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129話
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カイたちが戻ってきた翌日、王国へ向かって出発していた。
カイに旧王城での会議のことを伝え忘れていたから間に合うか怪しかったが、何とか間に合った。まぁ、間に合わなくてもいなかったらいなかったで問題なかっただろう。
だが、それよりも問題なのはカイとゲンが大量に連れて帰ってきた子供たちだ。魔物だらけの城に置いてくる訳にはいかず別の馬車で連れてきている。
それもララとルル、腐れが見ていて会議中もアルとララ、腐れが見るから問題ないが、別で大きな問題がある。
それはカイたちが出かけている間に庭に動きがあったのだ。柱が全員やられ、庭の奴等が力を取り戻した。
「あとどれくらい時間がある見込みなのじゃ?」
そうアルに聞かれる。この魔導馬車が大きくてよかったな。ドラゴンの姿を保ったままでも荷台に乗れている。
「さぁな。いつ仕掛けられてもおかしくねぇ」
「お主は相変わらずじゃな」
「じゃあいつ飛ばされても大丈夫なようにゼギくんに引っ付いてないとね」
そうメナが抱きついてくる。アルもメナもいつものようにしているつもりだろうが、2人とも体が震えている。緊張と武者震いが混ざったような感じだ。
「いつ仕掛けてくるかも問題だけど、それより目先の会議の方が大事じゃないかい?私たちが勝とうが他が負ければ意味がない」
「他って何があるのよ」
そうエストが聞く。ここまで無知だと返って清々しい。
「頭を失った魔物の進攻だ。それを防げなければ儂等の戦いは全て無駄になる」
そう、庭との戦いに勝とうと魔物の進攻を防げなければそこで終わる。だからそれを左右するこの会議を放置することはできない。
「なら先にそっちを叩けばいいんじゃないの?」
「それは無理。そこで力を使ったら隙ができて向こうに仕掛けられる」
「そういうことさ。有象無象とはいえ軽く100万は超えてる数を相手にすればアタイたちも消耗するからね」
そう緊張感がありながらもある程度、余裕がある状態で旧王国領へと入る。
そのまま旧王城の前に着くとアルとナナシに見張りを任せて七英雄とルルで旧王城へ入っていく。ルルは感慨深そうに見ながら歩き、会議室へと向かった。
会議室には既にガルドスが居て近衛を10人近く控えさせている。通常なら2、3人程度のはずだが、皇国と事を構える気なのだろうか。レイブンの言っていたことが頭を過った。
「あとはミレーネか。遅れているようだが、何かあったか?」
どこか含みがあるようにガルドスはそう言う。そこへ違和感を覚え、メナにハンドサインで目を使わせる。すると、メナが「ゼギくん!」と明らかに取り乱した声を上げた。
「どうした?」
「庭らしき魔物にミレーネが殺された……」
その言葉を聞いた瞬間、シアンがガルドスに向かって動き出すが、それをレイブンが押さえ込む。今はシアンに構っている余裕はない。
さっきの言い方からガルドスが1枚噛んでいるのは間違いないが、ガルドスが庭の誘いに乗った?それより、庭はいつ仕掛けた?
様々な思考が頭を過るが、そんなことは本人に聞けばいい。
「どういうつもりだ?」
「余はゼギウスの事を気に入っておった。だが、貴様はそれに応えなかった。その時にあの者等の方が魅力的な提案をしてきたというだけのこと。それに乗るのは当然であろう?」
「落ちるところまで落ちたな」
「何とでも言うがいい。余は世界の覇者になる」
ガルドスの欲を甘く見過ぎていた。いや、ここまで馬鹿だとは思っていなかった。こうなった時点で会議は意味をなさないが、このタイミングで仕掛けてきたということはこの後に起こることも分かる。だが、それを防ぐ術がない。
「ルル、この剣を持ってララと逃げろ」
そうルルに大剣を2つに分けた物を渡した瞬間、光に包まれ転移させられた。
転移先は勿論、庭だ。ご丁寧に七英雄にアルとナナシ、こちらの戦力が全員飛ばされている。向こうの出迎えか正面にはプライドが居て5つの靄があった。
完全に嵌められた。庭はララとルルを始末してガルドスを傀儡に置いて新体制を築くつもりだ。ここに居る全員とララ、ルル、腐れを始末すれば事の顛末を知る者はいなくなる。
おまけに、ララもルルも既に死んだことになっているから大事に成り得ない。ミレーネに手を出してきたのは想定外だったが、そこも何か策があるのだろう。
何より、このタイミングで仕掛けられたのが痛い。戦闘態勢は取れているが、今の状況に置ける心理的影響は計り知れない。
全員がララやルル、腐れ、それに子供たちのことを気にしてしまう。強いて言うなら影響がないのはレイブンくらいだろうか。これ以上ない嫌な仕掛けられ方だ。
だが、同時にここまでの策を使う程、庭も焦っているということだ。庭は余裕を持っているが故に策を講じてこないというのが俺の読みだった。それなのに、策を講じてきたということはそれだけこっちの戦力に脅威を感じたこということだ。
「悪く思うなよ、ゼギウス。これが戦いだ」
「別に何とも思ってねぇよ。ただ切羽詰まってんだなって思っただけだ」
「好きに解釈しろ。より確実な勝利を手にするのは当然のことだ。相手はお前たちが好きに選べ」
そう言うとプライドは黄色の靄を生み出してそこへ入っていった。
庭が広いとはいえ、同じ空間で戦えば支障が出る。俺のスキルやこいつ等が本気で戦うことを考えればその影響は大きい。柱を倒すまでの時間もこの空間を作っていたことが原因か。
「それでゼギウス、どうするんだい?」
「どうしような」
こっちが相手を選べるだろうことも想定していたが、正直、結論は出ていない。俺が1人なのは確定として、アルはドラゴンがついてる。だが、他は2人1組にすると1人足りない。
そこをシアンに任せたかったが、レイブン曰くまだ完成には程遠いらしい。エストも思っていたよりは伸びなかったしメナも復帰した程度、カイはそもそも伸びに期待してなかったから厳しいし、レイブンも無理だ。
そうなるとゲンかナナシに任せたいところだが、ゲンもナナシも俺が戦うことを差し引いた魔力しか与えられないからサポート程度しかできない。
つまり、明確な犠牲を1人作らなければいけない。
「私がやる」
「言ってる意味、分かってんのか?」
確かにこの面子ならカイが最適だ。欠点が少なく庭ともそこそこ戦える。総合的な勝利を考えるならそうなってしまう。だが、カイには連れてきた子供たちの面倒を見るという仕事がある。
「それなら儂だろう。この中でさしで戦えるのは儂だけだ」
今度はゲンが名乗り出る。そこまで言ってようやくシアンたちは何の話か気づいたようだ。
「それならアタイがやるさ!アタイは称号を2つ持ってるんだ。やるならアタイが最善に決まってる」
「私にも勝てない雑魚は黙ってて。それにゲンに割く魔力があるならゼギウスが他を圧倒した方がいい。だから私が受け持つ。その代わり、ゼギウスは1つ約束して」
覚悟の決まっている言葉だ。自分がシアンよりも劣ると分かっていながら総合的な勝利の上でシアンを勝たせるためには自分が犠牲になるのが最善と分かっている。
そこへシアンが「何勝手に進めてるのさ」と言うが、構っていられない。
「何だ?」
そう聞いたものの頼みは分かっている。
「あの子たちを責任持って育てて。私よりもあの子たちは幼い。だけど、私は育てられない。私にしてあげたようにしてあげて。できればもう少し優しく」
「分かった。それは約束する」
「なら任せて。これで私は安心して戦える」
そう言うとカイは他に有無を言わせず黄色の靄に入っていった。
「何で許したのさ!そこはアタイがやらなきゃいけない役割だろ!」
「勝つための選択だ」
「見損なったよ。アンタはそういうのやらないと思ってた」
そう吐き捨てるとシアンは緑色の靄に入っていく。そこへレイブンも「じゃあ私も行くよ」と言ってついて行った。
「そうなると私とエストちゃんかな?」
「よろしくお願いします」
メナとエストは揃って菫色の靄に入っていく。それからも「儂等も行くか、ナナシ」「足引っ張ったら先に殺すよ」と言いながらゲンとナナシは青色の靄に入っていった。
シアン以外は誰も今の俺の決断に対して文句を言わない。文句を言われて然るべき決断をしたのにだ。
「アル、余計なことは考えず戦いだけに集中しろよ」
「お主こそな」
残ったアルも橙色の靄に入っていき、俺も残った赤色の靄に入っていった。
カイに旧王城での会議のことを伝え忘れていたから間に合うか怪しかったが、何とか間に合った。まぁ、間に合わなくてもいなかったらいなかったで問題なかっただろう。
だが、それよりも問題なのはカイとゲンが大量に連れて帰ってきた子供たちだ。魔物だらけの城に置いてくる訳にはいかず別の馬車で連れてきている。
それもララとルル、腐れが見ていて会議中もアルとララ、腐れが見るから問題ないが、別で大きな問題がある。
それはカイたちが出かけている間に庭に動きがあったのだ。柱が全員やられ、庭の奴等が力を取り戻した。
「あとどれくらい時間がある見込みなのじゃ?」
そうアルに聞かれる。この魔導馬車が大きくてよかったな。ドラゴンの姿を保ったままでも荷台に乗れている。
「さぁな。いつ仕掛けられてもおかしくねぇ」
「お主は相変わらずじゃな」
「じゃあいつ飛ばされても大丈夫なようにゼギくんに引っ付いてないとね」
そうメナが抱きついてくる。アルもメナもいつものようにしているつもりだろうが、2人とも体が震えている。緊張と武者震いが混ざったような感じだ。
「いつ仕掛けてくるかも問題だけど、それより目先の会議の方が大事じゃないかい?私たちが勝とうが他が負ければ意味がない」
「他って何があるのよ」
そうエストが聞く。ここまで無知だと返って清々しい。
「頭を失った魔物の進攻だ。それを防げなければ儂等の戦いは全て無駄になる」
そう、庭との戦いに勝とうと魔物の進攻を防げなければそこで終わる。だからそれを左右するこの会議を放置することはできない。
「なら先にそっちを叩けばいいんじゃないの?」
「それは無理。そこで力を使ったら隙ができて向こうに仕掛けられる」
「そういうことさ。有象無象とはいえ軽く100万は超えてる数を相手にすればアタイたちも消耗するからね」
そう緊張感がありながらもある程度、余裕がある状態で旧王国領へと入る。
そのまま旧王城の前に着くとアルとナナシに見張りを任せて七英雄とルルで旧王城へ入っていく。ルルは感慨深そうに見ながら歩き、会議室へと向かった。
会議室には既にガルドスが居て近衛を10人近く控えさせている。通常なら2、3人程度のはずだが、皇国と事を構える気なのだろうか。レイブンの言っていたことが頭を過った。
「あとはミレーネか。遅れているようだが、何かあったか?」
どこか含みがあるようにガルドスはそう言う。そこへ違和感を覚え、メナにハンドサインで目を使わせる。すると、メナが「ゼギくん!」と明らかに取り乱した声を上げた。
「どうした?」
「庭らしき魔物にミレーネが殺された……」
その言葉を聞いた瞬間、シアンがガルドスに向かって動き出すが、それをレイブンが押さえ込む。今はシアンに構っている余裕はない。
さっきの言い方からガルドスが1枚噛んでいるのは間違いないが、ガルドスが庭の誘いに乗った?それより、庭はいつ仕掛けた?
様々な思考が頭を過るが、そんなことは本人に聞けばいい。
「どういうつもりだ?」
「余はゼギウスの事を気に入っておった。だが、貴様はそれに応えなかった。その時にあの者等の方が魅力的な提案をしてきたというだけのこと。それに乗るのは当然であろう?」
「落ちるところまで落ちたな」
「何とでも言うがいい。余は世界の覇者になる」
ガルドスの欲を甘く見過ぎていた。いや、ここまで馬鹿だとは思っていなかった。こうなった時点で会議は意味をなさないが、このタイミングで仕掛けてきたということはこの後に起こることも分かる。だが、それを防ぐ術がない。
「ルル、この剣を持ってララと逃げろ」
そうルルに大剣を2つに分けた物を渡した瞬間、光に包まれ転移させられた。
転移先は勿論、庭だ。ご丁寧に七英雄にアルとナナシ、こちらの戦力が全員飛ばされている。向こうの出迎えか正面にはプライドが居て5つの靄があった。
完全に嵌められた。庭はララとルルを始末してガルドスを傀儡に置いて新体制を築くつもりだ。ここに居る全員とララ、ルル、腐れを始末すれば事の顛末を知る者はいなくなる。
おまけに、ララもルルも既に死んだことになっているから大事に成り得ない。ミレーネに手を出してきたのは想定外だったが、そこも何か策があるのだろう。
何より、このタイミングで仕掛けられたのが痛い。戦闘態勢は取れているが、今の状況に置ける心理的影響は計り知れない。
全員がララやルル、腐れ、それに子供たちのことを気にしてしまう。強いて言うなら影響がないのはレイブンくらいだろうか。これ以上ない嫌な仕掛けられ方だ。
だが、同時にここまでの策を使う程、庭も焦っているということだ。庭は余裕を持っているが故に策を講じてこないというのが俺の読みだった。それなのに、策を講じてきたということはそれだけこっちの戦力に脅威を感じたこということだ。
「悪く思うなよ、ゼギウス。これが戦いだ」
「別に何とも思ってねぇよ。ただ切羽詰まってんだなって思っただけだ」
「好きに解釈しろ。より確実な勝利を手にするのは当然のことだ。相手はお前たちが好きに選べ」
そう言うとプライドは黄色の靄を生み出してそこへ入っていった。
庭が広いとはいえ、同じ空間で戦えば支障が出る。俺のスキルやこいつ等が本気で戦うことを考えればその影響は大きい。柱を倒すまでの時間もこの空間を作っていたことが原因か。
「それでゼギウス、どうするんだい?」
「どうしような」
こっちが相手を選べるだろうことも想定していたが、正直、結論は出ていない。俺が1人なのは確定として、アルはドラゴンがついてる。だが、他は2人1組にすると1人足りない。
そこをシアンに任せたかったが、レイブン曰くまだ完成には程遠いらしい。エストも思っていたよりは伸びなかったしメナも復帰した程度、カイはそもそも伸びに期待してなかったから厳しいし、レイブンも無理だ。
そうなるとゲンかナナシに任せたいところだが、ゲンもナナシも俺が戦うことを差し引いた魔力しか与えられないからサポート程度しかできない。
つまり、明確な犠牲を1人作らなければいけない。
「私がやる」
「言ってる意味、分かってんのか?」
確かにこの面子ならカイが最適だ。欠点が少なく庭ともそこそこ戦える。総合的な勝利を考えるならそうなってしまう。だが、カイには連れてきた子供たちの面倒を見るという仕事がある。
「それなら儂だろう。この中でさしで戦えるのは儂だけだ」
今度はゲンが名乗り出る。そこまで言ってようやくシアンたちは何の話か気づいたようだ。
「それならアタイがやるさ!アタイは称号を2つ持ってるんだ。やるならアタイが最善に決まってる」
「私にも勝てない雑魚は黙ってて。それにゲンに割く魔力があるならゼギウスが他を圧倒した方がいい。だから私が受け持つ。その代わり、ゼギウスは1つ約束して」
覚悟の決まっている言葉だ。自分がシアンよりも劣ると分かっていながら総合的な勝利の上でシアンを勝たせるためには自分が犠牲になるのが最善と分かっている。
そこへシアンが「何勝手に進めてるのさ」と言うが、構っていられない。
「何だ?」
そう聞いたものの頼みは分かっている。
「あの子たちを責任持って育てて。私よりもあの子たちは幼い。だけど、私は育てられない。私にしてあげたようにしてあげて。できればもう少し優しく」
「分かった。それは約束する」
「なら任せて。これで私は安心して戦える」
そう言うとカイは他に有無を言わせず黄色の靄に入っていった。
「何で許したのさ!そこはアタイがやらなきゃいけない役割だろ!」
「勝つための選択だ」
「見損なったよ。アンタはそういうのやらないと思ってた」
そう吐き捨てるとシアンは緑色の靄に入っていく。そこへレイブンも「じゃあ私も行くよ」と言ってついて行った。
「そうなると私とエストちゃんかな?」
「よろしくお願いします」
メナとエストは揃って菫色の靄に入っていく。それからも「儂等も行くか、ナナシ」「足引っ張ったら先に殺すよ」と言いながらゲンとナナシは青色の靄に入っていった。
シアン以外は誰も今の俺の決断に対して文句を言わない。文句を言われて然るべき決断をしたのにだ。
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