さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第二章 英雄否定のレンタル道具屋

第15話 頭目の子息と匿いの猫賢者

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 それにしてもミレイには悪いことをした。俺さえ油断しなければ盗賊を捕らえることなんて簡単だったはずなのに。

 だが――

「アクセルのおっちゃん。悪いな、人質にしちゃって」

 極寒の空が見える吹き抜けのある場所に連れてこられた俺は、いきなり盗賊の若者に頭を下げられた。

 冷たい空気が入ってきて寒さを感じるものの、この場所は暗くて見えなかった鉱山の穴よりも段違いに明るい。

「俺を知っているってことは、お前……ラヴァル村の?」
「いやぁ、親父から散々聞かされてた特徴にピッタリのおっちゃんが見えたから、思わず人質に取っちまった。本当に悪いと思ってるよ」

 頭目の子息の中では恐らく優秀な盗賊だな。最初に出会った子息は、羊飼いの宿屋の罠から抜け出せないほど未熟だった。

 しかし目の前の若者は、俺でも分かるくらい強そうな気配をさせていてまるで隙が無い。それにアジトらしき場所だけあって、六、七人程度の人数がこの場所で作業をしている。

 頭目関係ということが分かったのはいいのだが、問題はミレイだ。

「お前、自分が狙われているって気づいてるのか?」
「知ってる。バーネルのローグだろ? おっかないんだよな~あの女」

 ……ん? ローグ?

「ローグって、確か悪党……だったか?」
「意味はそうだろうけど、殺しはしてないみたいだぜ? 悪党に限って痛い目を遭わせるって聞いたことがあるだけだよ。ま、それくらいの殺気を持ってるって意味だ」
「そ、そうか」

 ミレイの気配は単なる諜報活動のそれに留まる者じゃないとは思っていたが、盗賊連中からは恐れられていたわけか。

 流石は頭目が育てた娘だ。

「しかし俺を人質に取った以上、確実に仕留められるってのは覚悟してるのか?」
「い、いや。おっちゃんが何とかとりなしてくれるのかなと……」
「それは無理だ」

 すぐに俺を見つけにくるだろうし、ミレイの潜在的な強さを出されでもしたら俺にはどうすることも出来ない。

 何せ目の前で俺を人質に取られてしまったわけだし。

「そ、そうか。いや、そういうわけにはいかないんだ。今、このアジトに匿ってる奴がいて、そいつをどうにか守ってやらねえと駄目なんだ。だから何とかあの女から目を逸らさせてほしいんだよ……」

 頭目の子息が目をやった先を見ると、仲間たちが何かを守るようにして横穴付近に立っている。

「匿うってのは、どこかの王か何かか? それとも……」
「どこかのお抱えなのは確かだけど、問題はそれじゃなくて外で見つけた時から弱ってる状態で、それが全然回復出来なくて困ってるんだ……」

 弱ってる状態ということは、魔物にでもやられたかあるいは――

「――俺が何か出来るわけじゃないが、匿ってるそいつに会わせてくれ」
「ほ、本当か!? もしおっちゃんがどうにか出来るなら、オレはあの女に自首する。盗んだものをきちんと返すよ」

 そういや、ミレイがそんなことを言ってたな。

「盗んだものってのは、弱そうな冒険者からか? 何を盗んだ?」
「盗んだのは匿ってるそいつを治すための回復道具だよ。冒険者なら、自分を守る為の道具を持ってるって思ってたから」
「あぁ、そういうことだったのか。お前、冒険者に怪我なんか負わせてないだろうな?」
「そんなことしないよ。親父の教えは人を傷つけることじゃないからな!」

 怪我は負わせてないけど盗みはしたわけか。それも俺の店からレンタルした道具を。

「お前が冒険者から盗んだ道具は元をただせば俺の道具なんだが、その道具の数々は俺に返してもらうぞ? いいんだよな?」
「そ、そういうことならおっちゃんに全部返すよ。オレたちは自分の為に盗んだわけじゃなかったんだ」

 盗賊ではあるが、悪者じゃないってのが分かっただけでもマシだな。しかしミレイは許さないはずだ。

 ……たとえ俺が許しても。

 そうなる前にこいつらをラヴァル村に送ってやりたいが、ラヴァル村へ飛ばすスクロールは持ってない。

 どうしたものか。

「おっちゃん! こっちだ。早く何とかしてくれ!!」
「ん。あ、あぁ……」

 頭目の子息に促され、横穴にいるであろうそいつに近づくとそこにいたのは、小さな猫だった。

「猫……?」
「いや、この子が言うには自分は西方の賢者……と」
「ということは、獣人か。弱ってるから猫になって休んでいるわけだな」
「そ、そうなんだ……何とかできないかな、おっちゃん」

 弱い冒険者が持っていた回復系の道具だと流石に回復するには至らない。どういう状態なのかも俺には分からないが、超回復のような道具となるとS級に値する物じゃなければ回復しないはず。

 もしここにクレアがいれば魔法の力で何とかなったかもしれないが、盗賊がいる前ではそれもどうなっていたか。

 そうなると俺がどうにかして回復させるしかない。

 ……使ってみるか、レアな召喚石を。

 果たしてこの洞穴が耐えられるか不明だが、使ってみないと効果を発揮しないだろうし、俺しか使えないわけだしな。

「よし、お前たち。今すぐこの洞穴から離れろ! ここにどデカい奴を呼ぶ。巻き添えになりたくなければ言う通りにするんだ!!」

 俺の命令に戸惑いを見せる盗賊たちだったが、頭目の子息の誘導で彼らはこの場から去った。

 あとは俺が意地を見せるだけだ。

 ええと、確か奥の奥に手を突っ込んだところに――

「で、出てみやがれ!! 召喚石の獣! 【ガーネット】!!」
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