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しおりを挟む落ち着け 落ち着け 焦るな、一旦落ち着こう。
私は、神木冬華28才、OL。
容姿端麗……と言いたいところだけど、地味といえば地味。スタイルは……身長167cm、自分で言うのも何だけどモデル体型なので、大きめな胸が少し目立ってしまう。
会社ではオフィスカジュアルOKだけど、いつも無難に白っぽいシフォンのブラウスに黒いスカートを合わせている。体型のお陰かシンプルでもそれっぽく見えるので有り難い。
アクセサリーはイヤーカフとシンプルな1粒ダイヤのネックレス、あとは小さめな腕時計をしている。
髪はストレートの黒髪で、子供の頃から2回ヘアドネーションをした事がある。
今は腰の辺りまで伸ばしていて、いつも適当にまとめ上げてヘアークリップで留めている。
3回目のヘアドネーションのために伸ばしているので、そろそろバッサリ切ろうかと考えているところ。
顔は……体型と年齢の割に少し童顔かなと思うけど、化粧次第で多少のバランスはとれるし不満はない。
性格は、よく落ち着いていると言われるけれど、そう見える時程心の中はパニックになっていることが多い。
まぁ……基本的にポジティブだと思う。
兄弟は、シスコン気味な5才年下の可愛い双子の弟がいて、私も少しブラコン気味だったりする。
両親は健在で、私と弟達がそれぞれ自立して実家を出てからは、新婚時代に戻ったようだと仲良く2人で暮らしている。
家族仲は良く週末には全員揃ったりすることもある。
私の恋愛方面の話に触れると……4年前に別れてから今まで縁がない……
仕事楽しいし……正確には楽しくなってきたところだった。
やっと就職できた会社で働けるのが嬉しくて、しがみつくのにも必死で、当時の彼氏と別れた原因にもなったけれど、後悔はしていない。
徐々に仕事を覚えていくと周りに認められて、この会社の一員になれたような居心地の良さを手に入れた。
ようやく少し余裕ができて、自分頑張ってきたな―――! って思えてきたところだったのに! なんで!!
…………ふぅ…………
落ち着きを取り戻そうとしていたのに取り乱してしまった。
頭の方は問題なさそう。全部覚えている。
こんな状況になる前、少し残業をして家路についていた。
最寄り駅からマンションまでは徒歩10分ほどで、途中野良ネコスポットが何ヵ所かある。
私はネコが好き。動物全般好きだが特にネコが好きだ。
そんなネコ好きな私にとって、徒歩10分の間に確実にネコに会えるスポットがあるこの道も大好きだ。
ところが今日はなぜか1匹も居なくて、ションボリとマンションに向かって歩いていたら、突然周りが真っ暗なことに気が付いた。本当に真っ暗で、おまけに何も聞こえない。
一体何が起きたのかわからずパニックを起こしかけて今に至る。
家族の事を考えたのが良かったのか少し落ち着いた気がする。
一体いつまでこの状態なのか。足が地面に着いているのかいないのかもわからないこの感覚……ひょっとして気が付かないうちに死んでしまったとか?
体は動かすことができるので、とりあえず靴を脱ぐ。
1日の終わりだし。
というか人生が終わっているかもしれない。
寛がせてほしい。
これだけ暗くて静かだと、仕事終わりだから眠ってしまいそうになる。
見えていないだけで何かいるかもしれない……そう思うと動き回ったりも出来ない。
脱いだ靴は鞄にしまっておこう。
アクセサリーと腕時計もしまっておこう。
そして鞄は肩に斜め掛けしておく。
寝てる間にどうにかなっていたら大変なので。
働き始めて仕事も彼氏とのことも上手くいかなくなった時期に、現実逃避で漫画本をよく読み漁っていて異世界モノは特に好きなジャンルだった。
漫画本だけではなく原作の小説も読むほどハマっていた。
だから、ひょっとして…………? と思った。
魔法の世界行ってみたい!獣人の耳とかしっぽ撫でくりまわしたい!
でも、たくさん読んだ異世界モノの中で、始まりが真っ暗で放置って……あったかな……?
真っ白い部屋とか空間に神様とか、スキルとか、もしくは神殿とか森の中とかそして……チートとか……
せめてスタートは明るくして欲しい…………
応援ありがとうございます!
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