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おまけ 後処理6
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「私はそのような話は聞いていないが、どういうことか説明してもらおうか?」
ベネッタは男性たちに剣を向けてそう訊ねる。
「まさか、帝国の戯言に耳を貸す訳ではないだろうな」
「ベネッタ様が皇国に矛を向けてどうするのだ!」
そう男性たちはベネッタからの追及を逃れようとするが、ベネッタはその程度で止めるほど甘くはない。
「それは今から判断する。私は帝国から解放する皇国民やこの戦いで傷ついた民、復興に充てるために金銭の要求はするべきだと提案した。だが、貴様等は今、帝国の力を削ぐことは回りまわって皇国の首を絞めることになると答えたな?だから皇国方面への軍の配備を禁止することで手を打とうと、そう聞いていたが違うのか?」
「それが事実だ!ベネッタ様にそう答えた私たちが帝国に金銭の要求をするはずがないだろう!明らかに矛盾している!」
男性は必死に訴えるが、ベネッタの目は緩くならない。それどころか鋭さが増していた。
「だからそれを確かめているのだろう。もし今の話が事実であるならば皇国の信用に関わる由々しき事態だ。それを当人の言葉だけで判断することはできない」
それはララの言葉だけでは信用せず天秤に掛け直したベネッタだからこそ説得力があった。そこに強い言葉だけでは説得できないと理解したのか男性の片方は深呼吸をする。
「逆に問うが、帝国がこの機に乗じて私たちを失墜させようとしているとは思わないのか?」
「その可能性もあるだろう。だが、昨日の会議やここまでの態度を見るにそんな悪足掻きをするようには見えなかった」
「それがこのための策だというのが分からないのか!」
もう片方の男性は自分たちの言葉が全く信用されないことに苛立っているのか相変わらず声を荒げることしかできない。
しかし、それは余計にベネッタの疑念を強めるだけだ。それでも同じ皇国代表、そんな汚い手に染めているとは思いたくないのだろう。信じたいが故に疑う余地が残らないほど厳しい目を向けているように見えた。
「それも考えられる1つではあるが、皇国の代表を増やしたのは皇国の都合だ。失墜させる意思があったとしても元より皇国側の代表が増えることが分かっていなければできないだろう」
「その思考は七英雄や帝国の側に寄り過ぎていないか?ベネッタ様は皇国の代表として信じていいのだろうな?」
「皇国の代表だからこそだ。より問題が大きい方に重点を置いて考えるのは当然のことだろう。事実無根であれば全てを退けられる」
その言葉にはベネッタの皇国に対する信頼と自らの正義感が滲み出ていた。
そこまで真っ直ぐな正義感を見せられれば仮に疚しいことがなかったとしても言い淀んでしまうだろう。事実として男性たちは言葉が詰まっていた。
そのまま男性たちが追い込まれていくのかと思っていると、意外にもゼギウスが口を挟む。
「深く追求しようとしてるとこ悪いが、皇国の問題は皇国で解決してくれ」
状況がゼギウスたちの方へ傾こうとしている時の発言なだけにベネッタは怪訝な表情を浮かべる。
「これはこの会議にも深く関わる内容だ。それにゼギウス様等、七英雄に掛けられた不名誉な嫌疑を晴らすことができるのだぞ。止めるには相応の理由が必要になると思うのだが?」
「それは理解してるが、魔界の状況が芳しくねぇ。元から2体で魔界全域を押さえるっていうのも無理があったんだが、ここにきて片方に限界がきた。もうすぐ魔物の群れが旧王国と帝国方面から攻めてくる」
その言葉にメルダが真っ先に反応する。
「規模はどのくらいなのでしょうか?」
「正確には分からねぇが、それぞれ数百万ってとこだろうな」
ゼギウスは簡単に答えるが、それは絶望的な数字だった。
ガルドスを失って新体制を築けていない今の帝国軍はもてる力を全て発揮できるとはお世辞にも言い難い。今の帝国軍は同数の魔物を相手にするのも厳しいだろう。
それは数十万程度しか相手にできないことを意味していた。
「そのような数、今の帝国では止められません。ゼギウス様、どうかお願いします。帝国民をお救いください」
立場も身分も気にせずメルダは椅子から立ち上がると地に膝と手、頭をついて懇願する。
「分かってる。メルダは帝国に戻り防衛線構築をしろ。皇国側もすぐに防衛線を構築した方がいい」
「では、誰が止めるのだ?」
誰も最前線に立つ指示が出されていないことにベネッタが疑問を呈すると、ゼギウスは当たり前のように答える。
「そりゃ、俺たち七英雄と昨日居た魔物の2体だ。エストはメルダの護衛、腐れは皇国代表の護衛も兼ねてララとルルを皇国に避難させろ」
そう指示を出すとゼギウスは有無を言わさず飛び出していき、メナドールがそれについて行った。
取り残された人たちに動揺の色が浮かぶ中、最初に動いたのはエストだった。
「申し訳ありませんが、事態は急を要するので少し手荒に運ばせていただきます」
エストは土下座しているメルダを抱えると最短距離で帝国領へと向かっていく。それを見て残された闇商とララ、ルル、それと皇国代表も動こうとする。
「魔導馬車がありますのでこちらにどうぞ」
そう闇商人が手を向けて魔導馬車のある方に向かおうとするが、男性たちは動こうとしない。
「これは七英雄による策略だ!」
「そうやって我々を暗殺するつもりだろう!」
ここから動かないという意思表示か男性たちは腕を組み深く座り直す。それを見て闇商人は2人を見捨てる。
「ベネッタ様、貴方だけでも皇国領まで送り届けますのでこちらに」
「すまないな」
ベネッタも説得する時間も惜しいと判断したのか闇商人について行く。だが、ララとルルが立ち止まった。
「役には立てないかもしれませんが、私とルルでここに残りこの方々を護衛します」
「……分かりました。では、お任せします。が、くれぐれも危険が生じたら逃げてください。私がゼギウス様に怒られます」
闇商人は意思の硬い2人の説得を諦めてベネッタだけを連れて行こうとする。それだけ事態は急を要すると判断したのだろう。ゼギウスがアルメシアとナナシも使って迎撃すると言った時点で皇国方面にも時間差で魔物の群れが押し寄せるのは間違いなく、その時間は限りなく短い。
だが、その意図を汲み取れていないようにベネッタも立ち止まり振り返るとララの元に歩み寄る。
「レイネシア様、皇国代表の立場ともあろう者がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。頼りないとは思いますがこの剣をお使いください」
そうベネッタは帯刀している剣を鞘のついたベルトごと外すと片膝をついてララに献上する。
「そんな、受け取れません」
「いえ、これは私のための行動です。私は皇国に戻り軍の指揮を執らなければなりません。ですから私にできる限りのことをしておかないと万が一の時に私が私を許せなくなります」
そんな言い方をされたらララの返答は決まっていた。
「そういうことでしたら分かりました。皇国民のことお願いします」
ララはベネッタの差し出す剣を受け取ると無意識に肩へ手を置く。ベネッタは目を瞑って有難く受け取っていた。
それは王の拝命を受け出陣する騎士団長の無事を祈っているようで、ララとベネッタだけ別空間に居るほど神々しかった。
「行ってまいります」
ララが手を除けるとベネッタは立ち上がる。そのまま闇商人について行くかと思われたが、男性たちの方に目を向けた。
「もし貴様等のせいでレイネシア様に何かあった場合は容赦なく斬り捨てる」
そう言い残すとベネッタは今度こそ闇商について行った。
ベネッタは男性たちに剣を向けてそう訊ねる。
「まさか、帝国の戯言に耳を貸す訳ではないだろうな」
「ベネッタ様が皇国に矛を向けてどうするのだ!」
そう男性たちはベネッタからの追及を逃れようとするが、ベネッタはその程度で止めるほど甘くはない。
「それは今から判断する。私は帝国から解放する皇国民やこの戦いで傷ついた民、復興に充てるために金銭の要求はするべきだと提案した。だが、貴様等は今、帝国の力を削ぐことは回りまわって皇国の首を絞めることになると答えたな?だから皇国方面への軍の配備を禁止することで手を打とうと、そう聞いていたが違うのか?」
「それが事実だ!ベネッタ様にそう答えた私たちが帝国に金銭の要求をするはずがないだろう!明らかに矛盾している!」
男性は必死に訴えるが、ベネッタの目は緩くならない。それどころか鋭さが増していた。
「だからそれを確かめているのだろう。もし今の話が事実であるならば皇国の信用に関わる由々しき事態だ。それを当人の言葉だけで判断することはできない」
それはララの言葉だけでは信用せず天秤に掛け直したベネッタだからこそ説得力があった。そこに強い言葉だけでは説得できないと理解したのか男性の片方は深呼吸をする。
「逆に問うが、帝国がこの機に乗じて私たちを失墜させようとしているとは思わないのか?」
「その可能性もあるだろう。だが、昨日の会議やここまでの態度を見るにそんな悪足掻きをするようには見えなかった」
「それがこのための策だというのが分からないのか!」
もう片方の男性は自分たちの言葉が全く信用されないことに苛立っているのか相変わらず声を荒げることしかできない。
しかし、それは余計にベネッタの疑念を強めるだけだ。それでも同じ皇国代表、そんな汚い手に染めているとは思いたくないのだろう。信じたいが故に疑う余地が残らないほど厳しい目を向けているように見えた。
「それも考えられる1つではあるが、皇国の代表を増やしたのは皇国の都合だ。失墜させる意思があったとしても元より皇国側の代表が増えることが分かっていなければできないだろう」
「その思考は七英雄や帝国の側に寄り過ぎていないか?ベネッタ様は皇国の代表として信じていいのだろうな?」
「皇国の代表だからこそだ。より問題が大きい方に重点を置いて考えるのは当然のことだろう。事実無根であれば全てを退けられる」
その言葉にはベネッタの皇国に対する信頼と自らの正義感が滲み出ていた。
そこまで真っ直ぐな正義感を見せられれば仮に疚しいことがなかったとしても言い淀んでしまうだろう。事実として男性たちは言葉が詰まっていた。
そのまま男性たちが追い込まれていくのかと思っていると、意外にもゼギウスが口を挟む。
「深く追求しようとしてるとこ悪いが、皇国の問題は皇国で解決してくれ」
状況がゼギウスたちの方へ傾こうとしている時の発言なだけにベネッタは怪訝な表情を浮かべる。
「これはこの会議にも深く関わる内容だ。それにゼギウス様等、七英雄に掛けられた不名誉な嫌疑を晴らすことができるのだぞ。止めるには相応の理由が必要になると思うのだが?」
「それは理解してるが、魔界の状況が芳しくねぇ。元から2体で魔界全域を押さえるっていうのも無理があったんだが、ここにきて片方に限界がきた。もうすぐ魔物の群れが旧王国と帝国方面から攻めてくる」
その言葉にメルダが真っ先に反応する。
「規模はどのくらいなのでしょうか?」
「正確には分からねぇが、それぞれ数百万ってとこだろうな」
ゼギウスは簡単に答えるが、それは絶望的な数字だった。
ガルドスを失って新体制を築けていない今の帝国軍はもてる力を全て発揮できるとはお世辞にも言い難い。今の帝国軍は同数の魔物を相手にするのも厳しいだろう。
それは数十万程度しか相手にできないことを意味していた。
「そのような数、今の帝国では止められません。ゼギウス様、どうかお願いします。帝国民をお救いください」
立場も身分も気にせずメルダは椅子から立ち上がると地に膝と手、頭をついて懇願する。
「分かってる。メルダは帝国に戻り防衛線構築をしろ。皇国側もすぐに防衛線を構築した方がいい」
「では、誰が止めるのだ?」
誰も最前線に立つ指示が出されていないことにベネッタが疑問を呈すると、ゼギウスは当たり前のように答える。
「そりゃ、俺たち七英雄と昨日居た魔物の2体だ。エストはメルダの護衛、腐れは皇国代表の護衛も兼ねてララとルルを皇国に避難させろ」
そう指示を出すとゼギウスは有無を言わさず飛び出していき、メナドールがそれについて行った。
取り残された人たちに動揺の色が浮かぶ中、最初に動いたのはエストだった。
「申し訳ありませんが、事態は急を要するので少し手荒に運ばせていただきます」
エストは土下座しているメルダを抱えると最短距離で帝国領へと向かっていく。それを見て残された闇商とララ、ルル、それと皇国代表も動こうとする。
「魔導馬車がありますのでこちらにどうぞ」
そう闇商人が手を向けて魔導馬車のある方に向かおうとするが、男性たちは動こうとしない。
「これは七英雄による策略だ!」
「そうやって我々を暗殺するつもりだろう!」
ここから動かないという意思表示か男性たちは腕を組み深く座り直す。それを見て闇商人は2人を見捨てる。
「ベネッタ様、貴方だけでも皇国領まで送り届けますのでこちらに」
「すまないな」
ベネッタも説得する時間も惜しいと判断したのか闇商人について行く。だが、ララとルルが立ち止まった。
「役には立てないかもしれませんが、私とルルでここに残りこの方々を護衛します」
「……分かりました。では、お任せします。が、くれぐれも危険が生じたら逃げてください。私がゼギウス様に怒られます」
闇商人は意思の硬い2人の説得を諦めてベネッタだけを連れて行こうとする。それだけ事態は急を要すると判断したのだろう。ゼギウスがアルメシアとナナシも使って迎撃すると言った時点で皇国方面にも時間差で魔物の群れが押し寄せるのは間違いなく、その時間は限りなく短い。
だが、その意図を汲み取れていないようにベネッタも立ち止まり振り返るとララの元に歩み寄る。
「レイネシア様、皇国代表の立場ともあろう者がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。頼りないとは思いますがこの剣をお使いください」
そうベネッタは帯刀している剣を鞘のついたベルトごと外すと片膝をついてララに献上する。
「そんな、受け取れません」
「いえ、これは私のための行動です。私は皇国に戻り軍の指揮を執らなければなりません。ですから私にできる限りのことをしておかないと万が一の時に私が私を許せなくなります」
そんな言い方をされたらララの返答は決まっていた。
「そういうことでしたら分かりました。皇国民のことお願いします」
ララはベネッタの差し出す剣を受け取ると無意識に肩へ手を置く。ベネッタは目を瞑って有難く受け取っていた。
それは王の拝命を受け出陣する騎士団長の無事を祈っているようで、ララとベネッタだけ別空間に居るほど神々しかった。
「行ってまいります」
ララが手を除けるとベネッタは立ち上がる。そのまま闇商人について行くかと思われたが、男性たちの方に目を向けた。
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