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第6章
すれ違いと、ほんとうの気持ち
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第6章 すれ違いと、ほんとうの気持ち
その日、空は朝からどこか曇りがちだった。
淡い灰色の雲が、街の色を少しだけぼんやりと滲ませている。
紗月と遥は、並んで歩いていた。
けれど、いつものように手を繋ぐことはなかった。
ふたりの間に、ほんの少しの距離が生まれていた。
小さなきっかけだった。
遥が、ふとした言葉に反応して、少しだけ顔を背けた。
紗月も、どう声をかければいいのか分からず、そのまま静かに歩き続けた。
ほんのすこしのすれ違い。
ほんのすこしの、沈黙。
けれど、それは、心の中で思ったよりも大きな波紋を広げていった。
──嫌われたのかもしれない。
──うまくできなかったのかもしれない。
そんな不安が、知らぬ間に胸の中で膨らんでいく。
小さな公園のベンチに腰掛けたとき、
ふたりの間を吹き抜けた風は、少しだけ冷たかった。
遥は、膝の上で手をぎゅっと握りしめていた。
その仕草に気づいた紗月は、そっと深呼吸をした。
──逃げたくない。
紗月は、そっと遥に声をかけた。
「……ごめんね。
何か、傷つけるようなこと、言っちゃった?」
その言葉に、遥は驚いたように顔を上げた。
そして、かすかに首を振った。
「ちがうの。……ちがうの、紗月。」
遥の声は、震えていた。
けれどその目は、まっすぐに紗月を見ていた。
「私、自分でも、まだうまく気持ちを伝えられなくて……。
それが怖かったの。
嫌われるのが、怖くて……」
最後の言葉は、ほとんど消え入りそうなほど小さかった。
紗月は、ゆっくりと遥の手に触れた。
今度は、ためらわずに、その細い指を包み込む。
「遥が何を思っていても、怖がっても、
私は、ちゃんと受けとめたい。」
それは、きっと紗月自身への誓いでもあった。
遥の目に、ぽつりと涙が浮かんだ。
それでも、遥は微笑んだ。
どこか幼くて、でも確かな強さを帯びた、そんな笑顔だった。
「私も……紗月に、ちゃんと伝えたい。
嬉しいとか、好きだとか……全部。」
ふたりは、そっと額を寄せ合った。
声にならない想いが、静かに、静かに重なっていく。
空を覆っていた雲の隙間から、
かすかに陽の光が差し込んだ。
ふたりの間にできた小さな影も、
やさしく溶けていくようだった。
──たとえ、すれ違うことがあっても。
言葉が足りない夜があっても。
それでも、ふたりは。
重ねた手のぬくもりを、
決して、離さない。
その日、空は朝からどこか曇りがちだった。
淡い灰色の雲が、街の色を少しだけぼんやりと滲ませている。
紗月と遥は、並んで歩いていた。
けれど、いつものように手を繋ぐことはなかった。
ふたりの間に、ほんの少しの距離が生まれていた。
小さなきっかけだった。
遥が、ふとした言葉に反応して、少しだけ顔を背けた。
紗月も、どう声をかければいいのか分からず、そのまま静かに歩き続けた。
ほんのすこしのすれ違い。
ほんのすこしの、沈黙。
けれど、それは、心の中で思ったよりも大きな波紋を広げていった。
──嫌われたのかもしれない。
──うまくできなかったのかもしれない。
そんな不安が、知らぬ間に胸の中で膨らんでいく。
小さな公園のベンチに腰掛けたとき、
ふたりの間を吹き抜けた風は、少しだけ冷たかった。
遥は、膝の上で手をぎゅっと握りしめていた。
その仕草に気づいた紗月は、そっと深呼吸をした。
──逃げたくない。
紗月は、そっと遥に声をかけた。
「……ごめんね。
何か、傷つけるようなこと、言っちゃった?」
その言葉に、遥は驚いたように顔を上げた。
そして、かすかに首を振った。
「ちがうの。……ちがうの、紗月。」
遥の声は、震えていた。
けれどその目は、まっすぐに紗月を見ていた。
「私、自分でも、まだうまく気持ちを伝えられなくて……。
それが怖かったの。
嫌われるのが、怖くて……」
最後の言葉は、ほとんど消え入りそうなほど小さかった。
紗月は、ゆっくりと遥の手に触れた。
今度は、ためらわずに、その細い指を包み込む。
「遥が何を思っていても、怖がっても、
私は、ちゃんと受けとめたい。」
それは、きっと紗月自身への誓いでもあった。
遥の目に、ぽつりと涙が浮かんだ。
それでも、遥は微笑んだ。
どこか幼くて、でも確かな強さを帯びた、そんな笑顔だった。
「私も……紗月に、ちゃんと伝えたい。
嬉しいとか、好きだとか……全部。」
ふたりは、そっと額を寄せ合った。
声にならない想いが、静かに、静かに重なっていく。
空を覆っていた雲の隙間から、
かすかに陽の光が差し込んだ。
ふたりの間にできた小さな影も、
やさしく溶けていくようだった。
──たとえ、すれ違うことがあっても。
言葉が足りない夜があっても。
それでも、ふたりは。
重ねた手のぬくもりを、
決して、離さない。
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