さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

文字の大きさ
13 / 38
第二章 英雄否定のレンタル道具屋

第13話 極寒都市サルドレットでの再会

しおりを挟む
「アクセル!! あなたねぇ~! 寒いところに行くなら行くって先に伝えなさいよ!」
「どこに飛んでも文句は言わないと言ったんじゃなかったのか?」
「極寒都市なんて予想外にも程があるわよ!!」

 クレア王女が真っ先に文句を言うとは思っていたが、予想通りだった。それに引き換え、シャンテからは何の文句も出ていない。

「シャンテは寒さは平気なのか?」
「はい。わたくしはダークヘイムの生まれですから、どんな環境下であっても割と平気なんです」

 それは凄いな。ダークヘイムのダークエルフに弱みなんてないのでは?

「ちょっと! 王女であるわたしを心配しなさいよ! あなたの道具で何とかしてよ!!」
「クレアは魔法が使えるんだから自分で温めればいいだけだろう?」
「何でそんなことで魔力を使わなきゃいけないのよ! 早くしてってば」

 本当にわがままな王女様だな。

 しょうがない、えーと……確か防寒用の――

「――クレア。これを着て大人しくしててくれ」
「な、何だかモコモコしてるけど、【タイガーローブ】? ふ~ん。これで我慢しておくわ」
「有難く思えよ? その防寒具は虎人族の友人がこしらえてくれたレアものなんだから」
「へぇ~? 虎人族こじんぞくなんていたのね」

 今はどうだろうな。古い友人の今が気になるところではあるが、知る術もないからな。

 しかし――残ってるテレポートスクロールが辺境しかないというのも困りものだな。都市や国のように便利な場所はレンタルで冒険者たちが借りてしまったし、だからといって王都の店に戻るわけにもいかないし。

 俺が貸しているテレポートスクロールは使えばすぐに発動するが、スクロールそのものは店の倉庫に自動的に返ってくるようにしている。

 倉庫に戻ったものに関しては一定の魔力回復期間を要するので、無限収納を使っても使えない状態でしか取り出せない。

 まぁ、そう何度も頻繁に使うものではないから気にすることではないんだが。

「アクセルさま。サルドレットへ進みませんか?」
「お、そうだな。入り口で立ち止まったところで寒いのは回避出来ないしな」
「アクセル。あなたは寒そうにしてないけど、どうして?」

 極寒都市に飛ぶ前、正確には沼地に進む前に耐氷ピアスを付けていたが、湿地帯の時は若干蒸し暑かった。

 外す前に極寒都市に来たのは偶然だったが、上手くいって良かったと言える。

「俺? 俺は氷耐性のフレイムピアスをつけてるからな。むしろ暑いくらいだ」
「本っ当にズルい男なんだから!!」

 極寒都市サルドレットは、王都バーネルの遥か北に位置する都市でロアード王国の領土内でもある。

 そういや、ここには――。

「む? 印の魔石が複数反応してるな。こんな極寒の地に冒険者が多く来ているのか?」

 ここにテレポートした直後からそんな反応を感じていたが。

「印の魔石でございますか?」
「あぁ、俺が貸している道具には僅少な魔石の欠片を印として付着させているんだ。そのおかげで、冒険者や俺の道具が近くにあればサーチスキルが仕事してくれる」
「そ、そのようなものが! 流石はアクセルさまです!!」
「ふぅん~。案外細かいのね、あなた」

 そりゃ余計なお世話だ。

 魔法がまともに使えないうえ魔力のない奴は、細かくて見えないところで工夫しなければやっていけない話だからな。

 サルドレットは都市とついているが、外を出歩く人はあまり見かけない。城のような高さのある構造物はなく、ぽつぽつと建ち並ぶ三角屋根の家は基本的に丸太作りが多く屋根には土を敷き詰めている。

 ここに住んでいる人間はほとんどが鉱山夫。家畜を育てる者もいるが、鉱山が近くにある以上自然的に鉱山夫ばかりになるのは仕方ないかもしれない。

 唯一中層程度の建物といえばレンガ造りの教会があるが、真っ白い雪が積もりに積もって半端なく寒そうだ。

 宿もあるが、鉱山の中にあるから鉄道を使わないと行けない。

「アクセルさま!」
「アクセル。誰か来るわ」

 おっと、街並みを気にしていたら神経がそっちに取られていたな。シャンテとクレアが警戒する方に目を向けないと。

「あれっ? アクセルさんじゃない?」

 おっ! この声は――

「――ミレイか! 久しぶりだな、ミレイ!」

 王都から国境の途中まで外を歩いたミレイ率いる傭兵団は北に行くと言っていたが、まさか極寒都市にいるとは。

 俺が王都を出てからかなり日数が経っているはずなのに、諜報任務はそこまで長期的にかかるものなのか?

「わぁっ! アクセルさんだ~! 凄い~ここで会えるなんて! 嬉しいな」
「ははは、俺も嬉しいぞ」
「本当だよ~。どうしたの? 南の方の冒険者は解決してきたの?」
「いいや。だが、数は少ないが正しい使い方はきちんとレクチャーしてきたぞ! それでも全然だけどな」

 辺境をうろうろしてる冒険者に厄介そうな者が多くないから仕方がないかもしれないが。

「でもアクセルさんの教えで考えを改める人が出るんだから、それってやっぱり大切なことだよ~!」
「そ、そうか? ミレイに褒められると嬉しいものだな! はははは!」

 そういえばミレイしか見当たらないが。

「ミレイ。他の連中はどこに――」

 あっ、しまった。シャンテとクレアがいたんだった。ミレイに再会したのが嬉しすぎて紹介するのが遅れてしまったな。

 俺が危惧するよりも先に、二人のエルフがミレイに対峙している。

「あなたさまは一体アクセルさまの何なのでしょうか?」
「ただの人間のようだけど、ひよっこアクセルの何? いやに親しそうにしていたみたいだけど?」

 エルフ族は元々人間相手に厳しい。心を許さない限り、誰であろうと厳しく詰め寄るのだが……。

「王都バーネルのミレイ・ベルジュ。ロアード王国の傭兵騎士団に所属している者です。王都にあるアクセルさんのお店の常連で凄くお世話になっています」

 おお、長身のエルフたちに負けてないな。

「あなた、赤髪ということは、炎の精霊でもついているの?」
「いいえ、別に」
「ふ、ふぅん……」

 クレアはそこまで敵対してないというか、敵わないとみたのかすぐに引いているがシャンテはまだ納得してない感じが見える。

「アクセルさま。わたくしとこの方、どちらが強いとお思いですか?」
「ん? 強さ?」

 クレアの時はすぐに納得していたのに、シャンテはミレイの何を警戒しているのか。諜報活動をする者だから殺気が高いのは仕方ないと思うのだが。

「シャンテ。駄目だぞ? ミレイは国の任務を遂行中なんだ。その邪魔をすれば、王国王都が危なくなる可能性があるってことを気にしてくれ」
「も、申し訳ございませんっ!!」
「……分かればいい」

 ミレイに敵対行動を取るのは流石にな。

「アクセルさん。会わない間にエルフ二人を連れて歩いてるなんて、やっぱりアクセルさんって若々しいよね! 全然おっさんじゃないって言った通りだったね」
「お、おう」

 ミレイはあくまで店の常連客だから、俺に対してそこまでムキになるということはなさそうだな。

「あぁ、そうそう。そこのダークエルフさん。どうしても戦いたかったら、鉱山の中でやろっか? 納得がいくまで相手してあげる……」
「望むところです!!」

 あ、あれ?

 ミレイの方がけしかけてるのか?

「アクセルさん。鉱山の宿に案内するから、ついてきてね」
「よ、よろしく頼む……」

 ミレイとシャンテの気配を感じた俺とクレアは、黙ってミレイについて行くしか出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

処理中です...