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Case01.
3.控え室での事情聴取はつづく
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「幼馴染の彼女は、要領が良いというか……あざといですよね?全て計算尽くっていう感じです」
静かに頷く令嬢。
「あ~、それ何ですかぁ?お魚ですかぁ?美味しいですかぁ?私も食べてみたいけど、苦手な味だったらどうしよう……残すのは、作ってくれた人に悪いですよねっ。きゅるん」
(きゅるんまで言っちゃった)
何が起こったのか分からない様子で、目をパチパチする令嬢。
「……じゃあ、少し食べてみる?」
「え~いいんですかぁ?パクリ。美味しい~♪ありがとうございますぅ」
「君も食べてみる?」
「いえ、私は結構です」
私は右を見て幼馴染を、左を見て婚約者を演じてみせた。
そして最後は令嬢を見て、令嬢のセリフを。
「……」
「ある日の会話です」
「……はい。覚えています」
令嬢はカップの縁を指なぞりながら答えた。
「まぁ、あざとい幼馴染のことは、後で話すとして、『いえ、私は結構です』このセリフを客観的に聞いてみて、どうでしたか?」
「素っ気無いし、可愛らしさが無いと感じました」
「なるほど。では、その時のあなたの本当の気持ちはどうだったのですか?」
「私の本当の気持ち?」
「はい。あなたの本当の気持ちです」
令嬢は(私の貸している)ハンカチをぎゅっと握りしめ、考えている。
「私の本当の気持ちは……嫌でした」
「嫌でしたね。何が嫌でしたか?」
「彼女に彼の食事を分け与えたことが。いえ、彼女が彼に強請ったことが嫌でした。またいつものやつだと……」
「彼女は魚が食べたいわけではありませんからね。彼に強請って、且つ、彼がそれに応えることが目的ですからね」
「……はい。そうなんです。いつも」
「そして彼も彼女のおねだり大作戦に応えてしまった。嫌ですよね。当たり前です」
私は心底嫌な顔をして、ブンブンと頷いた。
「当たり前ですか?」
「当たり前です。彼はこう言うべきでした。『苦手な味だったら残すのも仕方ない。でも、子どもじゃないんだから、頑張って食べればいい。だから、これは自分で頼めばいい』と」
令嬢は目を丸くしてから、ふきだした。
「あははは。確かにそう言ってくれたら、スッキリしたのかもしれません」
ひとしきり笑うと、令嬢は冷めてしまったラベンダーティーを飲んだ。
「『なんで分けてあげるんだ?!』って思いました。『君も』なんて後から付け足したみたいに声を掛けるのは何なんだ?って思いました。馬鹿にしてるって……」
「そうですよ。そう思うのは、当たり前ですよ」
「当たり前ですか?」
「当然とも言います」
「私が婚約者なのに、いつも私がオマケみたいな感じがして……」
「うんうん。寂しいですよね」
「寂しい?」
「寂しいですよ。自分を見てくれるべき人が、よそをみていたら」
令嬢の目から、ポロリと涙がテーブルに落ちた。
-つづく-
静かに頷く令嬢。
「あ~、それ何ですかぁ?お魚ですかぁ?美味しいですかぁ?私も食べてみたいけど、苦手な味だったらどうしよう……残すのは、作ってくれた人に悪いですよねっ。きゅるん」
(きゅるんまで言っちゃった)
何が起こったのか分からない様子で、目をパチパチする令嬢。
「……じゃあ、少し食べてみる?」
「え~いいんですかぁ?パクリ。美味しい~♪ありがとうございますぅ」
「君も食べてみる?」
「いえ、私は結構です」
私は右を見て幼馴染を、左を見て婚約者を演じてみせた。
そして最後は令嬢を見て、令嬢のセリフを。
「……」
「ある日の会話です」
「……はい。覚えています」
令嬢はカップの縁を指なぞりながら答えた。
「まぁ、あざとい幼馴染のことは、後で話すとして、『いえ、私は結構です』このセリフを客観的に聞いてみて、どうでしたか?」
「素っ気無いし、可愛らしさが無いと感じました」
「なるほど。では、その時のあなたの本当の気持ちはどうだったのですか?」
「私の本当の気持ち?」
「はい。あなたの本当の気持ちです」
令嬢は(私の貸している)ハンカチをぎゅっと握りしめ、考えている。
「私の本当の気持ちは……嫌でした」
「嫌でしたね。何が嫌でしたか?」
「彼女に彼の食事を分け与えたことが。いえ、彼女が彼に強請ったことが嫌でした。またいつものやつだと……」
「彼女は魚が食べたいわけではありませんからね。彼に強請って、且つ、彼がそれに応えることが目的ですからね」
「……はい。そうなんです。いつも」
「そして彼も彼女のおねだり大作戦に応えてしまった。嫌ですよね。当たり前です」
私は心底嫌な顔をして、ブンブンと頷いた。
「当たり前ですか?」
「当たり前です。彼はこう言うべきでした。『苦手な味だったら残すのも仕方ない。でも、子どもじゃないんだから、頑張って食べればいい。だから、これは自分で頼めばいい』と」
令嬢は目を丸くしてから、ふきだした。
「あははは。確かにそう言ってくれたら、スッキリしたのかもしれません」
ひとしきり笑うと、令嬢は冷めてしまったラベンダーティーを飲んだ。
「『なんで分けてあげるんだ?!』って思いました。『君も』なんて後から付け足したみたいに声を掛けるのは何なんだ?って思いました。馬鹿にしてるって……」
「そうですよ。そう思うのは、当たり前ですよ」
「当たり前ですか?」
「当然とも言います」
「私が婚約者なのに、いつも私がオマケみたいな感じがして……」
「うんうん。寂しいですよね」
「寂しい?」
「寂しいですよ。自分を見てくれるべき人が、よそをみていたら」
令嬢の目から、ポロリと涙がテーブルに落ちた。
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