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クロネコ

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偶然

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 今日、偶然ゴンダに会った「あーあ。会っちゃったな。ルールによりペナルティを与える」とオレを殴った。オレはアゴを強打され後方に吹き飛んだ。殴られたアゴより首が痛かった。倒れたオレが首を痛がるのを大笑いし「殴られたくなかったら、道で俺様に会わない。ルールを守れよ」と言って離れて行った。道で偶然会ったら一発なぐる。ゴンダが決めたルールだ。オレはずっとゴンダにいじめられていた。親が助けようとした。教師が救おうとした。警察にも相談した。しかし、全ては街の有力者を親に持つゴンダの前には無力だった。助けを求めるたびにいじめは悪化した。だから道であって殴られるくらい軽いもんだ。自分にそう言い聞かせ痛む首を自動販売機で適当に買った炭酸ジュースで冷やしていた「いてぇなクソ」一人つぶやいていると「大丈夫ですか。たまたま反対車線の歩道を走っていたら、あなたが殴られたのが見えて急いで来ました」と男が優しい笑顔を見せて言った。男は息を切らせ、すごく汗をかいていた。オレはそんなに急いで来てくれたのかと感動し「ありがとうございます。大丈夫です。いつものことなので」と笑った。男は「唇。血が出てますよ。首、痛めたんですね。ひどいことをする。警察を呼びます」と怒りをあらわにして言った。オレはあわてて「大丈夫です。ふざけていたんです。遊びです」とウソをついた。また事態がひどくなるのはゴメンだ。男は「それはおかしいです。そうは見えなかった」と引かなかった。そして「私に正直に話して下さい。必ず解決します」と真っ直ぐオレの目を見て言った。オレは男の熱意とゴンダへの恨みから今までの話をした。幼稚園で同じ組になった初日から殴られ泣かされたこと。小学校で好きな女子の前でズボンを下ろされ殴れたこと。両親に助けを求めたら動いた父親が失業したこと。ゴンダの呼びかけでクラス全員から毎日いやがらせをされたこと。教師に助けを求めたら動いた教師がすぐ転勤になったこと。いじめは暴力を中心に就職した今もまだ続いていること。警察に相談したら捜査した警官が身に覚えがない不正で免職となったこと。道で偶然会ったら殴るというゲームは小一からずっと続いていることを涙ながらに話した。男は話を聞き「今まで本当に大変でしたね。許せない奴です。懲らしめたいな」と言い微笑んだ。オレはその笑みに涙をぬぐって素直に頷いた。首を冷やしていた炭酸ジュースは、すっかりぬるくなりオレはジュースをもう一本買って首を冷やした。すると男が「すみません。喉がすごく渇いてしまいました。その炭酸ジュース飲まないのでしたら、私にくれませんか」と言った。オレは男に「ああ。すごい汗ですもんね。どうぞ」とぬるくなった炭酸ジュースを渡した。男は「ありがとう」とすぐに空けて ゴクッゴクゴクッ!ゴク と一気に飲み干した。オレがよっぽど喉が渇いていたんだなぁと見ていると男は、げっげっぇ~ と大きく長いゲップをした。そして「失礼」と口を拭い「ありがとう。このお礼は必ずします」と言った。そしてゴンダのことを知りたいと体型。性格。住む場所。仕事。趣味。行きつけの店。恋人。家族。友人関係など執拗に繰り返し確認しながら聞いてきた。オレはゴンダについての知る限りを話した。男は「ありがとうございます。よくわかりました。すぐに解決します」と笑顔で言った。オレは期待せず「無理はしないでください。オレは大丈夫ですから」と言った。男は「安心して結果をお待ちください」と笑顔で走り去った。一週間後。オレが仕事を終えアパートに帰るとドアの前に置き配があった。送り名は母だった。母からはよく食品や衣料が送られてきていた。箱は重かった。イスに座り箱を開けた。白く冷たい煙が上がった。 ゴンダ? 「ひいいっ」と箱を投げ出した。落ちた箱から髪が顔が白く凍ったゴンダがゴロッ ゴロリと転がった。箱から小さな紙がふわりと流れオレの足元に落ちた。
 
 その紙に
 
 ジュースありがとうございました とても美味しく喉が潤い幸せでした いじめの件はこれで解決です もう大丈夫です
 
 とあった。
 
 警察に通報した。オレは容疑者。最重要人物になった。取り調べは厳しさを極めオレは男のことを話した。数日後マジックミラー越しに三人の男を見るように言われた。三人の真ん中にあの男が笑顔で立っていた。刑事はこの中にお前が言っていた男がいるかと聞いた。警察への恐怖が勝り真ん中の男がそうだと言った。刑事にわかったもういいぞと言われた。その時。見えるはずがない。聞こえるはずがない。マジックミラー越し。男の口が笑みを浮かべたままゆっくりと動いた。オレはその動きに目を奪われた。
 
 か り は か な ら ず か え す 
 
 男はこちらを見つめながら、ゆっくりと退室した。
 
 
 
 
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