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第10話 本格訓練開始
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「クライン、おもちを自由に動かすことはできるか? 魔力を通じて頼み事ができるかということだ」
「やってみる」
無事に屋敷に辿り着いた翌日、広々とした庭で、魔印の特訓が始まった。
本来ならもっと年齢を重ねてからのほうが身体にも良いとのことだったが、才能が溢れすぎているので早くしたほうがいいとのことだった。
メアリーは俺が五本指と聞いて嬉しそうというよりは、不安そうにしていた。
何かに巻き込まれやしないかと、怖さのほうが優っているらしい。
よくわからないが、例えば俺が王子や陛下なら、才能が溢れる魔法使いは傍に置いておきたい。
もし敵なら――考えずともわかる。
だがそんなことよりも、自分が人よりも優れていることが素直に嬉しかった。
おそらく幼少期、といっても今もそうだが、魔印の操作をしていたおかげだろう。
ただもちろん、一人では出来なかった。
おもちが傍にいてくれたから、痛みに耐えることができたのだ。
そして、空を飛んでくれと魔力で命令してみる。
声を出さずに、心で会話をする。
――おもち、空を飛んで。
「どうだ? クライン」
次の瞬間――おもちは空を飛ぶ。旋回してと頼むと、その命令通りに聞いてくれた。
やっぱり、おもちは凄い!
「パパ、どう?」
「……凄いな。魔獣ってのは本来、意思疎通するだけでも数年はかかる。それにクライン、どうやって命令した?」
「え? 心の中で言うんじゃないの?」
肩に降りてくるおもち。だが父はもの凄い目を見開いていた。
なんでこんな面白い顔をしてるんだろう。
「天才だ、天才すぎるぞクライン!」
「え、ええ!?」
突然頭をわしゃわしゃと撫でる。よくわからないが、嬉しい、とにかく嬉しい。
以前はどれだけ頑張っても怒られていたのだ。今が、たまらなく幸せだ。
「なら次は魔術操作の基礎、『魔結界《まけっかい》だ』」
「はいパパ!」
「うむ、元気でよろしい」
時折、でゅへへと頬を綻ぶ父は、随分と可愛い。
「指先に魔力を集めると、熱を帯びていくのがわかるか?」
「わかります!」
何度もやっている。
それは今でもすぐできる。
「ふむ、優秀すぎると教えることもないな。だがこれはすぐにできないだろう」
すると父は、ポケットから紙を取り出した。鳥のような形で、息を吹きかけると、生きているかのように飛んだ。
逃げようとしているのか、それともただ上空に飛ぼうとしているのかはわからない。
次の瞬間、父が人差し指をピンと立てる。
馬車で魔狼にしていた時と同じで、指先に魔力が集まっていくのを感じる。
そして――。
「魔結界!」
掛け声と共に、魔力の糸のようなものが空中に出現し、箱のようなものに変化していく。
点と点が繋がって、紙鳥が空中で捕まる。
すごい、やっぱり俺なんかよりも随分と速い。
「すごい! パパすごい!」
「でゅへへ、すごいでちょ――。ごほん、これが基本だ。この世界に魔物は多く存在する。剣で戦うもの、魔法で戦うものもいるが、私たちは結界を使う。これはこの地方に伝わる特殊なものだ。敵を囲うことで、身動きを封じることができる」
なるほど、遠距離なので危険は少ない。
「捕まえたあとは、もしかして前の?」
「覚えていたか。――よく見ておけ」
今度は、人差し指だけではなく、中指を立てる。
「魔滅《まめつ》」
すると箱の中が黒ずんでいく。
そのまま、鳥がはじけた音が聞こえた。
やはりそうか。これがセットなのだ。
「これが魔滅だ。魔結界⇒魔滅が基本的な攻撃となる。もし1人が魔結界しか使えない、二人目が魔滅しか使えない、その場合はどうしたらいいかわかるか?」
「……交代で捕まえて攻撃するってこと?」
父がにやりと笑う。頬の皺が、渋いが、すぐ緩む。
「しゅごい……クラインしゅごい……」
「パパ? どうしたの?」
渋い顔がとても微笑ましい顔になっている。
悪く言えばだらしない、良く言えば可愛い。
「――すまん。その通りだ。だからこそ二本指は優遇される。一人で戦えるからな。魔結界だけなら捕まえることができる。魔滅だけの場合は、不安定だからな。ここに魔獣が加わると更に安定する」
「なるほど、すごい……」
「だが魔結界は無敵じゃない。強い魔物には弾かれたりするんだ。だがクラインの魔変《まへん》は、強固にしたり、性質を変化させることができる。柔らかくしたり、使い道は色々ある。粘着性のある壁を出す使い手もいるが、術者によって違うな。だが基本は魔結界からだ」
「わかった。じゃあ、魔結界する!」
そして俺は、父の言う通り魔力を指先に集中させる。
「身体中の魔力を、ゆっくり流し込むんだ」
いつも通り、同じように力を入れる。
「空中に浮いているものは難しい。そこにある壺を囲ってみなさい。といっても、すぐには――」
「魔結界!」
点と線が繋がる。四角形がジジジと形成されていくと、壺を囲むことに成功した。
「パパ! どう? えへへ、実はずっと前から練習してたんだ!」
「うちょ……まぢ……」
ギャルみたいになってる父を横目に、何となく、凄く何となくここで魔滅をやってみたらどうなるんだろうと頭に過る。
そして「……魔めちゅ!」
少し噛んでしまったが、黒く箱が覆われた。
その瞬間、この壺、父が大切にしていたことを思い出す――。
「あ……」
そのまま箱が消える。
壺がバラバラだった。
俺は、おそるおそる父の顔を見る。
「魔めちゅも、できるのか……凄い、凄いなクライン……」
「パパ……ごめんなさい……」
「大丈夫だ。パパ、ちゅおいから……」
今日、全然怒らない父の偉大さを知った。
「やってみる」
無事に屋敷に辿り着いた翌日、広々とした庭で、魔印の特訓が始まった。
本来ならもっと年齢を重ねてからのほうが身体にも良いとのことだったが、才能が溢れすぎているので早くしたほうがいいとのことだった。
メアリーは俺が五本指と聞いて嬉しそうというよりは、不安そうにしていた。
何かに巻き込まれやしないかと、怖さのほうが優っているらしい。
よくわからないが、例えば俺が王子や陛下なら、才能が溢れる魔法使いは傍に置いておきたい。
もし敵なら――考えずともわかる。
だがそんなことよりも、自分が人よりも優れていることが素直に嬉しかった。
おそらく幼少期、といっても今もそうだが、魔印の操作をしていたおかげだろう。
ただもちろん、一人では出来なかった。
おもちが傍にいてくれたから、痛みに耐えることができたのだ。
そして、空を飛んでくれと魔力で命令してみる。
声を出さずに、心で会話をする。
――おもち、空を飛んで。
「どうだ? クライン」
次の瞬間――おもちは空を飛ぶ。旋回してと頼むと、その命令通りに聞いてくれた。
やっぱり、おもちは凄い!
「パパ、どう?」
「……凄いな。魔獣ってのは本来、意思疎通するだけでも数年はかかる。それにクライン、どうやって命令した?」
「え? 心の中で言うんじゃないの?」
肩に降りてくるおもち。だが父はもの凄い目を見開いていた。
なんでこんな面白い顔をしてるんだろう。
「天才だ、天才すぎるぞクライン!」
「え、ええ!?」
突然頭をわしゃわしゃと撫でる。よくわからないが、嬉しい、とにかく嬉しい。
以前はどれだけ頑張っても怒られていたのだ。今が、たまらなく幸せだ。
「なら次は魔術操作の基礎、『魔結界《まけっかい》だ』」
「はいパパ!」
「うむ、元気でよろしい」
時折、でゅへへと頬を綻ぶ父は、随分と可愛い。
「指先に魔力を集めると、熱を帯びていくのがわかるか?」
「わかります!」
何度もやっている。
それは今でもすぐできる。
「ふむ、優秀すぎると教えることもないな。だがこれはすぐにできないだろう」
すると父は、ポケットから紙を取り出した。鳥のような形で、息を吹きかけると、生きているかのように飛んだ。
逃げようとしているのか、それともただ上空に飛ぼうとしているのかはわからない。
次の瞬間、父が人差し指をピンと立てる。
馬車で魔狼にしていた時と同じで、指先に魔力が集まっていくのを感じる。
そして――。
「魔結界!」
掛け声と共に、魔力の糸のようなものが空中に出現し、箱のようなものに変化していく。
点と点が繋がって、紙鳥が空中で捕まる。
すごい、やっぱり俺なんかよりも随分と速い。
「すごい! パパすごい!」
「でゅへへ、すごいでちょ――。ごほん、これが基本だ。この世界に魔物は多く存在する。剣で戦うもの、魔法で戦うものもいるが、私たちは結界を使う。これはこの地方に伝わる特殊なものだ。敵を囲うことで、身動きを封じることができる」
なるほど、遠距離なので危険は少ない。
「捕まえたあとは、もしかして前の?」
「覚えていたか。――よく見ておけ」
今度は、人差し指だけではなく、中指を立てる。
「魔滅《まめつ》」
すると箱の中が黒ずんでいく。
そのまま、鳥がはじけた音が聞こえた。
やはりそうか。これがセットなのだ。
「これが魔滅だ。魔結界⇒魔滅が基本的な攻撃となる。もし1人が魔結界しか使えない、二人目が魔滅しか使えない、その場合はどうしたらいいかわかるか?」
「……交代で捕まえて攻撃するってこと?」
父がにやりと笑う。頬の皺が、渋いが、すぐ緩む。
「しゅごい……クラインしゅごい……」
「パパ? どうしたの?」
渋い顔がとても微笑ましい顔になっている。
悪く言えばだらしない、良く言えば可愛い。
「――すまん。その通りだ。だからこそ二本指は優遇される。一人で戦えるからな。魔結界だけなら捕まえることができる。魔滅だけの場合は、不安定だからな。ここに魔獣が加わると更に安定する」
「なるほど、すごい……」
「だが魔結界は無敵じゃない。強い魔物には弾かれたりするんだ。だがクラインの魔変《まへん》は、強固にしたり、性質を変化させることができる。柔らかくしたり、使い道は色々ある。粘着性のある壁を出す使い手もいるが、術者によって違うな。だが基本は魔結界からだ」
「わかった。じゃあ、魔結界する!」
そして俺は、父の言う通り魔力を指先に集中させる。
「身体中の魔力を、ゆっくり流し込むんだ」
いつも通り、同じように力を入れる。
「空中に浮いているものは難しい。そこにある壺を囲ってみなさい。といっても、すぐには――」
「魔結界!」
点と線が繋がる。四角形がジジジと形成されていくと、壺を囲むことに成功した。
「パパ! どう? えへへ、実はずっと前から練習してたんだ!」
「うちょ……まぢ……」
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そして「……魔めちゅ!」
少し噛んでしまったが、黒く箱が覆われた。
その瞬間、この壺、父が大切にしていたことを思い出す――。
「あ……」
そのまま箱が消える。
壺がバラバラだった。
俺は、おそるおそる父の顔を見る。
「魔めちゅも、できるのか……凄い、凄いなクライン……」
「パパ……ごめんなさい……」
「大丈夫だ。パパ、ちゅおいから……」
今日、全然怒らない父の偉大さを知った。
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