セイバー

森田金太郎

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23話

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◆到達
 勇は、翌日も登校する。そんな勇の目元は明らかに腫れていた。愛はそれを見て、勇に何があったのか察した。そして、声をかけた。

「涼くんと晴くんとお別れしたの?」
「うん」
「そう。私は、涼くんと晴くんの代わりになれないけど、私はどこにも行かないから、何かあった時はいつでも言ってよ?」
「ありがとう、愛ちゃん」

 そして、涼や晴の事を考えつつも、その日の授業を受け、下校して行った。その最中、左右を見渡す。

「もう、『監視役』、しなくてよくなっちゃった」

 勇は、とぼとぼと帰宅した。それから、自由時間の夜を迎える。勇は、部屋の窓を全開に開けた。

「星、見たい」

 夜空は、晴れていた。窓からは10月の涼しい風が入って来る。

「どの星に、涼と晴がいるんだろ?」

 勇は、「秘密ソルジャーシリーズ」のフィギュアに見守られながら、星空を見続けた。

 すると、流れ星が同時に2つ見えた。

「流れ星っ!2つ?えっと!えっと!!」

 勇は、願い事をしなければと焦った。そして、その焦りの中、2つ願い事を言った。

「地球を守れますように!涼と晴が元気でいますように!」

 願い事は終わった。しかし、流れ星は消えない。それどころか、勇の方に向かって落ちて来る。

「ええっ。お、落ちてくるっ!!」

 流れ星は、勇の部屋へと入って来た。

「えっ、ええっ?」

 驚き、避けようとした反動で部屋の中で転んだ勇は戸惑った。その視線の先には、白いボール1つと黄色いボール1つ。

「な、何?」

 勇はそのボールの清らかな雰囲気に、自らに害を成す物ではないと判断し、拾い上げた。左手に白のボール、右手に黄色のボールを持ち、勇は言った。

「白と、黄色。涼、ウォーターと、晴、ファイアみたい。見守っててね?僕、絶対に、地球を守ってみせるからっ」

 昨日、出し切ったと思われた涙が勇の頬を濡らした。

◆新たな姿
 それから、1週間後の朝。勇は、部屋に飾っている白と黄色のボールを赤く小さな布袋に入れる。

「涼!晴!一緒に学校行こう!!」

 このボールが来てから、勇は常にボールと共にいた。

「いってきまーす!!」

 そして、勇は登校して行った。

 時は過ぎ、放課後。元気に下校して行く勇。ボールが入っている布袋を揺らしながら歩き、駅前に着く。バスに乗り込み、自宅を目指すが、車窓からぼんやり外を見ていると、途中で充と彩のような人物を見かける。

「あっ」

 勇は、そう小声で言った後、いつもと違うバス停でバスを降車した。勇は、充と彩らしき人物がいた方向に走り出す。

「何も、何もしないといいんだけど!!」

 走りながら2人を探す勇。

「人違いだったら、いいんだけど!!」

 しかし、セイブ・ストーンが反応。

「やっぱりっ!!プラネットクラッシャー!!」

 そして、セイブ・ストーンは、勇を導く。辿り着いた広場には、逃げ惑う人々。その先に、バイオレットとオレンジが沢山のカラミティと共にいた。勇は、ボールを含めた荷物を物陰に置く。

「やめろっ!プラネットクラッシャー!!」

 そう大声で自分にプラネットクラッシャーの注意を向けた後、こう言った。

「解き放て!守りの力!!」

 新たなセイブ・ストーンは、勇を変身させた。赤いコスチュームに、黄色いベルトと手袋と靴。それは、以前と変わらなかったが、前髪は緩やかに波打った。後ろ髪は燃え盛る炎のように逆立ち、両脇の髪は流れる水のようにまっすぐ腰まで伸びる。最後に変わらない茶色のマントが勇を包んだ。そして、一瞬背中に機械じかけの翼、水の翼、炎の翼の幻影が次々に現れた。

「三種の力は最強の証!アースセイバートリプル!!」

 そう名乗ると、トリプルはバイオレットとオレンジを見つめ言った。

「レッツ!セイブ!!」

 バイオレットは頭をかきむしりながら言った。

「遂に誕生してしまったかぁ!真の地球の守護者っ!!」

 オレンジは、苛立たしげに言った。

「あー!厄介!!」

 そんな言葉を聞きながら、トリプルは感じた。

「これが、僕の新しい姿!そして、攻撃の力!!」

 トリプルは、ウイング時代のように機械じかけの翼を広げ、羽根の盾を人々へと届ける。

「皆さん!逃げてくださいっ!!」

 そして、カラミティの輪に割って入り、パンチを繰り出す。トリプルは叫んだ。

「ウォーター!ファイア!力を貸してっ!!」

 すると、右手には炎、左手には水が発生し、カラミティに深刻なダメージを与える事が出来た。

「凄い!」

 それに、危機感を抱いたバイオレットとオレンジは、トリプルの所に。そして、カラミティと共に代わる代わるトリプルに殴りかかってきた。トリプルは言った。

「1人で戦うってこういう事なんだねっ!」

 しかし、水と炎の拳からのパンチは、確実にバイオレットとオレンジにもダメージを加える事が出来た。オレンジは未だに苛々した様子で言った。

「その水!力が削がれるわ!!」

 バイオレットも怒鳴るように言った。

「炎が、俺様の身を焦がす!くそっ!!」

 トリプルは返す。

「ここで、戦い止めてもいいんだよ?カラミティを引っ込めて!」

 バイオレットは言う。

「そんな事を、俺様たちがやると思うのか!」

 オレンジは言う。

「あんたを片付けたらするわよ!全く、あんたの鏡の盾がなければ、もうとっくに『あれ』を出してるって言うのに!!」

 そうやり取りしつつも、トリプルはバイオレットとオレンジと殴り合いを続ける。しかし、そうしているうちに、カラミティをトリプルは取りこぼす。この騒ぎを知らずにこの場に足を踏み入れた人々がカラミティに驚いて転び怪我をした。更に、カラミティは周辺の歩道を破壊していく。トリプルは悔しそうに言った。

「あっ。盾が、足りない!」

 羽根は盾を新たに作るが、後の祭り。トリプルは、眉間に皺を寄せつつ言った。

「僕、まだまだだねっ!悔しいよ!!ウォーター!ファイア!」

 そう言った瞬間、あの2つのボールが心配になる。カラミティが害を成さないように、ウォーターのように水の洗い流しを、ファイアのように炎の焼き尽くしをやってみた。すると、ある程度カラミティの数を減らす事が出来た。

「よし!後は、バイオレットとオレンジだね!!」

 バイオレットは返した。

「やられてたまるか!」

 オレンジは返した。

「ふざけないでよ!」

 しかし、トリプルは決心した。ウォーターとファイアのように、必殺技を繰り出す事を。そして、声を張り上げた。

「セイブ・ウォーター・ソード・レイン!セイブ・ファイア・クロス・エクスプロージョン!」

 水をまとった剣が降って来る。十字の炎が回転しながら爆発する。それは、バイオレットとオレンジを倒した。

「はぁっ。倒せた。けど、ちょっと失敗しちゃった」

 トリプルは、勇に戻り多少の時間、うなだれた。
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