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「あの、ユーさん。聞いてもいいですか?」
「なんでもどーぞ」
「フィックスのサーバーにユーリンさんっていう人がいるんですけど、あのアカウントって、お二人で運営しているんですか? 私、てっきりユーリンさんという人がいるのかと……」
名前的に、2人を繋げたのがユーリンさんなのだろう。それはなんとなくわかるけど、ここに来るまでユーリンさんは1人だと思ってたから、びっくりだ。
訊ねると、ユーさんとリンさんは揃って顔を見合わせる。
「あれ? もしかして私たちのこと、知らない?」
ユーさんかキョトンと首を傾げた。そこにすかさず、リンさんがチョップを入れる。
「いや、最近は驚かれるのも少ないし、ドッキリしようとか言ってサーバーからアカウントのリンクとか消したの、ユーでしょ」
「あり? そうだっけ?」
「…………はあ。やっぱり忘れてたか」
リンさんが額を抑えて、盛大なため息を吐く。
「ど、ドッキリ? どういうことですか?」
「その反応……本当に知らなかったみたいだね。じゃあ、久しぶりにあれやっちゃおっか! ユーと!」
事情が飲み込めてない俺に向けて、ユーさんが高らかに名乗り、ピースサインを横にして、右目に当てる。
「リンです」
対してリンさんは控えめに、顔の横でピースサイン。
「二人合わせて──」
最後にそれぞれの手を合わせて、
「コスプレユニット・ユーリンでーす」
余った手で、それぞれのポーズを決める。寸分違わず息の合った素晴らしいコンビネーションだ。2人で練習したのかな?
「なるほど! ユーさんとリンさん! お二人でユニットだったんですね!」
私はパンと手を合わせて驚いた。ユーリンさんのことはわかってたけど、せっかく素晴らしいパフォーマンスを決めてくれたのだから、応えたいと思った。まぁ、オーバーリアクションが正解かは分からないけど。
「きゃー! 新鮮なリアクション! 分かってるねー、かわいいねー! ヤミーちゃーん!」
「ふ、ふええ!?」
いきなり首元に抱きつかれるから、ビックリしてしまう。それから頬をすりすりとされてしまった。よく分からないけど、ユーさんの反応からして正解だったみたいだ。
ただ、私の方は困惑してしまう。こんなにスキンシップが激しい人、ココロちゃんみたいだ。まあ、そのおかげですぐに慣れたけど。
「うわっと!?」
「ユー。いい加減にしなー?」
突然、ユーさんが引き剥がされる。はっとしてみると、リンさんがユーさんの首根っこを掴んでいた。
リンさんは笑顔を浮かべていた。ただ、笑ってるのは口元だけで、目が笑ってないのが怖すぎる。
「や、やはは……ご、ごめんよリン? じ、冗談だから、そんな怒らないで」
「ふん!」
リンさんは荒々しい鼻息を漏らして、プイッとそっぽを向いてしまった。
そこに「ごめんって~」と、ユーさんが泣きつくように謝る。
「ユーさんとリンさんって、すっごく仲がいいんですね?」
私は隣の北野さんに向けて、微笑みかけた。すると、北野さんは口の端を緩ませて、頷いた。
「でしょうね。あの2人は世界で2番目に尊い百合ですから」
「せ、世界で2番目に尊い百合?」
「ユーリンさんの活動テーマです。百合はご存じないですか?」
「知ってますけど……女性同士でイチャイチャするやつですよね。コスプレイヤー同士でも百合営業とか、よく聞きますけど」
「まぁ、そうですね。表向きはあの2人もそうですけど……でも、あの2人は営業なんかじゃありませんよ。正真正銘、本物の百合です」
「え?」
「本気で付き合ってるんですよ。あのお二人は」
「そ、そうなんですか……」
北野さんの口調や表情から、それが冗談でないことが伝わってくる。
2人ともやたら仲が良くて、まるで恋人みたいだとは思ってたけど、まさか本物だったなんて……。
「ちょっとちょっとー。北野くん、ヤミーちゃんにいきなり何ぶっ込んでんのさー」
「そうだよ、北野くん。出会ったばかりなのにそんなこと言われたら、引くでしょ」
いつの間にかそばにやってきていたユーさんとリンさん。2人とも、困ったように眉尻を下げている。
「大丈夫です。ヤミーさんはそんなことで笑ったり軽蔑したりする人じゃありませんから」
北野さんがキッパリと否定する。なんだか私が聖人扱いされてるけど、実際それくらいで軽蔑したりはしない。
「はい。笑いませんよ。ユーさんとリンさんはとっても仲良しで、お似合いだと思います!」
むしろ、ユーさんとリンさんの関係は素晴らしいなって思う。なぜなら恋人ということは、いつか夫婦になるかもしれないのだ。そんな時、こんなふうに愛し合うことができたら、どんなに幸せだろう。同性だから子供を作ることはできないかもしれないけど、2人の子供は幸せに育てられるに違いないから。
「あの。おふたりって、どうして付き合ったんですか?」
ユーさんとリンさんが、ほっとしたような安心したような笑顔を浮かべる。
続けて、私は気になったことをつい口にしてしまった。それが失礼だと気づいたのは、キョトンとしたリンさんの顔を見た時だった。
「それって、私たちの馴れ初めが聞きたいってこと?」
「えっと……はい。そういうことです。ごめんなさい、失礼でしたか?」
「いや、大丈夫なんだけど……ちょっと恥ずかしいな」
リンさんが照れたように頬を赤らめて、明後日の方向を向いた。反対に、ユーさんはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべると。
「ふふ。リンがどーしてもあたしのことが好きだっていうから、付き合ってあげたんだよね~?」
そう言って、リンさんの腕にしがみついた。好きな人にあんな風に抱きつかれたら、堪らないだろうな。私はまだ経験がないから分からないけど。
「ち、ちがう! どーしてもとは言ってない!」
「あれ? そーだっけ? あの時も確かこんなふうにしてたら──」
「ちょ……ほんとやめて。恥ずかしくて、死にそう」
両手で顔を抑えるリンさんの頬は、本当に死んでしまいそうなくらい、真っ赤だった。
「あはは。その反応、ずっと昔から変わらないなー。リンは」
悶え死にそうになるリンさんを見て笑うユーさんの目は、懐かしさを孕んでいた。
「というわけでヤミーちゃん。ごめんね、この話は今は秘密ってことで」
勘弁して~、と片目を瞑って手を合わせるユーさん。
「い、いえ。大丈夫です。こちらこそ、出会ったばかりなのに変なこと聞いちゃってごめんなさい」
「ううん。大丈夫だよ。今度、リンのいないところで、また機会があったら教えてあげるね」
ユーさんは笑顔で首を振ると、そんな約束をしてくれた。
「なんでもどーぞ」
「フィックスのサーバーにユーリンさんっていう人がいるんですけど、あのアカウントって、お二人で運営しているんですか? 私、てっきりユーリンさんという人がいるのかと……」
名前的に、2人を繋げたのがユーリンさんなのだろう。それはなんとなくわかるけど、ここに来るまでユーリンさんは1人だと思ってたから、びっくりだ。
訊ねると、ユーさんとリンさんは揃って顔を見合わせる。
「あれ? もしかして私たちのこと、知らない?」
ユーさんかキョトンと首を傾げた。そこにすかさず、リンさんがチョップを入れる。
「いや、最近は驚かれるのも少ないし、ドッキリしようとか言ってサーバーからアカウントのリンクとか消したの、ユーでしょ」
「あり? そうだっけ?」
「…………はあ。やっぱり忘れてたか」
リンさんが額を抑えて、盛大なため息を吐く。
「ど、ドッキリ? どういうことですか?」
「その反応……本当に知らなかったみたいだね。じゃあ、久しぶりにあれやっちゃおっか! ユーと!」
事情が飲み込めてない俺に向けて、ユーさんが高らかに名乗り、ピースサインを横にして、右目に当てる。
「リンです」
対してリンさんは控えめに、顔の横でピースサイン。
「二人合わせて──」
最後にそれぞれの手を合わせて、
「コスプレユニット・ユーリンでーす」
余った手で、それぞれのポーズを決める。寸分違わず息の合った素晴らしいコンビネーションだ。2人で練習したのかな?
「なるほど! ユーさんとリンさん! お二人でユニットだったんですね!」
私はパンと手を合わせて驚いた。ユーリンさんのことはわかってたけど、せっかく素晴らしいパフォーマンスを決めてくれたのだから、応えたいと思った。まぁ、オーバーリアクションが正解かは分からないけど。
「きゃー! 新鮮なリアクション! 分かってるねー、かわいいねー! ヤミーちゃーん!」
「ふ、ふええ!?」
いきなり首元に抱きつかれるから、ビックリしてしまう。それから頬をすりすりとされてしまった。よく分からないけど、ユーさんの反応からして正解だったみたいだ。
ただ、私の方は困惑してしまう。こんなにスキンシップが激しい人、ココロちゃんみたいだ。まあ、そのおかげですぐに慣れたけど。
「うわっと!?」
「ユー。いい加減にしなー?」
突然、ユーさんが引き剥がされる。はっとしてみると、リンさんがユーさんの首根っこを掴んでいた。
リンさんは笑顔を浮かべていた。ただ、笑ってるのは口元だけで、目が笑ってないのが怖すぎる。
「や、やはは……ご、ごめんよリン? じ、冗談だから、そんな怒らないで」
「ふん!」
リンさんは荒々しい鼻息を漏らして、プイッとそっぽを向いてしまった。
そこに「ごめんって~」と、ユーさんが泣きつくように謝る。
「ユーさんとリンさんって、すっごく仲がいいんですね?」
私は隣の北野さんに向けて、微笑みかけた。すると、北野さんは口の端を緩ませて、頷いた。
「でしょうね。あの2人は世界で2番目に尊い百合ですから」
「せ、世界で2番目に尊い百合?」
「ユーリンさんの活動テーマです。百合はご存じないですか?」
「知ってますけど……女性同士でイチャイチャするやつですよね。コスプレイヤー同士でも百合営業とか、よく聞きますけど」
「まぁ、そうですね。表向きはあの2人もそうですけど……でも、あの2人は営業なんかじゃありませんよ。正真正銘、本物の百合です」
「え?」
「本気で付き合ってるんですよ。あのお二人は」
「そ、そうなんですか……」
北野さんの口調や表情から、それが冗談でないことが伝わってくる。
2人ともやたら仲が良くて、まるで恋人みたいだとは思ってたけど、まさか本物だったなんて……。
「ちょっとちょっとー。北野くん、ヤミーちゃんにいきなり何ぶっ込んでんのさー」
「そうだよ、北野くん。出会ったばかりなのにそんなこと言われたら、引くでしょ」
いつの間にかそばにやってきていたユーさんとリンさん。2人とも、困ったように眉尻を下げている。
「大丈夫です。ヤミーさんはそんなことで笑ったり軽蔑したりする人じゃありませんから」
北野さんがキッパリと否定する。なんだか私が聖人扱いされてるけど、実際それくらいで軽蔑したりはしない。
「はい。笑いませんよ。ユーさんとリンさんはとっても仲良しで、お似合いだと思います!」
むしろ、ユーさんとリンさんの関係は素晴らしいなって思う。なぜなら恋人ということは、いつか夫婦になるかもしれないのだ。そんな時、こんなふうに愛し合うことができたら、どんなに幸せだろう。同性だから子供を作ることはできないかもしれないけど、2人の子供は幸せに育てられるに違いないから。
「あの。おふたりって、どうして付き合ったんですか?」
ユーさんとリンさんが、ほっとしたような安心したような笑顔を浮かべる。
続けて、私は気になったことをつい口にしてしまった。それが失礼だと気づいたのは、キョトンとしたリンさんの顔を見た時だった。
「それって、私たちの馴れ初めが聞きたいってこと?」
「えっと……はい。そういうことです。ごめんなさい、失礼でしたか?」
「いや、大丈夫なんだけど……ちょっと恥ずかしいな」
リンさんが照れたように頬を赤らめて、明後日の方向を向いた。反対に、ユーさんはニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべると。
「ふふ。リンがどーしてもあたしのことが好きだっていうから、付き合ってあげたんだよね~?」
そう言って、リンさんの腕にしがみついた。好きな人にあんな風に抱きつかれたら、堪らないだろうな。私はまだ経験がないから分からないけど。
「ち、ちがう! どーしてもとは言ってない!」
「あれ? そーだっけ? あの時も確かこんなふうにしてたら──」
「ちょ……ほんとやめて。恥ずかしくて、死にそう」
両手で顔を抑えるリンさんの頬は、本当に死んでしまいそうなくらい、真っ赤だった。
「あはは。その反応、ずっと昔から変わらないなー。リンは」
悶え死にそうになるリンさんを見て笑うユーさんの目は、懐かしさを孕んでいた。
「というわけでヤミーちゃん。ごめんね、この話は今は秘密ってことで」
勘弁して~、と片目を瞑って手を合わせるユーさん。
「い、いえ。大丈夫です。こちらこそ、出会ったばかりなのに変なこと聞いちゃってごめんなさい」
「ううん。大丈夫だよ。今度、リンのいないところで、また機会があったら教えてあげるね」
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