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58甘:新たな道
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その日、ミルフォンソは王子の側近としての初出勤の日を迎えた。ミルーネは言った。
「気をつけていってらっしゃい。頑張ってね?」
「ありがとう、ミルーネ。行ってくるよ」
ミルフォンソは、送り出してくれたミルーネの声を噛み締めながら、王宮へと入って行った。入るなり、ミルフォンソはここに人質として捕らわれていた頃の恐怖などの気持ちがよみがえってきた。
「今度は、捕まりに来たわけじゃない。仕事をしに来たんだ」
すると、ギャスバーがミルフォンソの姿を見て近寄って来た。
「ミルフォンソっ!」
「ぎゃ、ギャスバー」
「ある意味、お前は私の後任だ。まさか、このような事になるとはな!」
「ご指導を、お願いします」
「お前なぞに指導する物はない!」
ギャスバーは肩で怒りを露わにし、立ち去った。ミルフォンソは呟く。
「そうだ。僕は、いずれ国王の側近に」
重圧がミルフォンソを襲う。やがて、ランディレイの元へと辿り着く。
「王子、側近として選んでいただき、ありがとうございました」
「ミルフォンソ、よろしくね!」
「はい」
ミルフォンソは、考え込む。
「それで、何をしましょうか?王子。その、ギャスバーからは指導しないと、先程言われてしまいまして」
「大丈夫だよ?最初は何もしなくてさ。まずは、シュク一族を王宮に受け入れたって内外に示す為に君を呼んだんだ。君の考える僕の側近を演じてくれればいいし、君が考える僕の側近としての仕事をしてくれてもいい」
「は?はい」
ミルフォンソは、戸惑うばかりだった。しかし、何もしないわけにもいかず、ランディレイに尋ねた。
「あの、スケジュール管理をお任せいただけないでしょうか?」
「いいよ?頼んだよ」
最初の仕事を見つけられてミルフォンソはほっとした。そんなミルフォンソにランディレイは言った。
「そうやって、ミルーネの画家の仕事も手伝ってた?」
「え?何故?」
「いや、ミルーネが話してくれた。兄である君が、よく手伝ってくれているってね」
「そうだったんですか」
ミルーネの名前に心が軋むミルフォンソ。それを隠しつつランディレイの公務のスケジュールを把握し始める。
「ええと、あと10分後に面会の予定がありますね。行きましょうか」
「うん」
ミルフォンソは、ランディレイと共に部屋を移動して行った。
その頃、おおよそ1年後のベルカイザ号の航行日程が発表される。予約が開始されたが、料金が9割引と破格の値段であった。風評被害の余波は続いてはいたが、予約の出だしは良好だった。その情報が帰宅間近のアルヴェードの元へと届いた。
「そうか。それはよかった」
そして、外に出ると、アルヴェードは思い出す。
「キャナリーン、今夜から探してみるか」
アルヴェードの足は、トゥルレ・ジェネラル・ホスピタルへと向けられた。そして、病院に着いた。丁度セブレーノが帰宅する所だった。
「セブレーノ」
「アルヴェード?どうしたんだい?久しぶりだね?」
「ええと、訊きたいことがあって」
セブレーノは首を傾げた。
「エリザータから聞いたんだが、キャナリーンという女性の事を。彼女がここで働いているのか?という事を訊きたかったんだ」
「懐かしい名前だね、キャナリーン。いいや、働いてない。と言うか、同居していた家から飛び出して行った後は、全然会ってないからね」
「そうか。足止めしてすまない」
「いいよ」
エリザータからセブレーノはキャナリーンの消息を知らない筈だという情報をもらっていた為、ダメ元ではあった。見事にそれは失敗に終わった。アルヴェードは、今度こそ帰宅しようとセブレーノと別れた後病院から離れた。すると、1人の女性が路上から病院を見上げ佇んでいた。アルヴェードは、その女性に話しかけた。
「ここの病院の関係者ではないんですが、もう診療時間外ですよ?」
「わ、わかってます」
その女性の目は、切ないものであった。アルヴェードは、もしやと思い、更に話しかける。
「私は、アルヴェードと申します。貴女は?」
「私は、キャナリーンです」
アルヴェードは、「案外すぐに見つかってしまったな」と心の中で言い、こう誘いの言葉をかけた。
「キャナリーンさん、ここで会ったのも何かの縁だ。暖かい所でお話しませんか?」
「え?ええ」
アルヴェードは、自宅にキャナリーンを連れ帰った。
「おかえりなさい、アルヴェード」
と、言ったエリザータの目に飛び込んで来たのは、キャナリーンの姿であった。
「気をつけていってらっしゃい。頑張ってね?」
「ありがとう、ミルーネ。行ってくるよ」
ミルフォンソは、送り出してくれたミルーネの声を噛み締めながら、王宮へと入って行った。入るなり、ミルフォンソはここに人質として捕らわれていた頃の恐怖などの気持ちがよみがえってきた。
「今度は、捕まりに来たわけじゃない。仕事をしに来たんだ」
すると、ギャスバーがミルフォンソの姿を見て近寄って来た。
「ミルフォンソっ!」
「ぎゃ、ギャスバー」
「ある意味、お前は私の後任だ。まさか、このような事になるとはな!」
「ご指導を、お願いします」
「お前なぞに指導する物はない!」
ギャスバーは肩で怒りを露わにし、立ち去った。ミルフォンソは呟く。
「そうだ。僕は、いずれ国王の側近に」
重圧がミルフォンソを襲う。やがて、ランディレイの元へと辿り着く。
「王子、側近として選んでいただき、ありがとうございました」
「ミルフォンソ、よろしくね!」
「はい」
ミルフォンソは、考え込む。
「それで、何をしましょうか?王子。その、ギャスバーからは指導しないと、先程言われてしまいまして」
「大丈夫だよ?最初は何もしなくてさ。まずは、シュク一族を王宮に受け入れたって内外に示す為に君を呼んだんだ。君の考える僕の側近を演じてくれればいいし、君が考える僕の側近としての仕事をしてくれてもいい」
「は?はい」
ミルフォンソは、戸惑うばかりだった。しかし、何もしないわけにもいかず、ランディレイに尋ねた。
「あの、スケジュール管理をお任せいただけないでしょうか?」
「いいよ?頼んだよ」
最初の仕事を見つけられてミルフォンソはほっとした。そんなミルフォンソにランディレイは言った。
「そうやって、ミルーネの画家の仕事も手伝ってた?」
「え?何故?」
「いや、ミルーネが話してくれた。兄である君が、よく手伝ってくれているってね」
「そうだったんですか」
ミルーネの名前に心が軋むミルフォンソ。それを隠しつつランディレイの公務のスケジュールを把握し始める。
「ええと、あと10分後に面会の予定がありますね。行きましょうか」
「うん」
ミルフォンソは、ランディレイと共に部屋を移動して行った。
その頃、おおよそ1年後のベルカイザ号の航行日程が発表される。予約が開始されたが、料金が9割引と破格の値段であった。風評被害の余波は続いてはいたが、予約の出だしは良好だった。その情報が帰宅間近のアルヴェードの元へと届いた。
「そうか。それはよかった」
そして、外に出ると、アルヴェードは思い出す。
「キャナリーン、今夜から探してみるか」
アルヴェードの足は、トゥルレ・ジェネラル・ホスピタルへと向けられた。そして、病院に着いた。丁度セブレーノが帰宅する所だった。
「セブレーノ」
「アルヴェード?どうしたんだい?久しぶりだね?」
「ええと、訊きたいことがあって」
セブレーノは首を傾げた。
「エリザータから聞いたんだが、キャナリーンという女性の事を。彼女がここで働いているのか?という事を訊きたかったんだ」
「懐かしい名前だね、キャナリーン。いいや、働いてない。と言うか、同居していた家から飛び出して行った後は、全然会ってないからね」
「そうか。足止めしてすまない」
「いいよ」
エリザータからセブレーノはキャナリーンの消息を知らない筈だという情報をもらっていた為、ダメ元ではあった。見事にそれは失敗に終わった。アルヴェードは、今度こそ帰宅しようとセブレーノと別れた後病院から離れた。すると、1人の女性が路上から病院を見上げ佇んでいた。アルヴェードは、その女性に話しかけた。
「ここの病院の関係者ではないんですが、もう診療時間外ですよ?」
「わ、わかってます」
その女性の目は、切ないものであった。アルヴェードは、もしやと思い、更に話しかける。
「私は、アルヴェードと申します。貴女は?」
「私は、キャナリーンです」
アルヴェードは、「案外すぐに見つかってしまったな」と心の中で言い、こう誘いの言葉をかけた。
「キャナリーンさん、ここで会ったのも何かの縁だ。暖かい所でお話しませんか?」
「え?ええ」
アルヴェードは、自宅にキャナリーンを連れ帰った。
「おかえりなさい、アルヴェード」
と、言ったエリザータの目に飛び込んで来たのは、キャナリーンの姿であった。
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