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42甘:一族
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アルヴェードは、帰宅するとすぐに就寝した。そして、翌朝。
「ミルフォンソさん」
「アルヴェードさん、何でしょうか?」
「少し、お話をお聞かせいただきたいのですが」
その会話を程近くで聞いていたエリザータが口を挟む。
「アルヴェード、ミルフォンソさんは、お疲れよ?それに、貴方も疲れてるんじゃない?」
アルヴェードは、エリザータに向けていた視線をミルフォンソに移し言った。
「それは、配慮がなくてすみませんでした。また後日にしましょう」
「いいえ、エリザータさんやこの家の使用人さんたちに良くしてもらって、もう、大丈夫になりましたから。お話、何をすればいいのでしょうか?」
「ありがとうございます」
エリザータの心配の視線は、アルヴェードに刺さる。アルヴェードは、それに気づき、微笑む。
「エリザータ、俺は大丈夫だ」
「なら、いいわ」
「それに、エリザータもここに同席してくれ」
「え?」
「これは、お前にも関わる話だと俺は思うからな。それに、航海中にあった話も出来る」
「わかったわ」
そして、アルヴェードは話をし始める。
「ベルカイザ号が拿捕されたという話が広がっている事は驚いた。危機的な状況ではあったが、拿捕などという制裁は加えられてはいなかった。むしろ、歓迎と適切な対応をしてもらった」
「そうだったの」
エリザータは、少しほっとした顔をした。ミルフォンソは静かにそれを聞いていた。
「実は、ベルカイザ号はレトの近海で海賊船に取り囲まれたんだ」
「本当ですか?」
ミルフォンソは驚く。エリザータは顔が強張った。
「ワイカル国の海賊船とレトは判断しているが、そのレトの海軍にベルカイザ号は救われた。そして、レトの首相に感謝の言葉を述べに行ったんだ。その、レトの首相、クルセイン閣下も我々ブンボル国民に話があったからな。ついでと言ってはなんだが」
「でも、お礼言えたのね?」
「ああ」
「その、クルセイン首相の話とは?」
アルヴェードは、問いを投げかけたミルフォンソに視線を合わせ、言った。
「ミルフォンソさん、貴方に縁遠い話ではない事をクルセイン首相から聞きました。その件についての貴方なりの見解を述べてもらいたいのです」
「まさか」
ミルフォンソは、次第に覚悟を決めた表情になる。アルヴェードはその様子に何かを感じ、核心を話し始める。
「1世紀半前の、レトの労働者が起こした暴動の件でした。ブンボルでは、ヒュラ一族がそれを扇動したとこれまで伝わって来ましたが、レトではエウル一族の指示だったと言われました。その当時労働者として来ていた1人の方の子孫であるクルセイン首相が証言しました。それに、クルセイン首相は、ヒュラ一族の事を知りませんでした」
「何?何それ!」
エリザータの驚愕の声が響き渡る。その横で、ミルフォンソは、アルヴェードの話をひたすら目を瞑り聞いていた。しばらくの沈黙が訪れる。その後、ミルフォンソは目を開き、話し始めた。
「アルヴェードさん、貴方には信じてもらえそうですね。お話しします」
エリザータは固唾を飲んでミルフォンソを見る。アルヴェードは、ゆっくり力強く頷いた。
「結論から言うと、レトの言い分が正しいです。我々シュク一族の源流であるヒュラ一族は、決してレトから来た労働者を扇動してはいません」
「ええっ」
エリザータは、短く声を上げた。アルヴェードは真剣な目でミルフォンソを見つめ尋ねた。
「やはり、そうでしたか。その話を聞いた時からずっとそれを仮説として持っていました。しかし、何故その事実を公表されないのですか?」
「それは難しいですよ。当時の王がヒュラ一族を国家反逆罪を犯した一族として王族から追放しましたし、それからはエウル一族が王宮深くに入り込みましたからね。エウル一族の圧力で我々シュク一族の声は消されるのは目に見えてますし、基本的に王の判断はわが国では絶対でしょう?」
「確かに」
エリザータは、次第に話について行けなくなってきたが、必死に聞こうとした。王宮は、ランディレイのいる所。それに関連する話が目の前で展開されているのだから。また、それに配慮し、アルヴェードが同席を求めてくれたのもあり、その好意を無駄にしたくなかったのもあった。そんなエリザータの目の前でアルヴェードとミルフォンソの話は続いた。
「アルヴェードさん、エリザータさん、お二人に我々シュク一族の歴史を少しだけ聞いてもらいたいのですが、いいでしょうか?」
「いいですよ」
アルヴェードが即答すると、エリザータは続くように頷いた。それを受け、ミルフォンソは口を開く。
「1世紀、いや今から2世紀前以前から、エウル一族とヒュラ一族は対立していました。今もそうですが、当主が王の側近を務めるのが王族の一番の名誉で、その座を争っていました」
アルヴェードとエリザータはそれを静かに聞く。
「そして、新しい側近を選ぶ際に、ヒュラ一族の当時の当主が選ばれそうだと噂が流れたようです。簡単に言えば、それを阻止する為にエウル一族はレトの労働者を使ったんです」
アルヴェードは、右手を顎に添えながら言った。
「そうだ、レトの労働者を連れて来たのは、エウル一族なんですか?ヒュラ一族なんですか?」
「エウル一族ですよ」
「まさか、エウル一族は?」
「そこの所は、わかりません。当時の労働力不足問題を純粋に解決したかったのか、最初から利用する気だったのかは」
「後者だったら、とんでもない事ですね」
ミルフォンソは頷く。そして、話を続ける。
「ヒュラ一族にとっては、寝耳に水と言うのが正しい状況と推測していますが、突然、外国人労働者の暴動の全責任を負わされました。勿論、無実を訴えたようでしたが、提供出来る証拠はゼロ。王は、それを信じ、ヒュラ一族を追放しました」
「全く関わらなかった証拠、今だったらもしかしたら提供出来たかもしれませんが、当時は難しかったでしょうね」
「はい」
ミルフォンソの両手は、きつく握られる。
「それから一族は、意見が二分したそうです。無用な犠牲が出ないよう、追放されたまま生きる当主派と、何としてでも王族復帰を目指す義弟派に。当主派は、そのままヒュラ一族として一般の家柄に収まったと聞いてます。そして、我々シュク一族は、その義弟派です。当然、2つの一族の交流はないですがね」
「なるほど、どちらの意見も納得出来ます。『義弟』という事は、もう既にシュク一族にはヒュラ一族の血は残っていないんですかね?」
「いいえ、僕まで残っている筈です。ヒュラ一族当主の妹の夫ですから、その義弟は」
エリザータは、その「妹」の心情に思いを馳せた。
「お兄さんと夫の意見が別れた。彼女、相当お辛かったでしょうね」
「実際、動機はわかりませんが、おそらく一族の二分を止められる立場だったのに止められなかったからでしょう、数人の子供たちを遺してその妹は自殺したと聞いています」
「なんて事!!」
「それは、悲劇だ」
驚愕の表情のエリザータとアルヴェードの目の前でミルフォンソは、急にうつむく。
「『妹』。ミルーネ」
そして、ミルフォンソは、自らの両手で顔を覆う。
「僕が、女性として産まれていれば、ミルーネは、平和な生活を送れていただろうに。この際、王宮と血が混じらなくてもいいと、養女を使って王族に復帰する、なんていう悪い夢を一族に与える事はなかったのに」
しばらくの沈黙が流れる。アルヴェードがそれを破った。
「今でも、その姿勢は褒められた物ではないと思います」
「そうね。ミルーネさんは、それでストレスを抱えて病気が重くなったようです」
「ああ、なんて最悪な道を選んだんだ。僕らシュク一族は。二分した時と同じ、『妹』を犠牲にしようとしているっ!」
「しかし、ヒュラ一族、シュク一族にも同情の余地はあります」
アルヴェードのその言葉に、ミルフォンソはようやく顔を上げ、アルヴェードとエリザータを見た。エリザータがそんなミルフォンソに声をかける。
「貴方も、人質にされたり、大変な思いをされました。だから、私には何も出来ませんが、シュク一族が王族に復帰出来るよう、願いたいと思っています」
「ありがとう、ありがとうございます。こんな僕らに心を寄せていただいて」
エリザータとアルヴェードは、力強く頷き笑みを浮かべる。そして、アルヴェードはミルフォンソに声をかけた。
「私も、シュク一族の王族復帰を応援します。なので、私に出来る事があれば、力を尽くします」
「アルヴェードさん、いいや、駄目ですよ。その、出会った時、僕は貴方を邪見にしました」
「ご事情を聞いて、納得しましたからね。それは、必死になりますよ。王子とミルーネさんの間に割って入る私など、当時の貴方にとっては邪魔者他ならなかったでしょう。だから、気に病む必要はありません」
「なら、お言葉に甘えます」
「わかりました。これからは、共に夢を見ましょう」
「はい!」
「ミルフォンソさん」
「アルヴェードさん、何でしょうか?」
「少し、お話をお聞かせいただきたいのですが」
その会話を程近くで聞いていたエリザータが口を挟む。
「アルヴェード、ミルフォンソさんは、お疲れよ?それに、貴方も疲れてるんじゃない?」
アルヴェードは、エリザータに向けていた視線をミルフォンソに移し言った。
「それは、配慮がなくてすみませんでした。また後日にしましょう」
「いいえ、エリザータさんやこの家の使用人さんたちに良くしてもらって、もう、大丈夫になりましたから。お話、何をすればいいのでしょうか?」
「ありがとうございます」
エリザータの心配の視線は、アルヴェードに刺さる。アルヴェードは、それに気づき、微笑む。
「エリザータ、俺は大丈夫だ」
「なら、いいわ」
「それに、エリザータもここに同席してくれ」
「え?」
「これは、お前にも関わる話だと俺は思うからな。それに、航海中にあった話も出来る」
「わかったわ」
そして、アルヴェードは話をし始める。
「ベルカイザ号が拿捕されたという話が広がっている事は驚いた。危機的な状況ではあったが、拿捕などという制裁は加えられてはいなかった。むしろ、歓迎と適切な対応をしてもらった」
「そうだったの」
エリザータは、少しほっとした顔をした。ミルフォンソは静かにそれを聞いていた。
「実は、ベルカイザ号はレトの近海で海賊船に取り囲まれたんだ」
「本当ですか?」
ミルフォンソは驚く。エリザータは顔が強張った。
「ワイカル国の海賊船とレトは判断しているが、そのレトの海軍にベルカイザ号は救われた。そして、レトの首相に感謝の言葉を述べに行ったんだ。その、レトの首相、クルセイン閣下も我々ブンボル国民に話があったからな。ついでと言ってはなんだが」
「でも、お礼言えたのね?」
「ああ」
「その、クルセイン首相の話とは?」
アルヴェードは、問いを投げかけたミルフォンソに視線を合わせ、言った。
「ミルフォンソさん、貴方に縁遠い話ではない事をクルセイン首相から聞きました。その件についての貴方なりの見解を述べてもらいたいのです」
「まさか」
ミルフォンソは、次第に覚悟を決めた表情になる。アルヴェードはその様子に何かを感じ、核心を話し始める。
「1世紀半前の、レトの労働者が起こした暴動の件でした。ブンボルでは、ヒュラ一族がそれを扇動したとこれまで伝わって来ましたが、レトではエウル一族の指示だったと言われました。その当時労働者として来ていた1人の方の子孫であるクルセイン首相が証言しました。それに、クルセイン首相は、ヒュラ一族の事を知りませんでした」
「何?何それ!」
エリザータの驚愕の声が響き渡る。その横で、ミルフォンソは、アルヴェードの話をひたすら目を瞑り聞いていた。しばらくの沈黙が訪れる。その後、ミルフォンソは目を開き、話し始めた。
「アルヴェードさん、貴方には信じてもらえそうですね。お話しします」
エリザータは固唾を飲んでミルフォンソを見る。アルヴェードは、ゆっくり力強く頷いた。
「結論から言うと、レトの言い分が正しいです。我々シュク一族の源流であるヒュラ一族は、決してレトから来た労働者を扇動してはいません」
「ええっ」
エリザータは、短く声を上げた。アルヴェードは真剣な目でミルフォンソを見つめ尋ねた。
「やはり、そうでしたか。その話を聞いた時からずっとそれを仮説として持っていました。しかし、何故その事実を公表されないのですか?」
「それは難しいですよ。当時の王がヒュラ一族を国家反逆罪を犯した一族として王族から追放しましたし、それからはエウル一族が王宮深くに入り込みましたからね。エウル一族の圧力で我々シュク一族の声は消されるのは目に見えてますし、基本的に王の判断はわが国では絶対でしょう?」
「確かに」
エリザータは、次第に話について行けなくなってきたが、必死に聞こうとした。王宮は、ランディレイのいる所。それに関連する話が目の前で展開されているのだから。また、それに配慮し、アルヴェードが同席を求めてくれたのもあり、その好意を無駄にしたくなかったのもあった。そんなエリザータの目の前でアルヴェードとミルフォンソの話は続いた。
「アルヴェードさん、エリザータさん、お二人に我々シュク一族の歴史を少しだけ聞いてもらいたいのですが、いいでしょうか?」
「いいですよ」
アルヴェードが即答すると、エリザータは続くように頷いた。それを受け、ミルフォンソは口を開く。
「1世紀、いや今から2世紀前以前から、エウル一族とヒュラ一族は対立していました。今もそうですが、当主が王の側近を務めるのが王族の一番の名誉で、その座を争っていました」
アルヴェードとエリザータはそれを静かに聞く。
「そして、新しい側近を選ぶ際に、ヒュラ一族の当時の当主が選ばれそうだと噂が流れたようです。簡単に言えば、それを阻止する為にエウル一族はレトの労働者を使ったんです」
アルヴェードは、右手を顎に添えながら言った。
「そうだ、レトの労働者を連れて来たのは、エウル一族なんですか?ヒュラ一族なんですか?」
「エウル一族ですよ」
「まさか、エウル一族は?」
「そこの所は、わかりません。当時の労働力不足問題を純粋に解決したかったのか、最初から利用する気だったのかは」
「後者だったら、とんでもない事ですね」
ミルフォンソは頷く。そして、話を続ける。
「ヒュラ一族にとっては、寝耳に水と言うのが正しい状況と推測していますが、突然、外国人労働者の暴動の全責任を負わされました。勿論、無実を訴えたようでしたが、提供出来る証拠はゼロ。王は、それを信じ、ヒュラ一族を追放しました」
「全く関わらなかった証拠、今だったらもしかしたら提供出来たかもしれませんが、当時は難しかったでしょうね」
「はい」
ミルフォンソの両手は、きつく握られる。
「それから一族は、意見が二分したそうです。無用な犠牲が出ないよう、追放されたまま生きる当主派と、何としてでも王族復帰を目指す義弟派に。当主派は、そのままヒュラ一族として一般の家柄に収まったと聞いてます。そして、我々シュク一族は、その義弟派です。当然、2つの一族の交流はないですがね」
「なるほど、どちらの意見も納得出来ます。『義弟』という事は、もう既にシュク一族にはヒュラ一族の血は残っていないんですかね?」
「いいえ、僕まで残っている筈です。ヒュラ一族当主の妹の夫ですから、その義弟は」
エリザータは、その「妹」の心情に思いを馳せた。
「お兄さんと夫の意見が別れた。彼女、相当お辛かったでしょうね」
「実際、動機はわかりませんが、おそらく一族の二分を止められる立場だったのに止められなかったからでしょう、数人の子供たちを遺してその妹は自殺したと聞いています」
「なんて事!!」
「それは、悲劇だ」
驚愕の表情のエリザータとアルヴェードの目の前でミルフォンソは、急にうつむく。
「『妹』。ミルーネ」
そして、ミルフォンソは、自らの両手で顔を覆う。
「僕が、女性として産まれていれば、ミルーネは、平和な生活を送れていただろうに。この際、王宮と血が混じらなくてもいいと、養女を使って王族に復帰する、なんていう悪い夢を一族に与える事はなかったのに」
しばらくの沈黙が流れる。アルヴェードがそれを破った。
「今でも、その姿勢は褒められた物ではないと思います」
「そうね。ミルーネさんは、それでストレスを抱えて病気が重くなったようです」
「ああ、なんて最悪な道を選んだんだ。僕らシュク一族は。二分した時と同じ、『妹』を犠牲にしようとしているっ!」
「しかし、ヒュラ一族、シュク一族にも同情の余地はあります」
アルヴェードのその言葉に、ミルフォンソはようやく顔を上げ、アルヴェードとエリザータを見た。エリザータがそんなミルフォンソに声をかける。
「貴方も、人質にされたり、大変な思いをされました。だから、私には何も出来ませんが、シュク一族が王族に復帰出来るよう、願いたいと思っています」
「ありがとう、ありがとうございます。こんな僕らに心を寄せていただいて」
エリザータとアルヴェードは、力強く頷き笑みを浮かべる。そして、アルヴェードはミルフォンソに声をかけた。
「私も、シュク一族の王族復帰を応援します。なので、私に出来る事があれば、力を尽くします」
「アルヴェードさん、いいや、駄目ですよ。その、出会った時、僕は貴方を邪見にしました」
「ご事情を聞いて、納得しましたからね。それは、必死になりますよ。王子とミルーネさんの間に割って入る私など、当時の貴方にとっては邪魔者他ならなかったでしょう。だから、気に病む必要はありません」
「なら、お言葉に甘えます」
「わかりました。これからは、共に夢を見ましょう」
「はい!」
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