シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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東の最果てアシノ領地へ

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   なんつうマヌケ顔だよ。
   ゼンは、呆れた溜め息を再度漏らしながら周りに目を向けた。

   村は、二段式になっている。
   村人の木造の家が並んでいるのが一段目で村の最奥にある山側の洋館は、3メートル程の石垣の積まれた丘の上に建っていた。

  ゼンは、足跡の後を再度見ると今度は、手にマナを集約しそっと触れた。
  大地から白い煙がユラリと踊る様に立ち上がると姿を形成していく。高さ2m半、横は4m程の長い角を携えた牛の姿が現れた。
   片足を上げ今にもゼンに突進してきそうな状態で静止したその姿を見てゼンは、苦笑いを零してしまった。

   こんな事なら荷物ごと皆で来れば良かった。
   今からホルンを飛ばして隣町の皆を呼ぶか。いやそれは、余りにも現実的では、無い。
   この村から隣の領地の街、テンロンまで直線距離でも20km以上ある。
   ホルンが飛んで1時間以内に着いたとしても彼等が準備してこちらに着く頃には、夕刻を過ぎている。
   下手したら道中にバルディシュやそれを操る者に襲われたら援軍より前に全滅の可能性が高い。

   つまり、現状の戦力でどうにかするしかない。

   さぁてどうしたものか。

   ゼンは、思案しながら再び視線を洋館に向けそっと歩き出した。
   石垣には、洋館へと繋がる階段が備え付けられており、それを登るとレンガの壁と鉄柵に囲まれた石と漆喰の優雅な姿を鎮座させていた。

   先程、ホルンの俯瞰してから見た時には、中々の広さ有しているのは、確認済だ。
   確か親世代の王族がここを建築させたと文献に載っていた事を覚えていたゼンは、改めてこの建物を何の為に造ったのか気になる所だったがそんなことを気にしてるタイミングでも無かった。

   門扉に手を掛けると後ろから気配がし振り返るとセリーナが息を切らせながら走ってきた。

「申し訳ありません、今開けます」

   そういうと鍵を開け、門扉を開き。玄関へと急ぎ足で向かった。
   こういう時のセリーナの姿にゼンは、感心させられ、彼女の言葉には何も言えなくなるのだ。
   どんな時でも礼節と振る舞いを忘れない。その姿は、時にゼンに自分は、王族なのだと無言で伝えてくるのだ。

「お待たせいたしました。どうぞ中へ」

   本音を言えばもう少し砕けてくれもいいのだが。そう思いながらセリーナに促され玄関へと足踏み入れた。
   横を通り過ぎる時にセリーナにそっと「ありがとう」っと言う言葉をかけると下げていた頭が上がり柔和な笑顔を見せた。

   洋館は、3階建てで1階に応接間、キッチン、トイレと浴槽室。それと講堂があった。
   暖炉は、応接間と講堂に一つずつ。
   2階には、客室と使用人の部屋が6部屋あり。3階は、広々と領主の部屋が一室あった。

   応接間は、庭園にも続き。庭園には花や作物、それに鍛治用の炉があった。
   庭園の裏は、森で、その先に聖域の森へがある。

   拠点としては、使える。
   ゼンは、庭園を抜け、裏の森に出ると周りを見渡した。
    大型の何かが通った形跡は、ない。つまりこっちからは、攻められる可能性は低い。
    ならばやはり前の道から恐らくバルデッシュ達は、来るのだろう。

   そう想定を終えるとゼンは洋館に戻り玄関へ向かった。
   石垣の高さは3メートル。バルデッシュの縦の高さは、2メートル強。
   上からの攻撃で足止めする事は、可能か?
   だが、如何せん防衛力は、足らない。奴がこの石垣を登ってしまったら戦況的には、アウト。ゼン達もウルテアの二の舞になるのが関の山だ。

   せめて2頭であればまだ討伐出来る見込みは、あるが…

「おっ…おい…」

   石垣の上で思案しているゼンに先程の中年の男が声をかけてきた。
   目には、何やら妙な意思が籠っている。

「なんだ?逃げるなら早くしろ、夕方まで時間が無いぞ?」

  ゼンの素っ気ない返事に中年の男は、一瞬声を詰まらせたが直ぐに意を決した様に建て直した。

「…アンタは、なんでこの村を助ける?」

「自分の村だからだよ」

「はっ?」

   中年の男の返事にゼンもまた素っ頓狂な表情で返し、すぐにハッとすると自分の額を一つ叩いた。

「すまん、バタバタしてて言い忘れてたんだった」

   ゼンは、そう言いながら咳払いをすると胸元に手を当て背筋を伸ばした。

「私の名前は、ゼン・ヤマダル。本日より、アシノ領主の任を国王、ブジン・ヤマダルより拝命を賜り、ここに馳せ参じた次第である。この村は我が領地であるなら守護するのもまた領主としての務めである。これが答えだが何か意見があるなら聞こう」

   ゼンがそう言うと中年の男の顔色が青くなっていき、慌てて跪いた。

「いえ、あの…何も知らなかっとは、いえ、失礼の数々…申し訳ありません!!」

   中年の男は、頭を地面に擦り付けながら言い、ゼンはその姿を見ると溜め息をひとつ漏らし腰を落として中年の男を起こした。

「とっまぁ、堅苦しい挨拶はここまでにしておいて、そういう事だから、逃げるなら引き止めない。早めに逃げろ」

   そう言いながら、ゼンは腰を上げた。

「もし、我々が戦う意思があると言ったら、領主様のお力になれますでしょうか!?」
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