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第十三章 好きこそものの上手なれ

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私の真正面にはレジナスさん、後ろにはリオン様。

私の心情としては前門の虎、後門の狼とでも言えば
いいのだろうか。

どちらかというと前に座るレジナスさんが狼イメージ
で、勇者様の血を引いてグノーデルさんの加護も薄く
持つ後ろにいるリオン様の方が虎だけど。

そんなどうでもいいことを考えたくなるくらい
今の私は二人にぎゅうぎゅうに挟まれて恥ずかしい
思いをしていた。

正面でレジナスさんに見つめられて顔中に口付けの
雨を降らされたと思ったら段々とそれは首筋へと
降りていく。

その感触に首をすくめれば、今度は後ろからリオン様
がそっと私の顎に手を添えて

「ユーリ、こっちを向いて」

そう言って顔を横に向けて口付けられる。

「この大きな姿で恥ずかしがってるユーリは本当に
可愛いね。美人で色気があるのにかわいいって一体
どういうことなんだろう。」

不思議だなあと言いながらリオン様はまた口付けて
くる。

その間にも、レジナスさんの軽い口付けは首筋を
伝って更にその下の鎖骨にまで降りていた。

はっ、恥ずかしい・・・!

後ろから顔を傾けられながらリオン様に唇へと深い
口付けを受けて、前ではレジナスさんが私の鎖骨に
少し強く吸い付いている。

顔が熱い。きゅっと強くつぶった目尻から滲むのは
生理的な涙なのか恥ずかしさで出た涙なのかよく
分からない。

そんな涙にすら口付けたリオン様は

「たまらないね。見てレジナス、泣いているユーリが
すごく可愛い。もっと泣かせたくなるよ。」

久しぶりのSっ気まで出してきた。やめて。

そんなリオン様に、レジナスさんは私の鎖骨の辺り
からほんの少しだけ顔を上げると上目遣いで私の目を
見つめてきて、

「上気した頬だけでなく、いつもは白い肩や胸元まで
淡い薔薇色に染まっていますよ。この白い肌の一体
どこまでがその色に染まっているのか気になります。
それに、潤んだ瞳の中で金色が滲んで輝いているのを
見ましたか?とても綺麗です。」

そんな事を言ってまた首筋に唇を寄せた。

リオン様は私に後ろから手を回して抱き締めていた
けど、そのままほうとため息をつく。

「酔っているユーリもそれはそれで綺麗で色っぽい
けど、やっぱり普段のこのちょっと恥ずかしそうな
ユーリの方が落ち着くね。反応を見るのが楽しい。」

そう言いながら髪を優しく横に流すと今度はうなじに
口付けてきた。

「んっ・・・⁉︎」

ピリッとしたわずかな刺激に声が漏れると、

「ごめんね、びっくりさせた?」

そんな事を言いながらリオン様はうなじに口付ける
のを止めず、またそこに刺激が走る。

いや、ごめんって言ったのに止めないとか何。

段々ぼうっとして来ながら何をされてるんだ、と
思っていたら胸元にも同じような刺激が走った。

「ふゃっ⁉︎」

気の抜けたような間の抜けた声が出てそのまま
胸元を見下ろせば、鎖骨の下・・・胸の谷間がある
辺りへレジナスさんが赤い跡を付けている。

てことは、私の後ろにいるリオン様もこれを付けた
のかぁ!と更に顔が熱を持った。

「・・・次にシグウェルに会いに行く時までこの跡が
残っていてくれればいいんですが。」

ぽつりと呟いて、レジナスさんは私の胸元のその
赤い跡にそっと口付けた。

「ユーリ、耳まで赤くなってるよ。僕達の気持ちを
ちゃんと受け止めて感じてくれてるのかな?そうなら
嬉しいんだけど。」

ふふ、と耳元でリオン様の密やかな笑い声が囁く。

「ユーリ、こっちにも顔を向けてくれ」

胸元から顔を上げたレジナスさんがもう一度私の
唇に深く口付ける。その間にリオン様は囁いた私の
耳たぶを甘く噛んだ。

そして今度はこっちだよ、とまたリオン様の方へ顔を
向けられて優しく口付けられる。

前から後ろから、二人に交互に口付けをされ、
囁かれる言葉にも翻弄されてしまっている私はもう
いっぱいいっぱいだ。

これ、どう考えても絶対に甘えるとかいうレベル
じゃないと思うんですけど!

ていうか、まさかこのままこの先までなし崩しに
なだれ込むとかないよね⁉︎

一瞬恐ろしい考えが頭をかすめた。

今のこの二人はどちらもお互いのストッパー役に
なっていない。むしろ互いに煽りあっている気が
する。

・・・いや、ムリだから!

リオン様達なんて、一人ずつ相手にしても大変そう
なのにいきなり二人一緒にとか。

それともこれが複数伴侶を持つ人にとっては当たり前
なの⁉︎

こんなの、やっと泳ぎ方を覚えたばかりの子供に
トライアスロンレースをしろとでも言うような
ハードさだ。

「「本当に、かわいい・・・」」

どちらともなくため息をつくようにそう言った二人の
熱のこもった声が重なる。

気付けばレジナスさんの大きな手は、その指先が膝の
上に乗っている私のドレスの内側にそっと忍び込み
太ももを直に優しく撫でていた。

お腹に回して後ろから抱き締めていたはずのリオン様
の手も、いつの間にか服の上から私の胸を包み込む
ように柔らかく触れている。その手がドレスの内側に
入り込んで直に触られるのも時間の問題だ。

無理、まだ早いから!そりゃいつかはそういう事に
なるかも、と私も思ってはいたよ?でもそれは今じゃ
ないんじゃないかな⁉︎しかもそれが二人がかりとか‼︎

心臓がばくばく激しく脈打つ。

頭に血が昇るように顔が真っ赤になって体が熱く
なった。今すぐ逃げ出したい。

「まっ・・・待ってください、ほんと・・・!」

心の準備が、と言いたかったけどまたリオン様に
口付けられて言葉にならなかった。

「僕達はユーリに甘えさせてもらっているだけだよ。
そんなに恥ずかしがらなくても。・・・ああ、でも
そういうところもかわいいんだけどね。」

そんな事を言われても。限界だ、これ以上は身も心も
もたない。

そもそもこの姿でいるからリオン様達を変に誘惑して
しまっているようなものなのかな⁉︎

だったらいっそのことあの小さい少女姿に戻った方が
いい。

そう思ってぎゅっと強く目をつぶった瞬間、脈打って
熱くなっていた体がより熱くなり、瞼の裏に白い光が
溢れた。

「えっ」

「ユーリ⁉︎」

リオン様とレジナスさんの驚いたような声が
聞こえた。

強く輝く光は一瞬でおさまり、目を開けると私の
目の前には呆気に取られたようなレジナスさんの
顔がある。

さっきまでと視点が違う。戻った・・・?という
リオン様の
呟きも私の後ろから聞こえた。

そう、私の姿はいつものあの少女姿に戻っていた。

二人に交互に口付けられたり撫でられたりと、
やりたい放題されたおかげでぜえはあと呼吸がまだ
整わない。

大人サイズのレジナスさんの瞳の色のドレスは
かろうじて脱げてはいないもののブカブカだ。

さっきまでそのドレスの肩口をずらされるように
して首筋だのうなじだの、鎖骨はおろか今はすっかり
消え去った胸の谷間にまで口付けられていたから
ドレスが肩からずり落ちそうになってしまい、慌てて
それを引き上げる。

その様子に、やっと我に返ったのかレジナスさんが
ハッとして私のドレスの内側に入り込んだままだった
手をどけて膝から降ろすとソファに座らせてくれた。

遅いよ!そして二人とも好き放題にやり過ぎだよ‼︎

恥ずかしさと腹立たしさが一緒になった赤い顔で
プルプル震えながら私の前後の二人をキッ、と睨む。

「いい加減にして下さい!恥ずかし過ぎて死にそう
でしたよ⁉︎」

そんな私を二人はじっと見下ろして見つめていたと
思ったら、なぜか急に赤面した。

なんで二人がこのタイミングで赤くなる必要が?
さっきまで真っ赤になっていた私に構わず散々
あれこれしてきたくせに。

解せない。頬を膨らませて

「何ですかリオン様、その態度は⁉︎」

後ろのリオン様に詰め寄れば、リオン様は赤面した
顔を隠すように片手を自分の口元に当てながら
私から目を逸らし、

「いや、ごめん・・・そのサイズのユーリに口付けの
跡が残っているとなんだかすごくいけないことを
してしまったようないやらしさがあって・・・」

目を伏せて頬を赤く染めたままそう言った。

その言葉にレジナスさんも赤面したまま同意して
いる。

そしてリオン様は、髪が乱れて頬が上気しているのも
ちょっとね・・・事後っぽいっていうか・・・と
私と視線を合わせないまま髪の毛を撫でて整えて
きた。

事後⁉︎なんてことを言うのか。そもそも一体誰のせい
で私がこんな事になったのか分かってるのかな⁉︎

「いっ、いやらしいことをしたんですよ!
自覚があるなら二人とも反省して下さいっ‼︎」

今日一番の大声を出した私はそのまま自分の体を
強く光らせて回復魔法を使った。









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