18 / 38
第二章 英雄否定のレンタル道具屋
第18話 猫賢者が仲間になりたそうにしている
しおりを挟む
「――というわけだ。ミレイには悪いが、その盗賊の身柄は俺に任せてくれないか?」
猫賢者の少女は後にして、まずはミレイに盗賊の誤解を説明した。ミレイの表情を見るにまるで納得がいかないという感じだったが、しばらくして――。
「う~ん……猫を助けるために冒険者から盗んだのは何か納得出来ないけど、でも回復薬とか使い切ってるのは本当みたいだし、アクセルさんがそう言うなら私がとやかく言うことはないかな」
……などと、何とも言えない表情を見せながらも納得してくれた。
「でも、盗賊のリーダーとか他の盗賊は逃がしちゃったんでしょ?」
「まぁな。俺が召喚するのに盗賊連中まで巻き込むのは違うと判断したからな」
「誰にでも優しいのがアクセルさんのいいところでもあるんだけど、まぁ仕方ないかな」
「悪いな、ミレイ」
盗賊の一人が頭目の子息だということは言わないでおくにしても、俺の為に引いてくれた感じか。
「ううん、他ならぬアクセルさんの頼みだもの。でも、私が断るとでも思った?」
そう言って意地悪っぽく笑ってみせるが、長年の信頼のおかげかミレイは安堵した表情を見せた。
「ははは。いいや、ミレイなら許してくれると思った」
「でしょ?」
ううむ、いい女とはミレイのことを言うんだろうな。
「にぅぅ……お師匠さま、ボクを仲間にしてくれないのかにぁ?」
うっ?
ああ、そういやそうだった。猫賢者の素性がまるで知れないが、せっかく召喚石で完全回復させたことだし連れて行くしかないんだろうな。
「その子、連れて行くの?」
「ああ。賢者らしいからな。俺が知らない知識を持っているみたいだから、何らかの役に立ってくれると思うのだが……」
「賢者? へぇ~……こっちの大陸では聞いたことないよね。どこから来たの?」
「西方の帝国らしい」
俺がいるバルラ大陸は聖女なんかはいるが、賢者は聞いたことがない。もし西方から来たことが本当なら、賢者というのは本当かも。
「ねえ、君の名前は?」
ミレイは小さな子に尋ねるように、身を少しだけ屈めて猫賢者に声をかけた。その姿勢に対し、リミアは嬉しそうに自分の名前を教えている。
人懐っこい賢者というのも珍しいが、知識が豊富な猫賢者なら連れて行かないという選択肢はない。
後でシャンテとクレアにどやされるのが目に見えているが。
「アクセルさん。この子のことも大体知れたし、そろそろ宿に戻ろうか?」
諜報活動をしているミレイのことだ。恐らく、少し話しただけで怪しいかそうでないかを判断出来たに違いない。
「そういや、捕まえた盗賊はどうする?」
さっきから姿が見えないが。
「とっくに逃がしてるよ。気づいてなかった?」
「お、おぉ……」
ミレイの腕なら逃がすことも泳がすことも簡単なのだろうな。俺と親しいというだけで逃がす判断をしてくれたのは本当に感謝しか出来ない。
「お師匠さま。ボクも一緒についていっていいのにぁ?」
そう言ってリミアは尻尾を揺らしながら俺の袖を引っ張ってくる。
……この仕草が猫っぽいな。
「ああ、いいぞ……お師匠?」
「アクセルさまのことにぁ! 連れて行ってくれるということは、ボクのお師匠さまも同義なのにぁ。これからよろしくお願いしますにぅ」
リミアは俺に深々と丁寧なお辞儀をして、満面の笑顔を見せた。
「むぅ……そ、そうなるのか」
「……あはっ、アクセルさん。してやられちゃったね?」
「俺が助けたのは確かだからな。まだ師匠と呼ばれるようなことはしてないが、乗り掛かった舟とも言うし、仕方ないか」
しかし召喚石で派手なことをしてしまった。鉱山の宿から離れたところで助かったと思うべきなんだろうが、やはり洞穴の中で使うべきではなかったな。
「ん~それにしても、召喚石ってこんなに凄い威力なんだ?」
ミレイも洞穴を見回して感嘆の声を漏らしている。
「俺も正式に使ったのは初めてだった。無限収納の中で魔力を吸って極端に強くなってしまったとしか思えない威力だったかもしれん」
「あれ、でもその召喚って人的ダメージはないやつだよね? 効果はその子を回復させただけなの?」
召喚石ガーネットは炎属性の獣。俺は実体を見ることが叶わないが、効果をかけられた者はその姿を見ることが出来るはず。
……とはいえ、ほぼ致命傷を負っていたリミアに訊いてもよく見えなかったとしか答えないだろうし訊いたところで意味もない。
「そのはずだ」
「洞穴の天井に属性が逃げたから威力的なものが弱まったのかもしれないね。でも、壁を焼き尽くしたのだけは隠し切れなかったみたいだけど……」
「何かしら直した方がいいか?」
ミレイの言う通り、周辺は未だに焦げ臭さが残っている。これが攻撃性のある召喚なら大問題になりかねないのは確かだ。
「ん~……まぁ、放っておけばそのうち盗賊が戻ってくるだろうし、このままにしていいんじゃない?」
壁を原状回復させるような道具はないこともないが、そこまでは必要ないか。
「よし、ミレイ。それからリミア! 鉱山宿に戻るぞ!」
「は~い!」
「分かったにぁ! お師匠さまにしっかり掴まりながらついていくにぅ」
収穫は猫賢者を仲間にしたこと――か?
猫賢者の少女は後にして、まずはミレイに盗賊の誤解を説明した。ミレイの表情を見るにまるで納得がいかないという感じだったが、しばらくして――。
「う~ん……猫を助けるために冒険者から盗んだのは何か納得出来ないけど、でも回復薬とか使い切ってるのは本当みたいだし、アクセルさんがそう言うなら私がとやかく言うことはないかな」
……などと、何とも言えない表情を見せながらも納得してくれた。
「でも、盗賊のリーダーとか他の盗賊は逃がしちゃったんでしょ?」
「まぁな。俺が召喚するのに盗賊連中まで巻き込むのは違うと判断したからな」
「誰にでも優しいのがアクセルさんのいいところでもあるんだけど、まぁ仕方ないかな」
「悪いな、ミレイ」
盗賊の一人が頭目の子息だということは言わないでおくにしても、俺の為に引いてくれた感じか。
「ううん、他ならぬアクセルさんの頼みだもの。でも、私が断るとでも思った?」
そう言って意地悪っぽく笑ってみせるが、長年の信頼のおかげかミレイは安堵した表情を見せた。
「ははは。いいや、ミレイなら許してくれると思った」
「でしょ?」
ううむ、いい女とはミレイのことを言うんだろうな。
「にぅぅ……お師匠さま、ボクを仲間にしてくれないのかにぁ?」
うっ?
ああ、そういやそうだった。猫賢者の素性がまるで知れないが、せっかく召喚石で完全回復させたことだし連れて行くしかないんだろうな。
「その子、連れて行くの?」
「ああ。賢者らしいからな。俺が知らない知識を持っているみたいだから、何らかの役に立ってくれると思うのだが……」
「賢者? へぇ~……こっちの大陸では聞いたことないよね。どこから来たの?」
「西方の帝国らしい」
俺がいるバルラ大陸は聖女なんかはいるが、賢者は聞いたことがない。もし西方から来たことが本当なら、賢者というのは本当かも。
「ねえ、君の名前は?」
ミレイは小さな子に尋ねるように、身を少しだけ屈めて猫賢者に声をかけた。その姿勢に対し、リミアは嬉しそうに自分の名前を教えている。
人懐っこい賢者というのも珍しいが、知識が豊富な猫賢者なら連れて行かないという選択肢はない。
後でシャンテとクレアにどやされるのが目に見えているが。
「アクセルさん。この子のことも大体知れたし、そろそろ宿に戻ろうか?」
諜報活動をしているミレイのことだ。恐らく、少し話しただけで怪しいかそうでないかを判断出来たに違いない。
「そういや、捕まえた盗賊はどうする?」
さっきから姿が見えないが。
「とっくに逃がしてるよ。気づいてなかった?」
「お、おぉ……」
ミレイの腕なら逃がすことも泳がすことも簡単なのだろうな。俺と親しいというだけで逃がす判断をしてくれたのは本当に感謝しか出来ない。
「お師匠さま。ボクも一緒についていっていいのにぁ?」
そう言ってリミアは尻尾を揺らしながら俺の袖を引っ張ってくる。
……この仕草が猫っぽいな。
「ああ、いいぞ……お師匠?」
「アクセルさまのことにぁ! 連れて行ってくれるということは、ボクのお師匠さまも同義なのにぁ。これからよろしくお願いしますにぅ」
リミアは俺に深々と丁寧なお辞儀をして、満面の笑顔を見せた。
「むぅ……そ、そうなるのか」
「……あはっ、アクセルさん。してやられちゃったね?」
「俺が助けたのは確かだからな。まだ師匠と呼ばれるようなことはしてないが、乗り掛かった舟とも言うし、仕方ないか」
しかし召喚石で派手なことをしてしまった。鉱山の宿から離れたところで助かったと思うべきなんだろうが、やはり洞穴の中で使うべきではなかったな。
「ん~それにしても、召喚石ってこんなに凄い威力なんだ?」
ミレイも洞穴を見回して感嘆の声を漏らしている。
「俺も正式に使ったのは初めてだった。無限収納の中で魔力を吸って極端に強くなってしまったとしか思えない威力だったかもしれん」
「あれ、でもその召喚って人的ダメージはないやつだよね? 効果はその子を回復させただけなの?」
召喚石ガーネットは炎属性の獣。俺は実体を見ることが叶わないが、効果をかけられた者はその姿を見ることが出来るはず。
……とはいえ、ほぼ致命傷を負っていたリミアに訊いてもよく見えなかったとしか答えないだろうし訊いたところで意味もない。
「そのはずだ」
「洞穴の天井に属性が逃げたから威力的なものが弱まったのかもしれないね。でも、壁を焼き尽くしたのだけは隠し切れなかったみたいだけど……」
「何かしら直した方がいいか?」
ミレイの言う通り、周辺は未だに焦げ臭さが残っている。これが攻撃性のある召喚なら大問題になりかねないのは確かだ。
「ん~……まぁ、放っておけばそのうち盗賊が戻ってくるだろうし、このままにしていいんじゃない?」
壁を原状回復させるような道具はないこともないが、そこまでは必要ないか。
「よし、ミレイ。それからリミア! 鉱山宿に戻るぞ!」
「は~い!」
「分かったにぁ! お師匠さまにしっかり掴まりながらついていくにぅ」
収穫は猫賢者を仲間にしたこと――か?
13
あなたにおすすめの小説
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる