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74話
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シアンに連れられる形でドラルの城に来ていた。ゼギウスとは決別したつもりだったが、これでシアンにもゼギウスと恨みが発生するような戦いではなかったと誤解も解けるだろう。
だが、問題はゼギウスが呼び出すほどの用事。おそらくシアンが真継承のことを喋ってそのことが主題にはなると思うがそれ以外にも何かありそうだ。
「ゼギウス、連れて来たよ」
そうシアンがゼギウスに挨拶をする。隣にはメナドールも居て前と面子が違うとはいえ七英雄が揃った。まぁ、ゼギウスは違うけど。
「ゼギウス、久しぶり」
「カイか、まさか七英雄になってるとはな」
「ゼギウスに言われた通り私は私にできることをしようとしている」
そうカイゼルとゼギウスが親しそうに話している。知り合いだったようだ。そうなると逃がしたのはゼギウスか。だが、どうやって作られた子たちの情報を手に入れた?
「ゼギくん知り合いなの?」
「昔ちょっとな。まぁ、腐れみたいなもんだ」
腐れ、ゼギウスの元に居る闇商人のことだね。それと同じということはゼギウスの情報網の1つということかな?
だけど久しぶりという言葉にカイゼルが七英雄になったことを知らないということを考えるにしばらく接触していなかったということ。そこまで密に情報を提供していた訳ではないということか。
どれくらい深い関係かは分からないが警戒する必要はありそうだ。
「へぇ、お前が前の七英雄か。弱そうだな」
そうメビスがゼギウスに突っかかる。違うところではグラが駄々をシアンが相手していたりエストはメナドールに話しかけたりしていた。
この収拾のつかなさは懐かしいが、今は求めていない。
「全員黙ってくれるかな?」
そう声を掛けると静かになる。この程度で静かになってくれるのだから楽でいい。
「それで話って何かな?」
「取引でもしようと思ってな」
「内容は?」
「メナに真継承をしろ。そうしたらシアンにも力の制御の仕方を教えてやるよ」
訳の分からない内容だ。シアンに力の制御を教えるなんて交渉にもならない。僕が教えればいいだけの話だ。それなのにゼギウスは何を考えている?
「それは僕が教えれば済む話だと思うんだけどな」
「マルスは信用できないから嫌だね。アンタに教わるんじゃ何をされるか分からない」
すっかり信用を失ってしまったようだ。しかし、今、必要なのは信用じゃない。この取引における優位だ。
「シアン、僕が言ったことを忘れたのかな?」
「マルスこそこの状況を分かってないね。今、アタイとグラがゼギウスにつけば4対4、ゼギウスがアンタを抑えれば他はアタイたちで余裕なのさ」
そうシアンはいつでも戦いに移行できる態勢を取る。それに釣られるようにエストとメビスも構えるが直近で力の差を見せつけられたこともあり少し及び腰だ。
そうきたか。確かにゼギウスを瞬殺とはいかない。その戦闘の間にエストとメビスは負ける。カイゼルもシアンと同じような状況のことを考えればそこも五分か不利。状況は悪い。
だけど甘い。それは生真面目に4対4で戦えばの話だ。
「そうかな?僕はこの城を壊す程度造作もない。そうすれば城の中に居る子たちも無事では済まないと思うけどな」
「外道が」
「何とでもいいなよ。でも、先に強硬手段に出たのは君の方だよ」
「脅してきたのはそっちが先さ」
今にも一触即発の空気が続く。シアンはいつでも飛び出せるように構えている。
別にそんなことはどうでもいいんだけどなあ。
「ゼギウスもそうするつもりなのかい?」
「そうしてもいいが、面倒くせぇな。どの道、メナにも真継承をするつもりならいいだろ?」
シアンはそこまで話したのか。確かに元老院はメナドールにも真継承を施そうとしている。それ自体にはそこまで反対ではない。どの道メナドールから色欲を回収できず、ゼギウスも敵に回らないのであればメナドールが真継承をしていようがしてなかろうが変わらない。
いや、現実的に庭と戦うことを考えればメナドールの力は必要だ。向こうに七罪が揃っているのならこちらも七罪が揃っていなければ話にならない。練度のことも考えればそこにゼギウスが加わってもまだ分は悪い。
「そこまで知っていたのか。シアンも口が軽い。だけど、それなら真継承を近い時期にしたくないのも知っているだろう?」
「聞いたな。だが、メナは俺の元に居て七英雄としては機能してねぇ。だから元老院に操られてなけりゃどうにでもなるだろ?」
なるほど、ゼギウスは僕が元老院の言いなりだと思っているのか。いや、それを探っているのか。
それならどっちの方が僕に都合がいい?
操られていることにするならこの取引自体がなくなる。それだと状況は変わらないがここに来た意味がない。
話を通せばシアンとメナドールに力の制御を教えられ、今も監視しているだろう庭に僕たちとゼギウスが友好的だと示せる。その間に僕はカイゼルに教えられるし真継承も予定より早く済ませることができる、か。
ついでにカイゼルも任せるか?いや、ゼギウスとカイゼルは親しそうだったことを考えるにあまり時間を共にさせると裏切られる可能性が出てくる。元から敵の場合も考えれば手元に置いておきたい。
どっちにするべきかは考えるまでもないか。後はどれだけ好条件に持って行けるかだね。
「意見を通すことはできなくもないけど、僕にもリスクがある。意見を通す代わりにその責任は僕が問われる。この意味が分かるかい?」
「代わりに何をしろって言いたいんだ?」
「全員の継承が終わるまでの時間稼ぎかな。勿論、力の制御ができるようになるまで」
これが不安要素だ。今までは僕たちのことを取るに足らない存在、そう判断して害がない限り手出しをしてこなかった。だけど真継承が明るみになった今、庭が僕たちの準備が整うのを待つ理由はない。
それを解消できるなら言うことはない。
しかし、流石にこの条件は厳しいのかゼギウスも考えている。その表情は綿密な計算をしているようで誤魔化したり騙したりするような気配はない。まぁ、ゼギウスはどうでもいいこと以外ではそんなことはしないけど。
「それなら俺を元老院に連れてけ」
少し待っているとそんなことを言われる。元老院を探りたいのか。そうすれば庭との交渉材料になると考えているのかな?だけどそれは不可能だ。
「それはできないかな。元老院に出入りができるのは七英雄だけだからね」
「称号が鍵になってるだけじゃなくてか?」
「鍵の役割もそうだけど、入ること自体が無理だよ」
庭は鍵の役割さえいれば誰でも入ることができたからそう思ったのだろう。しかし、元老院は違う。あそこは七英雄だけに許された七英雄のための空間だ。
「そうか。庭の件は引き受けたからメナに真継承をやってくれ。但し、シアンも連れて行け。シアン、メナが無事に真継承を終えて戻ってきたら教えてやるよ」
「交渉成立だね。じゃあ僕は話を通す算段を考えるからそれが整い次第、シアンとメナドールにはついてきてもらうよ」
これで話は1つ終わった。だが、話はまだ残っている。
「ところで七英雄を全員集めた理由は何かな?今の話だけなら僕1人でもよかったはずだけど」
「品定めだ。カイはまだ素質があるとして他2人は駄目だな。器が整ってねぇ」
「何だ___」
再び突っかかろうとするメビスを手で制止する。
やはりゼギウスもそう見るか。カイゼルに素質があると見る辺り作られた子たちのことを知っているのは間違いないが、それよりも今の2人に真継承をしたところで力の奔流に呑み込まれることに気づいている。だから柱との戦いで整えようと思っていた。
「君ならどうするのかな?」
「ここで消す。やれ、メナ」
そうゼギウスが指示をするとメナドールが2人に襲い掛かる。
だが、問題はゼギウスが呼び出すほどの用事。おそらくシアンが真継承のことを喋ってそのことが主題にはなると思うがそれ以外にも何かありそうだ。
「ゼギウス、連れて来たよ」
そうシアンがゼギウスに挨拶をする。隣にはメナドールも居て前と面子が違うとはいえ七英雄が揃った。まぁ、ゼギウスは違うけど。
「ゼギウス、久しぶり」
「カイか、まさか七英雄になってるとはな」
「ゼギウスに言われた通り私は私にできることをしようとしている」
そうカイゼルとゼギウスが親しそうに話している。知り合いだったようだ。そうなると逃がしたのはゼギウスか。だが、どうやって作られた子たちの情報を手に入れた?
「ゼギくん知り合いなの?」
「昔ちょっとな。まぁ、腐れみたいなもんだ」
腐れ、ゼギウスの元に居る闇商人のことだね。それと同じということはゼギウスの情報網の1つということかな?
だけど久しぶりという言葉にカイゼルが七英雄になったことを知らないということを考えるにしばらく接触していなかったということ。そこまで密に情報を提供していた訳ではないということか。
どれくらい深い関係かは分からないが警戒する必要はありそうだ。
「へぇ、お前が前の七英雄か。弱そうだな」
そうメビスがゼギウスに突っかかる。違うところではグラが駄々をシアンが相手していたりエストはメナドールに話しかけたりしていた。
この収拾のつかなさは懐かしいが、今は求めていない。
「全員黙ってくれるかな?」
そう声を掛けると静かになる。この程度で静かになってくれるのだから楽でいい。
「それで話って何かな?」
「取引でもしようと思ってな」
「内容は?」
「メナに真継承をしろ。そうしたらシアンにも力の制御の仕方を教えてやるよ」
訳の分からない内容だ。シアンに力の制御を教えるなんて交渉にもならない。僕が教えればいいだけの話だ。それなのにゼギウスは何を考えている?
「それは僕が教えれば済む話だと思うんだけどな」
「マルスは信用できないから嫌だね。アンタに教わるんじゃ何をされるか分からない」
すっかり信用を失ってしまったようだ。しかし、今、必要なのは信用じゃない。この取引における優位だ。
「シアン、僕が言ったことを忘れたのかな?」
「マルスこそこの状況を分かってないね。今、アタイとグラがゼギウスにつけば4対4、ゼギウスがアンタを抑えれば他はアタイたちで余裕なのさ」
そうシアンはいつでも戦いに移行できる態勢を取る。それに釣られるようにエストとメビスも構えるが直近で力の差を見せつけられたこともあり少し及び腰だ。
そうきたか。確かにゼギウスを瞬殺とはいかない。その戦闘の間にエストとメビスは負ける。カイゼルもシアンと同じような状況のことを考えればそこも五分か不利。状況は悪い。
だけど甘い。それは生真面目に4対4で戦えばの話だ。
「そうかな?僕はこの城を壊す程度造作もない。そうすれば城の中に居る子たちも無事では済まないと思うけどな」
「外道が」
「何とでもいいなよ。でも、先に強硬手段に出たのは君の方だよ」
「脅してきたのはそっちが先さ」
今にも一触即発の空気が続く。シアンはいつでも飛び出せるように構えている。
別にそんなことはどうでもいいんだけどなあ。
「ゼギウスもそうするつもりなのかい?」
「そうしてもいいが、面倒くせぇな。どの道、メナにも真継承をするつもりならいいだろ?」
シアンはそこまで話したのか。確かに元老院はメナドールにも真継承を施そうとしている。それ自体にはそこまで反対ではない。どの道メナドールから色欲を回収できず、ゼギウスも敵に回らないのであればメナドールが真継承をしていようがしてなかろうが変わらない。
いや、現実的に庭と戦うことを考えればメナドールの力は必要だ。向こうに七罪が揃っているのならこちらも七罪が揃っていなければ話にならない。練度のことも考えればそこにゼギウスが加わってもまだ分は悪い。
「そこまで知っていたのか。シアンも口が軽い。だけど、それなら真継承を近い時期にしたくないのも知っているだろう?」
「聞いたな。だが、メナは俺の元に居て七英雄としては機能してねぇ。だから元老院に操られてなけりゃどうにでもなるだろ?」
なるほど、ゼギウスは僕が元老院の言いなりだと思っているのか。いや、それを探っているのか。
それならどっちの方が僕に都合がいい?
操られていることにするならこの取引自体がなくなる。それだと状況は変わらないがここに来た意味がない。
話を通せばシアンとメナドールに力の制御を教えられ、今も監視しているだろう庭に僕たちとゼギウスが友好的だと示せる。その間に僕はカイゼルに教えられるし真継承も予定より早く済ませることができる、か。
ついでにカイゼルも任せるか?いや、ゼギウスとカイゼルは親しそうだったことを考えるにあまり時間を共にさせると裏切られる可能性が出てくる。元から敵の場合も考えれば手元に置いておきたい。
どっちにするべきかは考えるまでもないか。後はどれだけ好条件に持って行けるかだね。
「意見を通すことはできなくもないけど、僕にもリスクがある。意見を通す代わりにその責任は僕が問われる。この意味が分かるかい?」
「代わりに何をしろって言いたいんだ?」
「全員の継承が終わるまでの時間稼ぎかな。勿論、力の制御ができるようになるまで」
これが不安要素だ。今までは僕たちのことを取るに足らない存在、そう判断して害がない限り手出しをしてこなかった。だけど真継承が明るみになった今、庭が僕たちの準備が整うのを待つ理由はない。
それを解消できるなら言うことはない。
しかし、流石にこの条件は厳しいのかゼギウスも考えている。その表情は綿密な計算をしているようで誤魔化したり騙したりするような気配はない。まぁ、ゼギウスはどうでもいいこと以外ではそんなことはしないけど。
「それなら俺を元老院に連れてけ」
少し待っているとそんなことを言われる。元老院を探りたいのか。そうすれば庭との交渉材料になると考えているのかな?だけどそれは不可能だ。
「それはできないかな。元老院に出入りができるのは七英雄だけだからね」
「称号が鍵になってるだけじゃなくてか?」
「鍵の役割もそうだけど、入ること自体が無理だよ」
庭は鍵の役割さえいれば誰でも入ることができたからそう思ったのだろう。しかし、元老院は違う。あそこは七英雄だけに許された七英雄のための空間だ。
「そうか。庭の件は引き受けたからメナに真継承をやってくれ。但し、シアンも連れて行け。シアン、メナが無事に真継承を終えて戻ってきたら教えてやるよ」
「交渉成立だね。じゃあ僕は話を通す算段を考えるからそれが整い次第、シアンとメナドールにはついてきてもらうよ」
これで話は1つ終わった。だが、話はまだ残っている。
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「品定めだ。カイはまだ素質があるとして他2人は駄目だな。器が整ってねぇ」
「何だ___」
再び突っかかろうとするメビスを手で制止する。
やはりゼギウスもそう見るか。カイゼルに素質があると見る辺り作られた子たちのことを知っているのは間違いないが、それよりも今の2人に真継承をしたところで力の奔流に呑み込まれることに気づいている。だから柱との戦いで整えようと思っていた。
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