シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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東の最果てアシノ領地へ

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   北側には、森とその奥に標高が1000メートルは、越えているであろう山脈がそびえ、南側は、大河が大きく横たわり、遠くに対岸が見えた。
   東側には、大河の終わりの海が悠然と広がり村は、その手前にヒッソリと置かれている様に見えた。

   東の果てのアシノ領、ナカル村。
   肥沃な土地と広大な大河と山脈に眠る鉱石に恵まれた土地にもかかわらず最果てとギブル、ゴレッドの国に挟まれたが故に置き去りにされた村だ。

   ホルンが素早く村に近づくとその様子が余りにも変なのにゼンも直ぐに気づいた。
   遠目からだと分からなかったが木造の家の壁が所々壊され、人だかりが出来ていた家は、屋根は、木造なのだが壁は、積み石によって造られており周りの家より強固な造りになっていた。

   攻められた?
   ゼンは、一瞬そう思ったがもし攻められたとしたならなぜ村人は、生きている?
    野盗でも強盗でも、この村に抵抗する力があるかと問われたら正直無いに等しい。
    だとしたら、今村人が生きていてこんな人だかりを作れるわけがない。
   ならば何があったのか?
   よく見ると積み石の壁の家の周りには、所々に焚き火していた跡が見えた。

   襲われた、多分、怪物の類か。

「そろそろ、着くぜ」

   クリフの声にゼンは、目を開いてホルンとの繋がりを切ると馬車の運転席の窓を開けた。

「恐らく怪物の類に襲われてる、馬車を止めらたら周囲に網を」

「あいよ」

   クリフの快活な返事を聞いてゼンは、少しだけ安心しながら気を引き締めた。

   程なくして馬車は、村の出入口に着き。ゼンは、馬車の扉を開けると泥の大地に足を一歩踏みしめた。
   人集りの視線がゼンに一斉に向く。

「私は…」

   ゼンは、人集りに向かい歩き出し挨拶をしようとした次の瞬間、人集りが一斉にゼンに向かい歩き出したかと思えば一斉に跪いた。

「どなたか存じませんが!どうかお助けください!!どうか!!」

   ゼンの目の前に跪き、大地に擦る様に頭を垂れる初老の男が唐突に大きな声で助けを求めてきた。

   ゼンは、その勢いに圧倒され言葉を失いながら周りに目を向けた。

   30~50人ほどの人達が一斉にゼンに向かい頭を下げている。
   こんな状態は、初めてでは、ないのだがそこにある祈りに近い願いの思いが圧となりゼンの言葉を詰まらせた。

「何があったです?助けてと言われても説明してもらわないと何をすればいいのかわからないんですけど?」

   ようやくゼンから出てきた言葉は、とりあえずの事態のまとめをする為の言葉だった。
   その言葉に応じて初老の男の顔が地面から離れゼンに真っ直ぐな目を向けた。

「ワシの娘…ウルテアをどうかお助け下さい、薬か薬草、何でもいい、傷を癒すものを…痛みを和らげてあげるだけでもいい…何か…」

   薬、薬草、痛みを和らげるもの…

   その単語だけでゼンは、直ぐに馬車に乗っているセリーナに向かい視線を投げ、セリーナもまたゼンの視線に応える様に頷いた。

「怪我人が居るんですね?どこですか?」

   ゼンは、跪く初老の男を立たせると初老の男は、縋る表情でゼンを見たかと思うと踵を返しゼンの手を引っ張り出した。

   ゼンは、その勢いのまま初老の男に着いて行くと積み石で造られた家の中へ案内され、2階の部屋と上げられた。

   部屋へと着くと、そこには、正面の窓に向かい置かれたベッドの上で息を切らせながら横たわる人の姿が見えた。

   ゼンは、初老の男に掴まれた、手をゆっくりと解き、ベットで息を切らせて居る人物の元へ近づいて行った。

   茶色い短く切られた髪に太い首。パッと見は、青年の様な顔立ちをしているが輪郭には、丸みがあり、体つきも逞しいがやはりクリフとは、違いどこか丸みがある事から女性だとわかった。

   毛皮を毛布の様に被らされていたが肩から上は露出しており、左肩から胸部に掛けて布が覆われその布には、血が滲んでいた。

「誰……だ…?」

   ゼンが隣に立つと短い茶色い髪の女性、ウルテアの目が開きゼンを睨みつけた。

「ゼンというものだ」

   ゼンが簡潔に応えると今にも泣きそうな声を上げながら初老の男が震える手でウルテアの頭を撫でた。

「私は…もう…助からない…ゼンとやら…どうか…村の者…を…」

「助からないかどうかはまだわからん、まずは怪我を見せてくれ」

   ゼンがそう言うとウルテアは、ゆっくりと首を横に振った。

「そうか」

   そう言うとゼンは、ウルテアの額に二本指を当てた。ウルテアの瞼は、深く閉じられそのまま力を失った。

「ウルテアーーー!!!」

「眠っただけだ、そこどいてくれ、このままだと本当に死ぬぞ!」

   初老の男が吠えたと同時にゼンは、冷静な言葉で返すと初老の男を手で退かし、毛皮を軽く捲り上げ覆われた血のにじむ白い布を捲った。

   これは、深いな、それに出血量も多い…
   あっちだったら助からなかったかもな。
   ゼンは、そんな事を思いながらウルテアの傷を観察した。
   左肩から胸部にかけて斜めに一線の傷が肉を抉る様に走っていた。

「ゼン様!!」

   あらたかたの傷を観察を終えたタイミングで後ろからセリーナの声が聞こえ、声の方向へゼンが視線を向けるとセリーナが大きな鞄を抱えながら立っていた。
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