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106話
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色々と読み違ったな。所詮はアルの魔力の一部から作った魔力体、アルでもどうにかできる範囲内と思っていたが、コイツは自然に溢れる魔力を取り込んでいる。前の時代の生き残りって言う時点でもっと警戒しておくべきだったな。
「割って入るとは無礼であろう。その落とし前はどうつけるつもりだ?」
「はぁ…俺が相手してやるよ。それで、いいだろ?」
「貴様は話が早いな。貴様とは戦ってみたかったのだ」
結局はコイツも好戦的な部類か。
さっきの戦いを見ていた限りコイツは力の1割も出していない。それにあのスキルには詠唱以外にも特徴がある。
まず、自分の魔力を使っていないこと。それともう1つは現代のスキルのように魔力を媒介に何かを生み出している訳ではない。魔力を利用して自然を思うように操っているのだ。
1つ目の木を生やしたスキル、あれは自然の魔力をあの場所に集中させて木が生えるのを促した。それも生えた後はアルの魔力を吸い取らせて枯らした。
2つ目の雷を落とそうとしたスキルも同じだ。自然の魔力を上空に集中させ雲を生み出して雷を落とした。
あくまで、自然への呼びかけだ。アイツが何もしなくてもやがて起こっただろう事象、それを早めた。
まぁ、それらを差し引いてもあの詠唱の長さは戦闘に置いて致命的だ。あの体じゃなければな。
「よく分かっているではないか。貴様とは楽しめそうだ」
どういう原理かは分からないが、俺の思考も読めるらしい。だが、それはこの戦闘に置いては然したる問題にはならない。
ひとまずどのくらい硬いかの確認も兼ねて距離を詰める。
手刀に蹴り、掌底、と色々試すが全て防がれる。それも俺の思考を読んでいるのもあり、全て俺と動き出しが同時だった。
それで分かったことは硬いのは外側、鱗だけだ。掌底の時、内側にダメージを与える技の時だけは異様に受けるポイントをズラしていた。
「《大地よ、我が呼び___
「《爆ぜろ》」
___かけに答え、敵を捕らえよ》」
ドラゴンの詠唱中にスキルを唱え爆発させるが、怯む様子もなく詠唱を終えられた。思考の読みで受ける構えができていたのだろう。
地面から俺を囲うように生えてくる木々を横へ上へと走って跳んで躱す。ドラゴン自身の魔力を使っていなかろうと自然の魔力の流れを見ていれば何が起こるかは分かる。
全てを躱し切ったと思ったが、木々は俺を追尾するように枝分かれして捕らえようとする。
こんな芸当もできるのか。そんなことを宙で思いながら《絶》と唱えて打ち消す。
これで互いの攻防がひと段落して様子見に入る。本気の戦いならこんな時間は生まれにくいが今は互いの力を確かめ合っているだけだ。
それを表すようにドラゴンから話しかけてくる。
「そのスキル、理に触れておるな」
「自然を操るのも理に触れてるだろ」
自然を思うままに操る。それは現代のスキルよりも危険だ。自然の魔力も無限にある訳ではない。どこかを豊かにするということはどこかを貧しくするということだ。
それは紛れもなく世界に干渉している。
「我の時代はこれが普通だったのだがな。今の世にしてみれば理、禁忌に触れておろうな。それは役割の違いに過ぎぬ。して、貴様はその力を手に入れるのに常軌を逸した場所に身を置いたであろう。何故、それに耐えられた?ただの傲慢ではあるまい」
「いや、ただの傲慢だ。お前こそ、世界に背いてまで禁忌を犯したのは何でだ?」
「たとえ世界に生み出されようと世界に管理された覚えなどない。生き様、死に様、それらは生者が決めることであり、滅び逝く種であろうとそれらは変わらぬ。我等は世界に異を唱えることにした」
その言葉からは俺と同じような意思を感じる。これなら説得できるかもしれない。
「なら俺に手を貸してくれねぇか?」
「我は始めに言ったであろう、力次第では貴様を主にしてもよいと。貴様はその力を示した。貴様であれば何も文句などない」
「それだと困るんだよな。俺だけ強くて勝てる相手じゃねぇ。それはお前も身に染みてることだろ?」
コイツは個の強さでどうにもならないことを誰よりも理解しているはずだ。智に溢れているとはいえ、これだけ好戦性を持っているコイツが最後に種の保存なんて賢過ぎる選択をするとは思えない。
他の奴が種の保存を行うことを理解し認めようともコイツはそれを拒む。だが、後の戦いのため必要と言われればコイツは戦いたくても拒めなくなる。賢いから。
もし個で勝てるのならコイツだけで戦うことを認められ託されていたはずだ。だけど、託されなかったのはコイツが弱かったからじゃない。もし弱かったのなら種の保存の対象にもならず、その場で最後まで戦えた。
故に個の限界を誰よりも理解しているはずだ。
「貴様の考えていることは概ね正しい。だが、だからこそ相手を選ぶ必要がある。弱き者に我の力を託したとて水泡と化す」
「その気持ちも分かる。だが、それは結局、より強力な個を生み出すだけ。お前に力があるのなら育てろ。強者に力を託すのはお前自身が何かをしたことにはならない。勝つ奴に加勢しただけだ。力が育ててあるなら勝たせろ」
少し強引な気もするが表向きはこれでいいだろう。
俺等の敵は6体居るが、現状それに対抗できるのは俺だけだ。1人、戦力になる見込みのある奴はいるが、他は正直なところ厳しい。だからお前がアルに力を貸してくれれば戦力が増える。それにアルは都合上、敵に狙われている身だから最優先で仕上げたい。だから手を貸してくれ。
どうせ俺の思考を読み取っているだろうからこれで内情も伝わるだろう。現状で俺以外に勝ち目がないのはアルたちも分かっているだろが、その先も勝ち目が薄いというのはあまり伝えたくはない。発破をかける意味でならいいが、明らかに今の状況は違う。
もし伝われば士気が下がり、その空気は他にも伝播する。そうなっては薄いではなく完全になくなってしまう。
俺の言葉と思考、両方を聞いた上で真剣に考えているようで無言の時間が続く。
まぁ、難しいよな。コイツにとってアルが育てるに足る器かどうか。それ次第だ。
そう思っているとようやくドラゴンは口を開く。
「よかろう。貴様が我の前に現れたのも何かの縁だ。無駄にするでないぞ」
「そうか、ありがとな。そういうことだからアル、契約を始めるぞ」
「嫌じゃ。我は納得がいかぬ」
思わず「は?」と声が漏れる。話が纏まったと思ったらこれだ。本当に面倒くさい。だが、アルが考えているだろうことは想像がつく。
「アル、ドラルのこと言われて腹が立つのは分かるが、そんなこと言ってられる状況じゃねぇだろ」
「何を言っておる。お主は我を何だと思っているのじゃ!我とてそのくらい分かっておる。だから父上のことは呑み込む。だが、彼奴は我を認めてはおらぬ。それなのに力を借りるというのが納得いかぬのじゃ!」
アルの気持ちも分からないこともない。コイツはアルのことを育てるに足る器だと認めたが、その力を認めた訳じゃない。それにアルが話をここまで持っていった訳でもない。
全てを用意された状況、そこの乗るだけなのが納得いかないのだろう。
だが、相手が悪い。コイツは七罪クラスのバケモノだ。納得がいかなくても受け入れてもらうしかない。
アルをどう説得しようか考えているとドラゴンが口を開く。
「弱き者よ、勘違いするな。我とて無条件で貴様に力を託すつもりはない。貴様が我に力を示した時に我が力を託そう」
「…それなら我も納得なのじゃ」
「じゃあ契約を始めるぞ」
アルも納得したところでアルとドラゴンに契約を施す。
「割って入るとは無礼であろう。その落とし前はどうつけるつもりだ?」
「はぁ…俺が相手してやるよ。それで、いいだろ?」
「貴様は話が早いな。貴様とは戦ってみたかったのだ」
結局はコイツも好戦的な部類か。
さっきの戦いを見ていた限りコイツは力の1割も出していない。それにあのスキルには詠唱以外にも特徴がある。
まず、自分の魔力を使っていないこと。それともう1つは現代のスキルのように魔力を媒介に何かを生み出している訳ではない。魔力を利用して自然を思うように操っているのだ。
1つ目の木を生やしたスキル、あれは自然の魔力をあの場所に集中させて木が生えるのを促した。それも生えた後はアルの魔力を吸い取らせて枯らした。
2つ目の雷を落とそうとしたスキルも同じだ。自然の魔力を上空に集中させ雲を生み出して雷を落とした。
あくまで、自然への呼びかけだ。アイツが何もしなくてもやがて起こっただろう事象、それを早めた。
まぁ、それらを差し引いてもあの詠唱の長さは戦闘に置いて致命的だ。あの体じゃなければな。
「よく分かっているではないか。貴様とは楽しめそうだ」
どういう原理かは分からないが、俺の思考も読めるらしい。だが、それはこの戦闘に置いては然したる問題にはならない。
ひとまずどのくらい硬いかの確認も兼ねて距離を詰める。
手刀に蹴り、掌底、と色々試すが全て防がれる。それも俺の思考を読んでいるのもあり、全て俺と動き出しが同時だった。
それで分かったことは硬いのは外側、鱗だけだ。掌底の時、内側にダメージを与える技の時だけは異様に受けるポイントをズラしていた。
「《大地よ、我が呼び___
「《爆ぜろ》」
___かけに答え、敵を捕らえよ》」
ドラゴンの詠唱中にスキルを唱え爆発させるが、怯む様子もなく詠唱を終えられた。思考の読みで受ける構えができていたのだろう。
地面から俺を囲うように生えてくる木々を横へ上へと走って跳んで躱す。ドラゴン自身の魔力を使っていなかろうと自然の魔力の流れを見ていれば何が起こるかは分かる。
全てを躱し切ったと思ったが、木々は俺を追尾するように枝分かれして捕らえようとする。
こんな芸当もできるのか。そんなことを宙で思いながら《絶》と唱えて打ち消す。
これで互いの攻防がひと段落して様子見に入る。本気の戦いならこんな時間は生まれにくいが今は互いの力を確かめ合っているだけだ。
それを表すようにドラゴンから話しかけてくる。
「そのスキル、理に触れておるな」
「自然を操るのも理に触れてるだろ」
自然を思うままに操る。それは現代のスキルよりも危険だ。自然の魔力も無限にある訳ではない。どこかを豊かにするということはどこかを貧しくするということだ。
それは紛れもなく世界に干渉している。
「我の時代はこれが普通だったのだがな。今の世にしてみれば理、禁忌に触れておろうな。それは役割の違いに過ぎぬ。して、貴様はその力を手に入れるのに常軌を逸した場所に身を置いたであろう。何故、それに耐えられた?ただの傲慢ではあるまい」
「いや、ただの傲慢だ。お前こそ、世界に背いてまで禁忌を犯したのは何でだ?」
「たとえ世界に生み出されようと世界に管理された覚えなどない。生き様、死に様、それらは生者が決めることであり、滅び逝く種であろうとそれらは変わらぬ。我等は世界に異を唱えることにした」
その言葉からは俺と同じような意思を感じる。これなら説得できるかもしれない。
「なら俺に手を貸してくれねぇか?」
「我は始めに言ったであろう、力次第では貴様を主にしてもよいと。貴様はその力を示した。貴様であれば何も文句などない」
「それだと困るんだよな。俺だけ強くて勝てる相手じゃねぇ。それはお前も身に染みてることだろ?」
コイツは個の強さでどうにもならないことを誰よりも理解しているはずだ。智に溢れているとはいえ、これだけ好戦性を持っているコイツが最後に種の保存なんて賢過ぎる選択をするとは思えない。
他の奴が種の保存を行うことを理解し認めようともコイツはそれを拒む。だが、後の戦いのため必要と言われればコイツは戦いたくても拒めなくなる。賢いから。
もし個で勝てるのならコイツだけで戦うことを認められ託されていたはずだ。だけど、託されなかったのはコイツが弱かったからじゃない。もし弱かったのなら種の保存の対象にもならず、その場で最後まで戦えた。
故に個の限界を誰よりも理解しているはずだ。
「貴様の考えていることは概ね正しい。だが、だからこそ相手を選ぶ必要がある。弱き者に我の力を託したとて水泡と化す」
「その気持ちも分かる。だが、それは結局、より強力な個を生み出すだけ。お前に力があるのなら育てろ。強者に力を託すのはお前自身が何かをしたことにはならない。勝つ奴に加勢しただけだ。力が育ててあるなら勝たせろ」
少し強引な気もするが表向きはこれでいいだろう。
俺等の敵は6体居るが、現状それに対抗できるのは俺だけだ。1人、戦力になる見込みのある奴はいるが、他は正直なところ厳しい。だからお前がアルに力を貸してくれれば戦力が増える。それにアルは都合上、敵に狙われている身だから最優先で仕上げたい。だから手を貸してくれ。
どうせ俺の思考を読み取っているだろうからこれで内情も伝わるだろう。現状で俺以外に勝ち目がないのはアルたちも分かっているだろが、その先も勝ち目が薄いというのはあまり伝えたくはない。発破をかける意味でならいいが、明らかに今の状況は違う。
もし伝われば士気が下がり、その空気は他にも伝播する。そうなっては薄いではなく完全になくなってしまう。
俺の言葉と思考、両方を聞いた上で真剣に考えているようで無言の時間が続く。
まぁ、難しいよな。コイツにとってアルが育てるに足る器かどうか。それ次第だ。
そう思っているとようやくドラゴンは口を開く。
「よかろう。貴様が我の前に現れたのも何かの縁だ。無駄にするでないぞ」
「そうか、ありがとな。そういうことだからアル、契約を始めるぞ」
「嫌じゃ。我は納得がいかぬ」
思わず「は?」と声が漏れる。話が纏まったと思ったらこれだ。本当に面倒くさい。だが、アルが考えているだろうことは想像がつく。
「アル、ドラルのこと言われて腹が立つのは分かるが、そんなこと言ってられる状況じゃねぇだろ」
「何を言っておる。お主は我を何だと思っているのじゃ!我とてそのくらい分かっておる。だから父上のことは呑み込む。だが、彼奴は我を認めてはおらぬ。それなのに力を借りるというのが納得いかぬのじゃ!」
アルの気持ちも分からないこともない。コイツはアルのことを育てるに足る器だと認めたが、その力を認めた訳じゃない。それにアルが話をここまで持っていった訳でもない。
全てを用意された状況、そこの乗るだけなのが納得いかないのだろう。
だが、相手が悪い。コイツは七罪クラスのバケモノだ。納得がいかなくても受け入れてもらうしかない。
アルをどう説得しようか考えているとドラゴンが口を開く。
「弱き者よ、勘違いするな。我とて無条件で貴様に力を託すつもりはない。貴様が我に力を示した時に我が力を託そう」
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