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105話
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背中にゼギウスの手を置かれ体内にゼギウスの魔力が入り込んでくる。それは異物なはずなのに拒絶反応が起きぬ。
我の内側にある力の根源、その奥深くに入り込んでくる。そこには我の力の他に何か違うものがあった。普段ならこんなに深くには入れぬから気づかなかったが、我の体内にはこんなものがあったのか…これがゼギウスの言っていた封印なのだろうか?禍々しい雰囲気を放っておる。
しばらくゼギウスの魔力が我の体内で蠢くと何かが解かれる感覚がした。それを我の魔力と共に外に引っ張り出される。外に出てきた物は黒い球体になると宙に浮き落ち着いた。
「我が封印を解きし者は貴様か…」
黒い球体は厳かな声でゼギウスに尋ねる。その声だけで体が身震いした。
「あぁ。お前は何者だ?」
「先の時代の生き残りとでも言っておこう。貴様こそ…貴様、体内に相反する力を宿しておるな。管理者か、我の残滓を葬りに来たか」
「違ぇよ。その駒だとでも思ってればいい。で、お前、封印じゃねぇな」
「管理者ではないと、興味深い者だ。いいだろう、話してやる。先の時代、我が種が滅びる直前、生き残っていた少数は力を残すために自然へと還ることにした。自然へと還った力は自然に馴染まず混ざらず溶け込まず、バラバラに散った。それらは長き時を経て生者に集められ我が目覚めた。だが、世界に反した我等は力が集っても封印された」
「魂の分散か。無茶なことをしたな」
何を話しておるのか全く分からぬ。だが、話は上手く進んでいるようなのじゃ。
「我の封印を解いたのは力の行使、契約が目的であろう。貴様であれば力次第では我が主にしてやってもよいぞ」
「お前の主になるのは俺じゃない。コイツだ」
「貴様、我を侮辱しているのか?我の力を集めし者とはいえ、弱き者に従うつもりはない。不満ならその力を以て我を従わせろ」
「やはりこうなるのじゃな。よいぞ、我の力を見せてやるのじゃ」
我が戦闘態勢をとると黒い球体は姿を変える。
角に翼、鋭い鉤爪、尻尾、我にも備わっている部位ながらそれらは夥しい雰囲気を纏っている。それに我は半人、人の姿の部位もあるが、奴は全身がドラゴンの姿をしていた。
鋭い爪は全てを貫く矛、黒く煌めくその鱗は全てを防ぐ盾。スキルを使わなくても攻防が揃っておる。ここまで完全なるドラゴンは初めて見たのじゃ。
「弱き者よ、勘違いしておるな。我等が眠って以降、現世に置いて我の他にドラゴンは存在せぬ」
今、我の心の内を読み取った!?それよりも、我の父上もドラゴンではないと申したか?許さぬ。
「《龍爪》」
硬質化した爪で引っ掻くが、弾かれる。やはり一筋縄ではいかぬか。
続けざまに《龍尾》、《龍爪》、《龍双槍》と唱え尻尾と爪で攻撃し、空で引っ掻く動きをして槍型の衝撃波を2つ飛ばす。
しかし、それらは全て何もしないドラゴンに弾かれた。
「弱き者よ、先程、貴様の父がドラゴンでないと言ったことに腹を立てておったな。本物のドラゴンはスキルなど使わなくとも爪や尻尾を振るえば《龍爪》や《龍尾》になる。ドラゴンではないが故にスキルを使わねばこの領域に踏み込めぬのだ」
父上のことまで言われるのは我慢ならぬ。無駄が多く付け込まれると分かっていても撃たずにはいられなかった…「《龍王の咆哮》」
しかし、ドラゴンは隙を衝く様子もなく我の咆哮が直撃した。
砂埃が舞いドラゴンの姿は見えなくなる。……やったのか…?あのスカーでも直撃は致命傷となった。それを考えると致命傷、少なくとも傷は負わせられているはず…
「格の差が分からないようだな」
砂埃越しにドラゴンの声が聞こえてきた。ドラゴンは砂埃の中から無傷の姿で現れるとさっき言ったことを証明するように爪や尻尾を振るう。それを腕で受け止めるが、受け止め切れず肉が抉れる。
確かに今の爪や尻尾は我がスキルを唱えて使ったよりも威力は高かった。だが、ゼギウスとてただの手刀でも今のドラゴンの比にならないくらい威力が高い。それを考えるに奴の身体能力が優れているだけで、一概に父上まで言われるのが納得いかぬ。
「この程度で傷がつくとは脆いな。貴様はさっきスキルを使ったようだが、本当のスキルというものを見せてやろう。《大地よ、我が呼びかけに答え、敵を穿て》」
聞き慣れない詠唱に体が自然と身構え飛び立つ。何も起こる気配がないのに体は警鐘を鳴らし続けている。何のじゃ?
空からドラゴンを見続けていると、突然、体を何かに貫かれる。その部位に目を向けると腹が大地から生えた木に貫かれていた。
何が起こった、のじゃ?抜け出そうにも体が動かせぬ。これが奴のスキル…?他のスキルとは何かが違う。魔力を吸い取られていくようなのじゃ。
「お主、何をしたのじゃ?」
「何とは異な、スキルと言ったであろう。貴様等が使っているのは簡易詠唱に過ぎぬ。と、説明をしたところで貴様には分からなかろう」
ドラゴンが呆れたようにそう言うと木は枯れ消えていった。
貫かれた腹は痛いが、まだ戦える。だが、この傷では闇雲に戦うことはできぬ。何か策を考えねば…となると、真っ先に浮かぶのはあの独特なスキルの詠唱、欠点はその詠唱の長さなのは間違いない。そこを衝けばどうにかなるかもしれぬ。
だが、問題は他にもある。あの鱗をどうやって貫くか、じゃ。それができないことには何をやっても意味をなさぬ。
何か欠点がある筈じゃ…あ!
奴は実体を持っておらぬ。あの体も我の魔力から作られたものじゃ。そうなると長時間維持はできないはず……体力勝負じゃな。奴はそれを狙っておったのか。
つくづく我の考えの甘さを思い知らされる。
「頭は纏まったようだな。来るがいい」
「そうさせてもらうのじゃ。《風龍》」
風を龍の姿に生成してドラゴンに向けて放つ。
「猪口才な」
そうドラゴンの尻尾に簡単に払われる。この程度では効かぬか。体力の温存は必須だったが、だからと言って力の抜き過ぎは返って意味を持たぬな。
「《暴風龍》」
さっきよりも荒々しい風を龍の姿に生成してドラゴンに向けて放つ。それもあっさりと尻尾に弾かれたように見えた。
しかし、我は見逃さぬ。今、我のスキルを弾いた時に鱗が1枚、剥がれ落ちて消えた。
それは紛れもない綻び、このドラゴンの限界が近いのを表している。立て直される前に尻尾を壊してバランスを崩壊させるしかない。痛み、出血する腹部を無視してドラゴンに接近していく。
ドラゴンは焦っているのか雑な引っ掻きで我を払い除けようとするが、それは簡単に躱せる。
「《暴風龍》《龍爪》《龍尾》」
《暴風龍》を敢えて顔の方に撃ち、狙いをそっちの方だと思わせ尻尾狙いを悟らせないようにする。《暴風龍》自体は目眩ましにもならないほどあっさり弾かれるが、それで構わぬ。無防備の尻尾に《龍爪》と《龍尾》を撃ちこむ。
カーンッ……
我の攻撃はあっさりと弾かれた。そのまま尻尾に巻き付かれ身動きが取れなくなる。
「貴様の思慮の浅さには呆れる。《天よ、我が呼びかけに答え、鉄槌を落とせ》」
隙だと思っていた長い詠唱の間も何もできなかった。さっきと同じようにすぐに何かが起こる気配はないが、身動きがとれぬ。
「最初に我が思考を読めたのにさっき考えていた戦略も読まれているとは考えなかったのか?」
見落としていたのじゃ…
「気づきもしなかったのか…滅びよ」
ドラゴンがそう言った直後、空から眩い光が___
これは耐えられない。本能がそう警鐘を鳴らすがドラゴンの尻尾から抜け出せない。最後まで足掻くがやはり抜け出せなかった。
「《絶雷》」
眩い光が我に直撃する直前、ゼギウスによってその光は打ち消される。
我の手には負えぬと判断された。それは今の戦いを見るに真っ当な判断と認めざるを得ないが、とてつもなく悔しかった。
我の内側にある力の根源、その奥深くに入り込んでくる。そこには我の力の他に何か違うものがあった。普段ならこんなに深くには入れぬから気づかなかったが、我の体内にはこんなものがあったのか…これがゼギウスの言っていた封印なのだろうか?禍々しい雰囲気を放っておる。
しばらくゼギウスの魔力が我の体内で蠢くと何かが解かれる感覚がした。それを我の魔力と共に外に引っ張り出される。外に出てきた物は黒い球体になると宙に浮き落ち着いた。
「我が封印を解きし者は貴様か…」
黒い球体は厳かな声でゼギウスに尋ねる。その声だけで体が身震いした。
「あぁ。お前は何者だ?」
「先の時代の生き残りとでも言っておこう。貴様こそ…貴様、体内に相反する力を宿しておるな。管理者か、我の残滓を葬りに来たか」
「違ぇよ。その駒だとでも思ってればいい。で、お前、封印じゃねぇな」
「管理者ではないと、興味深い者だ。いいだろう、話してやる。先の時代、我が種が滅びる直前、生き残っていた少数は力を残すために自然へと還ることにした。自然へと還った力は自然に馴染まず混ざらず溶け込まず、バラバラに散った。それらは長き時を経て生者に集められ我が目覚めた。だが、世界に反した我等は力が集っても封印された」
「魂の分散か。無茶なことをしたな」
何を話しておるのか全く分からぬ。だが、話は上手く進んでいるようなのじゃ。
「我の封印を解いたのは力の行使、契約が目的であろう。貴様であれば力次第では我が主にしてやってもよいぞ」
「お前の主になるのは俺じゃない。コイツだ」
「貴様、我を侮辱しているのか?我の力を集めし者とはいえ、弱き者に従うつもりはない。不満ならその力を以て我を従わせろ」
「やはりこうなるのじゃな。よいぞ、我の力を見せてやるのじゃ」
我が戦闘態勢をとると黒い球体は姿を変える。
角に翼、鋭い鉤爪、尻尾、我にも備わっている部位ながらそれらは夥しい雰囲気を纏っている。それに我は半人、人の姿の部位もあるが、奴は全身がドラゴンの姿をしていた。
鋭い爪は全てを貫く矛、黒く煌めくその鱗は全てを防ぐ盾。スキルを使わなくても攻防が揃っておる。ここまで完全なるドラゴンは初めて見たのじゃ。
「弱き者よ、勘違いしておるな。我等が眠って以降、現世に置いて我の他にドラゴンは存在せぬ」
今、我の心の内を読み取った!?それよりも、我の父上もドラゴンではないと申したか?許さぬ。
「《龍爪》」
硬質化した爪で引っ掻くが、弾かれる。やはり一筋縄ではいかぬか。
続けざまに《龍尾》、《龍爪》、《龍双槍》と唱え尻尾と爪で攻撃し、空で引っ掻く動きをして槍型の衝撃波を2つ飛ばす。
しかし、それらは全て何もしないドラゴンに弾かれた。
「弱き者よ、先程、貴様の父がドラゴンでないと言ったことに腹を立てておったな。本物のドラゴンはスキルなど使わなくとも爪や尻尾を振るえば《龍爪》や《龍尾》になる。ドラゴンではないが故にスキルを使わねばこの領域に踏み込めぬのだ」
父上のことまで言われるのは我慢ならぬ。無駄が多く付け込まれると分かっていても撃たずにはいられなかった…「《龍王の咆哮》」
しかし、ドラゴンは隙を衝く様子もなく我の咆哮が直撃した。
砂埃が舞いドラゴンの姿は見えなくなる。……やったのか…?あのスカーでも直撃は致命傷となった。それを考えると致命傷、少なくとも傷は負わせられているはず…
「格の差が分からないようだな」
砂埃越しにドラゴンの声が聞こえてきた。ドラゴンは砂埃の中から無傷の姿で現れるとさっき言ったことを証明するように爪や尻尾を振るう。それを腕で受け止めるが、受け止め切れず肉が抉れる。
確かに今の爪や尻尾は我がスキルを唱えて使ったよりも威力は高かった。だが、ゼギウスとてただの手刀でも今のドラゴンの比にならないくらい威力が高い。それを考えるに奴の身体能力が優れているだけで、一概に父上まで言われるのが納得いかぬ。
「この程度で傷がつくとは脆いな。貴様はさっきスキルを使ったようだが、本当のスキルというものを見せてやろう。《大地よ、我が呼びかけに答え、敵を穿て》」
聞き慣れない詠唱に体が自然と身構え飛び立つ。何も起こる気配がないのに体は警鐘を鳴らし続けている。何のじゃ?
空からドラゴンを見続けていると、突然、体を何かに貫かれる。その部位に目を向けると腹が大地から生えた木に貫かれていた。
何が起こった、のじゃ?抜け出そうにも体が動かせぬ。これが奴のスキル…?他のスキルとは何かが違う。魔力を吸い取られていくようなのじゃ。
「お主、何をしたのじゃ?」
「何とは異な、スキルと言ったであろう。貴様等が使っているのは簡易詠唱に過ぎぬ。と、説明をしたところで貴様には分からなかろう」
ドラゴンが呆れたようにそう言うと木は枯れ消えていった。
貫かれた腹は痛いが、まだ戦える。だが、この傷では闇雲に戦うことはできぬ。何か策を考えねば…となると、真っ先に浮かぶのはあの独特なスキルの詠唱、欠点はその詠唱の長さなのは間違いない。そこを衝けばどうにかなるかもしれぬ。
だが、問題は他にもある。あの鱗をどうやって貫くか、じゃ。それができないことには何をやっても意味をなさぬ。
何か欠点がある筈じゃ…あ!
奴は実体を持っておらぬ。あの体も我の魔力から作られたものじゃ。そうなると長時間維持はできないはず……体力勝負じゃな。奴はそれを狙っておったのか。
つくづく我の考えの甘さを思い知らされる。
「頭は纏まったようだな。来るがいい」
「そうさせてもらうのじゃ。《風龍》」
風を龍の姿に生成してドラゴンに向けて放つ。
「猪口才な」
そうドラゴンの尻尾に簡単に払われる。この程度では効かぬか。体力の温存は必須だったが、だからと言って力の抜き過ぎは返って意味を持たぬな。
「《暴風龍》」
さっきよりも荒々しい風を龍の姿に生成してドラゴンに向けて放つ。それもあっさりと尻尾に弾かれたように見えた。
しかし、我は見逃さぬ。今、我のスキルを弾いた時に鱗が1枚、剥がれ落ちて消えた。
それは紛れもない綻び、このドラゴンの限界が近いのを表している。立て直される前に尻尾を壊してバランスを崩壊させるしかない。痛み、出血する腹部を無視してドラゴンに接近していく。
ドラゴンは焦っているのか雑な引っ掻きで我を払い除けようとするが、それは簡単に躱せる。
「《暴風龍》《龍爪》《龍尾》」
《暴風龍》を敢えて顔の方に撃ち、狙いをそっちの方だと思わせ尻尾狙いを悟らせないようにする。《暴風龍》自体は目眩ましにもならないほどあっさり弾かれるが、それで構わぬ。無防備の尻尾に《龍爪》と《龍尾》を撃ちこむ。
カーンッ……
我の攻撃はあっさりと弾かれた。そのまま尻尾に巻き付かれ身動きが取れなくなる。
「貴様の思慮の浅さには呆れる。《天よ、我が呼びかけに答え、鉄槌を落とせ》」
隙だと思っていた長い詠唱の間も何もできなかった。さっきと同じようにすぐに何かが起こる気配はないが、身動きがとれぬ。
「最初に我が思考を読めたのにさっき考えていた戦略も読まれているとは考えなかったのか?」
見落としていたのじゃ…
「気づきもしなかったのか…滅びよ」
ドラゴンがそう言った直後、空から眩い光が___
これは耐えられない。本能がそう警鐘を鳴らすがドラゴンの尻尾から抜け出せない。最後まで足掻くがやはり抜け出せなかった。
「《絶雷》」
眩い光が我に直撃する直前、ゼギウスによってその光は打ち消される。
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