消えるまでの1ヶ月

Sora

文字の大きさ
2 / 2

《2話》

しおりを挟む
ふと目が覚めたのは朝の6時だった。この時期なら6時にもなると外はすっかり明るい。

私は昨日のことを思い出す。葵と海香に酷いことを言った記憶と、その二人の前でただ泣き続けたという記憶はあるが、それ以外のことはよく覚えていない。外から入ってくる夏の朝日はとても柔らかかった。この太陽が昼間に猛威を振るっているあの太陽と同じものだなんて誰も思わないだろう。嘘で本当の自分を隠している私とは違う。本当の姿が綺麗なんだと感じた。

朝食を食べ終え自分の自由な時間を楽しんでいたその時だった。

何の前触れもなく、それこそ当たり前のように声を掛けてきたのは中学生の時のクラスメイト、多川悠真だった。
私は本を読む手を止めて多川を見た。多川はニコニコとしながら私を見ていた。そのまま二人でしばらく固まった。
多川が固まっていた理由はどうでもいいとして、私が固まっていたのには理由が二つあった。一つは多川を見た瞬間、誰だか思い出せなかったから。もう一つはただ普通に何故多川がここにいるのか分からなかったから。
そんな疑問を抱く私のことなんてお構い無しに、多川は気持ち悪いくらいのニコニコでまだ固まっていた。いつまでもこのままニコニコされていては流石に困る。
「え~っと、あのさ……。」
何だかよく分からない空気にいたたまれなくなった私は多川に声を掛けた。物凄くめんどくさい人だとは思ったが、正直葵や海香の時のようにを迷惑だとは思わなかった。何故なのかはよく分からない。しかし相手が誰であっても私の人と関わりたくないという思いは変わらない。
「せっかく来てもらったのに悪いんだけどさ、私体調悪いから帰ってもらっていい?」
なるべくオブラートに包んで言ったつもりだけど、聞いてみると結構ストレートな言い方だったかもしれない。でもそんなこともお構い無し。多川は私に言った。
「いやー今日も暑いねー!本当倒れちゃいそうだよ」
唐突にそんなことを言われても困る。しかも私は1日中病室にいるから外の暑さなんて分からない。
「何しにきたの?」

多川は当たり前のように言った。
「何ってお見舞いだよ?」

多川は少し変わっていた。それは中学の時から変わらない。
しかしそれ以前に多川は大分、理解し難い人だった…。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

6回目のさようなら

音爽(ネソウ)
恋愛
恋人ごっこのその先は……

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...