エルフ……!? まさかアクセルさまを惑わしているのではあるまいな?」

 見ると俺とクレアとシャンテだけがその場に立っていて、シャンテだけすぐに王女に向けて槍を構えている。

「なるほどね。この娘がそうなんだ。なぁんだ、まだ小娘じゃない! やり合えばすぐに分かることだけど、民の前でそんなバカな真似はしないわ。アクセルから小娘を説得しなさい!」

 結局そうなるのか。民がいなければ相手をしてやったかもしれないが、そこは流石にわきまえてるわけだな。

「シャンテ、落ち着け! 目の前のエルフはパルーデの王女、クレア王女だ。この噴水で演説をするために一緒にいるだけで何もされてないぞ」

 まぁ、先制攻撃未遂はあったが。

「お、王女!? パルーデの王女様なのですか? こ、これは失礼いたしました!!」

 俺を守る為なのかもしれないがちょっと、いや、かなり過保護すぎる。

「分かればいいわ。あなたの名はすでにアクセルから聞いているのだけど、その前にパルーデの水を浄化してくれてありがとう! 感謝するわ」

 そう言ってクレアはシャンテに握手を求める。

「い、いえ、とんでもございません! わたくしは何もしておりませんので……」
「……あなたは自分の能力を分かっていないのね。それはそれで、楽しみが出来そうね……」

 クレアの奴、悪そうな顔をしているな。

「ところであなた、アクセルを信用しているの?」
「もちろんです! アクセルさまこそ、わたくしの道筋を照らしてくださるお方! 助手として連れて行ってくださる以上、アクセルさまのお役に立つのは当然の務めでございます」
「……お、大げさなのね。まぁ、わたしもアクセルを信じているんだけど。どう? 信じている者同士、協力してアクセルを助けるというのは」
「で、では、今度において共によろしくお願いいたします!」
「ええ、よろしくね」

 俺はただのレンタル道具屋なんだが?

 おっさんを信じあったって何も出来ないぞ?

「さて、と。パルーデの民たち、顔をお上げなさい!! わたしとここにいるダークエルフとで、この人間アクセル・リオットについて行くことを決めたわ! そうすることで、パルーデ王国はますます繁栄、いいえいずれ大国になると宣言するわ!」

 おいおいおい、大国って何だそりゃあ!

「パルーデ王国はアクセルを師と崇め、今後を生きていくものと知りなさい!」

 ははーー!!

 ……などと、国中から威勢の声が響き渡る。

 何だよ、師って。まだ何もしてないんだが?

「さぁ、アクセル! 民が見ている前でわたしとシャンテを飛ばしなさい! ……出来るでしょ?」

 テレポート魔法スクロールのことを知っていやがったな?

 しかし俺が使える残りのテレポートスクロールは確か、極寒の……。

「飛ばすのは可能だ。しかし、どこに飛んでも文句言うなよ?」
「アクセルさまに文句など言うはずがありません!!」
「つべこべ言わずに飛んで! そうしたらパルーデ王国はそれなりの生き方を選択するんだから!」
「分かった。後悔しても知らんぞ。二人とも俺の手を握れ」

 二人のエルフは、国民に手を振り笑顔を見せながらその時を待っている。

「……テレポート:サルドレットだ!」
「――え、そこって――」

 クレアがすぐに気づいたようだが、有無を言わさず俺たちは北の極寒都市へテレポートした。
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