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おまけ もう1つの戦場2
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素手と剣の衝突だというのにまるで槌を打ち合っているような鈍く重い音が鳴り響く。その衝突は回数を重ねる毎により鈍く、より重くなり体格の劣る少女は押し潰されるように力負けし始める。
それに呼応するように左右の戦闘も激しさを増す。まるで今までが余興だったかのように近衛は剣を交えたまま双子の少女を蹴り飛ばして体勢を崩すと追撃を仕掛ける。その一段階上がった攻撃を双子の少女は前劇をくらわないように防ぐのが精一杯だった。
「これが力の差というものだ」
ガルドスは少女を上から叩き潰すように剣を振るう。だが、その剣は今までのように少女を一方的に押し潰すことはなく、片手で簡単に受け止められる。
「力の差を説く前に、貴方もあそこの兵士の方も自分と相手の力量を正確に測れるようにした方がいいですよ」
そう少女が双子の少女と近衛の方にガルドスの視線を誘導すると、双子の少女と近衛の形勢は逆転していた。さっきまで双子の少女は近衛に圧倒されていたはずなのに今では弄ぶように頬をつついたり肩を叩いたりして翻弄している。
それは最早、戦闘と呼べるものではない。小さい子が近所のお兄さんやお姉さんに悪戯しているような図だ。
そんな侮辱を受けてガルドスが平静を保っていられる訳がなかった。
ガルドスはピキピキと青筋を浮かべながら少女の方に向き直る。
「貴様、余を前に手を抜いていたのか?」
「手を抜いていたと言われると少し語弊があります。どの程度の加減をすれば貴方を殺さずに無力化できるか調整していただけです。私も双子もその準備が整ったというだけのことです」
「それが手を抜いていると言うのだ!《剣豪》」
怒りに身を任せるようにスキルを唱えると、ガルドスの身を包む金の鎧が吹っ飛ぶ。内側から膨れ上がる筋肉に留め具が耐えられなくなり弾けたようだ。
鎧が外れ肉体が露わになったガルドスの肌には無数の切り傷がついていた。その中には致命傷になっていてもおかしくないほど深い傷跡があり、それは幾度も死線を潜り抜けてきた歴戦の猛者の証と言っていいだろう。
当然、さっきまでと比べ物にならないほど力は膨れ上がっていて、その凄まじい力は無駄なく剣へと伝えられると少女を叩き潰すように振り下ろされた。
ゴンッ!
ガルドスの振り下ろした剣は床に使われている石材を叩き割り小さな亀裂を入れる。だが、振り抜くのに使われた力とは裏腹に音も衝撃も小さい。
少女のその見かけに騙され過剰に警戒し過ぎていたのかララとルルの元まで下がっていた。それはこの戦闘が始まって初めての行動で明らかに過剰な回避に見える。
しかし、その直後、少女の回避は正しかったと証明された。
床に入った亀裂はピキ、ピキ、と小さな音を立てると急激に広がり地割れを起こす。それを少女はララとルルの首根っこを掴んで跳躍すると壁を蹴って上昇していく。
少女は適当な高さまで上昇すると窓に突っ込んで外に出た。その直後、地割れを起こしていたはずの城は一気に崩壊する。
たった一撃、剣を振り下ろしただけで半壊していたとは城を崩壊させた。
「申し訳ありません。少し手荒に回避してしまいました」
城の外に退避して安全な場所に着地すると少女はララとルルを離す。そうやって謝る通り雑に掴まれていた2人は跳躍する度に首が少し締まり壁に頭をぶつけていた。
だが、この状況を前にその程度で済んだのは少女のおかげであり2人とも気にしていない。
「助けてくれただけで十分。…ありがとう」
「そうですよ。でも、私たちのことは気にせず戦ってください。そうしないとガルドスには勝てません」
「分かりました。では、リミッターを外します。貴方たちも外していいですよ」
少女は瓦礫の方を見てそう言う。すると、その直後、瓦礫が崩れていく。
「それならもっと早く言ってよ」
「そうそう。私たちは逃げれなかったじゃん」
瓦礫の中から双子の少女が出てくる。2人とも普通に喋っているが頭からは血が流れ片目が見えていない。
双子の少女は瓦礫にクロスして刺さっている剣を上に押し上げて瓦礫をどかす。その剣の下、本来なら瓦礫に押し潰されていた場所にはガルドスの近衛が山積みになっていた。
それを1人、1人、雑に放り投げて安全な場所に移す。その衝撃で何人かの近衛が目を覚ました。
「どういうつもりだ?」
目を覚ましたうちの1人が双子の少女を睨みつけてそう聞く。それに対して双子の少女はあっけらかんに答える。
「だって殺すなって言われたから」
「情けのつもりか?ふざけるな!」
本来、主を守るはずの近衛があろうことか敵に命を救われた。その事実に怒りをぶつけると、双子の少女の表情は鋭くなった。
「そういうことは生死を選べるくらい強くなってから言ってよ。弱者は生死を選ぶことすらできない」
その言葉に近衛は何も言い返せない。双子の少女の言葉の重みもあるが、その言葉に込められていた圧に体が竦んで口を開くことすらできなかったのだ。
「余に恥をかかせる者はいらぬ」
ガルドスは瓦礫の中から無傷で出てくると近衛に斬りかかる。その圧に危機感を覚えたのか双子の少女は「《起動》」と唱えた。
そのスキルは双子の少女の雰囲気を大きく変えると表面から感情を消す。その直後、双子の少女は同時に動いた。
剣の軌道から見て近衛に当たるのは間違いなく、止めることも躱すこともできないのは一目瞭然だ。それでも双子の少女は何も気にしていないように攻撃を引きつけて剣が止められない軌道に乗るのを待つ。
剣が止まらない場所まで進むと双子の少女はガルドスを軸に鏡合わせで左右に展開すると、一気にガルドスの首に目掛けて刺突する。
「《強靭》」
ガルドスがそう唱えると双子の少女の剣はつつくように肉を押すが刺さりも貫通もしない。それは外側をゴムで覆い内側に鋼鉄が入っているような感じで一定以上深くまでは届かなかった。
ガルドスが双子の少女を躱しもせずに対応したため、剣はそのまま振り抜かれ山積みになっている近衛を一刀両断にした。その山から噴火するように血が飛び散り、ガルドスと双子の少女の全員を赤く染める。
ガルドスはそれで双子の少女が動揺するとでも思ったのだろうが、逆に双子の少女の動きはキレを増した。
刺突が通用しないと悟るなり双子の少女は剣を捨ててガルドスの心臓を前後から手刀で貫こうとする。だが、《強靭》によって強化されたガルドスの肉体を貫くには至らない。
「煩わしい」
そうガルドスが剣で払うと双子の少女は横にステップして躱す。そのステップを利用して片足のスプリットステップのように勢いをつけて左右から高さを変えた膝蹴りでガルドスの首を折ろうとする。
高さの違う膝蹴りはガルドスの首を曲げ折ったかのように思われた。
そこに双子の少女が追撃を仕掛けようとすると、双子の少女の体は大きく吹っ飛んだ。
「調子に乗り過ぎだ」
どうやらガルドスの横薙ぎで吹っ飛ばされたようだ。この場にいる誰もが見えていなかったが、ガルドスの剣は振り抜いた後のように右肩の後ろにあった。
「「ゴハッ、オエェッ!」」
吹っ飛ばされた双子の少女は受け身を取り立ち上がると口から血と一緒に嘔吐してしまう。それほどまでに重い一撃だったようだ。
「下がりなさい」
少女が双子の少女の肩を叩いて休ませようとする。だが、双子の少女はその手を振り払い少女の心臓を手刀で貫こうと手を伸ばす。
その姿は大凡、人のものではない。命を奪うようにプログラムされた機械だ。
「始めから私が戦うべきでした」
そう懺悔するように目を瞑ると、少女は双子の少女の手を叩き背後に回ってストンと首を叩く。すると、双子の少女は意識を失い倒れる。それを少女は受け止めて優しく寝かせた。
「申し訳ありません。ララ様とルル様を護衛する者がいなくなりますが、私があの者の相手をしてきます」
「さっきも言ったけど私たちのことは気にしなくていい」
「そうです。思う存分、戦ってきてください」
その言葉に少女はとても柔らかい笑みを浮かべる。
「分かりました。では、十分に下がっていてください。《起動》」
少女がそう唱えると、双子の少女がそう唱えた時と同じように表面から感情が消えた。
それに呼応するように左右の戦闘も激しさを増す。まるで今までが余興だったかのように近衛は剣を交えたまま双子の少女を蹴り飛ばして体勢を崩すと追撃を仕掛ける。その一段階上がった攻撃を双子の少女は前劇をくらわないように防ぐのが精一杯だった。
「これが力の差というものだ」
ガルドスは少女を上から叩き潰すように剣を振るう。だが、その剣は今までのように少女を一方的に押し潰すことはなく、片手で簡単に受け止められる。
「力の差を説く前に、貴方もあそこの兵士の方も自分と相手の力量を正確に測れるようにした方がいいですよ」
そう少女が双子の少女と近衛の方にガルドスの視線を誘導すると、双子の少女と近衛の形勢は逆転していた。さっきまで双子の少女は近衛に圧倒されていたはずなのに今では弄ぶように頬をつついたり肩を叩いたりして翻弄している。
それは最早、戦闘と呼べるものではない。小さい子が近所のお兄さんやお姉さんに悪戯しているような図だ。
そんな侮辱を受けてガルドスが平静を保っていられる訳がなかった。
ガルドスはピキピキと青筋を浮かべながら少女の方に向き直る。
「貴様、余を前に手を抜いていたのか?」
「手を抜いていたと言われると少し語弊があります。どの程度の加減をすれば貴方を殺さずに無力化できるか調整していただけです。私も双子もその準備が整ったというだけのことです」
「それが手を抜いていると言うのだ!《剣豪》」
怒りに身を任せるようにスキルを唱えると、ガルドスの身を包む金の鎧が吹っ飛ぶ。内側から膨れ上がる筋肉に留め具が耐えられなくなり弾けたようだ。
鎧が外れ肉体が露わになったガルドスの肌には無数の切り傷がついていた。その中には致命傷になっていてもおかしくないほど深い傷跡があり、それは幾度も死線を潜り抜けてきた歴戦の猛者の証と言っていいだろう。
当然、さっきまでと比べ物にならないほど力は膨れ上がっていて、その凄まじい力は無駄なく剣へと伝えられると少女を叩き潰すように振り下ろされた。
ゴンッ!
ガルドスの振り下ろした剣は床に使われている石材を叩き割り小さな亀裂を入れる。だが、振り抜くのに使われた力とは裏腹に音も衝撃も小さい。
少女のその見かけに騙され過剰に警戒し過ぎていたのかララとルルの元まで下がっていた。それはこの戦闘が始まって初めての行動で明らかに過剰な回避に見える。
しかし、その直後、少女の回避は正しかったと証明された。
床に入った亀裂はピキ、ピキ、と小さな音を立てると急激に広がり地割れを起こす。それを少女はララとルルの首根っこを掴んで跳躍すると壁を蹴って上昇していく。
少女は適当な高さまで上昇すると窓に突っ込んで外に出た。その直後、地割れを起こしていたはずの城は一気に崩壊する。
たった一撃、剣を振り下ろしただけで半壊していたとは城を崩壊させた。
「申し訳ありません。少し手荒に回避してしまいました」
城の外に退避して安全な場所に着地すると少女はララとルルを離す。そうやって謝る通り雑に掴まれていた2人は跳躍する度に首が少し締まり壁に頭をぶつけていた。
だが、この状況を前にその程度で済んだのは少女のおかげであり2人とも気にしていない。
「助けてくれただけで十分。…ありがとう」
「そうですよ。でも、私たちのことは気にせず戦ってください。そうしないとガルドスには勝てません」
「分かりました。では、リミッターを外します。貴方たちも外していいですよ」
少女は瓦礫の方を見てそう言う。すると、その直後、瓦礫が崩れていく。
「それならもっと早く言ってよ」
「そうそう。私たちは逃げれなかったじゃん」
瓦礫の中から双子の少女が出てくる。2人とも普通に喋っているが頭からは血が流れ片目が見えていない。
双子の少女は瓦礫にクロスして刺さっている剣を上に押し上げて瓦礫をどかす。その剣の下、本来なら瓦礫に押し潰されていた場所にはガルドスの近衛が山積みになっていた。
それを1人、1人、雑に放り投げて安全な場所に移す。その衝撃で何人かの近衛が目を覚ました。
「どういうつもりだ?」
目を覚ましたうちの1人が双子の少女を睨みつけてそう聞く。それに対して双子の少女はあっけらかんに答える。
「だって殺すなって言われたから」
「情けのつもりか?ふざけるな!」
本来、主を守るはずの近衛があろうことか敵に命を救われた。その事実に怒りをぶつけると、双子の少女の表情は鋭くなった。
「そういうことは生死を選べるくらい強くなってから言ってよ。弱者は生死を選ぶことすらできない」
その言葉に近衛は何も言い返せない。双子の少女の言葉の重みもあるが、その言葉に込められていた圧に体が竦んで口を開くことすらできなかったのだ。
「余に恥をかかせる者はいらぬ」
ガルドスは瓦礫の中から無傷で出てくると近衛に斬りかかる。その圧に危機感を覚えたのか双子の少女は「《起動》」と唱えた。
そのスキルは双子の少女の雰囲気を大きく変えると表面から感情を消す。その直後、双子の少女は同時に動いた。
剣の軌道から見て近衛に当たるのは間違いなく、止めることも躱すこともできないのは一目瞭然だ。それでも双子の少女は何も気にしていないように攻撃を引きつけて剣が止められない軌道に乗るのを待つ。
剣が止まらない場所まで進むと双子の少女はガルドスを軸に鏡合わせで左右に展開すると、一気にガルドスの首に目掛けて刺突する。
「《強靭》」
ガルドスがそう唱えると双子の少女の剣はつつくように肉を押すが刺さりも貫通もしない。それは外側をゴムで覆い内側に鋼鉄が入っているような感じで一定以上深くまでは届かなかった。
ガルドスが双子の少女を躱しもせずに対応したため、剣はそのまま振り抜かれ山積みになっている近衛を一刀両断にした。その山から噴火するように血が飛び散り、ガルドスと双子の少女の全員を赤く染める。
ガルドスはそれで双子の少女が動揺するとでも思ったのだろうが、逆に双子の少女の動きはキレを増した。
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「煩わしい」
そうガルドスが剣で払うと双子の少女は横にステップして躱す。そのステップを利用して片足のスプリットステップのように勢いをつけて左右から高さを変えた膝蹴りでガルドスの首を折ろうとする。
高さの違う膝蹴りはガルドスの首を曲げ折ったかのように思われた。
そこに双子の少女が追撃を仕掛けようとすると、双子の少女の体は大きく吹っ飛んだ。
「調子に乗り過ぎだ」
どうやらガルドスの横薙ぎで吹っ飛ばされたようだ。この場にいる誰もが見えていなかったが、ガルドスの剣は振り抜いた後のように右肩の後ろにあった。
「「ゴハッ、オエェッ!」」
吹っ飛ばされた双子の少女は受け身を取り立ち上がると口から血と一緒に嘔吐してしまう。それほどまでに重い一撃だったようだ。
「下がりなさい」
少女が双子の少女の肩を叩いて休ませようとする。だが、双子の少女はその手を振り払い少女の心臓を手刀で貫こうと手を伸ばす。
その姿は大凡、人のものではない。命を奪うようにプログラムされた機械だ。
「始めから私が戦うべきでした」
そう懺悔するように目を瞑ると、少女は双子の少女の手を叩き背後に回ってストンと首を叩く。すると、双子の少女は意識を失い倒れる。それを少女は受け止めて優しく寝かせた。
「申し訳ありません。ララ様とルル様を護衛する者がいなくなりますが、私があの者の相手をしてきます」
「さっきも言ったけど私たちのことは気にしなくていい」
「そうです。思う存分、戦ってきてください」
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