400 / 694
第十一章 四天王ジャダーカ
企み
しおりを挟む
「ああっ、分かった! きさきって王妃様とか、そういうことじゃん!」
ピンときていなかった勇者様がそう叫んだのは、話し合いをした夜。
割り当てられた部屋へ戻り、泰基と二人になった時だった。
「あの皇子、リィカになに言ってんだよ!」
「……俺は、今になって分かったお前にビックリだよ」
興奮して叫ぶ暁斗に、泰基が呆れた。
どうりであの場で何も文句を言わなかったはずだ。
※ ※ ※
一方、同じ時刻。
別の場所でも、その件で話が行われていた。
「ルベルトス殿下。むやみにリィカ嬢に近づかないで下さい。勇者様の機嫌を損ねたくはありませんから」
「…………………」
ルベルトスは、ムッとした顔をしただけで何も言わない。
リヒトーフェンは、大きくため息をついた。
「お約束して下さいますね、殿下」
「…………………チッ……」
大きく舌打ちした。
だがリヒトーフェンに睨まれ、こちらもため息をつく。
「リヒトーフェン公爵。オレはな、兄上みたいに複数の妃を持つつもりはない。たった一人いればいい」
「多くの妃を持つことは、我が帝国では合法的に認められていることですよ」
「分かってるっ。それでもだ!」
ルベルトスは吐き捨てて、力尽きたようにグッタリ椅子の背もたれにもたれ掛かった。
「オレのたった一人。彼女だと思ったんだがな」
ジャダーカと戦っていた時の彼女は強かった。目を惹かれた。
あの災害のような魔法を前に、一歩も退かなかった。
あげくに、その魔法を自らも使ってみせたのだ。
「そうであればいい、とは私も思います。身分など関係なく、四属性の適性を持つ魔法使いだというだけで、彼女には価値がある。我が帝国に引き入れられるのであれば、引き入れたい」
「リヒトーフェン」
ルベルトスが意外そうな顔をする。
近づくなと言ったばかりなのに、今の言葉はほとんど真逆のことだ。
「残念です。アレクシス殿下だけであればどうにかできたでしょうが、勇者様に睨まれるのは得策ではありません。手に入れる価値より、リスクの方が上回ります」
「……いや、アレクシス殿とて一国の王子だぞ」
「勇者様に比べれば、大したことはありません」
そうかもしれないが、あくまで比較しての話だ。
アレクだけであっても、十分リスクは高い。
「ですから殿下、今は諦めて下さい。どうしても諦められないようでしたら、魔王の討伐が為された後に、もう一度勝負をかければよろしい」
「なぜだ?」
「アレクシス殿下は王族であり、彼女は平民ですよ。勇者様は、王宮に迎えられるでしょう。魔王討伐後も共にいられる可能性は、限りなく低い」
ルベルトスの瞳に、理解の色が浮かぶ。
「そうか。とりあえず、我が帝国に来てさえくれれば、どうにかなるのか。アルカトル王国では知らんが、我が帝国には前例がある。彼女に、貴族位を与えることは難しくない」
かつて、魔族と一対一で戦い認め合った、あの英雄のように。
ただの冒険者に過ぎなかった彼に、当時の皇帝は“名誉貴族“の称号を与え、貴族として遇した。
「仰る通りです。おそらく来るだけなら来てくれるでしょう。ですが、来て頂ければあとはどうにでもできます」
理由をつけて留まらせて、貴族位を与えてしまえばいい。
そうなれば、皇族との結婚だって何も問題がなくなる。
「そうだな。よし分かった。それまでは我慢してやる。待っててくれよ!」
リィカの顔を思い浮かべながら、ルベルトスは宣言するように叫んだのだった。
ピンときていなかった勇者様がそう叫んだのは、話し合いをした夜。
割り当てられた部屋へ戻り、泰基と二人になった時だった。
「あの皇子、リィカになに言ってんだよ!」
「……俺は、今になって分かったお前にビックリだよ」
興奮して叫ぶ暁斗に、泰基が呆れた。
どうりであの場で何も文句を言わなかったはずだ。
※ ※ ※
一方、同じ時刻。
別の場所でも、その件で話が行われていた。
「ルベルトス殿下。むやみにリィカ嬢に近づかないで下さい。勇者様の機嫌を損ねたくはありませんから」
「…………………」
ルベルトスは、ムッとした顔をしただけで何も言わない。
リヒトーフェンは、大きくため息をついた。
「お約束して下さいますね、殿下」
「…………………チッ……」
大きく舌打ちした。
だがリヒトーフェンに睨まれ、こちらもため息をつく。
「リヒトーフェン公爵。オレはな、兄上みたいに複数の妃を持つつもりはない。たった一人いればいい」
「多くの妃を持つことは、我が帝国では合法的に認められていることですよ」
「分かってるっ。それでもだ!」
ルベルトスは吐き捨てて、力尽きたようにグッタリ椅子の背もたれにもたれ掛かった。
「オレのたった一人。彼女だと思ったんだがな」
ジャダーカと戦っていた時の彼女は強かった。目を惹かれた。
あの災害のような魔法を前に、一歩も退かなかった。
あげくに、その魔法を自らも使ってみせたのだ。
「そうであればいい、とは私も思います。身分など関係なく、四属性の適性を持つ魔法使いだというだけで、彼女には価値がある。我が帝国に引き入れられるのであれば、引き入れたい」
「リヒトーフェン」
ルベルトスが意外そうな顔をする。
近づくなと言ったばかりなのに、今の言葉はほとんど真逆のことだ。
「残念です。アレクシス殿下だけであればどうにかできたでしょうが、勇者様に睨まれるのは得策ではありません。手に入れる価値より、リスクの方が上回ります」
「……いや、アレクシス殿とて一国の王子だぞ」
「勇者様に比べれば、大したことはありません」
そうかもしれないが、あくまで比較しての話だ。
アレクだけであっても、十分リスクは高い。
「ですから殿下、今は諦めて下さい。どうしても諦められないようでしたら、魔王の討伐が為された後に、もう一度勝負をかければよろしい」
「なぜだ?」
「アレクシス殿下は王族であり、彼女は平民ですよ。勇者様は、王宮に迎えられるでしょう。魔王討伐後も共にいられる可能性は、限りなく低い」
ルベルトスの瞳に、理解の色が浮かぶ。
「そうか。とりあえず、我が帝国に来てさえくれれば、どうにかなるのか。アルカトル王国では知らんが、我が帝国には前例がある。彼女に、貴族位を与えることは難しくない」
かつて、魔族と一対一で戦い認め合った、あの英雄のように。
ただの冒険者に過ぎなかった彼に、当時の皇帝は“名誉貴族“の称号を与え、貴族として遇した。
「仰る通りです。おそらく来るだけなら来てくれるでしょう。ですが、来て頂ければあとはどうにでもできます」
理由をつけて留まらせて、貴族位を与えてしまえばいい。
そうなれば、皇族との結婚だって何も問題がなくなる。
「そうだな。よし分かった。それまでは我慢してやる。待っててくれよ!」
リィカの顔を思い浮かべながら、ルベルトスは宣言するように叫んだのだった。
10
あなたにおすすめの小説
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?
あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。
彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。
ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる