シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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東の最果てアシノ領地へ

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「馬車に火を焚く様に、火聖石(かせいせき)が入ってる。それで湯をあと水!それと関係ないやつは、全員外へ出ろ、邪魔!!」

   ゼンは、そう言うとセリーナから鞄を受け取り、鞄から小箱を取り出すとそこから二本の漆器の瓶を取り出した。
   傷用の薬と血液用の薬だ。
   次に刷毛を1本取りだした。

   取り出したと同時に村人が木のバケツにたっぷりと入った水を持ってきた。ゼンはそのバケツの中に指を入れて何かを確認すると頷き、カバンの中から木のコップを取り出すと水を汲み血液用の薬を数適垂らして刷毛で掻き混ぜた。
   水に薬が馴染んだのを確認すると刷毛を使い傷口へゆっくりと垂らしながら塗っていく。
   出来るだけ零さずに出来るだけ体に染み込むように。
   木のコップの水が空になるとまた同じ工程を繰り返し。バケツの水が半分になったぐらいにそれを止めた。

   ウルテア顔色で今の所、成功していることを確認すると次に湯を張った鉄がまを両手でぶら下げる様にセリーナが持ってきた。

「お湯をバケツの中へゆっくりと入れてくれ」

   ゼンは、そう言いながらお湯をゆっくりとバケツの中へ入れてもらい、時折、湯を入れるのを止めてバケツの中の水の中へ指を入れながら何かを確認しながらまた湯を入れてもらうと言う工程を繰り返した。

   ある程度のお湯が入りゼンは、頷きながら、もう要らないという合図をセリーナに送るとバケツの中に傷用の薬を入れて刷毛で掻き混ぜた。

   次に鞄からシルクの布を取り出しそのバケツの水を浸すとその布をゆっくりとセリーナの手を借りながらウルテアの体へと巻き付けていった。

「これで良し、大丈夫な筈だ」

   気づくとウルテアの息遣いは落ち着いた物になっていた。
   ゼンは、先程と同じ様にウルテアの額に二本指を当てながら何かを確認すると指をしまい拳を握った。

   するとウルテアの目がゆっくりと開いた。

「痛く…ない…?」

「今は、な。痛覚を麻痺させているから暫くは身体も思う様に動かないけど痛いよりましだろ」

   ゼンは、そう言いながら横たわるウルテアの前に立った。

「貴方は、医者様?いえ、魔術師様?」

   ウルテアがそう問うとゼンは、ゆっくりと首を横に傾けながら応えた。

「一応、どちらも勉強してきたけど俺は、どちらでもないかな」

「なら、貴方は?」

   そう聞かれゼンは、笑みを作りながら肩をすくませた。

「そんな事より、何があった。その傷、剣とか斧とか傷じゃないだろ?」

   ゼンがそう言うとウルテアの目が見開き、急に体を起こそうとしたが体が思うように動かずに直ぐにベッドへと体を埋めていった。

「落ち着け、何があった?」

「早く…皆を避難させて…火も焚かないと、バルデッシュが帰ってくる…」

   バルデッシュ?
   確か牛の亜種で草食動物の一種だった筈だ。
   そんなのをなぜ恐れるのか正直、ゼンにはよく分からなかったがウルテアのこの様子ではマトモに話にならないだろうと思ったゼンは、再びウルテアの額に指を当てると寝かしつけた。

   ウルテアをベッドに戻すとゼンは、部屋を後にして1階に降りると村人達が階段から降りてくるゼンを無言で見つめていた。
   ゼンは、その視線に少しだけ緊張しながら肩を竦ませると後ろからついてくるセリーナの咳払いが聞こえてきた。

   これぐらいで圧倒されてどうするっと言いたいのだろうが、ゼンからするとそれはどがい無理な話とも言えた。
    セリーナからすると単なる自然に感じるだろうが魔術を習得しているゼンからするとその視線に含まれた無言の願いや思いなどがヒシヒシと伝わってくるのだ。

   今回のは、助かってくれという願いと、助からなかったかもしれないという絶望。
   なんとも言えない、重く苦しいものなのだ。
   だが、ここで安直に無事だったっと言っては、嘘になる。
   正直今のウルテアの状況は予断を許さない状況とも言えた。
   安静にしてくれれば助かる可能性が高いがあの様子だと目覚めたら動きかねない。そうなれば助かる命も助からない。

「あの…ウルテアは…娘は……」

  ゼンが階段を降り切ると人集りを掻き分けて初老の男が覚束無い足取りで出てきて言った。

「処置は、成功した。だけどまだ安心は、出来ないってところですかね」

   ゼンがそうアッサリと応えると初老の男は、溜め息を漏らしながら膝を床に擦り付けながら跪いた。

「あぁ…ぁ……ありがとう…ございます……」

   ボロボロと床に涙を零しながら掠れる声で何度もゼンに感謝の言葉を告げた。

   ゼンは、初老の男のその行動に困りながら肩を何度か叩きながら周りの人集りに目を向けた。

「それより、彼女に何があったんです?あの傷、鋭利な刃物と言うより尖った鈍器に近い傷だと思うんですが?」

「バルディシュだ…3頭のバルディシュが昨日の夕方…襲ってきたんだ?」

   ゼンの問いに人集りの中にいる中年の男性が応えた。

「バルディシュって角の生えた茶色い牛の?」

   ゼンがそう聞くと中年の男性は、小刻みに頷いたかと思うと首を横に振った。
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