シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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ナカル防衛戦

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   ひとつは、セリルのでもうひとつは、赤子の為に作った離乳食なのだろう。 
   セリーナは、ゼンの横に膝を付くとそっと大きい方の木のお椀を床に置き、小さな木のお椀を渡した。

「どうか、食べさせてあげてください。どうか諦めないでください」

   それは、祈りにも近い言葉であった。
   セリルは、そんなセリーナの言葉に大粒の涙を零すと震える手でそれを受け取り、零しては、いけないと思ったのかセリーナは、受け取ったセリルの手を両手で支えながら赤子の頭をゆっくり撫でた。

「俺は、周りの様子を見てくる。後は頼むぞ」

   ゼンがそう言うとセリーナは力強く頷き「ありがとうございました」っと小さな声でゼンに告げた。

   ゼンは、片手を上げることでそれに応えると3階の自分の部屋になるであろう領主の部屋と入っていった。

   窓を開けて口笛でホルンを呼びホルンが窓辺に近づくと目と目を合わせ、ホルンと自分の視界を繋げた。
    草原と森に淡いオレンジが差し込み、太陽は、地上に近づき少しづつその体を沈めていく。
    夕暮れそして夜がくる。

    ゼンは、今度は、両目を瞑りじっくりと周りに目を走らせた。
    森から不気味な空気を感じホルンに向かう様に命令するとホルンは、翼を傾かせて旋回しゆったりと森の上空を旋回した。
   木の隙間から大きな影が三つ見えた。
   影同士の間には、それなりの隙間があるが間違いなく同じ方向を向かい歩いている。
   ホルンは、少し低空飛行に切り替え、隙間から入る陽光でその姿の一部を掴む事が出来た。

    岩とも見間違う様な大きさの生き物。形のそれは、牛だがサイズと纏う筋肉は、明らかに異質だった。
   微かにマナの流れを感じたゼンは、それが自分の予想通りだと察した。
   村までの距離は、ザッと見積もっても3kmぐらい。
   バルディシュ達の歩く速度は、そこまで早くもないが遅くもない。
   時速10km程度っといったところだろうか。
   人とほぼ同じ速度で歩いている。
   単純計算で真っ直ぐ休まず歩くなら恐らく30分程度で村に到着するだろう。

   ゼンは、片目だけを開けて、部屋のベランダに向かうと窓を大きく開けた。

「クリフ!火を焚け!!近くに来てるぞ!!」

   ゼンのその一言にダラリと座っていたクリフの体が素早く動くと近くにいる村人に声をかけながら仕掛けた焚き火や灯台に火を灯し始めた。

   ゼンは、それを確認すると踵を返しクリフに運ばせていた長方形の革の鞄を開けた。
   そこには、銀色の手甲と具足とベルト。そして三日月様に綺麗な曲線を描いた刀と布に包まれたL字型のモノが入っていた。
  手甲と具足を装着し、ベルトを腰に回すと鞘に収まった刀を腰に差し、L字型の物を手取ると布を解いた。
   手の形に合わせたグリップに自己主張をする様に全体の真ん中に鎮座するシリンダー、そのシリンダーから伸びる銃身、リボルバー式の拳銃だ。
   ゼンは、視線まで拳銃を持ち上げると照準にズレが無いかを確認すると腰のホルスターに収めた。

    一息ついて、立ち上がるとホルンの眼が探していたものを映し出した。
    バルディシュの群れの少し後方に三人分の動く人影がそそくさと森の中を歩いていた。
    やはり、災害に見せかけた、攻撃だ。
    狙いは、何にしろ、これで大体の状況把握は出来た。

   両目を開き、ホルンとの繋がりを切ると急ぎ足で玄関に降り、門前へと向かった。

   門と玄関の間には、中庭があり、そこには、4つの焚き火と村の男達が自分の身長と同じぐらいの木の棒を片手に持ち集まっていた。門扉の前には、鎧と剣、そして弓を背負ったクリフが腕を組みゼンの方へ目を向けていた。

「皆、木に火を灯せ。間もなく来るぞ。後は、作戦通りに門を閉じ、柵から木の棒で迫り来るバルディシュを攻撃しろ」

   ゼンは、そう言いながらクリフに向かい頷き、クリフは、頷くと門扉を開けた。

「俺達は?」

   門を出るとクリフが聞いてくるのをゼンは、ゆっくりと肩を竦ませながら。

「各個撃破、村内の焚き火は、どれぐらいだ?」

「うへぇ~人使いの荒いこって、焚き火は大きのが2つに小さいのが6つ」

「お前の弓は、何発が限界だ?」

「さっきの点灯に数発使ったが、まだまだ大量に撃てますぜ大将」

「正確に言って何発だ」

「30前後、動くことも考えた上での話だ」

   つまり動かなければもう数十発は、放てると言うことだがそうも行かないだろう。
   相手も動物で動き、こちらも回避で動く。
   特に対動物となればこちらは、魔術で足りない分を補強する事も考えると中々の厄介さだ。

   ゼンは、そっと腰のホルスターに収まるリボルバー式の拳銃に触れた。

「おっ、そいつも使うかい?お前さんの秘密兵器」

   クリフの言葉にゼンは、一瞥すると再び村の出入口へと目を向けた。

「本当は、使いたくないさ、だがこうなったらやれることをやらんとな、死んでも死にきれんと思ってな」

   ゼンのその言葉にクリフは、肩を竦ませながらそっと背中から弓を取り出し左手に持った。
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