シンミトロア物語【異世界転生ビルダーの紀行】

山月 春舞《やまづき はるま》

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ナカル防衛戦

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   それにウルテアのあの傷だ。
   明らかにあれは、正面から角で付けられた傷だ。
   つまり、ウルテアは、あの牛を正面から受け止めた!?
   いや、いくら屈強とは、いえ…

   そう思いながら、ゼンは、巨体の攻撃を躱しながら周りに目を配った。
   そんなゼンの視界に止まったのは、旋回の際に出来た轍だった。
   肥沃な土地に潤沢な水分は、欠かせない。
   そして、春先に溶けた雪解け水が土に吸い込まれて泥になっている。

   そうか、これで足を滑らした時にスピードが殺されたタイミングで頭を抑えにいったのか…

   ゼンは、それを見て一つの手を閃いた。

   肉がダメなら機動力を削ぐのは…

   尚も突進してくる巨体を低い体勢でゼンは、待ち構えた。
   土を蹴り泥を跳ねらせながら迫る巨体を確認するとゼンは、右手にマナを集約し始めた。

   距離は、まだ数mある。
   体勢を低くしマナの集約を右手と具足のみにする。
   そして、距離が数十cmになると右手を大地について、具足の風のマナを使って右手を起点に回転する様に躱した。
   巨体の頭がズルリと落ちる。
   踏みしめた筈の大地は、より深い泥沼へと変貌していたのだ。
   ゼンが避けるタイミングがもう一秒遅ければ巨体の顎がゼンの頭に直撃していただろう。
   ゼンは、回転した勢いのまま刀を一気に巨体の左後ろ足目掛けて振り抜いた。
    ゴリッという不快な感触と強い衝撃が手から全身へと走ったが離しそうになる柄を握り締めて何とか振り抜いた。

   グヌォォォォォ!!!

   吠える巨体の大声に耳が襲われ肩を竦ませながらゼンは後退し。その最中に視線を斬った左後ろ足へと向け、夥しい鮮血を撒き散らしながらその足は、本来曲がらないであろう方向に折れ曲がっているのを確認した。

   これでこの巨体の機動力は、ほぼ殺したと言って過言では、無いだろう。
   ゼンがそう安堵していると遠くから何か嫌な音が聞こえている気がした。
   先程の咆哮で耳をやられているゼンには、よく聞こえず。音のした方向に視線を走らせた。

   そこには、弓を構えながら、ある程度の距離感を保ち巨体と向き合っているクリフがゼンに向かい何かを叫んでいる。

   その視線の先をゼンは、慌てて追うと洋館に向かい突進をしている巨体が見えた。
   4頭目!?そんな馬鹿な?
   そう思いながらゼンは、周りに視線を走らせるとクリフが出端を挫いた1体目の姿が消えていた。

   もう体勢を建て直したのか!
   それは、ゼンの予想より早かった。
   ゼンは、左手を大地に着けて、マナを流した。

   予想より早いが想定内では、ある。

   突進する巨体と洋館の石垣までの距離が迫る次の瞬間、大地が盛り上がり丸太の様に太い腕が二本生えると巨体の両前足を掴んだ。

    その勢いのまま巨体は、ひっくり返りそれに覆い被さるように上半身だけの人型土人形が現れた。

「ゴル、そのまま抑えてろ」

   ゼンがそう言いながら体勢を元に戻すと人型土人形、ゴルは、ゼンに向かい頷いた。

   ゾワ…

   嫌な風が背中に吹き、ゼンは素早く振り返ると巨体が頭を振り子の様に振り抜いてくる。
   ゼンは、それを躱す事が出来ずに直撃を食らってしまい、数mは、飛ばされてしまった。

   ギリギリで風の盾を使いある程度の軽減は、したもののその衝撃は強く、脳震盪を起こし世界が揺れている様に見えた。

   クソ!しくった。 
   ゼンは、上半身を起こすも立つ事は、出来ずに跪いていると脳震盪の揺れとは、違う振動に気づいた。
   横から来る嫌な風を避ける様に前回りをすると後ろから何かを破壊する衝撃音と波が伝わってきた。

   揺れる世界でもわかる程の巨体の影がユラリと動いている。こちらに向かってくる。

「クソが!」

   ゼンは、悪態をつきながら腰元に手を持っていくとリボルバー式の拳銃を引き抜いた。

   出来るならこんな所で使いたくなかったがしょうが無い。

   銃口を巨体に向ける。的は、絞るほどでは、無い。相手の大きく今なら目を瞑っても当てられる程の距離だ。

   引き金に指をかけマナの供給と力を込める。

   ダン!!

   乾いた音ともに放たれた弾丸は、赤い直線を闇夜に走らせ巨体の体へ埋まっていく。

   埋まった次の瞬間、巨体の体の奥から炎が舞い上がりその体飲み込み始めた。
   グヌォォォォォ!!
   体を悶えざる様に跳ねながら巨体は、横たわり尚も悲鳴を上げている。

   世界がゆっくりと鮮明に見えてくる。
   その頃には、巨体は消し炭になり、ピクリとも動かなくなっていた。

   ゼンは、意識を整えると直ぐにゴルが覆い被さるもう1頭へと目を向けた。
   ゴルの比重が重いのかまだ起き上がろうと暴れ回っているが上手くいかずその場を陸に上がった魚の様にビチビチと跳ねていた。

「すまんな」

   ゼンは、そう言いながら銃口を向けると再び引き金を引き乾いた音を鳴らせた。

   咆哮をしながら燃えるその姿を少しだけ見つめ、すぐにクリフの相対する最後の1頭へと目を向けた。

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