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第二章 英雄否定のレンタル道具屋
第22話 心酔する聖女、貴族を従わせる
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全身を光らせただけの俺に聖女がついてくる?
それはまずい。勘違いなんかされたら仕事がやりづらくなってしまう。
「ま、待て! とりあえず落ち着け」
俺自身全身光りまくっているだけで他がどうなっているのか全く確認出来ずにいる状態なのに、聖女だけ真っ先に抱きついてきたのは想定外すぎる。
「いいや、もう決めた! だって神からの恵み、新たな出会いの始まりはあんただって分かったから! あんたが嫌でもあたしはアクセルを崇め、ずっとついていく!! 冒険者が英雄とかって崇めたりするけど、アクセルこそあたしの英雄だったんだ!」
……英雄扱いされてしまうのはなぜなんだ?
「俺はレンタル道具屋であって、英雄じゃない。英雄がいいなら他をあたってくれ」
「英雄以上のことをしているのに謙遜するなんて……アクセルは本物なんだ! あんたがどう言おうと、あたしは神の思し召しに従ってあんたに付き従う!!」
これは何を言っても無駄というやつだな。
「……勝手にしてくれ」
「そうする!」
俺の返事に納得したのか、アルマはお付きの女性たちのところに戻ってくれた。アルマは聖女っぽくはないが、見たままを信じて疑わないって意味では正しいことなのかもしれない。
「もうっ、アクセルって本当に予想外のことをしでかすんだから!」
「ははは、悪いなクレア」
クレアは俺が何かやらかすことをある程度予想していたのか、そこまで驚かずに苦笑している。
「お師匠さまは神だったのにぁ~! 凄いにぁ~」
「ああぁぁ……流石です、アクセルさま! わたくしの見立ては間違っていなかったんですね!」
しかし、リミアとシャンテは光る俺を見ながら涙を流しっぱなしで感動しているようだ。
単純に眩しすぎて見れないだけなんだろうがな。
「ところでアクセル。いつまで光ってるつもり?」
「知らん」
「わたしたちのいるところからは見えなかったんだけど、何かを飲んだんでしょ? 聖水か何か?」
クレアなら効果時間を知っていそうだが……。
「ダンジョンの奥地で見つけた祝福聖水を飲んだ」
「しゅっ……祝福聖水を!? それって、半日くらい効果があるとか言われてたやつなんじゃないの? 聖水効果はすぐ消えるけど、光は簡単に消えていかないって……はぁ……アクセルってつくづく」
などとクレアは半ば諦め顔を見せながら、シャンテとリミアに事情を説明してくれた。
彼女たちは落ち着けば何とかなりそうだが問題はレグロス城で救援を待つ貴族だ。呪われていた水門どころか城へ流れる水源ごと消し去ってしまった俺が、果たしてレグロス城の貴族に許されるかどうか。
「道具屋アクセル。あんたの力でこの先へ進めるようになったことだし、城へ進もうぜ!」
「それはいいが、俺はただのレンタル道具屋……つまり、平民だ。いくら助けを求めていると言っても貴族が俺を認めるのか?」
「問題ない! 聖女のあたしが認めさせる! だからアクセル。あたしをエスコートしながら入城してくれ!」
「エスコート……確か手を――あれ、お付きの女性たちは?」
さっきまで聖女と話をしていたお付きの女性たちの姿がどこにもなく、見えているのはシャンテたちだけだ。
「彼女たちはアルゾスへ帰した。アクセルが神の恵みだということを報告しに行かないとだから! だから、レグロス城の救援が済んだらあたしとアルゾスへ行って欲しい」
アルゾス共和国は流石に行ったことがないな。
「アルゾスに行ってやりたいが、俺には冒険者に道具の使い方を教える必要があるんだ。だから冒険者のいないところに行っても……」
「それなら問題ない! 共和国の近くにダンジョンがあるから、きっとそこに冒険者がたくさんいる。アクセルには思う存分、神の力を発揮して欲しい!」
……神じゃないんだが。
「とにかく、貴族のことはアルマに任せていいんだな?」
「お任せください、神よ!」
「…………レンタル道具屋だ」
英雄どころかすっかり神扱いされながら、俺は聖女の手を引きレグロス城へと足を進め、案内された大広間へ通された。
クレアたちは光が収まらない俺から少し離れていたせいか、大広間ではなく応接間に案内されたようだった。
「それにしても派手だな……」
宝石のおかげで建てた城と聞いていたが、凝った装飾のほとんどが宝石で出来ていて全身を光らせている俺に負けないくらいの光量が宝石類から放たれている。
「ふふっ、宝石ごとき輝きでアクセルが圧倒される必要はない。あんたは堂々としていればいい」
「そ、そうか」
壁には代々当主の肖像画があると思っていたが、飾られているのはほぼ宝石の類いで、完全に成金趣味としか思えない。
そういう意味じゃ金のない冒険者が狙うのは無理もないかもしれないが、襲うこと自体悪いことだから黙っておく。
「おぉ、聖女アルマ様ではございませんか!」
奥から現れたのは想像通りの嫌な野郎――いや、成金親父だった。若い奴かと思ったが、考えてみれば鉱山で宝石を買い漁るってことはあまりいいものじゃないんだよな。
「お久しぶりですわ、レグロス侯爵」
そう言うとアルマは軽く頭を下げ、両手でスカートの裾を軽く持ち上げた。令嬢じゃなく聖女だから貴族相手にそこまでへりくだった挨拶はしない感じだろうか。
あるいはこの貴族の親父が聖女アルマからすれば下に見る相手……。
それはともかく、アルマはきちんとした言葉遣いで話せるんじゃないか。俺に対する豪快な話し方は素の自分を出してるだけかもしれないな。
「はははは! いやいや、あなた様のお力で呪われた水門がやっと開けられたと報告がありましてな。流石は聖女様でございますなぁ!」
「いいえ。そのお言葉には誤りがありますわ」
「――それはどのような誤りでございますかな?」
アルマは俺の手を取り、侯爵の前に立たせた。
「先ほどから煩わしい光があると思っておりましたが、その平民が一体何だと言うので?」
やはりそう思っていたか。俺を全く見ないどころか怪訝そうにしていたからな。
「お黙りなさい!! この御方こそがレグロス城を呪いから救ってくだされた者であり、聖女を祝福された神の化身なのです! 彼を崇めなければ再びこの城は呪いによって精神が苛《さいな》まれ、苦しみの渦へと堕ちていくことでしょう……」
いつから俺は神の化身になったんだ?
「も、申し訳ございません!! まさか聖女様のお導きをされるお方だとは……」
そう言って侯爵親父は頭を柔らかそうなカーペットに擦り付け、俺の前で膝と両手をついてみせた。
「……楽にしてくれ」
「は、ははーーーー!!!」
どうすんだこれ。
「アクセル。これでこいつはあんたに逆らわない。あとは冒険者のことを詳しく訊きだそうぜ」
「そ、そうだな」
それはまずい。勘違いなんかされたら仕事がやりづらくなってしまう。
「ま、待て! とりあえず落ち着け」
俺自身全身光りまくっているだけで他がどうなっているのか全く確認出来ずにいる状態なのに、聖女だけ真っ先に抱きついてきたのは想定外すぎる。
「いいや、もう決めた! だって神からの恵み、新たな出会いの始まりはあんただって分かったから! あんたが嫌でもあたしはアクセルを崇め、ずっとついていく!! 冒険者が英雄とかって崇めたりするけど、アクセルこそあたしの英雄だったんだ!」
……英雄扱いされてしまうのはなぜなんだ?
「俺はレンタル道具屋であって、英雄じゃない。英雄がいいなら他をあたってくれ」
「英雄以上のことをしているのに謙遜するなんて……アクセルは本物なんだ! あんたがどう言おうと、あたしは神の思し召しに従ってあんたに付き従う!!」
これは何を言っても無駄というやつだな。
「……勝手にしてくれ」
「そうする!」
俺の返事に納得したのか、アルマはお付きの女性たちのところに戻ってくれた。アルマは聖女っぽくはないが、見たままを信じて疑わないって意味では正しいことなのかもしれない。
「もうっ、アクセルって本当に予想外のことをしでかすんだから!」
「ははは、悪いなクレア」
クレアは俺が何かやらかすことをある程度予想していたのか、そこまで驚かずに苦笑している。
「お師匠さまは神だったのにぁ~! 凄いにぁ~」
「ああぁぁ……流石です、アクセルさま! わたくしの見立ては間違っていなかったんですね!」
しかし、リミアとシャンテは光る俺を見ながら涙を流しっぱなしで感動しているようだ。
単純に眩しすぎて見れないだけなんだろうがな。
「ところでアクセル。いつまで光ってるつもり?」
「知らん」
「わたしたちのいるところからは見えなかったんだけど、何かを飲んだんでしょ? 聖水か何か?」
クレアなら効果時間を知っていそうだが……。
「ダンジョンの奥地で見つけた祝福聖水を飲んだ」
「しゅっ……祝福聖水を!? それって、半日くらい効果があるとか言われてたやつなんじゃないの? 聖水効果はすぐ消えるけど、光は簡単に消えていかないって……はぁ……アクセルってつくづく」
などとクレアは半ば諦め顔を見せながら、シャンテとリミアに事情を説明してくれた。
彼女たちは落ち着けば何とかなりそうだが問題はレグロス城で救援を待つ貴族だ。呪われていた水門どころか城へ流れる水源ごと消し去ってしまった俺が、果たしてレグロス城の貴族に許されるかどうか。
「道具屋アクセル。あんたの力でこの先へ進めるようになったことだし、城へ進もうぜ!」
「それはいいが、俺はただのレンタル道具屋……つまり、平民だ。いくら助けを求めていると言っても貴族が俺を認めるのか?」
「問題ない! 聖女のあたしが認めさせる! だからアクセル。あたしをエスコートしながら入城してくれ!」
「エスコート……確か手を――あれ、お付きの女性たちは?」
さっきまで聖女と話をしていたお付きの女性たちの姿がどこにもなく、見えているのはシャンテたちだけだ。
「彼女たちはアルゾスへ帰した。アクセルが神の恵みだということを報告しに行かないとだから! だから、レグロス城の救援が済んだらあたしとアルゾスへ行って欲しい」
アルゾス共和国は流石に行ったことがないな。
「アルゾスに行ってやりたいが、俺には冒険者に道具の使い方を教える必要があるんだ。だから冒険者のいないところに行っても……」
「それなら問題ない! 共和国の近くにダンジョンがあるから、きっとそこに冒険者がたくさんいる。アクセルには思う存分、神の力を発揮して欲しい!」
……神じゃないんだが。
「とにかく、貴族のことはアルマに任せていいんだな?」
「お任せください、神よ!」
「…………レンタル道具屋だ」
英雄どころかすっかり神扱いされながら、俺は聖女の手を引きレグロス城へと足を進め、案内された大広間へ通された。
クレアたちは光が収まらない俺から少し離れていたせいか、大広間ではなく応接間に案内されたようだった。
「それにしても派手だな……」
宝石のおかげで建てた城と聞いていたが、凝った装飾のほとんどが宝石で出来ていて全身を光らせている俺に負けないくらいの光量が宝石類から放たれている。
「ふふっ、宝石ごとき輝きでアクセルが圧倒される必要はない。あんたは堂々としていればいい」
「そ、そうか」
壁には代々当主の肖像画があると思っていたが、飾られているのはほぼ宝石の類いで、完全に成金趣味としか思えない。
そういう意味じゃ金のない冒険者が狙うのは無理もないかもしれないが、襲うこと自体悪いことだから黙っておく。
「おぉ、聖女アルマ様ではございませんか!」
奥から現れたのは想像通りの嫌な野郎――いや、成金親父だった。若い奴かと思ったが、考えてみれば鉱山で宝石を買い漁るってことはあまりいいものじゃないんだよな。
「お久しぶりですわ、レグロス侯爵」
そう言うとアルマは軽く頭を下げ、両手でスカートの裾を軽く持ち上げた。令嬢じゃなく聖女だから貴族相手にそこまでへりくだった挨拶はしない感じだろうか。
あるいはこの貴族の親父が聖女アルマからすれば下に見る相手……。
それはともかく、アルマはきちんとした言葉遣いで話せるんじゃないか。俺に対する豪快な話し方は素の自分を出してるだけかもしれないな。
「はははは! いやいや、あなた様のお力で呪われた水門がやっと開けられたと報告がありましてな。流石は聖女様でございますなぁ!」
「いいえ。そのお言葉には誤りがありますわ」
「――それはどのような誤りでございますかな?」
アルマは俺の手を取り、侯爵の前に立たせた。
「先ほどから煩わしい光があると思っておりましたが、その平民が一体何だと言うので?」
やはりそう思っていたか。俺を全く見ないどころか怪訝そうにしていたからな。
「お黙りなさい!! この御方こそがレグロス城を呪いから救ってくだされた者であり、聖女を祝福された神の化身なのです! 彼を崇めなければ再びこの城は呪いによって精神が苛《さいな》まれ、苦しみの渦へと堕ちていくことでしょう……」
いつから俺は神の化身になったんだ?
「も、申し訳ございません!! まさか聖女様のお導きをされるお方だとは……」
そう言って侯爵親父は頭を柔らかそうなカーペットに擦り付け、俺の前で膝と両手をついてみせた。
「……楽にしてくれ」
「は、ははーーーー!!!」
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