さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら

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第二章 英雄否定のレンタル道具屋

第18話 猫賢者が仲間になりたそうにしている

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「――というわけだ。ミレイには悪いが、その盗賊の身柄は俺に任せてくれないか?」

 猫賢者の少女は後にして、まずはミレイに盗賊の誤解を説明した。ミレイの表情を見るにまるで納得がいかないという感じだったが、しばらくして――。

「う~ん……猫を助けるために冒険者から盗んだのは何か納得出来ないけど、でも回復薬とか使い切ってるのは本当みたいだし、アクセルさんがそう言うなら私がとやかく言うことはないかな」

 ……などと、何とも言えない表情を見せながらも納得してくれた。

「でも、盗賊のリーダーとか他の盗賊は逃がしちゃったんでしょ?」
「まぁな。俺が召喚するのに盗賊連中まで巻き込むのは違うと判断したからな」
「誰にでも優しいのがアクセルさんのいいところでもあるんだけど、まぁ仕方ないかな」
「悪いな、ミレイ」

 盗賊の一人が頭目の子息だということは言わないでおくにしても、俺の為に引いてくれた感じか。

「ううん、他ならぬアクセルさんの頼みだもの。でも、私が断るとでも思った?」

 そう言って意地悪っぽく笑ってみせるが、長年の信頼のおかげかミレイは安堵した表情を見せた。

「ははは。いいや、ミレイなら許してくれると思った」
「でしょ?」

 ううむ、いい女とはミレイのことを言うんだろうな。

「にぅぅ……お師匠さま、ボクを仲間にしてくれないのかにぁ?」

 うっ?

 ああ、そういやそうだった。猫賢者の素性がまるで知れないが、せっかく召喚石で完全回復させたことだし連れて行くしかないんだろうな。

「その子、連れて行くの?」
「ああ。賢者らしいからな。俺が知らない知識を持っているみたいだから、何らかの役に立ってくれると思うのだが……」
「賢者? へぇ~……こっちの大陸では聞いたことないよね。どこから来たの?」
「西方の帝国らしい」

 俺がいるバルラ大陸は聖女なんかはいるが、賢者は聞いたことがない。もし西方から来たことが本当なら、賢者というのは本当かも。

「ねえ、君の名前は?」

 ミレイは小さな子に尋ねるように、身を少しだけ屈めて猫賢者に声をかけた。その姿勢に対し、リミアは嬉しそうに自分の名前を教えている。

 人懐っこい賢者というのも珍しいが、知識が豊富な猫賢者なら連れて行かないという選択肢はない。

 後でシャンテとクレアにどやされるのが目に見えているが。

「アクセルさん。この子のことも大体知れたし、そろそろ宿に戻ろうか?」

 諜報活動をしているミレイのことだ。恐らく、少し話しただけで怪しいかそうでないかを判断出来たに違いない。

「そういや、捕まえた盗賊はどうする?」

 さっきから姿が見えないが。

「とっくに逃がしてるよ。気づいてなかった?」
「お、おぉ……」

 ミレイの腕なら逃がすことも泳がすことも簡単なのだろうな。俺と親しいというだけで逃がす判断をしてくれたのは本当に感謝しか出来ない。

「お師匠さま。ボクも一緒についていっていいのにぁ?」

 そう言ってリミアは尻尾を揺らしながら俺の袖を引っ張ってくる。

 ……この仕草が猫っぽいな。

「ああ、いいぞ……お師匠?」
「アクセルさまのことにぁ! 連れて行ってくれるということは、ボクのお師匠さまも同義なのにぁ。これからよろしくお願いしますにぅ」

 リミアは俺に深々と丁寧なお辞儀をして、満面の笑顔を見せた。

「むぅ……そ、そうなるのか」
「……あはっ、アクセルさん。してやられちゃったね?」
「俺が助けたのは確かだからな。まだ師匠と呼ばれるようなことはしてないが、乗り掛かった舟とも言うし、仕方ないか」

 しかし召喚石で派手なことをしてしまった。鉱山の宿から離れたところで助かったと思うべきなんだろうが、やはり洞穴の中で使うべきではなかったな。

「ん~それにしても、召喚石ってこんなに凄い威力なんだ?」

 ミレイも洞穴を見回して感嘆の声を漏らしている。

「俺も正式に使ったのは初めてだった。無限収納の中で魔力を吸って極端に強くなってしまったとしか思えない威力だったかもしれん」
「あれ、でもその召喚って人的ダメージはないやつだよね? 効果はその子を回復させただけなの?」

 召喚石ガーネットは炎属性の獣。俺は実体を見ることが叶わないが、効果をかけられた者はその姿を見ることが出来るはず。

 ……とはいえ、ほぼ致命傷を負っていたリミアに訊いてもよく見えなかったとしか答えないだろうし訊いたところで意味もない。

「そのはずだ」
「洞穴の天井に属性が逃げたから威力的なものが弱まったのかもしれないね。でも、壁を焼き尽くしたのだけは隠し切れなかったみたいだけど……」
「何かしら直した方がいいか?」

 ミレイの言う通り、周辺は未だに焦げ臭さが残っている。これが攻撃性のある召喚なら大問題になりかねないのは確かだ。

「ん~……まぁ、放っておけばそのうち盗賊が戻ってくるだろうし、このままにしていいんじゃない?」

 壁を原状回復させるような道具はないこともないが、そこまでは必要ないか。

「よし、ミレイ。それからリミア! 鉱山宿に戻るぞ!」
「は~い!」
「分かったにぁ! お師匠さまにしっかり掴まりながらついていくにぅ」

 収穫は猫賢者を仲間にしたこと――か?
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