怠惰すぎて冒険者をクビになった少年は魔王の城で自堕落に生活したい

桒（kuwa）

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48話

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ゼギウスの指示でスカーの根城へ向かっていた。

四獣は魔力の共有量を減らして体を小さくし我とスーという少数の戦力でスカーに気づかれないように懐まで潜り込む作戦だ。

作戦や戦闘での助言をもらい準備もしたというのに不安で不安で仕方がない。それは初めての遠征ということや、初めての自分から仕掛ける戦闘、初めてゼギウスが助けてくれない、等、初めてのことだらけだからだ。

そんな不安を抱えながらも歩いているとようやくスカーの勢力圏に入ったようだ。

ちらほらと低位のスケルトンが巡回している。あのスケルトン全てがスカーの1部で、そのどれに見つかってもスカーには伝わるとゼギウスは言っていた。

スカーは己の身だけに力を集約すればハオと同等なのではないかともゼギウスは言っていた。だから絶対にスカーとムクロとスケルトンを合流させてはならない。

（四獣よ、安全な道がないか探るのじゃ）

そう念話で指示を出す。スカーに気づかれないように懐に潜り込むには慎重に動くしかない。だが、慎重に動き過ぎるのは事態を悪くする。

だからここから安全な道を探り一気に懐まで潜り込む。

なんて大層な尤もらしい作戦を考えているが、全てゼギウスからの受け売りだ。

（アルメシア、怯えているなら止めた方がいい。無駄に命を落とすだけ）

そうスーからの念話が入る。今はルルの姿に《変身》しているからかルルの喋り方を真似しているようだ。その真似は上手いし我を気遣っているのかもしれないが、スーはゼギウスに会ってからというもの我をなめている節がある。

（お主は我をバカにしておらぬか？ゼギウスに会ってからというもの我を蔑ろにし過ぎじゃ）

（していない。私はゼギウス様の世話役をしているけど、アルメシアの配下。それは変わらない。主が居なくなるのは嫌だ。だから怖いなら止めて帰るべき。これはドラルの戦いじゃない）

まさかスーがそんなことを考えていたとは思わなかった。だが、いくつか勘違いしておる。

（スーよ、お主は分かっておらぬ。確かにスカーは柱の1体で同じ柱であり龍王である我等が倒さねばならぬ相手ではない。だが、時が満ちれば彼奴等は我等に向かって進攻してくる。それを退けるのは我等の役目じゃ）

これは建前じゃ。今のスーに聞かせるべき言葉。そして今から伝えるのが本心じゃ。

（我等は共存を望む。それには人間が魔物を魔物が人間を殺すことは終わらせねばならぬ。だからゼギウスはドラルの城への七罪の進攻を防いでおる。ならば我等は魔物の進攻を止めなければならぬ。それが助け合いじゃ。それを全てやるにはまだ我の力は足りぬが、ゼギウスがスカーを我に任せたということは我にも倒せる相手ということじゃ。だから怖い等と言う我の感情は天秤には載らぬ。それすらもし無くなれば我等は共存ではなくただの寄生になる。そうであろう？）

（覚悟が決まっているならいい。ゼギウス様はスカーの存在が肌に伝わる場所まで行ってアルに覚悟ができてねぇなら引き返せと言った。だからその確認をしろと言われた）

ゼギウスめ、本当に過保護な奴じゃ。そこに我の不甲斐なさを感じながらも兄のような安心感も覚える。成長を促しながらも助けてくれる。

いや、年齢で見れば我の方が上じゃ。人間と魔物の寿命から今が何割に居るかで測れば我の方が少し幼いし人生経験で見ても我の方が……姉というのは諦めて妹に甘んじよう。単純な年齢以外でゼギウスに勝てる要素がない。

いや、妹になったところでゼギウスに甘やかされるとも思えないし対等な関係でいよう。既に対等かどうかは怪しいが、これを機に対等ということを強調していこう。

そんなことを考えていると気づけば不安は薄くなっていた。

どうやら少し無駄なことを考えすぎていたようだ。確かに思い返せば必要以上に不安を感じ過ぎていたかもしれない。それをスーにも悟られていたのだから情けない限りじゃ。

（アルメシア様、こちらにスケルトンの少ない場所がありました）

（うむ。ご苦労であった）

偵察に行っていた四獣の1体が念話を通して位置情報を送ってくる。円形に45度ほど回り込んだ先で、おそらく城の正面か裏だ。

その場所の警備が少ないのは気になるが、そこから近づくしかない。我等が来ることが分かっていなければこれは罠ではなくこの場所の通常時ということになる。

スカーと頭脳勝負をしたところで勝てないのは分かっているのだから素直に行こう。

そうスーに（行くのじゃ）と伝え四獣の場所へ移動する。

この場所の警備が少ないのは他の場所に比べ拓けているからだった。奥の方には軽く見ただけでも何万というスケルトンの軍勢が並び、この場所から進攻しようとする者はいないだろう。

これは壮観じゃな…

思わず言葉を失ってしまう。

1体1体は弱くても何万も相手にするとなれば厄介極まりない。広範囲スキルを使っても1度に倒せるのは数千が限界だ。それを10回以上も繰り返せばスカーと戦う魔力は足りなくなる。

だからゼギウスの作戦通り懐に潜り込んで我とスカーの対決で早期決着をつけるしかない。

それにしてもこの状況をドラルの城から分かっていたとはやはりゼギウスは凄いのだと分からされる。スカーの戦術の組み立てや行動、そういったことを分かっているようだ。いや、分かり過ぎている。

しかし、ゼギウスだと柱の性格のような個人的なことを知っていても不思議ではないと思えてしまう。父上もそうだし、スカーとも普通に話していた。柱ではないがナナシとも親しい。

本当にゼギウスとは何者なのだろうか。スカーについて聞いた秘密もにわかには信じがたい。

四獣の先導についていき城へ近づいていく。ある程度、進みスケルトンの軍勢にはギリギリ気づかれない場所まで来ると再び立ち止まる。

茂みに身を隠し四獣にもう1度、探りに行かせる。しかし、ここはさっきの場所のように雑談で花を咲かせる訳にはいかない。

ここはスケルトンの警備の内側、スケルトンの動きに合わせてこちらも動かなければ見つかってしまう。

（我は左と前方を見張るからスーは右と後方を警戒するのじゃ）

（分かった）

緊張感漂う中、我とスーが2方面ずつ警戒してこまめに動きながらスケルトンの警備を逃れていると四獣からの連絡が入る。

（アルメシア様、俺の現在位置と獅子の方は比較的警備が少なく、そこからなら内側に入り込めそうです）

（儂の場所からならスーと儂等の役割をこなせる場所まで潜り込めるぞ）

うむ、どうしたものか。

スケルトンの軍勢よりも内側に行き、四獣を暴れさせなければならない。それよりも外側だとスケルトンはスカーの元に逃げることができ、四獣も我等と合流できなくなる。

しかし、四獣を暴れさせるには魔力の供給量を増やさなければならないのだが、それにはその場に我が居なくてはできない。

四獣を暴れさせた時点で我の存在には気づかれる。それでスカーとムクロに合流されては終わりだ。

どうするべきか考えていると意外にもスーが提案をしてきた。

（アルメシア、私が先に中に入る。それでムクロの足止めをするから、その時に四獣を放って。それからアルメシアは城の中に入ってスカーと対峙すればいい）

（それではお主の負担が大き過ぎるのじゃ）

（大丈夫。私は強くなった。足止めくらいはできる）

そのスーの言葉は虚勢を張っているようには見えない。そこに成長した嬉しさを覚えながらも申し訳なさも芽生える。

本来であれば1番の重責を担うのは我の役目だ。それには開戦の1撃も含まれる。

しかし、他にいい案も浮かばずスーの提案を採用することにした。

そこからはスーと別行動をしてスケルトンの軍勢の内側で待機していると城の中から大きな爆発音が聞こえてくる。スーとムクロの戦闘が始まったようで、我も四獣を暴れさせて城の中に向かった。

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