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おまけ もう1つの戦場4
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「それでは会議を再開します」
まるで何事もなかったかのようにララが再開の挨拶をする。その横では闇商人が少女と双子の少女の治療に入っていた。
だが、席には着いたもののガルドスには話し合う気が無いように見える。それは見えるだけでなく言動にも表れた。
「貴様等は余を殺せないのだろう?それなら交渉にならなければ余の意見も変わらぬぞ。余が死ねば貴様等は困るが、余は貴様等が死んでも困らぬ」
そこには明確な立場の差が出ていた。
ガルドスは誰もが知っている帝国の帝王であり、この会議に出席することは周知の事実だろう。そのためこの会議に出席して帰らなければこの会議の内容は表に出せなくなる。
対してララもルルも表では死んだと思われていて、今は亡びたままの王国は勿論のこと皇国もミレーネがさっき亡くなりララが実子であることを証明できる人もいなくなった。
つまりララとルルの生死は表立って何かに影響を及ぼすことはない。
「ゼギウス様たち七英雄の方が人間界の命運を背負って戦っているというのに、貴方は魔物に人間界を渡して何とも思わないのですか?庭が七英雄亡き後の世で人間に権限を与えると思っているのですか?」
話し合う気のないガルドスにララはあくまでも対話を求めるつもりのようだ。その愚直なまでの真っ直ぐさにガルドスも正面からぶつかろうとする。
「貴様等はあの者の力を知らぬからそんな戯言が言えるのだ。余とて人間界を明け渡すのは好かん。だが、ゼギウスはあの者には勝てぬ。それなら勝者の側に着くのは当然のことであろう?」
「小さい。目先の勝利に縋ってその先が見えていない」
「先が見えていないのは貴様等の方だ。希望的観測で信じているのかもしれないが、ゼギウスが強くとも1人ではどうにもならぬ。それを支えるのが七英雄では格が違う。それに庭が余に話を持ち掛けてきたということは人間に利用価値があり、統治者が必要だからだ。先を考えればこそ庭に着くのだ」
ルルの言葉に腹が立ったのか苛立ちを露わにしてガルドスはそう言い返す。だが、ルルも退かない。
「だから小さいと言っている。それは人間が魔物の家畜になるのを容認するということ、家畜になった先に未来はない」
「見えていないのは貴様の方だ。余や貴様等に何ができる?戦局に何らかの影響を及ぼせるのか?及ぼせなかろう。当然だ、戦っている次元が違うのだからな。それならば余は次元の違う者たちからすれば愚かであろうと惨めであろうと帝国の繁栄が少しでも長く続く道を選ぶ。それが帝王としての務めだ」
どこまでも平行線が続く。この先、どれだけ話し合っても互いの意見が交わることはないだろう。背負っているものが違うのだから仕方がない。
そこへララが自分の意見を述べる。
「それも1つの道だとは思います。確かにガルドス様の言うようにこの戦いは私たちが何かできる領域を超えています。ですが、だからこそ私たちのために戦ってくれているゼギウス様たちを信じたいのです」
「青いな。国を背負えば見えるものが変わる。己の決断1つで何百、何千万の命が左右されるのだ。信じる、などという曖昧なものに任せることはできない」
それは長年、帝国という重荷を背負い続けてきた者の為せる重みだろう。ララとルルの内側に重く伸し掛かった。
だが、だからこそララはそれを跳ね除けるように自分の意見をぶつける。
「そうでしょうか?ゼギウス様は今、何百、何千万を超え何億、何十億という命を左右する戦いをしています。その行動の動機はいつか人間と魔物が共存できる世の中ができると信じているからです」
「愚かな。人間と魔物が共存できる訳などなかろう」
「私も皇国に居る頃は漠然とそう思っていました。人は魔物を憎み、魔物は人を憎む。それは当たり前のことで誰にも変えられないことだと。ですが、果たして本当にそうなのでしょうか?私やガルドス様のように帝国や皇国で育った身では魔物と接触するのは辺境の地で実情を知らないのが正直なところではないでしょうか?」
ララはそう問いかけるように言葉を投げかける。
「王国に比べれば余や貴様は魔物のことを知らないだろう。故に己で見た小さな範囲を全体と捉えるのは分からなくもない。特に若い貴様はな。だが、そこに至るまでには歴史があり先人たちが築いてきたものがある。それらを無碍にすることはできない」
「ガルドス様に言わせれば小さい範囲と一蹴されるかもしれません。ですが、ゼギウス様の周りでは人も魔物も対等だったのです。人同士、魔物同士が接するのと同じように人と魔物が接しても温かく憎悪が消えるのです。たとえ、どれだけ小さい範囲であっても、それは共存の可能性でありゼギウス様の思い描く未来が実現可能だという証明だと思います」
「やはり青いな。貴様は夢想家であって国の主導者には相応しくない」
そう指摘されると、それを認めるようにララは頷く。
「はい、ガルドス様の言っていることは正しいと思います。私は皇国を離れて長く実情を知らないのが正直なところです。ですが、何か大きな選択の岐路に立たされた時、世界を変えるのはそういった未来を信じる気持ち、理想を実現しようとする気持ちだと思います。自分の描きたい未来を想像してどう実現するかを模索する。そうやって理想を追い求めなければ発展は止まり衰退の一途を辿ると私は思います」
それはガルドスの言うように所々青く、何よりララの描きたい未来には聞こえない。ゼギウスの操舵する船に乗っているだけの無責任な言葉に聞こえる。
しかし、ガルドスにはララがそのような人間には見えず、その根底が気になっていた。
「ふっ、ふははははははっ。貴様はどこまで真っ直ぐなのだ。貴様とて身内に見捨てられ奴隷に落とされた身であろう。何故、そこまで他者を信じられる?」
これは純粋に疑問に思っているのだろう。今までは真面目に話しながらも他人の意見を聞き入れる気はなかったように見えたが、今はララの意見を聞こうとしている。
「ゼギウス様のことが好きだからです。ゼギウス様は私を助けてくれて再び自由を与えてくれました。その自由は捨てるといった無責任な行動ではなく、出て行くとしても残るとしても支えてくれるという温かいものでした。今だって自分がこれから戦うというのに武器を私たちに残していきました。そんな姿に惹かれたのです。少し面倒くさがりで口が悪く素直じゃないところもありますが、それも含めて全てが愛おしいのです」
ララは目を瞑り胸に手を当てて、どこかで戦っているゼギウスの事を思い浮かべながら思いの丈をぶつけた。すると、さっきから軟化しかけていたガルドスの態度は更に軟化する。
「ふっ、公私を分けられぬ者は国を亡ぼすぞ」
そのガルドスの言葉には自らの教訓のような深みのある感情が乗せられていた。それでもララはここで退いてはいけないと自分の考えを話す。
「分かっています。今のはララとして信じられる理由です。レイネシアとして皇国の未来を任せるのは違う判断基準を設けています。ゼギウス様は七英雄という地位に立ち世界を導く資質を持ち合わせているのは疑いようのないことであり、それは王国のドラル進攻の解決を始め様々な功績からも証明されています。それに他の七英雄の方を近くで見ていた身としては信頼に足り実現可能だと判断しました」
「余には青く聞こえるが、それが若さ、ということなのだろうな。経験を積み、歳を取ると保守的な思考になるというのは本当のようだな。まだ若いと思っていたが余とて例外ではないということか。勉強になったぞ」
その言葉にララとルルは思わず苦笑いをしてしまう。それは帝王として王国、皇国を手中に収めようと野心に燃えていたガルドスに保守という言葉が似合わなかったからだ。
「貴様は貴様の思う道を進めばよい。余は余の思う道を進む。それが交わることもあるかもしれないが、少なくとも今の貴様の言葉に帝国の未来を託す気にはなれぬな」
「そうですか…それは残念です…」
これで会議は終わりとばかりにガルドスが席を立とうとすると、闇商人がララとルルの元に来て耳打ちをする。
「ララ様、ルル様、魔物の群れが人間界に向けて進攻を始めました。その数、数千万はくだらないかと」
まるで何事もなかったかのようにララが再開の挨拶をする。その横では闇商人が少女と双子の少女の治療に入っていた。
だが、席には着いたもののガルドスには話し合う気が無いように見える。それは見えるだけでなく言動にも表れた。
「貴様等は余を殺せないのだろう?それなら交渉にならなければ余の意見も変わらぬぞ。余が死ねば貴様等は困るが、余は貴様等が死んでも困らぬ」
そこには明確な立場の差が出ていた。
ガルドスは誰もが知っている帝国の帝王であり、この会議に出席することは周知の事実だろう。そのためこの会議に出席して帰らなければこの会議の内容は表に出せなくなる。
対してララもルルも表では死んだと思われていて、今は亡びたままの王国は勿論のこと皇国もミレーネがさっき亡くなりララが実子であることを証明できる人もいなくなった。
つまりララとルルの生死は表立って何かに影響を及ぼすことはない。
「ゼギウス様たち七英雄の方が人間界の命運を背負って戦っているというのに、貴方は魔物に人間界を渡して何とも思わないのですか?庭が七英雄亡き後の世で人間に権限を与えると思っているのですか?」
話し合う気のないガルドスにララはあくまでも対話を求めるつもりのようだ。その愚直なまでの真っ直ぐさにガルドスも正面からぶつかろうとする。
「貴様等はあの者の力を知らぬからそんな戯言が言えるのだ。余とて人間界を明け渡すのは好かん。だが、ゼギウスはあの者には勝てぬ。それなら勝者の側に着くのは当然のことであろう?」
「小さい。目先の勝利に縋ってその先が見えていない」
「先が見えていないのは貴様等の方だ。希望的観測で信じているのかもしれないが、ゼギウスが強くとも1人ではどうにもならぬ。それを支えるのが七英雄では格が違う。それに庭が余に話を持ち掛けてきたということは人間に利用価値があり、統治者が必要だからだ。先を考えればこそ庭に着くのだ」
ルルの言葉に腹が立ったのか苛立ちを露わにしてガルドスはそう言い返す。だが、ルルも退かない。
「だから小さいと言っている。それは人間が魔物の家畜になるのを容認するということ、家畜になった先に未来はない」
「見えていないのは貴様の方だ。余や貴様等に何ができる?戦局に何らかの影響を及ぼせるのか?及ぼせなかろう。当然だ、戦っている次元が違うのだからな。それならば余は次元の違う者たちからすれば愚かであろうと惨めであろうと帝国の繁栄が少しでも長く続く道を選ぶ。それが帝王としての務めだ」
どこまでも平行線が続く。この先、どれだけ話し合っても互いの意見が交わることはないだろう。背負っているものが違うのだから仕方がない。
そこへララが自分の意見を述べる。
「それも1つの道だとは思います。確かにガルドス様の言うようにこの戦いは私たちが何かできる領域を超えています。ですが、だからこそ私たちのために戦ってくれているゼギウス様たちを信じたいのです」
「青いな。国を背負えば見えるものが変わる。己の決断1つで何百、何千万の命が左右されるのだ。信じる、などという曖昧なものに任せることはできない」
それは長年、帝国という重荷を背負い続けてきた者の為せる重みだろう。ララとルルの内側に重く伸し掛かった。
だが、だからこそララはそれを跳ね除けるように自分の意見をぶつける。
「そうでしょうか?ゼギウス様は今、何百、何千万を超え何億、何十億という命を左右する戦いをしています。その行動の動機はいつか人間と魔物が共存できる世の中ができると信じているからです」
「愚かな。人間と魔物が共存できる訳などなかろう」
「私も皇国に居る頃は漠然とそう思っていました。人は魔物を憎み、魔物は人を憎む。それは当たり前のことで誰にも変えられないことだと。ですが、果たして本当にそうなのでしょうか?私やガルドス様のように帝国や皇国で育った身では魔物と接触するのは辺境の地で実情を知らないのが正直なところではないでしょうか?」
ララはそう問いかけるように言葉を投げかける。
「王国に比べれば余や貴様は魔物のことを知らないだろう。故に己で見た小さな範囲を全体と捉えるのは分からなくもない。特に若い貴様はな。だが、そこに至るまでには歴史があり先人たちが築いてきたものがある。それらを無碍にすることはできない」
「ガルドス様に言わせれば小さい範囲と一蹴されるかもしれません。ですが、ゼギウス様の周りでは人も魔物も対等だったのです。人同士、魔物同士が接するのと同じように人と魔物が接しても温かく憎悪が消えるのです。たとえ、どれだけ小さい範囲であっても、それは共存の可能性でありゼギウス様の思い描く未来が実現可能だという証明だと思います」
「やはり青いな。貴様は夢想家であって国の主導者には相応しくない」
そう指摘されると、それを認めるようにララは頷く。
「はい、ガルドス様の言っていることは正しいと思います。私は皇国を離れて長く実情を知らないのが正直なところです。ですが、何か大きな選択の岐路に立たされた時、世界を変えるのはそういった未来を信じる気持ち、理想を実現しようとする気持ちだと思います。自分の描きたい未来を想像してどう実現するかを模索する。そうやって理想を追い求めなければ発展は止まり衰退の一途を辿ると私は思います」
それはガルドスの言うように所々青く、何よりララの描きたい未来には聞こえない。ゼギウスの操舵する船に乗っているだけの無責任な言葉に聞こえる。
しかし、ガルドスにはララがそのような人間には見えず、その根底が気になっていた。
「ふっ、ふははははははっ。貴様はどこまで真っ直ぐなのだ。貴様とて身内に見捨てられ奴隷に落とされた身であろう。何故、そこまで他者を信じられる?」
これは純粋に疑問に思っているのだろう。今までは真面目に話しながらも他人の意見を聞き入れる気はなかったように見えたが、今はララの意見を聞こうとしている。
「ゼギウス様のことが好きだからです。ゼギウス様は私を助けてくれて再び自由を与えてくれました。その自由は捨てるといった無責任な行動ではなく、出て行くとしても残るとしても支えてくれるという温かいものでした。今だって自分がこれから戦うというのに武器を私たちに残していきました。そんな姿に惹かれたのです。少し面倒くさがりで口が悪く素直じゃないところもありますが、それも含めて全てが愛おしいのです」
ララは目を瞑り胸に手を当てて、どこかで戦っているゼギウスの事を思い浮かべながら思いの丈をぶつけた。すると、さっきから軟化しかけていたガルドスの態度は更に軟化する。
「ふっ、公私を分けられぬ者は国を亡ぼすぞ」
そのガルドスの言葉には自らの教訓のような深みのある感情が乗せられていた。それでもララはここで退いてはいけないと自分の考えを話す。
「分かっています。今のはララとして信じられる理由です。レイネシアとして皇国の未来を任せるのは違う判断基準を設けています。ゼギウス様は七英雄という地位に立ち世界を導く資質を持ち合わせているのは疑いようのないことであり、それは王国のドラル進攻の解決を始め様々な功績からも証明されています。それに他の七英雄の方を近くで見ていた身としては信頼に足り実現可能だと判断しました」
「余には青く聞こえるが、それが若さ、ということなのだろうな。経験を積み、歳を取ると保守的な思考になるというのは本当のようだな。まだ若いと思っていたが余とて例外ではないということか。勉強になったぞ」
その言葉にララとルルは思わず苦笑いをしてしまう。それは帝王として王国、皇国を手中に収めようと野心に燃えていたガルドスに保守という言葉が似合わなかったからだ。
「貴様は貴様の思う道を進めばよい。余は余の思う道を進む。それが交わることもあるかもしれないが、少なくとも今の貴様の言葉に帝国の未来を託す気にはなれぬな」
「そうですか…それは残念です…」
これで会議は終わりとばかりにガルドスが席を立とうとすると、闇商人がララとルルの元に来て耳打ちをする。
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