異世界転移の……説明なし!

サイカ

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 何だかみぞおちの辺りが苦しくて目が覚める……目を開けるとティナ様はもういなかった。寂しいなぁ……


お腹の上で三毛猫さんが寝ている。

私の目が覚めた事に気が付いて三毛猫さんがこちらを向いてニャ――と鳴く。

「ニャ――」

私も真似して鳴いてみる。

三毛猫さんが興味を持ったみたいに鼻先を私の唇に近づけてくる。

おや? 珍しい……可愛い……

「可愛いニャ――、どうしてそんなに可愛いのかニャ?」

三毛猫さんがニャンと鳴くので私もニャンニャン楽しく話していたらクックックッと笑い声が聞こえてきた……

誰かいるっ!?

「目が覚めたかニャ?」

プラチナブロンドの髪がさらりと揺れる……
セオッ……ドアッ…………よりにもよって

笑い続けるセオドア…………三毛猫さんを見ると毛繕いをしている……なんだか三毛猫さんに泳がされた気がする……絶対セオドアが部屋にいること知ってたよね三毛猫さん?

三毛猫さんは毛繕いを続けている……触ってもいいですか……

ま、まぁいい……立て直そう……上半身を起こしコホンと咳払いをする。

「ご迷惑をお掛けしてすみません。体調もだいぶ良くなりました」

「迷惑だなんて思っていないよ。心配はしたけれどね。以前も熱を出して倒れた事があるそうだね」

コクリと頷く。

「回復に2、3日程かかったとか。トーカが倒れてから2日は経っているから完全に回復するまでもう少し休んでいるといい」

「うん……ありがとう」

「ところでそのコは変わった毛色の猫……でいいのかな?トーカの猫かい?」

あ、結界が解けてる。という事はココさんの方も……シュゼット様が一緒だから大丈夫かな……

「三毛猫さんだよ。一緒に住んでいるの、私の大切なネコさん」

「リアザイアの王族方にも大切にされているみたいだし、城の中では大丈夫だとは思うけれど、連れ去られたりしないようにね」

うん、ありがとうと言いセオドアがいるうちに気になっていた事を聞いてみる。

「騎士団の皆さんは帰ってきた?」

「王都のすぐ近くまで来ているよ。ノシュカト殿が迎えに行って明日には城に帰ってくるだろう」

ホッとして……それから

「捕まった人達は……どうなったの……?」

セオドアが水差しからコップに水を入れながら答えてくれる。

「何せ人数も多かったからね、ようやく全員から話を聴き終えた所だよ」

はい、とコップを私に渡しながら続ける。
ありがとう、と受け取り水を飲む。

「やはり保身に走るものがほとんどだったけれど、中には国境の街の者達には世話になりどうしても放っておけなくて魔獣達が溢れる直前に避難するように知らせた者もいたようだ」

だから国境の街の人達はみんな無事だよ、そう教えてくれた。

セオドアも国境の街の宿屋のおじさん達に避難するように情報を流していたみたいで、その貴族の知らせと合わせてみんなが信じて全員避難することができたらしい。


「コリンヌさんは……どうして……私を?」

「トーカ、すまない。彼女がトーカを狙ったのは俺のせいだ」

どういうこと?

「これまで長年に渡り積み重ねてきた計画が全て失敗に終わる悔しさから、この国と他国との関係を少しでも悪くしようと思ったらしい」

それで何で私?

「他国からの留学生、という事にしていただろう? もしも要人の娘ならば戦争の火種になるかもしれない、と思ったらしい。トーカには怖い思いをさせてしまって本当にすまなかった」

あの何気なく決めた設定のせいだったのか……

まさかコリンヌさんがあんな風になるなんて思わなかったし……これは誰のせいでもない……


「彼女は……とにかく思い込みが激しくてね。おそらく考えを改めてもらう事は難しいだろう。あれだけ兄上にハッキリと言われたのにもう一度会わせて欲しい、陛下が愛しているのは私だ、と」

ふぅ……とため息をつきながら

「トンネルの計画を最初に立てた者達の本当の思いを伝えてもまるで聞き入れない。彼女はきっとそのまま……」



「そうだ、兄上とシュゼット嬢の婚約が決まったよ」

!?

「本当!? おめでとう!」

うわぁ…………嬉しい!

「ありがとう。後で二人からも報告があると思うけれど、国民へは今回の事態の整理がついたら発表されるだろう。結婚式は半年後には行いたいそうだ」

少し急いでいるように思えるがこんな時だから、改めて貴族も平民も関係なく国の団結力を高めたいという思いと、やはり明るい出来事で国を盛り上げていきたいという思いがあるらしい。

そういえば……

「シュゼット様のお兄さんのアーロン様はエリアス陛下毒殺未遂事件の疑いをかけられて姿を消しているとか……帰って来られたの?」

「あぁ、トーカも会っているよ」

会っていないけれど……?

「俺が泊まっていた王都の宿のカウンターにいただろう?」

宿の……カウンター…………! あの受付のお兄さん!?
灯台もと暗しっ……そんな近くにいたとは……

「変装もしていたからあの場によく馴染んでいたよね。すでに疑いも晴れて公爵邸に戻っているよ」

馴染んでたっていうか前髪が長くて顔がよく見えていなかったけれど。そういえば何か仲が良さそうだったな……セオドアが常連さんだからだと思っていた。

「それでね、兄上とシュゼット嬢の結婚式の招待状を各国にも送るのだけれど、もちろんトーカも来てくれるよね」

もちろん出席します! メイドとしてでもいい!

「もちろん招待客としてね」

兄弟で私の心の声と会話をしないで欲しい。


それから私は考えていた事をザイダイバの王族に相談してみようと思った。

ただ、この話をするとなると私の事情をザイダイバの王族にも話さなければならないので事前にリアザイアの皆さんには相談しておいた。

私が思うようにしていい、と言ってくれた。

セオドアにザイダイバの王族の皆さんにお話したい事があると言うと、エリアス陛下とシュゼット様が私の体調が大丈夫なようなら明日会いに来たいと言っているのでその時に話をしようという事になった。

じゃあ明日お話しするね、そう言うとセオドアが私の髪に触れながら言った。

「それまでしっかり休んで欲しいニャン」

その話し方は忘れて欲しいニャン。

「ニャン」

三毛猫さんが嬉しそうにお返事をしてくれた……ニャン。


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