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第38話 合否
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いつもの中庭。
全員が同じ訓練服に身を包んでいた。
最後の試験の内容は知らされていない。
ココア先生、ルスティ先生、各班の先生が立っている。
真剣な面持ちに、候補生の全員が固唾を飲んでいた。
まずはココア先生が前に出る。
「一年間、お前たちはよく頑張った。候補生として大規模侵攻を退けたことも誇りに思ってる。だが残念ながら宮廷付きには人数制限がある。今ここにいる15名全員が合格することはない。最終試験は、今までの詰め合わせのようなものだ。能力を使った試験、パートナー試験、筆記、面接もある。そのすべてと過去の成績を加味する。判定基準は伝えられない」
残りの一か月の序列はされていなかった。
とはいえ、俺が一位なのは間違いないだろう。
自信過剰ではなく、常にトップを獲ってきたからだ。
だが追い上げていたプラタはすさまじかった。
あの日、記憶回帰を終えてからの彼女の気迫は誰よりも高かった。
しかし一番凄かったのはミリシアだ。
大規模侵攻を経て、彼女は目標を明確にした。
チーム戦では、自分の立ち位置を理解しているのか無茶に前に出ようとはせず味方の為に戦っていた。
成績はみるみる上昇していただろう。
だがルージュも負けていない。
持ち前のコミュニケーション能力で他国の人と仲良くなり、魔滅のコツを掴んでいた。
最終的には力強い威力を連続で何発も撃てるようになっている。
まともなタイマンなら最強クラスじゃなかろうか。
アクリル、エウリ、プラタ、他の面子は一癖も二癖もある。
決して油断できない。
最後にルスティが前に出た。
「笑っても泣いてもこれで最後だ。だが楽しんでくれ。こんなにワクワクするのは、これで最後だろうからな」
誰もワクワクはしていなかった。
試験は――大変だった。
新たな門も入ったし、今までにない試験もあった。
筆記も難しかった。
そして最後、面接だ。
試験は三日間ミッチリだった。
みんな疲弊していたし、緊張感もあった。
部屋に入ると、大勢の担当が並んでいた。
ルスティ先生が、俺に声をかけてくる。
「よおクライン、掛けてくれ。どうだ? 楽しかったか?」
「どうでしょうか。でも、満足はしました」
「ハッ、お前は高成績だ。自分でも合格すると思ってるだろ?」
「いえ、思っていません」
「……なぜだ?」
「もし序列が合格順なら面接の必要がないからです。それに今までの訓練の意味もない。だから、気は抜けません」
「ハッ、なるほどな。さて、規定の質問がいくつがある。答えてもらうぜ」
それから次々と質問があった。
だが驚いたことにどれも簡単というか、当たり前の話だった。
しかし最後、ココア先生が尋ねてきた。
「宮廷結界師は人を殺す覚悟が必要だ。それについては?」
あの時の問いと同じだ。
少しだけ考える。
だが、すぐに答えた。
「覚悟があります。――ですが、殺さないと判断した場合、そうしない可能性もあります」
「それは命令に背くことになるぞ」
「構いません」
その時、誰かが何かを書いた。
心臓が呼応する。だが、真実だ。
そのまま退出。
全員が終わるまで部屋で待機となり、ルージュが戻ってくる頃にはすっかりと夜になっていた。
「マジ疲れた……今日はこのまま寝るぜ」
「ああ、おやすみルージュ。ミリシアは?」
「さっき終わってたぜ……」
「ありがとう、おやすみ」
翌日、あらかじめ伝えられていたが、今日は――祝賀会だ。
「さて、いっぱい食べてくれ。試験、お疲れさんだ」
以前と同じようにご馳走がいっぱい並んでいた。
今回は外でBBQのようなスタイルで、みんなで騒いだ。
アクリルやエウリ、プラタ、ほかの班の人たちともいっぱい話す事が出来たのが楽しかった。エヴィとか。
また、他の担当官とも話せた。
みんなどうだった? などと会話をして、その日は凄く幸せだった。
全員が合格すればいいのにと、本気で思った。
◇
候補生たちの祝賀会が終わった後、担当官は部屋に集まっていた。
それぞれのメモを集めている。
「どうでしたか?」
「アクリルはみんなとよく話してましたよ。色々と打ち解けたみたいです」
「エウリもです。口下手でしたが、最後はちゃんと意見を言い合っていました」
ああでもないこうでもないと、何かをすり合わせるかのように。
「ルージュは一番いい。誰とでも仲良くしている。ミリシアも同じだ。人当たりがよく、私たちにもよく気を遣ってくれた」
「プラタもですよ。彼女は本当にいつも精神が安定している。気持ちの面でも、戦闘においても。この期間で何か吹っ切れたらしい。ココア先生、ルスティ先生、何か知っているでしょう?」
「どうですかね」
「ハハッ、はぐらかされた。でもしかしやっぱり、クラインについては悩みますね。どう思いますか、ルスティ先生」
「ああ、クラインは優秀だ。人当たりもいい。それに能力も高すぎるくらいだ。宮廷結界師としては十分すぎる。――が、ワイバーン戦の時のようにやりすぎる癖がある。俺たちは王家を守らなきゃいけない。その優先順位が果たして守れるかどうか」
「……そうですね」
だがそこに、ココア先生が割って入る。どこか、嬉しそうに。
「無理に決まってる。あいつは命を等しく思ってる。それが、クラインだ」
「ハッ、違いないな。よし、最後の試験はこれで終わりだ。まさかさっきの祝賀会が試験だとは思ってないだろうな候補生も」
「例年通りですが、趣味が悪いですよね。一番気を抜いたときの素を見る。私たちも仕事ですから。命を預ける仲間がどんな性格か、どう思っているのか、人と話しているのか、全てが筒抜けになる唯一の瞬間です」
「確かに、普段は言わないような愚痴まで飛び交いますからね」
「まったくだ。俺も去年はとんでもないことを言った気がするよ」
「しかし、これで出そろいましたからね。後は朝までに議論を重ねましょう」
「だな」
◇
翌朝、扉の前に一枚の紙があった。
そこには、俺とルージュの名前が書かれている。
8時に試験の合否を伝える。制服を着て、王の間に集合せよ、と。
「いよいよだな」
「ああ。――ルージュ、ありがとう。君と一緒に過ごせてよかった。俺1人なら心が折れてたかもしれない。本当にありがとう」
「……バカなこというなよ。俺だよ。クラインお前と出会えてよかった。けど、まだこれからだ。これが、最後にはならねえよ」
「……だな」
制服に身を包みながら、集合時間の20分前に到着する。
そこには、ミリシアの姿があった。
「おはよう。そっちにも届いてたのね」
「ああ、3人同時に合否か、ドキドキするな」
「俺たちなら大丈夫。――だと思う」
「クライン、そこは言い切ってよ」
「ごめん……。大丈夫だ」
そして、扉を開ける。
左右には、既に宮廷付きの面々が立っていた。
既に姿勢を正していたのは、アクリル、エウリ、プラタ、エヴィだ。
他のメンバーの姿はない。
俺たちはゆっくりと続く。
どういうことだろうか。
だがそのとき、拍手が響いた。
「おめでとう。君たち7人が、宮廷付きとして合格した。唯一正式な組はクライン、ルージュ、ミリシア。残りは各班から数人選出させてもらった。異例のことだが、君たちの能力を買ってのことだ。既に残りの面子には不合格を通達している」
ルスティ先生の言葉が響き渡る。
訳が分からなかった。だが、徐々に実感がわいてくる。
俺たちは、合格したんだと。
「クライン、やったぜ!」
「私たち、受かったの……?」
「……嘘じゃないよな」
とはいえ、アクリルやプラタ、エウリは仲間が落ちている。
複雑な面持ちだったが、それからすぐに残りのメンバーが現れた。
彼女たちに向かって拍手している。
「不合格だったメンバーに関しては、来年また候補生として加入する可能性もある。他国で働き手が決まる場合もある。合格した君たちは来年度から正式に宮廷付きとして働いてもらう。だが忘れないでほしい。まだまだこれからなのだ。宮廷付きとしての研修期間もある。採用とはいえまだまだひよっ子だということを自覚しておいてほしい」
「私からも伝えておく。宮廷付きになった者の半数が3年以内に自ら辞職している。それくらい厳しい仕事だ。水を差すつもりはないが、辞退もできるということは伝えておく」
そんなことする人がいるのだろうかと思ったが、もしルージュやミリシアが落ちていたらと思うとわからなかった。
とはいえ、俺たちは全員合格したのだ。
その事実だけは決して揺るがない。
最後にココア先生が前に出なさいといった。
皇帝陛下、ベルーナ・オウリが俺を見つめていた。
齢70と聞いているが、まだまだ現役を思わせる彫の深い雰囲気だ。
昔は武道派だったとも聞いている。
俺は、片膝をついた。
「クライン、君は最優秀候補生に選ばれた。前回選出されたのは、随分と前、ルスティ・ブル以来だ。特別報奨金と特別の名誉が与えられる。これを頂いたからといって宮廷付きが強制になるわけじゃない。だが、待っているぞ」
「ありがとうございます」
まさかの出来事だった。
皇帝陛下は、首にネックレスの勲章をつけてくれた。
お礼を言って振り返ると、全員が拍手してくれた。
「クライン、似合ってるぞ!」
「さすがね、クライン」
ルージュ、ミリシア。
「当たり前だな」
「……素敵です」
「クライン君、これからもよろしくね」
「僕じゃないのが悔やまれるね」
アクリル、エウリ、プラタ。あと、エヴィ。
これからはライバルじゃない。
心から信頼し合える仲間なのだ。
そして――。
「ぐるぅ」
「おもち、俺たち頑張ったよな」
「ぐるぅぐるぅ」
おもちも、俺に頭をこすりつけてくれた。
するとルスティとココア先生が同じ勲章をおもちにかけてくれた。
「ワイバーン討伐の功労者だからな。同じのを作ってもらった」
「ハッ、喜んでるじゃねえか」
俺はおもちの頭をなでる。
あの日、火事で全てを失った俺たちは、自らの手で幸せを勝ち取ったのだ。
これはまだほんのスタートだ。
これからもっと大変なことがあるだろう。
けれども大丈夫。
俺には心から信頼できる人たちがいる。
「これからも、幸せになろうな」
「ぐるぅ」
宮廷結界師として、誇り高く生きよう。
今まで以上に、幸せになるんだ。
───────────────────
【大事なお願い】
これにて第一章が完結になります!
10万文字という長編を見て頂きありがとうございました!
どんな些細なコメントでも頂けると嬉しいです。一言でもありがたいです。
ここまで見て頂き誠にありがとうございました(^^)/
全員が同じ訓練服に身を包んでいた。
最後の試験の内容は知らされていない。
ココア先生、ルスティ先生、各班の先生が立っている。
真剣な面持ちに、候補生の全員が固唾を飲んでいた。
まずはココア先生が前に出る。
「一年間、お前たちはよく頑張った。候補生として大規模侵攻を退けたことも誇りに思ってる。だが残念ながら宮廷付きには人数制限がある。今ここにいる15名全員が合格することはない。最終試験は、今までの詰め合わせのようなものだ。能力を使った試験、パートナー試験、筆記、面接もある。そのすべてと過去の成績を加味する。判定基準は伝えられない」
残りの一か月の序列はされていなかった。
とはいえ、俺が一位なのは間違いないだろう。
自信過剰ではなく、常にトップを獲ってきたからだ。
だが追い上げていたプラタはすさまじかった。
あの日、記憶回帰を終えてからの彼女の気迫は誰よりも高かった。
しかし一番凄かったのはミリシアだ。
大規模侵攻を経て、彼女は目標を明確にした。
チーム戦では、自分の立ち位置を理解しているのか無茶に前に出ようとはせず味方の為に戦っていた。
成績はみるみる上昇していただろう。
だがルージュも負けていない。
持ち前のコミュニケーション能力で他国の人と仲良くなり、魔滅のコツを掴んでいた。
最終的には力強い威力を連続で何発も撃てるようになっている。
まともなタイマンなら最強クラスじゃなかろうか。
アクリル、エウリ、プラタ、他の面子は一癖も二癖もある。
決して油断できない。
最後にルスティが前に出た。
「笑っても泣いてもこれで最後だ。だが楽しんでくれ。こんなにワクワクするのは、これで最後だろうからな」
誰もワクワクはしていなかった。
試験は――大変だった。
新たな門も入ったし、今までにない試験もあった。
筆記も難しかった。
そして最後、面接だ。
試験は三日間ミッチリだった。
みんな疲弊していたし、緊張感もあった。
部屋に入ると、大勢の担当が並んでいた。
ルスティ先生が、俺に声をかけてくる。
「よおクライン、掛けてくれ。どうだ? 楽しかったか?」
「どうでしょうか。でも、満足はしました」
「ハッ、お前は高成績だ。自分でも合格すると思ってるだろ?」
「いえ、思っていません」
「……なぜだ?」
「もし序列が合格順なら面接の必要がないからです。それに今までの訓練の意味もない。だから、気は抜けません」
「ハッ、なるほどな。さて、規定の質問がいくつがある。答えてもらうぜ」
それから次々と質問があった。
だが驚いたことにどれも簡単というか、当たり前の話だった。
しかし最後、ココア先生が尋ねてきた。
「宮廷結界師は人を殺す覚悟が必要だ。それについては?」
あの時の問いと同じだ。
少しだけ考える。
だが、すぐに答えた。
「覚悟があります。――ですが、殺さないと判断した場合、そうしない可能性もあります」
「それは命令に背くことになるぞ」
「構いません」
その時、誰かが何かを書いた。
心臓が呼応する。だが、真実だ。
そのまま退出。
全員が終わるまで部屋で待機となり、ルージュが戻ってくる頃にはすっかりと夜になっていた。
「マジ疲れた……今日はこのまま寝るぜ」
「ああ、おやすみルージュ。ミリシアは?」
「さっき終わってたぜ……」
「ありがとう、おやすみ」
翌日、あらかじめ伝えられていたが、今日は――祝賀会だ。
「さて、いっぱい食べてくれ。試験、お疲れさんだ」
以前と同じようにご馳走がいっぱい並んでいた。
今回は外でBBQのようなスタイルで、みんなで騒いだ。
アクリルやエウリ、プラタ、ほかの班の人たちともいっぱい話す事が出来たのが楽しかった。エヴィとか。
また、他の担当官とも話せた。
みんなどうだった? などと会話をして、その日は凄く幸せだった。
全員が合格すればいいのにと、本気で思った。
◇
候補生たちの祝賀会が終わった後、担当官は部屋に集まっていた。
それぞれのメモを集めている。
「どうでしたか?」
「アクリルはみんなとよく話してましたよ。色々と打ち解けたみたいです」
「エウリもです。口下手でしたが、最後はちゃんと意見を言い合っていました」
ああでもないこうでもないと、何かをすり合わせるかのように。
「ルージュは一番いい。誰とでも仲良くしている。ミリシアも同じだ。人当たりがよく、私たちにもよく気を遣ってくれた」
「プラタもですよ。彼女は本当にいつも精神が安定している。気持ちの面でも、戦闘においても。この期間で何か吹っ切れたらしい。ココア先生、ルスティ先生、何か知っているでしょう?」
「どうですかね」
「ハハッ、はぐらかされた。でもしかしやっぱり、クラインについては悩みますね。どう思いますか、ルスティ先生」
「ああ、クラインは優秀だ。人当たりもいい。それに能力も高すぎるくらいだ。宮廷結界師としては十分すぎる。――が、ワイバーン戦の時のようにやりすぎる癖がある。俺たちは王家を守らなきゃいけない。その優先順位が果たして守れるかどうか」
「……そうですね」
だがそこに、ココア先生が割って入る。どこか、嬉しそうに。
「無理に決まってる。あいつは命を等しく思ってる。それが、クラインだ」
「ハッ、違いないな。よし、最後の試験はこれで終わりだ。まさかさっきの祝賀会が試験だとは思ってないだろうな候補生も」
「例年通りですが、趣味が悪いですよね。一番気を抜いたときの素を見る。私たちも仕事ですから。命を預ける仲間がどんな性格か、どう思っているのか、人と話しているのか、全てが筒抜けになる唯一の瞬間です」
「確かに、普段は言わないような愚痴まで飛び交いますからね」
「まったくだ。俺も去年はとんでもないことを言った気がするよ」
「しかし、これで出そろいましたからね。後は朝までに議論を重ねましょう」
「だな」
◇
翌朝、扉の前に一枚の紙があった。
そこには、俺とルージュの名前が書かれている。
8時に試験の合否を伝える。制服を着て、王の間に集合せよ、と。
「いよいよだな」
「ああ。――ルージュ、ありがとう。君と一緒に過ごせてよかった。俺1人なら心が折れてたかもしれない。本当にありがとう」
「……バカなこというなよ。俺だよ。クラインお前と出会えてよかった。けど、まだこれからだ。これが、最後にはならねえよ」
「……だな」
制服に身を包みながら、集合時間の20分前に到着する。
そこには、ミリシアの姿があった。
「おはよう。そっちにも届いてたのね」
「ああ、3人同時に合否か、ドキドキするな」
「俺たちなら大丈夫。――だと思う」
「クライン、そこは言い切ってよ」
「ごめん……。大丈夫だ」
そして、扉を開ける。
左右には、既に宮廷付きの面々が立っていた。
既に姿勢を正していたのは、アクリル、エウリ、プラタ、エヴィだ。
他のメンバーの姿はない。
俺たちはゆっくりと続く。
どういうことだろうか。
だがそのとき、拍手が響いた。
「おめでとう。君たち7人が、宮廷付きとして合格した。唯一正式な組はクライン、ルージュ、ミリシア。残りは各班から数人選出させてもらった。異例のことだが、君たちの能力を買ってのことだ。既に残りの面子には不合格を通達している」
ルスティ先生の言葉が響き渡る。
訳が分からなかった。だが、徐々に実感がわいてくる。
俺たちは、合格したんだと。
「クライン、やったぜ!」
「私たち、受かったの……?」
「……嘘じゃないよな」
とはいえ、アクリルやプラタ、エウリは仲間が落ちている。
複雑な面持ちだったが、それからすぐに残りのメンバーが現れた。
彼女たちに向かって拍手している。
「不合格だったメンバーに関しては、来年また候補生として加入する可能性もある。他国で働き手が決まる場合もある。合格した君たちは来年度から正式に宮廷付きとして働いてもらう。だが忘れないでほしい。まだまだこれからなのだ。宮廷付きとしての研修期間もある。採用とはいえまだまだひよっ子だということを自覚しておいてほしい」
「私からも伝えておく。宮廷付きになった者の半数が3年以内に自ら辞職している。それくらい厳しい仕事だ。水を差すつもりはないが、辞退もできるということは伝えておく」
そんなことする人がいるのだろうかと思ったが、もしルージュやミリシアが落ちていたらと思うとわからなかった。
とはいえ、俺たちは全員合格したのだ。
その事実だけは決して揺るがない。
最後にココア先生が前に出なさいといった。
皇帝陛下、ベルーナ・オウリが俺を見つめていた。
齢70と聞いているが、まだまだ現役を思わせる彫の深い雰囲気だ。
昔は武道派だったとも聞いている。
俺は、片膝をついた。
「クライン、君は最優秀候補生に選ばれた。前回選出されたのは、随分と前、ルスティ・ブル以来だ。特別報奨金と特別の名誉が与えられる。これを頂いたからといって宮廷付きが強制になるわけじゃない。だが、待っているぞ」
「ありがとうございます」
まさかの出来事だった。
皇帝陛下は、首にネックレスの勲章をつけてくれた。
お礼を言って振り返ると、全員が拍手してくれた。
「クライン、似合ってるぞ!」
「さすがね、クライン」
ルージュ、ミリシア。
「当たり前だな」
「……素敵です」
「クライン君、これからもよろしくね」
「僕じゃないのが悔やまれるね」
アクリル、エウリ、プラタ。あと、エヴィ。
これからはライバルじゃない。
心から信頼し合える仲間なのだ。
そして――。
「ぐるぅ」
「おもち、俺たち頑張ったよな」
「ぐるぅぐるぅ」
おもちも、俺に頭をこすりつけてくれた。
するとルスティとココア先生が同じ勲章をおもちにかけてくれた。
「ワイバーン討伐の功労者だからな。同じのを作ってもらった」
「ハッ、喜んでるじゃねえか」
俺はおもちの頭をなでる。
あの日、火事で全てを失った俺たちは、自らの手で幸せを勝ち取ったのだ。
これはまだほんのスタートだ。
これからもっと大変なことがあるだろう。
けれども大丈夫。
俺には心から信頼できる人たちがいる。
「これからも、幸せになろうな」
「ぐるぅ」
宮廷結界師として、誇り高く生きよう。
今まで以上に、幸せになるんだ。
───────────────────
【大事なお願い】
これにて第一章が完結になります!
10万文字という長編を見て頂きありがとうございました!
どんな些細なコメントでも頂けると嬉しいです。一言でもありがたいです。
ここまで見て頂き誠にありがとうございました(^^)/
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しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
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